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12話 シェリーナは。
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屋敷につきケイン様に久しぶりに再会した。
ケイン様は相変わらず綺麗な顔立ちで堂々とした立ち振る舞いで、田舎暮らしをしていたわたしには眩しい存在。
「ケイン様、ご無沙汰しております」
あの頃はケイン様を見ることすら怖かった。彼が怖いと言うより自分の存在自体が疎ましく、自信がなかった。
『人殺し』
わたしはこの言葉にずっと囚われて息することもできなかった。いつもビクビクして人の顔色を窺って、恐怖し過ごしてきた。
そんなわたしを救い出してくれたケイン様の両親。おじ様とおば様はいつも見守ってくださった。
温かな愛情と優しさのおかげでわたしは自分を取り戻すことができた。
そしてあの田舎ののんびりとした環境がわたしを癒してくれた。
そしてケイン様からの手紙も毎回楽しみにしていた。
この8年間、ノアに会いに来ることはなかったけどノアが幸せに暮らしていたことを知ることはできた。
わたしにとって王都を離れ領地で暮らしてきたことが傷ついた心を治療するのにとても効果があったみたい。
だからこそおじ様たちは王都へは連れて行くことを渋った。やっと落ち着いてきたわたしがまた悪くなってしまうことを懸念していた。
大好きなノアと会えないのは不安だったけど、ノアを大切にしてくれたケイン様とジョーのおかげで離れていても安心することができた。
おば様も王都から帰ってくるとノアのことを話してくれた。
ノアは王都の屋敷でみんなに可愛がられてのびのびと過ごしていた。
昔の古傷も常にジョーが様子をみてくれて日常生活には支障なく過ごせていた。
ケイン様の後ろからヒョコっと出てきたノアを見つけると「……ノア?」と声をかけた。
8年間も離れていてわたしのことなんてもう覚えていないだろう。
顔も背も、変わってしまってノアにはわたしはわからないと思う。
なのに……
「ミャー」
わたしのところへサッと来て、足元にスリスリと顔を擦り付けてきた。
「ノア?覚えてくれているの?」
わたしは屈んで、ノアにそっと手を差し出すとノアがわたしの手に今度は体を擦り付けてきた。
「ノア……ずっと離れていてごめんね?」
わたしはノアを抱きしめた。わたしの腕の中でじっとしているノア。
わたしは抱っこして立ち上がった。
「まぁ!抱っこ嫌いのノアが!」
おば様がわたしとノアの再会を温かく見守ってくれていた。そしてノアは抱っこを嫌がるのにわたしには素直に抱かれたことに驚いていた。
「中に入ってゆっくりしよう」
おじ様が中に入ることを促した。
「はい」
ケイン様は「おかえり」とわたしに言うと「君の部屋を案内してもいい?」と手を差し出された。
田舎ではエスコートをされる機会なんてない。ちょっと気恥ずかしかったけどケイン様の手に触れた。
「シェリーナの部屋は僕たち家族と同じ一角にあるんだ」
わたしが幼い頃はみんなとは少し離れた場所だった。ケイン様がわたしを嫌い顔をあまり合わせたくないと言ったので、おじ様達が領地へ行くと部屋を離れたところに移されていた。
部屋に入ると真新しい花柄の白の壁紙、フリルがたくさんのカーテン、女の子が好む可愛らしい家具で統一されていた。
「シェリーナ……君が気に入ってくれるといいんだけど、どうかな?」
「とても素敵な部屋です。ありがとうございます」
「俺は……改めて言わせてほしい」
ケイン様はわたしから目を逸らさずに
「君に辛い思いをさせて本当にすまなかった。もう二度とあんな思いはさせない。これからは俺が守る」と言ってくれた。
「ケイン様……もう忘れましょう。わたし、今が幸せなんです」
そう、もう無かったことにしたい。だって、ケイン様はずっと苦しんできたんだもの。
手紙の端々にその気持ちが伝わった。
ノアのことを書いてくれていてもいつもわたしのことを気遣っていた。
体の調子は大丈夫なのか。
友達はできたのか。
何か悩みはないのか。
だからいつもケイン様への返事はわたしが毎日どんなふうに過ごしているのか書いていた。
友人達と野山を駆け回っていること。
牛の乳搾り体験をしたこと。
夏には川遊び。
秋にはみんなで山菜採りに行くこと。
冬の雪が積もって外に出られない間、屋敷でどんなふうに過ごすのか。
春に咲く花々。
美しい空の色、自然の美しさ。
そして領地の人々の温かい人柄。
学校での出来事。どんな友人がいるのか。今みんなで何をしているのか。
わたしが幸せに過ごしていることをいつもケイン様に報告した。
会うことはなかったけど、互いに少しずつ信頼できる関係を築いてきた。
だからもう謝罪は要らない。
「ケイン様、今度街を案内してください」
「うん、君が行ってみたいところをいくらでもリクエストしてほしい」
「はい、でも、たくさんありすぎて回れないかもしれませんよ?」
「その時は……少し日にちを延長してここに居ればいい」
