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14話 シェリーナは。
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ジロジロ見られながらパーティー会場へと入った。
この王城に来てから落ち着かない。ずっと感じていたなんとも言えない気持ち。
なんだか既視感を持つ。
なぜ?胸が苦しい。
なぜ?ここにいるのが辛い。
なぜ?よくわからない。
「シェリーナ?どうした?体調が悪いのか?」
「あ……いえ……」
ケイン様がわたしの顔をじっと覗き込んだ。
「きゃっ」「うわっ」
周りがそんなケイン様を見て少し騒つく。
ケイン様のちょっとした行動でも反応がすごい。だからなのだろう。背中にひしひしと冷たい視線を感じる。
嫉妬?羨望?好奇心?
「ケ、ケイン様……あ、あの、近いです」
ケイン様はわたしの顔にあまりにも近づいてくる。
「ふっ、ごめんごめん。でもあまりにも顔色が悪いから。でも、赤くなったからもう大丈夫かな?」
慌てて思わず頬を両手で触った。
いやいや、そんな綺麗な顔がすぐ近くまで来たら誰だって恥ずかしくなるよ。
あまりの美形に喉がゴクっとなった。
領地ではこんな華麗な顔の人あまりいないもの。
二人でジュースを飲んで喉を潤していたら誰かが近づいてきた。
「ケイン様?」
目線をそちらに向けた。
「……何?」
ケイン様が少し不機嫌な声で返事をした。
そこにはわたしなんかより大人っぽく華やかな令嬢が立っていた。
わたしをチラリと見るとすぐにクスッと笑い視線をケイン様に戻された。
「この前我が家のお店に来てくださったそうですね」
「……ああ、テオの姉君…」
少し警戒を緩めたようにケイン様はその令嬢に「この間は助かりました。ありがとうございます」とお礼を言っていた。
「またいつでもお待ちしておりますわ。次はぜひご一緒したいわ」
その令嬢はケイン様の頬をそっと片手で触れて耳元で何か囁いた。
ケイン様はなぜか一瞬、顔を赤くした。
「ふふふ、では」
そう言ってまた微笑むとまたわたしをチラリと見てから、待っていたであろうパートナーの男性と去って行った。
わたしの周りにはこんな大人の世界はない。
『明日何して遊ぶ?』
『お金がないし街をブラブラしてまわる?』
『葡萄の収穫時期だから手伝いに来てよ』
なんていう会話が普通。
そこに色恋はまだない。もちろん15歳。それなりにお付き合いしている子達もいるけど、わたしはどちらかと言うとみんなでわいわいと騒いで楽しんでいる方が好き。
でもこの王都に来てからは、ケイン様が一つ年上なのもあってなんだか大人な感じ。
屋敷に遊びにくるケイン様のご友人はみんな大人でわたしに対してもとても親切で優しい。
そんなことを考えていたら「シェリーナ、踊ろう」とケイン様が声をかけた。
「あ、はい」
彼の腕につかまりダンスの輪の中へ。
こちらに来てからケイン様がダンスの練習に付き合ってくれたおかげでなんとか一曲足を踏まずに踊ることができた。
ほっと一息つくとおじ様がやってきて「一曲踊ろう」と誘ってくださった。
「シェリーナ、ここで待ってる」
「ええ、じゃあ、おじ様お願いいたします」
わたしはおじ様の手を取りまたダンスの輪の中へ。
ふとケイン様へ視線を向けると周りにはたくさんの令嬢。
おじ様もわたしの視線気づいたようで苦笑い。
うん?どうしたのかな?
おじ様の方へ顔を向けるとまた苦笑いをした。
「ケインは女の子がちょっと苦手なんだ。公爵子息であの顔だろう?
女の子が小さな頃から寄ってこられて、ケインの取り合いをするんだ。泣いたり喚いたりヒステリックな子もいるし、あざとい子もいる。へんにご機嫌伺いしてくる子や女の子同士互いの悪口を言って蹴落とそうとする子達。
だからケインは少し令嬢に対して偏見を持ってしまっていてね」
そう言われてケイン様を見ると確かに楽しそうな顔ではない。
ううん、あれは不機嫌な顔。そしてさっきまでの優しい笑顔は消えて、近づく令嬢達へ表情をなくして冷たいかおになっていた。
ああ、わたしが幼い頃、ケイン様はこんな顔をしていたのかしら?ふとそんな気持ちになった。
でも思い出すケイン様はどちらかと言うと返事をしないわたしに機嫌が悪くなって意地悪を言ってきてた気がする。
おじ様とのダンスが終わりどうしようかと思っていたら、ケイン様が令嬢達をその場においてきて、おじ様の手をすぐにわたしから離して、「シェリーナ行こう」とわたしの手を握った。
「どこに行くの?わたし流石に喉が渇いてるの」
「うん、だから飲み物をもらいに行こう。そして少し何か食べるものも取りに行こう。シェリーナもお腹が空いただろう?」
「うん」
二人でソファに座り話をしながら食べているとまた知らない人がこちらに向かってやってきた。
周りからまたザワザワとした声が聞こえてきた。
誰?
