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22話 シェリーナは。
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「け、けっ、結婚?」
あまりの驚きに「はい!」と返事をしたことを取り消さなきゃ!と慌てた。
「えっ、えっと、わたし、まだ、15歳で、これから領地に帰って、帰って、あ、あ、学校行かなきゃ行けなくて……だから、あの、そ、そう、結婚はちょっと……」
「シェリーナが帰るならちょうどいいと思ったんだ。とりあえず籍だけ入れよう。うん、それがいい」
この人わたしの話聞いてくれていない。
「いや、籍をすぐ入れるなんて……確かに貴族は愛や恋なんて関係なくその家のために結婚をしますが、わたしなんかと結婚してもなんの旨味もありませんし、この公爵家にとってプラスになることはありませんよ?」
「ああ、大丈夫だよ。両親には結婚の許可は取ってあるからね(ただしシェリーナが許可してくれないとダメだけど)それに公爵家は磐石なんだ。だからこれ以上の力は必要ないよ」
あっさりとわたしの言葉をぶった切ってしまった。
「で、ですが、まだ15歳だし…ケイン様は16歳ですよね?これから、まだもっと、素敵な相手が現れると思うんです」
ーーわたしなんか選ばなくても……
「シェリーナに俺より素敵な男性?領地にそんなかっこいい男がいたのか?もしかして夜会にいた?」
ーーえっ?わたしにではなくあなたにでしょう?
「いえ、あの、わたしはケイン様よりかっこいい男の人は知りません。でも、わたしなんかより美しく素敵な令嬢はたくさんいると思います」
ーーふぅ、なんとか、話が通じたかしら?
「俺はシェリーナより素敵な令嬢なんて知らないし、見たことがない。シェリーナは美しくて可愛らしい。
守ってあげたくなるし、そのふわふわした髪をそっと触れたくなる。その可愛い唇に一度だけでも触れてみたいと思う。他の女などなど手を触れるのも気持ち悪い。
どんな女性もシェリーナに比べれば大したことないよ、霞んでしまう」
ーーな、何を言ってるの?どさくさに紛れて、唇に触れる?うわぁ、もう無理無理。
わたしの顔は多分これ以上ないくらい真っ赤になっていると思う。
ノアはそんなわたしの体が熱くなったので、「ミャッ」と鳴いて膝から降りて冷たい床でまたゴロゴロ喉を鳴らしながら気持ちよさそうに眠った。
わたしはとてもじゃないけどケイン様の顔を見れず、ノアをじっと見つめていた。
もう顔を上げられない。
今までケイン様のことを意識したことなんてなかった。
ただ、わたしに気を遣ってノアのことを手紙に書いてくれる優しい、だけど気の毒な方だと思っていた。
わたしのせいで、幼い頃に心に傷を負わせた。わたしのなんかのために将来有望な公爵になるお方の心を煩わせてしまった。
そうずっと思っていた。
だからおじ様達が王都に帰る時、『王都に一緒に帰らない?』と言われてもお断りして領地で過ごした。
ケイン様にわたしの顔を見せるのはあまり良くないことだと思っていた。
今回も社交界デビューがなければ王都へは来なかった。一生公爵家の領地で過ごすのもいいかななんて思ってた。
誰かと恋をして結婚してのんびりと田舎暮らしをしたい。
出来れば今回ノアを連れて帰りたいと思っていた。
わたし自身は爵位に興味はないので、亡くなった両親には悪いけど、このままおじ様に領地は引きついでもらうつもりだった。
お父様の弟さん、わたしを引き取ってくれた叔父様達家族は伯爵令嬢を虐待した罪で、今もまだ刑罰として北部の山間部で仕事をしているらしい。家族と共に行ったことだけが何よりだったのかもしれない。
マデリーン様にとっては、修道院へ行くのとどちらがよかったのかわたしにはわからないけど、重労働でも家族と暮らせる方がまだ頑張れるのかもしれない。
だから爵位は返上して領地の運営はこのままおじ様にお願いしようと考えていた。
わたしは平民として生きていくのもいいかなと思っている。
「あ、あの、ケイン様……」
「うん?なに?」
「実は、わたし、これはおじ様達にもまだお話をしていないのですが……」
「俺が初めて聞く話?なに?」
少し嬉しそうな顔をした。
「あ、あの……わたし、平民になろうかと思っているのです」
「……それは無理な話だね?シェリーナはいずれ公爵夫人になるんだから」
ケイン様はそう言って今まで見たことがない一番綺麗な顔で微笑んだ。
ーーこ、怖い。
