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癒しの魔法③
しおりを挟む 連れてこられた騎士は全身に火傷を負っていた。
「酷い……」
流石に一気に治療するにも辛いだろう。
「水、水は?」
とりあえず癒しの魔法を全身に流しながら騎士に頼んだ。
「脱水を起こしていると思います。飲み水の用意もしておいてください」
「わかりました、必ず助けてください、彼は火事の中子供を助けに入りました。お願いです」
「はい、ただしばらく他の人は治療できません」
「医療班は落ち着いてきているので向こうで対処できると思います」
「じゃあ、この人に集中します」
「お願いします」
火傷でよく顔もわからない、よく生きているなと思う。こんな状態で火の中を抜け出せたのは子供を助けようと必死だったからだろう。
「頑張って!わたしが治します。生きてください」
わたしは魔力だけならかなりの量がある。だから多少無理をしても治癒の力を使える。
だけど結構さっきまで頑張っていたので、実はかなり気力も体力も魔力も消耗していた。
でも必死で人を助けたこの人をわたしも必死で助けよう。
でも実は頭がボッーとして体が勝手に動いている状態。
ーーやばい、やばい、意識が飛びそう。
目を瞑りひたすら魔力を流すことに集中した。
そしてわたしの中でふわっと感じた時ーー
ーーあっ、多分もうここまで頑張ったから……
そのままわたしは意識を失った。
「ここは……?」
何もない部屋のベッドの上にわたしは寝ていたようだ。
周りをキョロキョロ見回した。
「あ、あの、すみません」
声を出したけど返事がない。
ベッドから起きようとしたけどーー
体が重たくて動けない。
ーーフラフラする……だけど……とても喉が渇いたわ。
自分の体にそっと癒しの魔法をかけた。
ーーよかった、魔力は戻ってる。
わたしは軽くなった体を起こしてベッドから出て、周りをキョロキョロと見回した。
ーーここは病室ね。
あの火傷の人を治している途中で魔力が枯渇したんだった。
ふわっと感じたから多分あの火傷の人は治ったと思う。
ーー初めてだな、あんなに必死で治療したのは。
普段なら「ここまで治そう、残りは医師に頼もう」とか「ここまで治してあとは自然治癒したほうがいいかな」なんて余裕のあることを考えながら治療するのにあの火傷の姿を見た時、何がなんでも完璧に治そうと必死になった。
顔も体も火傷で腫れ上がって爛れていた。
多分死んだ方が楽だと思うくらいの痛みだっただろう。
窓の外は暗い。
今は夜だからなのかとても静かに感じた。
鏡があったので自分の姿を見てみたら白い病衣を着ている自分の姿と長い髪の毛………
ーーえ?髪の毛が長くなってる?
わたしは事務員になってから髪の長さを肩より少し長めの長さに切り揃えていた。
でも今わたしの髪の毛はそれよりも長い……
「え?ええ?突然髪の毛が伸びてるわ」
背中のところまで伸びてる。
ーー魔力を失うと髪の毛って伸びるのね。
今度魔導士さんに聞いてみよう。
それよりも喉が渇いたわ。
そっと廊下に出てみる。
「すみません、あの、誰かいますか?」
ーー今はみんな就寝中だもの。
シーンとしている中そっと廊下を歩いた。
そして明かりが漏れているところへ行き、扉に向かって声をかけた。
「あの、すみません」
「はい?」
扉の中から看護師さんらしき人が顔を出した。
「えっ?あっ、、、ぎゃっ‼︎」
「ぎゃっ??」
向こうが驚いた顔をするからわたしも驚いてしまった。
「う、動いてる……?」
「はい?あの、喉が渇いたんです。よかったらお水を一杯貰えたらと思って……」
看護師さんは首をこくこくと動かして
「ちょっと、待ってて」
と中に入ろうとして
「あっ、中にどうぞ、とにかく……ここ、ここに座ってて……息はまだしてる……うん、とにかくここに座ってて」
よくわからないけど言われた通り部屋の中に入り勧められた椅子に座ってじっとしていた。
「はい、お水」
手渡されて「ありがとうございます」と言って一気にお水を飲んだ。
「美味しい」
口についた水を……袖で拭いて一息ついた。
「もう一杯飲む?」
「はいっ!」
さらにおかわりをもらった。
「ここに居てね?先生を叩き起こしてくるから」
「朝でも大丈夫ですよ?わたし自分で癒しの魔法をかけたから多分どこも悪くないと思います」
「……魔法……うん、そうね、貴女は治癒魔法を掛けられると聞いているわ」
わたしの顔をじっと見て「でも起こしてくるから!」と看護師さんが部屋を出て行った。
面白い看護師さん。
わたしはゆっくりと先生が来るのを待つことにした。
時計を見ると早朝の4時。
もうすぐ朝なんだ。
わたしは倒れて何時間か眠っていたのね。
意識を失う時、魔力がなくなってふわっとしたと思ったらそのまま倒れてしまったんだと思う。
あの火傷の人は完全に治ったかしら?後で確かめに行こう。
どこまで治ったかわからないけど、今のわたしならまた治癒魔法は十分使えそうだもの。
そんなことを考えていたら
バタッ!
