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18話

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絶望の中、男達はわたしの体を触り始めた。
涙が溢れて止まらない。

「俺が先にやる」
「うるさい、攫ったのは俺だ」
「この子処女だろう?」
「ジャンケンで決めようぜ」
「時間はたっぷりあるんだ、明日の朝まで俺たち四人で楽しもう」

耳に入ってくる会話をわたしは理解したくなかった。
どうしてこんなことになったんだろう?

意識朦朧とした中で男達はわたしを犯す順番を楽しそうに決めている。
両手を縛られたままのわたしは上半身裸でもう逃げることもできない。

「…………………あ、あ、あーーーーーー」

頭が痛い、突然胸が苦しくなって、息を吸っても吸っても胸が苦しい……だんだん手足がしびれてきた。
体がけいれんを起こし始め体がガクガクと震え出した。
そして意識を失い倒れた。


ーーーーー

男達はジェシカが意識を失うと逃げ出そうとした。

「おい、死んだのか?」
「お、俺は人殺しまではしたくねぇよ」
「やべぇ、逃げよう」

「何しているの?」
アンナは男達が慌てて逃げ出したので急いでジェシカを見に行った。

「死んだの?ふふふ、なんてみっともないの。男達に裸にされて!セルジオ様にこの姿を見せてあげないと!もうすぐあなたに会いにきてくれるわ」

ーーーー

セルジオはアンナ嬢に今日どうしても見せたいものがあるから来て欲しいと時間を指定された。

それはジェシカにとっても大切なことだからと。

殿下の恋人だったアンナ嬢、彼女は殿下と付き合う前も付き合ってからもずっと何度も俺に会いにきて婚約して欲しいと言ってきた。

そんなアンナ嬢が一体どんな話なのか。胸騒ぎがする。
俺は約束よりも早めに指定されたホテルの部屋へと向かった。一人でもし対処できなければ困るので、屋敷の護衛騎士にも数人頼んでついてきてもらった。
約束よりも1時間早く着いて、中に入ろうとしたら破落戸達が慌てて部屋から出てきた。

嫌な予感がする。

俺たちは部屋の扉をノックした。だが誰も出てこない。
扉を足で何度も蹴り上げて扉をぶち壊した。

中に急いで入ると静かすぎる。

部屋は荒れているのに誰もいない。

「誰かいないのか?」

すると奥から甲高い女の気持ちが悪い笑い声が聞こえる。

俺は急いで奥の部屋へと行った。

そこには大笑いをするアンナ嬢と上半身裸にされて両手を縛られて意識がなく倒れているジェシカがいた。

「……ジェシカ?」
俺は上着を脱ぎ急いでジェシカにかけると抱き寄せた。
息はしていた。
ただ痙攣を起こしてピクピクとしていた。

「セルジオ様?あなたを苦しめたこの女を殺してやったわ、男達に汚されて!いい気味よ」

俺を見るアンナ嬢の目は異常にギラギラとしていた。

「退け!」

「待って!そんな女捨てて仕舞えばいいのよ」

「うるさい!退いてくれ」

俺の腕を掴んで離さないアンナ嬢を振り払い、俺はジェシカを抱きしめて急いで馬車に乗せて病院へと向かった。

あの女と破落戸の男達は俺と一緒に来た護衛騎士によって取り押さえられた。

「ジェシカ、ごめん。もっと早くに助けてあげられなくて」

ぐったりとしたジェシカを病院に連れていくと恐怖による精神的なもので過呼吸になったらしい。そして痙攣で意識を失ったのだろうと言われた。
ただ何度も蹴られたらしくお腹や腰の周りは赤黒いあざが沢山できていて鬱血して血が滲んでいるところもあった。

運が良かったのは強姦される前に痙攣して意識を失ったことだった。
俺が来た時、男達は驚いて慌てて逃げ出したところだった。

アンナ嬢はジェシカが犯されたところを俺に見せようとしていたらしい。

ふざけるな!俺のため?

俺がそんなこと望むわけがない。

もし遅れていたらジェシカはどんな目に遭っていたのだろう。

ジェシカは数日意識を取り戻さなかった。

いや、恐怖で目覚めることを拒否しているのかもしれない。

俺は彼女のそばにいたかった。
なのにジェシカの両親に言われた。

「この子が目覚めた時貴方がいたらどんな態度を取るか想像ができないの。助けてくれたことはもちろん感謝しているわ、心配してくれていることもわかっているの。でもジェシカは女性の尊厳を踏み躙られようとしたの。今はこの子のそばにいるのはやめて欲しいの」

ジェシカの両親からの拒絶。

ーーーーー

そしてギルス殿下がお忍びで領地へとやってきた。

仕事を休んで屋敷にいる俺に会いに来た。

「セルジオ!俺がアンナと付き合ったのはジェシカのためだとわかっていただろう?なぜジェシカから目を離した?」

ギルス殿下は俺の襟首を掴んで締め上げた。

「……………」

言い訳なんて出来なかった。

「ジェシカはまだ目を覚まさないのか?」

「はい」

「なんで?ジェシカが辛い目に遭うんだ?お前がアンナと結婚すれば良かったんだ!そしたらジェシカは辛い思いをしなくて済んだんだ!」


ーーそうかもしれない。

アンナ嬢とは王都へ行った時に何度か子供達が集まるお茶会で知り合った。

「貴方は誰?」

「セルジオ・フォーダンと言います」

俺と同じ家格の伯爵の娘。
何故か気に入られてよく話しかけられた。俺より2歳年下のティムと同じ歳の令嬢。

「ねえ、セルジオ様、貴方をわたしの婚約者にしてあげてもいいわよ」

「いえ、結構です」

「な、何よ!せっかくの好意なのに失礼だわ」
顔を真っ赤にして怒るアンナ嬢に心の中でため息をついた。
俺は見た目がいいらしい。
勝手に好きになって勝手に話しかけてきて、適当に相手をしただけなのに、なんで婚約しないといけないんだ?
まだ10歳の俺には女の子の気持ちなんてわからなかった。
こんな我儘で傲慢な女の子より、親戚のジェシカと話した方がよっぽど楽しかったし可愛いと思った。
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