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オリソン国。
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ルイスとの船旅はミルヒーナにとって驚きの連続だった。
マックのことは心配だし、ガトラと離れるのはとても寂しいけど、初めての船旅と外国で暮らすことになるのは胸をドキドキさせた。
船で寝泊まりする部屋は自分の部屋よりは狭いけど、あまり揺れないし部屋の調度品も豪華だしベッドも思ったよりも広い。
窮屈に感じることはなかった。
部屋自体はゆっくりと数日過ごすことができそうだ。
ただ、海は普段は穏やかで地上にいるのと変わらないと思っていたのに突然揺れがひどくなる。
激しいスコールや風が強く吹く時もある。
ルイスと二人船の甲板で散歩をした。
「ミル、ほら、見てごらん。ここには何もないんだよ、見渡す限り海しか見えないんだ」
「ええ、風がとても気持ちがいいわ、これからのことを考えると不安しかないけど、今は……今だけはこの船旅を楽しみたいわ。ルイスもごめんなさい。本当ならまだオリソン国へ向かう日ではなかったはずなのに、わたしのせいで早まってしまったわよね?」
「うん?気にしないで。僕は君をバードン侯爵のところへ送り届けるだけだからね」
「ルイスは何処で暮らしているの?」
「寮だよ。あそこの学校はそれこそ平民でも優秀だったら文官になれるんだ。考え方が新しくて他国の優秀な人材も雇用してくれるし意見も取り入れてくれる。自分の力を試したいならあの国は最高なんだ」
「じゃあルイスは帰ってくるつもりはないの?」
「ウェルシヤ国は魔法が発達して魔道具があるし、優れた国だと思ってる。だけど魔法が使えない国はたくさんあるんだ。そしてウェルシヤ国のように閉鎖的な国はこのままでは発展しないと思う。もっといろんな世界に目を向けていかないと国が衰退していくと思うんだ。魔法ばかり頼っていたら魔法が使えないと何もできない国になってしまう」
「わたしは魔法が使えないけどそれなりになんとかなってきたわ。屋敷にいれば誰かが魔道具を使えるように発動してくれていたけど、ないならないなりに暮らせると思う」
「うん、魔法の優秀さだけで人の優劣をつけるウェルシヤ国の考え方は僕としてはどうかと思うんだ。あっ、こんなこと言ったらウェルシヤ国に居られなくなるね」
ルイスは、ハハッと笑いながら波を見ていた。
「魔法が全て悪いとは思わない。お父様たちを助けられたのは【癒し】の魔法があったからだもの。わたしも【譲渡】の魔法を隠してきたけど、みんなに知られて後悔はしていないわ、助けられてよかったと思ってる」
ミルヒーナはハアット溜息をついた。
「だけど………わたしの魔法は特殊だから……この膨大な魔力を【譲渡】出来ることがわかれば戦争や犯罪に悪用されるかもしれない……それが怖いの」
「僕も聞いて驚いたよ、魔道具はだけど発動しないんだよね?」
「ええ、魔道具は魔力ではなくて魔法を使うでしょう?わたしの魔法では反応してくれないの」
「そっか、だからその特殊な魔法も誰にも知られなくて済んだんだね」
「ええ、おかげでリヴィにはよく馬鹿にされてきたわ」
ミルヒーナは思い出してちょっとムッとした。
「ミルは結婚をどう思ってるの?」
「今は受け入れているわ。だけど落ち着いたら離縁するつもりよ、白い結婚を三年続ければ白紙になるもの。そのあとは自由よ!好きに暮らすつもりなの」
「落ち着くまではミルはオリソン国にいるしかないから今は不安かもしれないけど、叔母上たちに任せるしかないよ。君がいるとさらに問題は悪化してしまうからね、君を欲しがる奴らがかなり出てくるだろうから」
「ははっ、モテる女は辛いわ」
ミルヒーナも波を見ながら寂しそうに言った。
ーーわたしのことなんて放っておいてくれればいいのに。大好きな家族とずっと一緒にいたかったな。
お父様の看病だってしてあげたいのに。
大変な時期なのに、なんの力にもなってあげられない。
鉱山もどうなるのかしら?共同事業は?これからどうなるのだろう。
考えないようにしていても不安は募るばかりだった。
そして……オリソン国へ着いた。