「あっ……本当に目覚めてる!」
「はい?すみません、ご心配をお掛けしました。しっかり眠ったのでもう元気です」
「……しっかり…………一年近くも眠っていた自覚はありますか?」
「へっ?」
「酷い……」
流石に一気に治療するにも辛いだろう。
「水、水は?」
とりあえず癒しの魔法を全身に流しながら騎士に頼んだ。
「脱水を起こしていると思います。飲み水の用意もしておいてください」
「わかりました、必ず助けてください、彼は火事の中子供を助けに入りました。お願いです」
「はい、ただしばらく他の人は治療できません」
「医療班は落ち着いてきているので向こうで対処できると思います」
「じゃあ、この人に集中します」
「お願いします」
火傷でよく顔もわからない、よく生きているなと思う。こんな状態で火の中を抜け出せたのは子供を助けようと必死だったからだろう。
「頑張って!わたしが治します。生きてください」
わたしは魔力だけならかなりの量がある。だから多少無理をしても治癒の力を使える。
だけど結構さっきまで頑張っていたので、実はかなり気力も体力も魔力も消耗していた。
でも必死で人を助けたこの人をわたしも必死で助けよう。
でも実は頭がボッーとして体が勝手に動いている状態。
ーーやばい、やばい、意識が飛びそう。
目を瞑りひたすら魔力を流すことに集中した。
そしてわたしの中でふわっと感じた時ーー
ーーあっ、多分もうここまで頑張ったから……
そのままわたしは意識を失った。
「ここは……?」
何もない部屋のベッドの上にわたしは寝ていたようだ。
周りをキョロキョロ見回した。
「あ、あの、すみません」
声を出したけど返事がない。
ベッドから起きようとしたけどーー
体が重たくて動けない。
ーーフラフラする……だけど……とても喉が渇いたわ。
自分の体にそっと癒しの魔法をかけた。
ーーよかった、魔力は戻ってる。
わたしは軽くなった体を起こしてベッドから出て、周りをキョロキョロと見回した。
ーーここは病室ね。
あの火傷の人を治している途中で魔力が枯渇したんだった。
ふわっと感じたから多分あの火傷の人は治ったと思う。
ーー初めてだな、あんなに必死で治療したのは。
普段なら「ここまで治そう、残りは医師に頼もう」とか「ここまで治してあとは自然治癒したほうがいいかな」なんて余裕のあることを考えながら治療するのにあの火傷の姿を見た時、何がなんでも完璧に治そうと必死になった。
顔も体も火傷で腫れ上がって爛れていた。
多分死んだ方が楽だと思うくらいの痛みだっただろう。
窓の外は暗い。
今は夜だからなのかとても静かに感じた。
鏡があったので自分の姿を見てみたら白い病衣を着ている自分の姿と長い髪の毛………
ーーえ?髪の毛が長くなってる?
わたしは事務員になってから髪の長さを肩より少し長めの長さに切り揃えていた。
でも今わたしの髪の毛はそれよりも長い……
「え?ええ?突然髪の毛が伸びてるわ」
背中のところまで伸びてる。
ーー魔力を失うと髪の毛って伸びるのね。
今度魔導士さんに聞いてみよう。
それよりも喉が渇いたわ。
そっと廊下に出てみる。
「すみません、あの、誰かいますか?」
ーー今はみんな就寝中だもの。
シーンとしている中そっと廊下を歩いた。
そして明かりが漏れているところへ行き、扉に向かって声をかけた。
「あの、すみません」
「はい?」
扉の中から看護師さんらしき人が顔を出した。
「えっ?あっ、、、ぎゃっ‼︎」
「ぎゃっ??」
向こうが驚いた顔をするからわたしも驚いてしまった。
「う、動いてる……?」
「はい?あの、喉が渇いたんです。よかったらお水を一杯貰えたらと思って……」
看護師さんは首をこくこくと動かして
「ちょっと、待ってて」
と中に入ろうとして
「あっ、中にどうぞ、とにかく……ここ、ここに座ってて……息はまだしてる……うん、とにかくここに座ってて」
よくわからないけど言われた通り部屋の中に入り勧められた椅子に座ってじっとしていた。
「はい、お水」
手渡されて「ありがとうございます」と言って一気にお水を飲んだ。
「美味しい」
口についた水を……袖で拭いて一息ついた。
「もう一杯飲む?」
「はいっ!」
さらにおかわりをもらった。
「ここに居てね?先生を叩き起こしてくるから」
「朝でも大丈夫ですよ?わたし自分で癒しの魔法をかけたから多分どこも悪くないと思います」
「……魔法……うん、そうね、貴女は治癒魔法を掛けられると聞いているわ」
わたしの顔をじっと見て「でも起こしてくるから!」と看護師さんが部屋を出て行った。
面白い看護師さん。
わたしはゆっくりと先生が来るのを待つことにした。
時計を見ると早朝の4時。
もうすぐ朝なんだ。
わたしは倒れて何時間か眠っていたのね。
意識を失う時、魔力がなくなってふわっとしたと思ったらそのまま倒れてしまったんだと思う。
あの火傷の人は完全に治ったかしら?後で確かめに行こう。
どこまで治ったかわからないけど、今のわたしならまた治癒魔法は十分使えそうだもの。
そんなことを考えていたら
バタッ!
「あっ……本当に目覚めてる!」
「はい?すみません、ご心配をお掛けしました。しっかり眠ったのでもう元気です」
「……しっかり…………一年近くも眠っていた自覚はありますか?」
「へっ?」
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