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7話 シェリーナは。
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二人から色々言われて、それでも我慢して聞いた。
だけど……
「あの猫、処分してもらわなきゃ」
「そうね、庭に猫が紛れ込んでいるのだもの。侍従の誰かに言えばすぐ殺処分してくれるわ」
二人はニヤニヤ笑っていた。
「ダメ!」
「はあ~?奥様が野良猫なんて許すわけないでしょう?ケイン様だって猫なんて庭でウロウロしていると知ったらすぐに処分するように言うに決まっています!」
「ノアは……ダメ!わたしの大切な友達なんです!」
「友達?」
クスクス笑い出した二人。だけどノアを守ってあげられるのはわたしだけ。
「………ふ、二人はた、…ただの使用人……です」
声が震えて思わずゴクッと唾を飲んだ。
「お、おば様から……困ったことがあれば執事のアルトさんに……そ、相談しなさいとい、言われてます……だ、だ、だから、あなた達のことそ、相談して」
わたしは二人をキッと睨んだ(つもり)
「ノアを助けます!」
「アルト様に?」
「え?奥様が?」
「ねぇ、それって……」
「告げ口?」
「ふざけないで!あんたみたいななんの得にもならない子にメイドとしてつかされて、告げ口?」
「絶対アルト様に話したら許さないから!」
「そうよ!猫を殺してやるわ!」
「今までは見えないところしか鞭で打たなかったけど今度は病気だと言って寝込むくらい体にしっかり覚えさせないといけないわね」
そう言うと部屋の中に隠してあった鞭を持ってきた。
でも、痛くても、わたしはノアを守る。
「た、叩かれても……へ、平気だもの。絶対アルトさんに言うわ!ノアはわたしの大切な友達なんだもの」
初めて人に逆らった。怖い。体がガタガタ震えてる。
「やだ、この子、真っ青な顔して震えてるわ」
「何回か鞭を打てば黙って言うこと聞くわよ」
「そうね」
腕を振り上げてわたしに向かって鞭で打とうとした。
「やめろぉ!」
その声はクローゼットから聞こえた。
「えっ?」「うそっ」
二人はクローゼットの方へ体を向けた。
「ケイン様?」
「あ、あの、アルト様……」
「シェリーナ、ごめん。俺のせいでこんな辛いめに遭ってたなんて………お前達絶対許さない!」
「二人とも、その鞭はなんですか?」
アルトさんは二人を睨み上げるとベルを鳴らした。
すぐに衛兵が数人駆けつけた。
「どうなさいました?」
「この二人を地下牢に入れて。後で取り調べをして警ら隊に引き渡す」
「や、やめて!」「悪いのは私達じゃありません!」
二人はわたしへ視線を向けた。
「だって、人殺しだと言われている子の世話なんてわたしにさせるから!」
「ケイン様だって、こんな子要らない!って言ってたじゃないですか!」
「そうです!目障りだって!俺の前に姿を見せるな!って仰ってましたよね?」
二人はわたしの目の前でケイン様とアルトさんの足元に跪いて縋っていた。
わたしはそんな二人が怖かった。いつわたしにまたその目が向かってくるのか……
「黙れ!」
ケイン様の地を這うような低く恐ろしい声が聞こえた。
わたしの一つ年上のケイン様がとても怖い。
ちらっと見ると二人を氷のように冷たい目で見ていた。
わたしは思わず視線を逸らした。
すると二人もわたしに気がついてまた喚き出した。
「あんたのせいで!」
「この屋敷に必要としない子なのよ!」
「黙れと言ったのがわからないのか?シェリーナは母上の大切な友達の娘だ。お前達が勝手に決めつけるな!」
二人は「ひっ」とたじろぐ。
「で、でも、ケイン様は言いましたよね?邪魔だと、鬱陶しいと」
わたしは……ああ、確かに……と。
「そ、それは……」
アルトさんが呆れたように二人に言う。
「たとえケイン様がそう言ったとしてもあなた達がシェリーナ様を虐げる理由にはなりません。私の管理不足でシェリーナ様を傷つけ辛い思いをさせてしまいました。
これからは絶対こんなことがないように徹底管理をいたします、そしてマーラにも厳しく指導いたします。
許してくださいと言える立場ではございません。私も後ほどきちんと自分を律するつもりでございます」
難しい言葉はよくわからないけど、もうひどい目に遭わない?
