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24話 セルジオ編
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ジェシカが変わった。
記憶をなくしたジェシカは自分の意見をはっきりと伝えるようになった。以前は表情は固かったし周りの顔色を伺って気を遣ってばかりの子だった。
だけど今のジェシカは嫌なことは嫌だと拒絶し、よく笑うしよく話す。感情豊かな子になった。
父親ともあんなに仲が悪く拗れていたはずなのに今は楽しそうにしている。
二人の関係性を知っている屋敷の者達全てが驚いている。いや多分、従叔父上本人が一番驚いているみたいだ。
ジェシカの忌まわしい記憶などもう二度と戻ってこなくていい。
二度も記憶を失い、空っぽになったジェシカ。最初は全ての人を信用できずに疑心暗鬼の中、いつも噛み付くようにしていた。やっと俺たちに少しだけ心を許すようになった。
これからはジェシカと信頼関係を作っていくしかない。
俺はまずジェシカの父親である従叔父上に話を通した。
「俺はジェシカともう一度新たな関係を作っていきたい。俺のせいで彼女は辛い思いをしました。だからこそ守っていきたいんです」
「…ジェシカの件はセルジオが原因ではない。確かに君への執着からアンネ・カスタマルがジェシカを襲ったが元々わたしがジェシカの気持ちも考えず殿下と婚約させたことが一番の原因だった。
ジェシカの気持ちを聞いて君との関係をきちんと確認していれば君たちがこんなに拗れることはなかった。
そしたらアンネ・カスタマルも君への執着がこんなに酷くはならなかっただろう。ジェシカに対してわたしが上手く向き合わなかったことが全ての元凶なんだ。
もう記憶なんて戻らなくていい。ジェシカが今幸せならそれでいい。
ジェシカがもし君を好きになるならいつでも婚約をさせよう。ただ何があってもあの子を守って欲しい」
俺はもうジェシカを諦めない。もしももう一度恋をするなら俺を好きになって欲しい。
ギルス殿下にも会いに行った。
「ジェシカが全てを忘れてしまったのなら良かったよ。もう今さら嫌な記憶なんて戻ってほしくないからね」
殿下は少し寂しそうにしていた。俺にもわかる。ジェシカが忘れたのは俺たちにとっても大事な記憶だ。
一緒に遊んだ幼い頃のこと。笑い合った日々だってあった。なのに全て忘れられてしまった。
「セルジオもこんな気持ちだったんだね」
殿下は一回目のジェシカの記憶をなくした時のことを俺に言った。
「俺はあの時、ジェシカが幸せになるなら親戚の兄として過ごそうと思っていました」
「僕はジェシカを守るつもりでアンネと付き合った。でも間違えていたんだね。アンネにきちんと話すべきだった、ジェシカはセルジオのことを忘れていてアンネにとってジェシカは何の意味もない敵ですらなかったと」
「俺もアンネ嬢には何回も断っていました。だから俺に対して何かしてくるかもと思っていましたがまさかジェシカにあんな酷いことをするとは思いませんでした」
「アンネがやったことはいくら学生とはいえ見逃すことはできない。人としてやってはいけないことだ。彼女の両親は貴族席を剥奪。彼女は国外追放になる。二度とこの国には戻ってこれない、もし戻ってきたらその時は処刑だと通告されたよ」
「……そうですか……」
その刑が重いのかは俺にはわからなかった。でも甘やかして育てられたアンネ嬢。親にも責任はある。
もうこれでジェシカへの不安要素がなくなった。俺は少しだけ安心した。
「ジェシカを幸せにしてやってくれ。あの子はあんまり顔に出さないけど本当は泣き虫なんだ」
殿下は思い出すように言った。
「はい、泣かさないように大事にします」
俺は頭を下げて殿下と別れた。
ーーーー
領地に帰るとジェシカは犬のジルと戯れていた。
顔をペロペロと舐められて「もうやめて!」と笑顔で尻もちをついていた。
服が汚れるのも気にせずに犬と遊んでいるジェシカに何故か涙が出そうになった。
作り笑いではない心からの笑顔がそこにあった。
「ジェシカ、ただいま。お土産を買ってきたよ」
「セルジオ様!お帰りなさい!お土産って何?」
「ジェシカが友達に聞いて王都で流行っているお菓子を食べたいと言ってただろう?」
「あ!アンジェリカのクッキー?」
「うん、クッキーなら日持ちするからね。たくさん買ってきたからみんなで食べよう」
「うん、嬉しい」
◆ ◆ ◆
【え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます】
明日から新しいお話が始まります。