あまりの驚きに「はい!」と返事をしたことを取り消さなきゃ!と慌てた。
「えっ、えっと、わたし、まだ、15歳で、これから領地に帰って、帰って、あ、あ、学校行かなきゃ行けなくて……だから、あの、そ、そう、結婚はちょっと……」
「シェリーナが帰るならちょうどいいと思ったんだ。とりあえず籍だけ入れよう。うん、それがいい」
この人わたしの話聞いてくれていない。
「いや、籍をすぐ入れるなんて……確かに貴族は愛や恋なんて関係なくその家のために結婚をしますが、わたしなんかと結婚してもなんの旨味もありませんし、この公爵家にとってプラスになることはありませんよ?」
「ああ、大丈夫だよ。両親には結婚の許可は取ってあるからね(ただしシェリーナが許可してくれないとダメだけど)それに公爵家は磐石なんだ。だからこれ以上の力は必要ないよ」
あっさりとわたしの言葉をぶった切ってしまった。
「で、ですが、まだ15歳だし…ケイン様は16歳ですよね?これから、まだもっと、素敵な相手が現れると思うんです」
ーーわたしなんか選ばなくても……
「シェリーナに俺より素敵な男性?領地にそんなかっこいい男がいたのか?もしかして夜会にいた?」
ーーえっ?わたしにではなくあなたにでしょう?
「いえ、あの、わたしはケイン様よりかっこいい男の人は知りません。でも、わたしなんかより美しく素敵な令嬢はたくさんいると思います」
ーーふぅ、なんとか、話が通じたかしら?
「俺はシェリーナより素敵な令嬢なんて知らないし、見たことがない。シェリーナは美しくて可愛らしい。
守ってあげたくなるし、そのふわふわした髪をそっと触れたくなる。その可愛い唇に一度だけでも触れてみたいと思う。他の女などなど手を触れるのも気持ち悪い。
どんな女性もシェリーナに比べれば大したことないよ、霞んでしまう」
ーーな、何を言ってるの?どさくさに紛れて、唇に触れる?うわぁ、もう無理無理。
わたしの顔は多分これ以上ないくらい真っ赤になっていると思う。
ノアはそんなわたしの体が熱くなったので、「ミャッ」と鳴いて膝から降りて冷たい床でまたゴロゴロ喉を鳴らしながら気持ちよさそうに眠った。
わたしはとてもじゃないけどケイン様の顔を見れず、ノアをじっと見つめていた。
もう顔を上げられない。
今までケイン様のことを意識したことなんてなかった。
ただ、わたしに気を遣ってノアのことを手紙に書いてくれる優しい、だけど気の毒な方だと思っていた。
わたしのせいで、幼い頃に心に傷を負わせた。わたしのなんかのために将来有望な公爵になるお方の心を煩わせてしまった。
そうずっと思っていた。
だからおじ様達が王都に帰る時、『王都に一緒に帰らない?』と言われてもお断りして領地で過ごした。
ケイン様にわたしの顔を見せるのはあまり良くないことだと思っていた。
今回も社交界デビューがなければ王都へは来なかった。一生公爵家の領地で過ごすのもいいかななんて思ってた。
誰かと恋をして結婚してのんびりと田舎暮らしをしたい。
出来れば今回ノアを連れて帰りたいと思っていた。
わたし自身は爵位に興味はないので、亡くなった両親には悪いけど、このままおじ様に領地は引きついでもらうつもりだった。
お父様の弟さん、わたしを引き取ってくれた叔父様達家族は伯爵令嬢を虐待した罪で、今もまだ刑罰として北部の山間部で仕事をしているらしい。家族と共に行ったことだけが何よりだったのかもしれない。
マデリーン様にとっては、修道院へ行くのとどちらがよかったのかわたしにはわからないけど、重労働でも家族と暮らせる方がまだ頑張れるのかもしれない。
だから爵位は返上して領地の運営はこのままおじ様にお願いしようと考えていた。
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「あ、あの、ケイン様……」
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「実は、わたし、これはおじ様達にもまだお話をしていないのですが……」
「俺が初めて聞く話?なに?」
少し嬉しそうな顔をした。
「あ、あの……わたし、平民になろうかと思っているのです」
「……それは無理な話だね?シェリーナはいずれ公爵夫人になるんだから」
ケイン様はそう言って今まで見たことがない一番綺麗な顔で微笑んだ。
ーーこ、怖い。
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