「アルトさんはいつもわたしに優しかったです。ケイン様は……わたしが返事をしないから……ごめんなさい……」
言い訳でしかないけど、わたしは最初あまり言葉を発することができなかった。
前の家で話すことを禁じられていたし、話す相手もいなかった。
それに自分の気持ちを言葉にするのってよくわからなかった。
「でも、ノアを助けてくれたのはケイン様なの。ケイン様……ノアを殺さないで!追い出さないでください」
「ノアは、俺にとっても大切だから大丈夫だ。お前が会いにいけない時はいつもジョー達が面倒を見てくれているんだ」
「……えっ?」
知らなかった。だからノアはわたしがあまり食べ物を持ってこなくても痩せてなかったのね。
ホッとして涙がポロっと落ちた。
「泣くな!ノアは大丈夫だから!こいつらに好き勝手にさせない!お前だって、今度から俺と一緒に食事をするからもうお腹が空いたなんて言わせない」
「………で、でも……わたしなんか……」
「ごめん、お前が返事をしてくれないから意地になって意地悪した。もうしない。お前はここで幸せになる権利があるんだ。俺がこれから絶対守るから、ごめん」
ケイン様はそう言うとわたしと同じ。
泣き始めた。
「ごめんな、俺のせいで……痛かったよな、辛かったよな、腹減って……ごめんな」
だけど……
「あの猫、処分してもらわなきゃ」
「そうね、庭に猫が紛れ込んでいるのだもの。侍従の誰かに言えばすぐ殺処分してくれるわ」
二人はニヤニヤ笑っていた。
「ダメ!」
「はあ~?奥様が野良猫なんて許すわけないでしょう?ケイン様だって猫なんて庭でウロウロしていると知ったらすぐに処分するように言うに決まっています!」
「ノアは……ダメ!わたしの大切な友達なんです!」
「友達?」
クスクス笑い出した二人。だけどノアを守ってあげられるのはわたしだけ。
「………ふ、二人はた、…ただの使用人……です」
声が震えて思わずゴクッと唾を飲んだ。
「お、おば様から……困ったことがあれば執事のアルトさんに……そ、相談しなさいとい、言われてます……だ、だ、だから、あなた達のことそ、相談して」
わたしは二人をキッと睨んだ(つもり)
「ノアを助けます!」
「アルト様に?」
「え?奥様が?」
「ねぇ、それって……」
「告げ口?」
「ふざけないで!あんたみたいななんの得にもならない子にメイドとしてつかされて、告げ口?」
「絶対アルト様に話したら許さないから!」
「そうよ!猫を殺してやるわ!」
「今までは見えないところしか鞭で打たなかったけど今度は病気だと言って寝込むくらい体にしっかり覚えさせないといけないわね」
そう言うと部屋の中に隠してあった鞭を持ってきた。
でも、痛くても、わたしはノアを守る。
「た、叩かれても……へ、平気だもの。絶対アルトさんに言うわ!ノアはわたしの大切な友達なんだもの」
初めて人に逆らった。怖い。体がガタガタ震えてる。
「やだ、この子、真っ青な顔して震えてるわ」
「何回か鞭を打てば黙って言うこと聞くわよ」
「そうね」
腕を振り上げてわたしに向かって鞭で打とうとした。
「やめろぉ!」
その声はクローゼットから聞こえた。
「えっ?」「うそっ」
二人はクローゼットの方へ体を向けた。
「ケイン様?」
「あ、あの、アルト様……」
「シェリーナ、ごめん。俺のせいでこんな辛いめに遭ってたなんて………お前達絶対許さない!」
「二人とも、その鞭はなんですか?」
アルトさんは二人を睨み上げるとベルを鳴らした。
すぐに衛兵が数人駆けつけた。
「どうなさいました?」
「この二人を地下牢に入れて。後で取り調べをして警ら隊に引き渡す」
「や、やめて!」「悪いのは私達じゃありません!」
二人はわたしへ視線を向けた。
「だって、人殺しだと言われている子の世話なんてわたしにさせるから!」
「ケイン様だって、こんな子要らない!って言ってたじゃないですか!」
「そうです!目障りだって!俺の前に姿を見せるな!って仰ってましたよね?」
二人はわたしの目の前でケイン様とアルトさんの足元に跪いて縋っていた。
わたしはそんな二人が怖かった。いつわたしにまたその目が向かってくるのか……
「黙れ!」
ケイン様の地を這うような低く恐ろしい声が聞こえた。
わたしの一つ年上のケイン様がとても怖い。
ちらっと見ると二人を氷のように冷たい目で見ていた。
わたしは思わず視線を逸らした。
すると二人もわたしに気がついてまた喚き出した。
「あんたのせいで!」
「この屋敷に必要としない子なのよ!」
「黙れと言ったのがわからないのか?シェリーナは母上の大切な友達の娘だ。お前達が勝手に決めつけるな!」
二人は「ひっ」とたじろぐ。
「で、でも、ケイン様は言いましたよね?邪魔だと、鬱陶しいと」
わたしは……ああ、確かに……と。
「そ、それは……」
アルトさんが呆れたように二人に言う。
「たとえケイン様がそう言ったとしてもあなた達がシェリーナ様を虐げる理由にはなりません。私の管理不足でシェリーナ様を傷つけ辛い思いをさせてしまいました。
これからは絶対こんなことがないように徹底管理をいたします、そしてマーラにも厳しく指導いたします。
許してくださいと言える立場ではございません。私も後ほどきちんと自分を律するつもりでございます」
難しい言葉はよくわからないけど、もうひどい目に遭わない?
「アルトさんはいつもわたしに優しかったです。ケイン様は……わたしが返事をしないから……ごめんなさい……」
言い訳でしかないけど、わたしは最初あまり言葉を発することができなかった。
前の家で話すことを禁じられていたし、話す相手もいなかった。
それに自分の気持ちを言葉にするのってよくわからなかった。
「でも、ノアを助けてくれたのはケイン様なの。ケイン様……ノアを殺さないで!追い出さないでください」
「ノアは、俺にとっても大切だから大丈夫だ。お前が会いにいけない時はいつもジョー達が面倒を見てくれているんだ」
「……えっ?」
知らなかった。だからノアはわたしがあまり食べ物を持ってこなくても痩せてなかったのね。
ホッとして涙がポロっと落ちた。
「泣くな!ノアは大丈夫だから!こいつらに好き勝手にさせない!お前だって、今度から俺と一緒に食事をするからもうお腹が空いたなんて言わせない」
「………で、でも……わたしなんか……」
「ごめん、お前が返事をしてくれないから意地になって意地悪した。もうしない。お前はここで幸せになる権利があるんだ。俺がこれから絶対守るから、ごめん」
ケイン様はそう言うとわたしと同じ。
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