その顔は、この国の人なら誰でも知っている王太子のエドウィン殿下?
「やあ、ケインが女の子をエスコートして夜会に来るなんて初めてなんじゃないかな?」
慌ててわたしはソファから立ち上がって、深くお辞儀をして挨拶をした。
なのにケイン様はのんびりと立ち上がって「この子は特別なんです」と答えた。
不敬にならない?ドギマギしながら二人の会話を黙って聞いていた。
「ふうん、この子がシェリーナ・ボルト令嬢?とても可愛らしい子だね?」
ニコニコ顔の殿下にケイン様はまた不機嫌に「もう十分でしょう?」とあっちへいけとでも言いたそう。
「僕もシェリーナ嬢と一曲踊ってもいいかな?」
「………シェリーナは2曲続けて踊ったので今やっと休憩しているところです」
「うーん、じゃあ、あとで」
ケイン様は多分『シェリーナは踊らない』と断ってくれた。でも殿下はそれに気がついていながら『あとでならいいだろう?』と言った。
わたしは……
なんだかだんだん気分が悪くなってきた。
なぜだろう?
エドウィン殿下の声を聞いた頃からだんだん頭が痛い。ズキズキと痛みが激しい。
立っていられなくなってまたソファに座り込む。
「シェリーナ?どうした?」
遠くでケイン様の心配する声が聞こえてきた。
返事をしなければ……そう思うのに……
『ジュリエット…俺は君を愛することはない』
『クリシラ、君だけを愛している』
『ふん、何がアースだ?あんな鷹殺してしまえ』
『ベルナンド?お前は不貞を働いていたのか?』
『わたくしはあなただけを愛していました』
これは……何?
胸が苦しい。もう思い出すのも辛い。あんな苦しい日々はもう嫌……
ベルナンド……
…………ベルナンド?誰?あなたは?
ここは?
この王城に来てから落ち着かない。ずっと感じていたなんとも言えない気持ち。
なんだか既視感を持つ。
なぜ?胸が苦しい。
なぜ?ここにいるのが辛い。
なぜ?よくわからない。
「シェリーナ?どうした?体調が悪いのか?」
「あ……いえ……」
ケイン様がわたしの顔をじっと覗き込んだ。
「きゃっ」「うわっ」
周りがそんなケイン様を見て少し騒つく。
ケイン様のちょっとした行動でも反応がすごい。だからなのだろう。背中にひしひしと冷たい視線を感じる。
嫉妬?羨望?好奇心?
「ケ、ケイン様……あ、あの、近いです」
ケイン様はわたしの顔にあまりにも近づいてくる。
「ふっ、ごめんごめん。でもあまりにも顔色が悪いから。でも、赤くなったからもう大丈夫かな?」
慌てて思わず頬を両手で触った。
いやいや、そんな綺麗な顔がすぐ近くまで来たら誰だって恥ずかしくなるよ。
あまりの美形に喉がゴクっとなった。
領地ではこんな華麗な顔の人あまりいないもの。
二人でジュースを飲んで喉を潤していたら誰かが近づいてきた。
「ケイン様?」
目線をそちらに向けた。
「……何?」
ケイン様が少し不機嫌な声で返事をした。
そこにはわたしなんかより大人っぽく華やかな令嬢が立っていた。
わたしをチラリと見るとすぐにクスッと笑い視線をケイン様に戻された。
「この前我が家のお店に来てくださったそうですね」
「……ああ、テオの姉君…」
少し警戒を緩めたようにケイン様はその令嬢に「この間は助かりました。ありがとうございます」とお礼を言っていた。
「またいつでもお待ちしておりますわ。次はぜひご一緒したいわ」
その令嬢はケイン様の頬をそっと片手で触れて耳元で何か囁いた。
ケイン様はなぜか一瞬、顔を赤くした。
「ふふふ、では」
そう言ってまた微笑むとまたわたしをチラリと見てから、待っていたであろうパートナーの男性と去って行った。
わたしの周りにはこんな大人の世界はない。
『明日何して遊ぶ?』
『お金がないし街をブラブラしてまわる?』
『葡萄の収穫時期だから手伝いに来てよ』
なんていう会話が普通。
そこに色恋はまだない。もちろん15歳。それなりにお付き合いしている子達もいるけど、わたしはどちらかと言うとみんなでわいわいと騒いで楽しんでいる方が好き。
でもこの王都に来てからは、ケイン様が一つ年上なのもあってなんだか大人な感じ。
屋敷に遊びにくるケイン様のご友人はみんな大人でわたしに対してもとても親切で優しい。
そんなことを考えていたら「シェリーナ、踊ろう」とケイン様が声をかけた。
「あ、はい」
彼の腕につかまりダンスの輪の中へ。
こちらに来てからケイン様がダンスの練習に付き合ってくれたおかげでなんとか一曲足を踏まずに踊ることができた。
ほっと一息つくとおじ様がやってきて「一曲踊ろう」と誘ってくださった。
「シェリーナ、ここで待ってる」
「ええ、じゃあ、おじ様お願いいたします」
わたしはおじ様の手を取りまたダンスの輪の中へ。
ふとケイン様へ視線を向けると周りにはたくさんの令嬢。
おじ様もわたしの視線気づいたようで苦笑い。
うん?どうしたのかな?
