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11話 婚約破棄されたわたくしはもう要らない人。
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殿下はあからさまにわたくしを嫌うようになった。
誰が見ても。
ただし悪いのはわたくし。まともに仕事もできない、官僚達に怒り散らす性格の悪い婚約者という噂を貴族社会で流された。
それに対して否定することもなく王宮内の与えられた執務室でひたすら仕事をこなすわたくし。王太子妃教育も終わり、執務しかすることがないわたくしにとって外部から攻撃されることがない執務室は唯一のわたくしの居場所だった。
仕事はきついし、睡眠時間はあまりない。食事だけは3食運ばれてくるので困らない。服は執務室を出ないので簡素なワンピースで過ごす。
時間がある時は屋敷に帰ることもある。
ただ屋敷に帰れば使用人達からの冷たい視線の中過ごすことになるので、ゆっくりできない。
それなら王宮の執務室で過ごすことがわたくしにとって一番過ごしやすかった。
そんな生活を続けていればわたくし自身も不思議とそれが当たり前になってきた。
おかしいとは思わない。殿下がわたくしを悪者にしても悪女と呼ばれてもわたくしの耳には入ってこない。
それは殿下にとっては都合が良かった。
そしてわたくしとの婚約解消をわたくしの有責でしようと殿下は企てた。
殿下は学園で友人となった、今の王太子妃であるロザンナ妃殿下と恋人の関係になっていた。わたくしは興味すらなかったが、二人はいろんなところで逢瀬を重ねていたらしい。
そしてロザンナ様のお腹にはお二人の大切な赤ちゃんがもうすでにいたのだ。
殿下はそのお腹の赤ちゃんと愛するロザンナ様を守るためわたくしを有責で婚約解消させてロザンナ様を自分の妃に迎えたいと考えていた。
ある夜会の日、わたくしはいつものように一人で参加することになっていた。もうこの頃には殿下とパーティーや夜会に共に参加することはなく、一人での出席が当たり前になっていた。だからと言ってそれが寂しいとか悲しいとか感じることもなく、眠たい目を擦りながら『早く終わらないかしら?』と内心思いながらの参加だったので、はっきり言って、どうでも良かった。
殿下はロザンナ様を伴い夜会に出席していた。わたくしはそんな仲睦まじい二人の姿を興味もなく見ていたが、周りはわたくしを放っておいてはくれなかった。
『ブロア様ったらお一人で夜会に参加するなんて恥ずかしくないのかしら?』
『見て見て、ブロア様がロザンナ様を睨んでいらっしゃるわ』
などなど、わたくしのことを話題にしてみんな楽しんでいるようだった。
この時周りからの悪意を少しは真面目に受け止めておけば良かった。だけどわたくしは投げやりでどうでもいいという態度をとっていた。
殿下とロザンナ様がわたくしの近くにわざわざ近寄ってきた。
ーーなぜ?
そう思った時にはもう遅かった。
わたくしは誰かに背中を押され持っていたワイングラスをロザンナ様のドレスにかけてしまった。
『酷いわ、わたしが嫌いだからと言ってこんなことまでしなくても』
ロザンナ様は両手で顔を覆いシクシクと悲しげに泣き出した。
『わたくし?』
背中を押されロザンナ様にワインをかけたのは確か。だけど……たまたま……偶然なのに……
『あ、あのっ、申し訳なかったわ。替えのドレスをすぐに用意させるわ』
『ブロア、なぜこんな酷いことが出来るんだ?』
殿下がロザンナ様を庇うように前に立ち、わたくしを睨みつけた。
『わたくしがわざとしたとお思いですか?』
『当たり前だ!君はロザンナに嫌がらせでワインをかけたのをたった今みんな見ていたんだ』
『なぜ嫌がらせだと?たまたま誰かの手がわたくしの体に当たり思わずワインをかけてしまったのです』
『都合のいい話だな』
なぜ婚約者であるわたくしのことを全く信用してくれないのだろう。わたくしのことをお嫌いでも、わたくしがどんな性格かくらいご存知のはず。
わたくし達の会話を周りの人は聞きながら
『嫉妬から殿下の恋人にワインをかけたらしい』とヒソヒソと話しはじめた。
これが殿下の罠だったと後で気がついたけどもう遅かった。
この瞬間、わたくしは、まともに仕事もできない婚約者、そして嫉妬で意地悪をする醜い心を持つ婚約者になり、醜聞はどんどん広まっていく。
立場がさらに悪くなり頭を抱えていた時に、執務室に殿下が物凄い形相で怒鳴り込んできた。
『ロザンナのドレスが切られる事件が起きた、君の仕業だな』
『わたくしは何も知りません』
ーー突然の言葉に唖然とした。
執務室からほぼ出ることなく仕事をしているのに一体どうやってロザンナ様のドレスを触ることが出来るのだろう?
そう殿下に伝えたのに……
『君が手出ししなくても、君には優秀な護衛騎士がいるからね、彼ならどんな頼みで聞いてくれるだろう?』
ーーどうしてここでサイロの名前が出るの?
