16 / 93
16話 わたくしはお父様にとっても悪女なのですね。
しおりを挟む
「くだらない…?そうですわね、そのくだらないネックレスを貴方がお持ちになっていても仕方がないでしょう?わたくしに返してください」
「…………そんなものどこにやったかなんて覚えていない。必要なら家令に言いなさい。そんなくだらない話でわざわざ王城に来るなんて……わたしが屋敷に帰ってきた時でいいだろう」
お父様からすればそうかもしれない。でも貴方はいつ帰ってくるの?わたくしが死んでも帰っては来ないでしょう?
その理由は……愛する人が他にいたから?
お母様を愛していたと思っていたのに……この歳になってもまだそんな馬鹿なこと信じていたのね。
自分ももう大人なのに……子供の頃から大人の汚さなんてこの王城でどれだけ見てきたか。
「ではそのくだらない物はわたくしがいただきますわ。ただ家令に聞かなければいけないのなら一筆書いて頂けますか?あの家令はわたくしの言うことは聞いてはくれませんので。宰相閣下のご命令ならば仕方なく渡してもらえるでしょうから」
わたくしの言葉に眉根を寄せた。
「お前はそんな被害妄想ばかり言って大概にしなさい。屋敷の者達はお前のせいでみんな困っているんだ。
確かに幼い頃サマンサに虐待に近いことをされたとは聞いている。それもかなり大袈裟だったんだろう?クビにはしたが、サマンサは言っていた。使用人に対して横暴で暴言ばかりだったらしいな。そんな態度だから家令もお前の話を聞かないんだろう?」
「わたくしが何をしたと言うのですか?」
ーーわたくしが受けたあの痛みは虚言だとでも言いたいの?
「屋敷で、あれは嫌だ、これは嫌だと文句ばかり言っていると報告を受けている。かなり金遣いも荒く予算を守ったこともないらしいな。お前はわたしにどれだけ迷惑と恥をかかせるんだ!殿下との婚約破棄も全てお前の有責。わたしがどれだけ尻拭いしたと思っているんだ!
ジェリーヌがお前のことを頼むと言わなかったら当の昔に捨てたのに!」
吐き捨てるように言われた言葉。
わたくしを捨てたかった?お母様のおかげで今まで屋敷に置いてもらえていたと言うことなの?
「わたくしが贅沢をしているとでも?」
「そうだろう?そのドレスにその高価な宝石。どう見ても贅沢三昧な生活をしているのだろう?結婚式にかかる予算も家令に見せてもらったがどれだけ豪華にするつもりだ?たかがウエディングドレスにどれだけのお金を注ぎ込んだんだ?宝石だって男爵家なら年間予算分くらいになる宝石を注文していただろう?」
「わたくしがドレスを注文?宝石も?このドレスを見てそう思うのですか?」
「そうだ。どう見ても高価な物だろう?」
「………そう見えますか?………」
わたくしはもうこの場に居たくなかった。
悔しくて泣きそうになるのを堪えて、執務室を出て行った。
ーーーーー
「おい!」
ブロアはさっさと執務室を出て行った。
なんなんだ!我儘で自分勝手。
幼い頃は可愛らしかったのに、ジェリーヌが亡くなってからは全く可愛げがない。
使用人に対しても我儘を言って癇癪を起こす。サマンサが躾のため叩くこともあったが、それはブロアのためだ。わたしも容認していた。
あれだけ我儘な娘なんだから仕方がない。サイロが王城に来てみんなの前でサマンサのことを言ったものだから仕方なくクビにするしかなかった。
しかし、サマンサはジェリーヌの専属侍女として長い間仕えてくれて信用できた。子供の我儘でクビにするなどあり得なかったのに、惜しい人材をクビにすることになった。
家令もいつもブロアには困り果てて、相談に来る。いい加減に結婚させてさっさと屋敷から追い出さなければ。セフィルは騎士団でしっかり働いてもらい、あの我儘な娘の手綱をしっかり握ってもらわないと。また今度呼び出して話をしておこう。
ブロアが執務室に来たせいで、仕事が中断されてしまった。大体ブロアが殿下の側妃になればわたしの仕事だってここまで大変ではなかった。
つまらない意地で側妃を断るからだ。殿下が今の妃殿下を身篭らせてしまったんだ。素直に婚約解消して側妃になればよかったものを、断るものだから悪評ばかりが広がり、セフィルに押し付けることになったんだ。
伯爵家の次男で優秀な男、あの男なら公爵家の騎士団でそれなりに活躍してくれるだろう。
金食い虫で我儘なブロアもやっとわたしのために役に立つ。さっさと嫁がせてこれ以上の出費は止めなければ。
わたしは殿下達が手が回らない仕事まで押し付けられて毎日忙しく働いていた。
それもこれもブロアのせいだ。
ジェリーヌが死んでからは特に仕事ばかりして子供達のことは屋敷の者達に任せっきりにしたわたしもいけなかったのかもしれない。
あんな我儘で傲慢な娘に育つとは思ってもみなかった。
「…………そんなものどこにやったかなんて覚えていない。必要なら家令に言いなさい。そんなくだらない話でわざわざ王城に来るなんて……わたしが屋敷に帰ってきた時でいいだろう」
お父様からすればそうかもしれない。でも貴方はいつ帰ってくるの?わたくしが死んでも帰っては来ないでしょう?