おじ様の方へ顔を向けるとまた苦笑いをした。
「ケインは女の子がちょっと苦手なんだ。公爵子息であの顔だろう?
女の子が小さな頃から寄ってこられて、ケインの取り合いをするんだ。泣いたり喚いたりヒステリックな子もいるし、あざとい子もいる。へんにご機嫌伺いしてくる子や女の子同士互いの悪口を言って蹴落とそうとする子達。
だからケインは少し令嬢に対して偏見を持ってしまっていてね」
そう言われてケイン様を見ると確かに楽しそうな顔ではない。
ううん、あれは不機嫌な顔。そしてさっきまでの優しい笑顔は消えて、近づく令嬢達へ表情をなくして冷たいかおになっていた。
ああ、わたしが幼い頃、ケイン様はこんな顔をしていたのかしら?ふとそんな気持ちになった。
でも思い出すケイン様はどちらかと言うと返事をしないわたしに機嫌が悪くなって意地悪を言ってきてた気がする。
おじ様とのダンスが終わりどうしようかと思っていたら、ケイン様が令嬢達をその場においてきて、おじ様の手をすぐにわたしから離して、「シェリーナ行こう」とわたしの手を握った。
「どこに行くの?わたし流石に喉が渇いてるの」
「うん、だから飲み物をもらいに行こう。そして少し何か食べるものも取りに行こう。シェリーナもお腹が空いただろう?」
「うん」
二人でソファに座り話をしながら食べているとまた知らない人がこちらに向かってやってきた。
周りからまたザワザワとした声が聞こえてきた。
誰?
その顔は、この国の人なら誰でも知っている王太子のエドウィン殿下?
「やあ、ケインが女の子をエスコートして夜会に来るなんて初めてなんじゃないかな?」
慌ててわたしはソファから立ち上がって、深くお辞儀をして挨拶をした。
なのにケイン様はのんびりと立ち上がって「この子は特別なんです」と答えた。
不敬にならない?ドギマギしながら二人の会話を黙って聞いていた。
「ふうん、この子がシェリーナ・ボルト令嬢?とても可愛らしい子だね?」
ニコニコ顔の殿下にケイン様はまた不機嫌に「もう十分でしょう?」とあっちへいけとでも言いたそう。
「僕もシェリーナ嬢と一曲踊ってもいいかな?」
「………シェリーナは2曲続けて踊ったので今やっと休憩しているところです」
「うーん、じゃあ、あとで」
ケイン様は多分『シェリーナは踊らない』と断ってくれた。でも殿下はそれに気がついていながら『あとでならいいだろう?』と言った。
わたしは……
なんだかだんだん気分が悪くなってきた。
なぜだろう?
エドウィン殿下の声を聞いた頃からだんだん頭が痛い。ズキズキと痛みが激しい。
立っていられなくなってまたソファに座り込む。
「シェリーナ?どうした?」
遠くでケイン様の心配する声が聞こえてきた。
返事をしなければ……そう思うのに……
『ジュリエット…俺は君を愛することはない』
『クリシラ、君だけを愛している』
『ふん、何がアースだ?あんな鷹殺してしまえ』
『ベルナンド?お前は不貞を働いていたのか?』
『わたくしはあなただけを愛していました』
これは……何?
胸が苦しい。もう思い出すのも辛い。あんな苦しい日々はもう嫌……
ベルナンド……
…………ベルナンド?誰?あなたは?
ここは?
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