よければ読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします。
記憶をなくしたジェシカは自分の意見をはっきりと伝えるようになった。以前は表情は固かったし周りの顔色を伺って気を遣ってばかりの子だった。
だけど今のジェシカは嫌なことは嫌だと拒絶し、よく笑うしよく話す。感情豊かな子になった。
父親ともあんなに仲が悪く拗れていたはずなのに今は楽しそうにしている。
二人の関係性を知っている屋敷の者達全てが驚いている。いや多分、従叔父上本人が一番驚いているみたいだ。
ジェシカの忌まわしい記憶などもう二度と戻ってこなくていい。
二度も記憶を失い、空っぽになったジェシカ。最初は全ての人を信用できずに疑心暗鬼の中、いつも噛み付くようにしていた。やっと俺たちに少しだけ心を許すようになった。
これからはジェシカと信頼関係を作っていくしかない。
俺はまずジェシカの父親である従叔父上に話を通した。
「俺はジェシカともう一度新たな関係を作っていきたい。俺のせいで彼女は辛い思いをしました。だからこそ守っていきたいんです」
「…ジェシカの件はセルジオが原因ではない。確かに君への執着からアンネ・カスタマルがジェシカを襲ったが元々わたしがジェシカの気持ちも考えず殿下と婚約させたことが一番の原因だった。
ジェシカの気持ちを聞いて君との関係をきちんと確認していれば君たちがこんなに拗れることはなかった。
そしたらアンネ・カスタマルも君への執着がこんなに酷くはならなかっただろう。ジェシカに対してわたしが上手く向き合わなかったことが全ての元凶なんだ。
もう記憶なんて戻らなくていい。ジェシカが今幸せならそれでいい。
ジェシカがもし君を好きになるならいつでも婚約をさせよう。ただ何があってもあの子を守って欲しい」
俺はもうジェシカを諦めない。もしももう一度恋をするなら俺を好きになって欲しい。
ギルス殿下にも会いに行った。
「ジェシカが全てを忘れてしまったのなら良かったよ。もう今さら嫌な記憶なんて戻ってほしくないからね」
殿下は少し寂しそうにしていた。俺にもわかる。ジェシカが忘れたのは俺たちにとっても大事な記憶だ。
一緒に遊んだ幼い頃のこと。笑い合った日々だってあった。なのに全て忘れられてしまった。
「セルジオもこんな気持ちだったんだね」
殿下は一回目のジェシカの記憶をなくした時のことを俺に言った。
「俺はあの時、ジェシカが幸せになるなら親戚の兄として過ごそうと思っていました」
「僕はジェシカを守るつもりでアンネと付き合った。でも間違えていたんだね。アンネにきちんと話すべきだった、ジェシカはセルジオのことを忘れていてアンネにとってジェシカは何の意味もない敵ですらなかったと」
「俺もアンネ嬢には何回も断っていました。だから俺に対して何かしてくるかもと思っていましたがまさかジェシカにあんな酷いことをするとは思いませんでした」
「アンネがやったことはいくら学生とはいえ見逃すことはできない。人としてやってはいけないことだ。彼女の両親は貴族席を剥奪。彼女は国外追放になる。二度とこの国には戻ってこれない、もし戻ってきたらその時は処刑だと通告されたよ」
「……そうですか……」
その刑が重いのかは俺にはわからなかった。でも甘やかして育てられたアンネ嬢。親にも責任はある。
もうこれでジェシカへの不安要素がなくなった。俺は少しだけ安心した。
「ジェシカを幸せにしてやってくれ。あの子はあんまり顔に出さないけど本当は泣き虫なんだ」
殿下は思い出すように言った。
「はい、泣かさないように大事にします」
俺は頭を下げて殿下と別れた。
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領地に帰るとジェシカは犬のジルと戯れていた。
顔をペロペロと舐められて「もうやめて!」と笑顔で尻もちをついていた。
服が汚れるのも気にせずに犬と遊んでいるジェシカに何故か涙が出そうになった。
作り笑いではない心からの笑顔がそこにあった。
「ジェシカ、ただいま。お土産を買ってきたよ」
「セルジオ様!お帰りなさい!お土産って何?」
「ジェシカが友達に聞いて王都で流行っているお菓子を食べたいと言ってただろう?」
「あ!アンジェリカのクッキー?」
「うん、クッキーなら日持ちするからね。たくさん買ってきたからみんなで食べよう」
「うん、嬉しい」
◆ ◆ ◆
【え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます】
明日から新しいお話が始まります。
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