ーーウジウジ考えても何もできない。
とにかくこの国で少しでも学んで過ごそう。
マックのことは心配だし、ガトラと離れるのはとても寂しいけど、初めての船旅と外国で暮らすことになるのは胸をドキドキさせた。
船で寝泊まりする部屋は自分の部屋よりは狭いけど、あまり揺れないし部屋の調度品も豪華だしベッドも思ったよりも広い。
窮屈に感じることはなかった。
部屋自体はゆっくりと数日過ごすことができそうだ。
ただ、海は普段は穏やかで地上にいるのと変わらないと思っていたのに突然揺れがひどくなる。
激しいスコールや風が強く吹く時もある。
ルイスと二人船の甲板で散歩をした。
「ミル、ほら、見てごらん。ここには何もないんだよ、見渡す限り海しか見えないんだ」
「ええ、風がとても気持ちがいいわ、これからのことを考えると不安しかないけど、今は……今だけはこの船旅を楽しみたいわ。ルイスもごめんなさい。本当ならまだオリソン国へ向かう日ではなかったはずなのに、わたしのせいで早まってしまったわよね?」
「うん?気にしないで。僕は君をバードン侯爵のところへ送り届けるだけだからね」
「ルイスは何処で暮らしているの?」
「寮だよ。あそこの学校はそれこそ平民でも優秀だったら文官になれるんだ。考え方が新しくて他国の優秀な人材も雇用してくれるし意見も取り入れてくれる。自分の力を試したいならあの国は最高なんだ」
「じゃあルイスは帰ってくるつもりはないの?」
「ウェルシヤ国は魔法が発達して魔道具があるし、優れた国だと思ってる。だけど魔法が使えない国はたくさんあるんだ。そしてウェルシヤ国のように閉鎖的な国はこのままでは発展しないと思う。もっといろんな世界に目を向けていかないと国が衰退していくと思うんだ。魔法ばかり頼っていたら魔法が使えないと何もできない国になってしまう」
「わたしは魔法が使えないけどそれなりになんとかなってきたわ。屋敷にいれば誰かが魔道具を使えるように発動してくれていたけど、ないならないなりに暮らせると思う」
「うん、魔法の優秀さだけで人の優劣をつけるウェルシヤ国の考え方は僕としてはどうかと思うんだ。あっ、こんなこと言ったらウェルシヤ国に居られなくなるね」
ルイスは、ハハッと笑いながら波を見ていた。
「魔法が全て悪いとは思わない。お父様たちを助けられたのは【癒し】の魔法があったからだもの。わたしも【譲渡】の魔法を隠してきたけど、みんなに知られて後悔はしていないわ、助けられてよかったと思ってる」
ミルヒーナはハアット溜息をついた。
「だけど………わたしの魔法は特殊だから……この膨大な魔力を【譲渡】出来ることがわかれば戦争や犯罪に悪用されるかもしれない……それが怖いの」
「僕も聞いて驚いたよ、魔道具はだけど発動しないんだよね?」
「ええ、魔道具は魔力ではなくて魔法を使うでしょう?わたしの魔法では反応してくれないの」
「そっか、だからその特殊な魔法も誰にも知られなくて済んだんだね」
「ええ、おかげでリヴィにはよく馬鹿にされてきたわ」
ミルヒーナは思い出してちょっとムッとした。
「ミルは結婚をどう思ってるの?」
「今は受け入れているわ。だけど落ち着いたら離縁するつもりよ、白い結婚を三年続ければ白紙になるもの。そのあとは自由よ!好きに暮らすつもりなの」
「落ち着くまではミルはオリソン国にいるしかないから今は不安かもしれないけど、叔母上たちに任せるしかないよ。君がいるとさらに問題は悪化してしまうからね、君を欲しがる奴らがかなり出てくるだろうから」
「ははっ、モテる女は辛いわ」
ミルヒーナも波を見ながら寂しそうに言った。
ーーわたしのことなんて放っておいてくれればいいのに。大好きな家族とずっと一緒にいたかったな。
お父様の看病だってしてあげたいのに。
大変な時期なのに、なんの力にもなってあげられない。
鉱山もどうなるのかしら?共同事業は?これからどうなるのだろう。
考えないようにしていても不安は募るばかりだった。
そして……オリソン国へ着いた。
ーーウジウジ考えても何もできない。
とにかくこの国で少しでも学んで過ごそう。
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