なんてことないとケイン様が笑った。
「そうですね、学校の授業の単位はあらかた取って終わらせているので、それもいいかもしれませんね」
ケイン様は相変わらず綺麗な顔立ちで堂々とした立ち振る舞いで、田舎暮らしをしていたわたしには眩しい存在。
「ケイン様、ご無沙汰しております」
あの頃はケイン様を見ることすら怖かった。彼が怖いと言うより自分の存在自体が疎ましく、自信がなかった。
『人殺し』
わたしはこの言葉にずっと囚われて息することもできなかった。いつもビクビクして人の顔色を窺って、恐怖し過ごしてきた。
そんなわたしを救い出してくれたケイン様の両親。おじ様とおば様はいつも見守ってくださった。
温かな愛情と優しさのおかげでわたしは自分を取り戻すことができた。
そしてあの田舎ののんびりとした環境がわたしを癒してくれた。
そしてケイン様からの手紙も毎回楽しみにしていた。
この8年間、ノアに会いに来ることはなかったけどノアが幸せに暮らしていたことを知ることはできた。
わたしにとって王都を離れ領地で暮らしてきたことが傷ついた心を治療するのにとても効果があったみたい。
だからこそおじ様たちは王都へは連れて行くことを渋った。やっと落ち着いてきたわたしがまた悪くなってしまうことを懸念していた。
大好きなノアと会えないのは不安だったけど、ノアを大切にしてくれたケイン様とジョーのおかげで離れていても安心することができた。
おば様も王都から帰ってくるとノアのことを話してくれた。
ノアは王都の屋敷でみんなに可愛がられてのびのびと過ごしていた。
昔の古傷も常にジョーが様子をみてくれて日常生活には支障なく過ごせていた。
ケイン様の後ろからヒョコっと出てきたノアを見つけると「……ノア?」と声をかけた。
8年間も離れていてわたしのことなんてもう覚えていないだろう。
顔も背も、変わってしまってノアにはわたしはわからないと思う。
なのに……
「ミャー」
わたしのところへサッと来て、足元にスリスリと顔を擦り付けてきた。
「ノア?覚えてくれているの?」
わたしは屈んで、ノアにそっと手を差し出すとノアがわたしの手に今度は体を擦り付けてきた。
「ノア……ずっと離れていてごめんね?」
わたしはノアを抱きしめた。わたしの腕の中でじっとしているノア。
わたしは抱っこして立ち上がった。
「まぁ!抱っこ嫌いのノアが!」
おば様がわたしとノアの再会を温かく見守ってくれていた。そしてノアは抱っこを嫌がるのにわたしには素直に抱かれたことに驚いていた。
「中に入ってゆっくりしよう」
おじ様が中に入ることを促した。
「はい」
ケイン様は「おかえり」とわたしに言うと「君の部屋を案内してもいい?」と手を差し出された。
田舎ではエスコートをされる機会なんてない。ちょっと気恥ずかしかったけどケイン様の手に触れた。
「シェリーナの部屋は僕たち家族と同じ一角にあるんだ」
わたしが幼い頃はみんなとは少し離れた場所だった。ケイン様がわたしを嫌い顔をあまり合わせたくないと言ったので、おじ様達が領地へ行くと部屋を離れたところに移されていた。
部屋に入ると真新しい花柄の白の壁紙、フリルがたくさんのカーテン、女の子が好む可愛らしい家具で統一されていた。
「シェリーナ……君が気に入ってくれるといいんだけど、どうかな?」
「とても素敵な部屋です。ありがとうございます」
「俺は……改めて言わせてほしい」
ケイン様はわたしから目を逸らさずに
「君に辛い思いをさせて本当にすまなかった。もう二度とあんな思いはさせない。これからは俺が守る」と言ってくれた。
「ケイン様……もう忘れましょう。わたし、今が幸せなんです」
そう、もう無かったことにしたい。だって、ケイン様はずっと苦しんできたんだもの。
手紙の端々にその気持ちが伝わった。
ノアのことを書いてくれていてもいつもわたしのことを気遣っていた。
体の調子は大丈夫なのか。
友達はできたのか。
何か悩みはないのか。
だからいつもケイン様への返事はわたしが毎日どんなふうに過ごしているのか書いていた。
友人達と野山を駆け回っていること。
牛の乳搾り体験をしたこと。
夏には川遊び。
秋にはみんなで山菜採りに行くこと。
冬の雪が積もって外に出られない間、屋敷でどんなふうに過ごすのか。
春に咲く花々。
美しい空の色、自然の美しさ。
そして領地の人々の温かい人柄。
学校での出来事。どんな友人がいるのか。今みんなで何をしているのか。
わたしが幸せに過ごしていることをいつもケイン様に報告した。
会うことはなかったけど、互いに少しずつ信頼できる関係を築いてきた。
だからもう謝罪は要らない。
「ケイン様、今度街を案内してください」
「うん、君が行ってみたいところをいくらでもリクエストしてほしい」
「はい、でも、たくさんありすぎて回れないかもしれませんよ?」
「その時は……少し日にちを延長してここに居ればいい」
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