その理由は……愛する人が他にいたから?
お母様を愛していたと思っていたのに……この歳になってもまだそんな馬鹿なこと信じていたのね。
自分ももう大人なのに……子供の頃から大人の汚さなんてこの王城でどれだけ見てきたか。
「ではそのくだらない物はわたくしがいただきますわ。ただ家令に聞かなければいけないのなら一筆書いて頂けますか?あの家令はわたくしの言うことは聞いてはくれませんので。宰相閣下のご命令ならば仕方なく渡してもらえるでしょうから」
わたくしの言葉に眉根を寄せた。
「お前はそんな被害妄想ばかり言って大概にしなさい。屋敷の者達はお前のせいでみんな困っているんだ。
確かに幼い頃サマンサに虐待に近いことをされたとは聞いている。それもかなり大袈裟だったんだろう?クビにはしたが、サマンサは言っていた。使用人に対して横暴で暴言ばかりだったらしいな。そんな態度だから家令もお前の話を聞かないんだろう?」
「わたくしが何をしたと言うのですか?」
ーーわたくしが受けたあの痛みは虚言だとでも言いたいの?
「屋敷で、あれは嫌だ、これは嫌だと文句ばかり言っていると報告を受けている。かなり金遣いも荒く予算を守ったこともないらしいな。お前はわたしにどれだけ迷惑と恥をかかせるんだ!殿下との婚約破棄も全てお前の有責。わたしがどれだけ尻拭いしたと思っているんだ!
ジェリーヌがお前のことを頼むと言わなかったら当の昔に捨てたのに!」
吐き捨てるように言われた言葉。
わたくしを捨てたかった?お母様のおかげで今まで屋敷に置いてもらえていたと言うことなの?
「わたくしが贅沢をしているとでも?」
「そうだろう?そのドレスにその高価な宝石。どう見ても贅沢三昧な生活をしているのだろう?結婚式にかかる予算も家令に見せてもらったがどれだけ豪華にするつもりだ?たかがウエディングドレスにどれだけのお金を注ぎ込んだんだ?宝石だって男爵家なら年間予算分くらいになる宝石を注文していただろう?」
「わたくしがドレスを注文?宝石も?このドレスを見てそう思うのですか?」
「そうだ。どう見ても高価な物だろう?」
「………そう見えますか?………」
わたくしはもうこの場に居たくなかった。
悔しくて泣きそうになるのを堪えて、執務室を出て行った。
ーーーーー
「おい!」
ブロアはさっさと執務室を出て行った。
なんなんだ!我儘で自分勝手。
幼い頃は可愛らしかったのに、ジェリーヌが亡くなってからは全く可愛げがない。
使用人に対しても我儘を言って癇癪を起こす。サマンサが躾のため叩くこともあったが、それはブロアのためだ。わたしも容認していた。
あれだけ我儘な娘なんだから仕方がない。サイロが王城に来てみんなの前でサマンサのことを言ったものだから仕方なくクビにするしかなかった。
しかし、サマンサはジェリーヌの専属侍女として長い間仕えてくれて信用できた。子供の我儘でクビにするなどあり得なかったのに、惜しい人材をクビにすることになった。
家令もいつもブロアには困り果てて、相談に来る。いい加減に結婚させてさっさと屋敷から追い出さなければ。セフィルは騎士団でしっかり働いてもらい、あの我儘な娘の手綱をしっかり握ってもらわないと。また今度呼び出して話をしておこう。
ブロアが執務室に来たせいで、仕事が中断されてしまった。大体ブロアが殿下の側妃になればわたしの仕事だってここまで大変ではなかった。
つまらない意地で側妃を断るからだ。殿下が今の妃殿下を身篭らせてしまったんだ。素直に婚約解消して側妃になればよかったものを、断るものだから悪評ばかりが広がり、セフィルに押し付けることになったんだ。
伯爵家の次男で優秀な男、あの男なら公爵家の騎士団でそれなりに活躍してくれるだろう。
金食い虫で我儘なブロアもやっとわたしのために役に立つ。さっさと嫁がせてこれ以上の出費は止めなければ。
わたしは殿下達が手が回らない仕事まで押し付けられて毎日忙しく働いていた。
それもこれもブロアのせいだ。
ジェリーヌが死んでからは特に仕事ばかりして子供達のことは屋敷の者達に任せっきりにしたわたしもいけなかったのかもしれない。
あんな我儘で傲慢な娘に育つとは思ってもみなかった。
274
お気に入りに追加
4,212
あなたにおすすめの小説

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。


2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる