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ふふふふふふふっ。
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「マ、マルシア?」
リヴィの声は驚きと焦りが入り混じっていた。
ミルヒーナはそんなリヴィを横目でチラリと見ると「失礼しますわ」と言って二人を置いてさっさと自室へと向かった。
(なんでここにマルシアが現れるんだ?)
腕を絡ませて胸を押し付けてくるマルシアに「やめてくれ」と振り払おうとする。
「リヴィったら相変わらず照れ屋さんなのね?」
ミルヒーナの後ろ姿に向かって聞こえるように声を張り上げた。
「わたしと恋人同士だった頃はもっと積極的だったじゃない?何度もキスをして愛を語り合ったわ」
ミルヒーナは聞こえているはずなのに一度も振り返ることなく去っていった。
「ミル!違う!誤解だ!」
リヴィの声は彼女には届いていない。
ーーリヴィとわたしは白い結婚なんだから文句は言えないけど、でも、結婚しているのに恋人を屋敷に入れるなんて……最低だわ!
いくら偽りの結婚で離縁が決まっているとは言え、お互い最低ラインのルールくらい守ってほしい。
ーーわたしだって、これでもモテるんだから!
と思いながらも……モテたことがなかったなとシュンとなった。
ぷんぷん怒っているミルヒーナ……だけど……
「怒ってるのも疲れるものよね」
部屋に入ると重たいドレスを脱ぎ捨てて部屋着に着替えるとベッドに寝転がった。
少しだけリヴィのことを見直していたのに……最近はリヴィの良いところも沢山あったことを思い出して、少しは良い関係の中で暮らしていけるかもなんて思った自分に腹が立った。
「はぁ~、彼女のわたしに向ける視線はかなり悪意に満ちていたわよね?ま、仕方ないのかしら?彼女からすると訪ねてきたらリヴィは結婚していたなんて知って、わたしを攻撃したくもなるのかも………
だったら偽りだと彼女に教えておいたらいいのに」
クッションを抱き抱えて顔を埋めた。
『何度もキスをして愛を語り合った仲なのに』
マルシアの言葉が頭の中で何度も何度も聞こえてきた。
わたしはリヴィが嫌い。リヴィは意地悪で冷たくてわたしのことを嫌っているの。
最近は優しくなってきて、わたしのことを好きだとか言ってたけどやっぱり信じなくてよかった。
もし絆されて信じていたら……
『ミルのことなんて好きなわけないだろう』と今頃嘲笑いながら言われていたかもしれない。
ーー白い結婚だし3年したら離縁するし、リヴィのことなんて放っておけばいいのよ。気にしなければいいのよ。
マックの体調もやっと落ち着いてきた。
事故による補償も目処がついた。事故現場も工事が始まりいずれは再開することも決まった。
共同事業も立て直し始め、軌道に乗れば実家の伯爵家も少しは落ち着いて全てがうまく回りだすだろう。
ーーあとはわたしの魔法……
ミルヒーナは隠してきた魔法を悪用されないのなら王家や神殿に連れて行かれることも仕方がないと最近は思い始めた。
学生の時は王立学園だったのであまり深く魔法に関わらないで過ごしてきた。
でも今共同事業を始めて、やはりこの国は魔法に頼り暮らしていることをしみじみ感じた。
魔力が足りないと困る人たちもたくさんいる。
わたしなら……いくらでも魔力を【譲渡】できる。困っている人を助けられる……
そんな思いと、全く異なるもう一つの思い。
オリソン国は魔法がなくてもみんな幸せそうに暮らしていたわ。
この国のように魔法が全てで魔法が使えるかどうかで一生の暮らしまで左右される。
そんな暮らしが幸せなのかしら?
大好きな両親もガトラも魔法使いで有意義に魔法を使って生活をしている。
ーーだって魔法は生活の一部なんだもの。あって当たり前なのよね。
わたしのようにまともに魔法を使えない人間はこの国では肩身が狭い思いをするか平民として暮らすしかないもの。
貴族のほとんどは魔法が使える。だからこそ貴族として暮らしていける。魔法が使えない、魔力が少ない人達は平民として暮らす。
それがこの国の在り方。
最近は外国との交流も視野に入れて学力や魔法以外で優秀な者も文官として雇用され始めた。だからミルヒーナも文官を目指していた。
今のようにリヴィと結婚して妊娠するかもしれないからと言う理由で国からも神殿からも強制されないで過ごせているけど……離縁すれば結局強制的に連れて行かれる。
でもずっと名ばかりの結婚なんてしていられない。
マルシアが現れて、リヴィとの結婚を3年も引き延ばすわけにはいかない。
結婚して半年。
ミルヒーナは早くも離縁を視野に入れてこれからどうするか悩んでいた。
ーーわたしって白い結婚なんて言いながら、その先は何も考えていなかったのよね。離縁したら実家は落ち着くかもしれないけど、わたしはどうすればいいのかしら?
多分両親はわたしを守るために動いてくれる。それまでに何か対策をしてくれるのだろう。
でも………いつまでも守られてばかりではダメよね?
「マルシア、君はなんでうちに来たんだ?」
「あら?元恋人のわたしが遊びに来たらダメなの?前はよくお邪魔していたわ、今日はリヴィの結婚のお祝いを持ってきたの」
「元恋人って……それは君が僕に頼んだからだろう?付き纏われて困っているから助けて欲しいと」
「そうだったかしら?それでも恋人は恋人よ?それにキスしたのも本当のことじゃない?」
「それは………君が無理やり……」
「女に恥をかかせるの?」
(なんでマルシアは態と誤解させることばかりをみんなの前で言うんだ!使用人達が聞き耳立ててるだろう?)
ミルヒーナが連れてきているメイドのリラがリヴィ達の会話をじっと黙って聞いていた。
その目は軽蔑をした眼差しだった。
リヴィはマルシアとのことを思い出して大きな溜息をついた。
(何が恋人だよ!巻き込んだだけのくせに!)
リヴィの声は驚きと焦りが入り混じっていた。
ミルヒーナはそんなリヴィを横目でチラリと見ると「失礼しますわ」と言って二人を置いてさっさと自室へと向かった。
(なんでここにマルシアが現れるんだ?)
腕を絡ませて胸を押し付けてくるマルシアに「やめてくれ」と振り払おうとする。
「リヴィったら相変わらず照れ屋さんなのね?」
ミルヒーナの後ろ姿に向かって聞こえるように声を張り上げた。
「わたしと恋人同士だった頃はもっと積極的だったじゃない?何度もキスをして愛を語り合ったわ」
ミルヒーナは聞こえているはずなのに一度も振り返ることなく去っていった。
「ミル!違う!誤解だ!」
リヴィの声は彼女には届いていない。
ーーリヴィとわたしは白い結婚なんだから文句は言えないけど、でも、結婚しているのに恋人を屋敷に入れるなんて……最低だわ!
いくら偽りの結婚で離縁が決まっているとは言え、お互い最低ラインのルールくらい守ってほしい。
ーーわたしだって、これでもモテるんだから!
と思いながらも……モテたことがなかったなとシュンとなった。
ぷんぷん怒っているミルヒーナ……だけど……
「怒ってるのも疲れるものよね」
部屋に入ると重たいドレスを脱ぎ捨てて部屋着に着替えるとベッドに寝転がった。
少しだけリヴィのことを見直していたのに……最近はリヴィの良いところも沢山あったことを思い出して、少しは良い関係の中で暮らしていけるかもなんて思った自分に腹が立った。
「はぁ~、彼女のわたしに向ける視線はかなり悪意に満ちていたわよね?ま、仕方ないのかしら?彼女からすると訪ねてきたらリヴィは結婚していたなんて知って、わたしを攻撃したくもなるのかも………
だったら偽りだと彼女に教えておいたらいいのに」
クッションを抱き抱えて顔を埋めた。
『何度もキスをして愛を語り合った仲なのに』
マルシアの言葉が頭の中で何度も何度も聞こえてきた。
わたしはリヴィが嫌い。リヴィは意地悪で冷たくてわたしのことを嫌っているの。
最近は優しくなってきて、わたしのことを好きだとか言ってたけどやっぱり信じなくてよかった。
もし絆されて信じていたら……
『ミルのことなんて好きなわけないだろう』と今頃嘲笑いながら言われていたかもしれない。
ーー白い結婚だし3年したら離縁するし、リヴィのことなんて放っておけばいいのよ。気にしなければいいのよ。
マックの体調もやっと落ち着いてきた。
事故による補償も目処がついた。事故現場も工事が始まりいずれは再開することも決まった。
共同事業も立て直し始め、軌道に乗れば実家の伯爵家も少しは落ち着いて全てがうまく回りだすだろう。
ーーあとはわたしの魔法……
ミルヒーナは隠してきた魔法を悪用されないのなら王家や神殿に連れて行かれることも仕方がないと最近は思い始めた。
学生の時は王立学園だったのであまり深く魔法に関わらないで過ごしてきた。
でも今共同事業を始めて、やはりこの国は魔法に頼り暮らしていることをしみじみ感じた。
魔力が足りないと困る人たちもたくさんいる。
わたしなら……いくらでも魔力を【譲渡】できる。困っている人を助けられる……
そんな思いと、全く異なるもう一つの思い。
オリソン国は魔法がなくてもみんな幸せそうに暮らしていたわ。
この国のように魔法が全てで魔法が使えるかどうかで一生の暮らしまで左右される。
そんな暮らしが幸せなのかしら?
大好きな両親もガトラも魔法使いで有意義に魔法を使って生活をしている。
ーーだって魔法は生活の一部なんだもの。あって当たり前なのよね。
わたしのようにまともに魔法を使えない人間はこの国では肩身が狭い思いをするか平民として暮らすしかないもの。
貴族のほとんどは魔法が使える。だからこそ貴族として暮らしていける。魔法が使えない、魔力が少ない人達は平民として暮らす。
それがこの国の在り方。
最近は外国との交流も視野に入れて学力や魔法以外で優秀な者も文官として雇用され始めた。だからミルヒーナも文官を目指していた。
今のようにリヴィと結婚して妊娠するかもしれないからと言う理由で国からも神殿からも強制されないで過ごせているけど……離縁すれば結局強制的に連れて行かれる。
でもずっと名ばかりの結婚なんてしていられない。
マルシアが現れて、リヴィとの結婚を3年も引き延ばすわけにはいかない。
結婚して半年。
ミルヒーナは早くも離縁を視野に入れてこれからどうするか悩んでいた。
ーーわたしって白い結婚なんて言いながら、その先は何も考えていなかったのよね。離縁したら実家は落ち着くかもしれないけど、わたしはどうすればいいのかしら?
多分両親はわたしを守るために動いてくれる。それまでに何か対策をしてくれるのだろう。
でも………いつまでも守られてばかりではダメよね?
「マルシア、君はなんでうちに来たんだ?」
「あら?元恋人のわたしが遊びに来たらダメなの?前はよくお邪魔していたわ、今日はリヴィの結婚のお祝いを持ってきたの」
「元恋人って……それは君が僕に頼んだからだろう?付き纏われて困っているから助けて欲しいと」
「そうだったかしら?それでも恋人は恋人よ?それにキスしたのも本当のことじゃない?」
「それは………君が無理やり……」
「女に恥をかかせるの?」
(なんでマルシアは態と誤解させることばかりをみんなの前で言うんだ!使用人達が聞き耳立ててるだろう?)
ミルヒーナが連れてきているメイドのリラがリヴィ達の会話をじっと黙って聞いていた。
その目は軽蔑をした眼差しだった。
リヴィはマルシアとのことを思い出して大きな溜息をついた。
(何が恋人だよ!巻き込んだだけのくせに!)
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