誰が見ても。
ただし悪いのはわたくし。まともに仕事もできない、官僚達に怒り散らす性格の悪い婚約者という噂を貴族社会で流された。
それに対して否定することもなく王宮内の与えられた執務室でひたすら仕事をこなすわたくし。王太子妃教育も終わり、執務しかすることがないわたくしにとって外部から攻撃されることがない執務室は唯一のわたくしの居場所だった。
仕事はきついし、睡眠時間はあまりない。食事だけは3食運ばれてくるので困らない。服は執務室を出ないので簡素なワンピースで過ごす。
時間がある時は屋敷に帰ることもある。
ただ屋敷に帰れば使用人達からの冷たい視線の中過ごすことになるので、ゆっくりできない。
それなら王宮の執務室で過ごすことがわたくしにとって一番過ごしやすかった。
そんな生活を続けていればわたくし自身も不思議とそれが当たり前になってきた。
おかしいとは思わない。殿下がわたくしを悪者にしても悪女と呼ばれてもわたくしの耳には入ってこない。
それは殿下にとっては都合が良かった。
そしてわたくしとの婚約解消をわたくしの有責でしようと殿下は企てた。
殿下は学園で友人となった、今の王太子妃であるロザンナ妃殿下と恋人の関係になっていた。わたくしは興味すらなかったが、二人はいろんなところで逢瀬を重ねていたらしい。
そしてロザンナ様のお腹にはお二人の大切な赤ちゃんがもうすでにいたのだ。
殿下はそのお腹の赤ちゃんと愛するロザンナ様を守るためわたくしを有責で婚約解消させてロザンナ様を自分の妃に迎えたいと考えていた。
ある夜会の日、わたくしはいつものように一人で参加することになっていた。もうこの頃には殿下とパーティーや夜会に共に参加することはなく、一人での出席が当たり前になっていた。だからと言ってそれが寂しいとか悲しいとか感じることもなく、眠たい目を擦りながら『早く終わらないかしら?』と内心思いながらの参加だったので、はっきり言って、どうでも良かった。
殿下はロザンナ様を伴い夜会に出席していた。わたくしはそんな仲睦まじい二人の姿を興味もなく見ていたが、周りはわたくしを放っておいてはくれなかった。
『ブロア様ったらお一人で夜会に参加するなんて恥ずかしくないのかしら?』
『見て見て、ブロア様がロザンナ様を睨んでいらっしゃるわ』
などなど、わたくしのことを話題にしてみんな楽しんでいるようだった。
この時周りからの悪意を少しは真面目に受け止めておけば良かった。だけどわたくしは投げやりでどうでもいいという態度をとっていた。
殿下とロザンナ様がわたくしの近くにわざわざ近寄ってきた。
ーーなぜ?
そう思った時にはもう遅かった。
わたくしは誰かに背中を押され持っていたワイングラスをロザンナ様のドレスにかけてしまった。
『酷いわ、わたしが嫌いだからと言ってこんなことまでしなくても』
ロザンナ様は両手で顔を覆いシクシクと悲しげに泣き出した。
『わたくし?』
背中を押されロザンナ様にワインをかけたのは確か。だけど……たまたま……偶然なのに……
『あ、あのっ、申し訳なかったわ。替えのドレスをすぐに用意させるわ』
『ブロア、なぜこんな酷いことが出来るんだ?』
殿下がロザンナ様を庇うように前に立ち、わたくしを睨みつけた。
『わたくしがわざとしたとお思いですか?』
『当たり前だ!君はロザンナに嫌がらせでワインをかけたのをたった今みんな見ていたんだ』
『なぜ嫌がらせだと?たまたま誰かの手がわたくしの体に当たり思わずワインをかけてしまったのです』
『都合のいい話だな』
なぜ婚約者であるわたくしのことを全く信用してくれないのだろう。わたくしのことをお嫌いでも、わたくしがどんな性格かくらいご存知のはず。
わたくし達の会話を周りの人は聞きながら
『嫉妬から殿下の恋人にワインをかけたらしい』とヒソヒソと話しはじめた。
これが殿下の罠だったと後で気がついたけどもう遅かった。
この瞬間、わたくしは、まともに仕事もできない婚約者、そして嫉妬で意地悪をする醜い心を持つ婚約者になり、醜聞はどんどん広まっていく。
立場がさらに悪くなり頭を抱えていた時に、執務室に殿下が物凄い形相で怒鳴り込んできた。
『ロザンナのドレスが切られる事件が起きた、君の仕業だな』
『わたくしは何も知りません』
ーー突然の言葉に唖然とした。
執務室からほぼ出ることなく仕事をしているのに一体どうやってロザンナ様のドレスを触ることが出来るのだろう?
そう殿下に伝えたのに……
『君が手出ししなくても、君には優秀な護衛騎士がいるからね、彼ならどんな頼みで聞いてくれるだろう?』
ーーどうしてここでサイロの名前が出るの?
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