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リヴィ②

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 ミルヒーナとの初顔合わせの日。

 リヴィは今日こそミルヒーナに優しく接しようと気合を入れて臨むことにした。

 リヴィの屋敷に現れたミルヒーナを見て思わず固まった。

 門に馬車が着くと、中からマックの手を借りて降りてきたミルヒーナ。
 一年前お土産を持ってきてくれてからずっと会えずにいたミルヒーナを前に動揺してしまった。

(可愛い……)
 ドレスは淡い水色のシルクの生地でふんわりとしたスカート、レースがたくさん使われていてミルヒーナの可愛さを引き立てていた。

 長い髪の毛を緩く巻いてハーフアップされていた。

(めちゃくちゃ似合ってる)

 リヴィは思わず顔が赤くなるのをミルヒーナに気付かれたくなくて慌てて目を逸らした。


 馬車から降りたミルヒーナは門に迎えに来ていたリヴィに気がついた。

 ーーリヴィ……

 目が合ったと思ったらすぐに目を逸らされた。

 ーーそんなにわたしのことが嫌いならお見合いなんて断ればいいのに。

 目を思いっきり逸らされてミルヒーナはカチンと頭にきた、でもそれ以上に傷ついた。

 ずっと意地悪ばかりされて嫌だったし、会いたくなくて避けてきたのは自分だけど、この屋敷の前に馬車が停まった瞬間、今日のお見合いの相手がリヴィだと言うことはすぐに理解した。

 お見合いは嫌だったけど、リヴィになら上手く話してこのお見合いを断ることもできる。
 だってわたしを嫌いなリヴィが婚約の話を受けるわけがない。
 そう思ったのに、思いっきり目を逸らされ無視されたミルヒーナはムッとして思わず……

「えっ?なんでリヴィがここにいるの?」

 わざと驚いて大きな声を出した。

「お見合いの相手の名前も知らないで今日は来たの?」

 ミルヒーナを嘲笑うリヴィの冷たい笑顔と言葉に、意地悪を言ったはずのミルヒーナはどうしていいのか分からず後ろへと後ずさった。

ーーやっぱり無理!
 苦手意識がミルヒーナの心を弱気にさせる。

「知らない!えっ?や、やだっ!」

 その言葉に今度はリヴィがまたつい余計な一言を言ってしまった。

「俺だって君とお見合いなんてしたかったわけじゃない。仕方なくしてやってるんだ」

 ミルヒーナは一瞬傷ついた顔をした。だけど何も言い返してこなかった。
(怒ったかな……)リヴィは内心焦っていた。


 ミルヒーナはリヴィから目を逸らして何も言わなかった。


 無言のまま客室に通されたミルヒーナ。

 父親のマックはリヴィの父親であるトーマスと話があるからとさっさと別の部屋へ行ってしまった。

 置いてきぼりにされてリヴィと二人っきりになったミルヒーナは仕方なく出された紅茶を飲むことにした。

「……………」
「……………」


 無言の状態がずっと続く。

 そばにはメイド達が控えていて、空になったカップに紅茶を何度か淹れてくれた。

 その度にミルヒーナは「ありがとう」とメイドにお礼は言うものの、すぐに口を閉じて話そうとしない。

 リヴィは内心………

(ミル、怒ってるよな。仕方なくなんて思ってもいないのに)

 チラチラとミルヒーナの顔色を窺うのに、無視して紅茶を飲み続けるミルヒーナにだんだん苛立ちを感じる。

(少しくらい話しかけてくれてもいいんじゃない?)

 自分から素直に話しかけられないリヴィは、また心にもない言葉を言ってしまった。

「その水色のドレス、誰が選んだんだ?」

(水色は俺の瞳の色に合わせたのかな?)

 ミルヒーナが全く今日のお見合い相手の名前も知らずに来たことはリヴィには知る由もなかった。だからもしかして……俺のために?と変な期待をしてしまった。

「ドレスの色?」

 なんでそんなことを聞くのか分からずにキョトンとした顔をしたミルヒーナ。

 自分が勘違いしたことに気がついたリヴィ。

「自分が何色のドレスを着たのかもミルはわかんないの?目が悪いんじゃない?」
 ついまた意地悪な言葉を吐いた。

 本当は勘違いした恥ずかしさから出た言葉だったのに……

「わたくし、遠くにいる人が欠伸をしているのが見えるくらいとても視力はいいの。ただ、このドレスは無理やり着せられたから何色かなんて興味もなかっただけよ」

 ミルヒーナのその言葉に傷付いた。

 どれくらい今までミルヒーナを傷つけてきたか自覚はあるリヴィ。今日こそは優しく接したいと思っていたのにまた失敗した。

 ミルヒーナはリヴィの顔すら見ようとしない。
 ほんの少しだけ期待していた。

 二人で笑い合う日々が戻るかもしれないと。

 険悪な中、時間だけが静かに流れた。

「………ミルは…まだヴァードと仲がいいの?」

「ヴァード?最近は会うことはないわ。あっ、王都に戻ってきたばかりの頃、街で偶然会って話したわ。ちょうどお互い王立図書館へ行くつもりだったから一緒に行ったの。あれ以来会っていないわ。それが何か?」

 ーーリヴィには関係ないでしょう?
と言う顔をするミルヒーナ。

(なんだ、偶然だったのか)
 ホッとしながらもその後ミルヒーナに酷い態度をとったことを思い出した。でもやきもち焼いて冷たくしたなんて今更言えない。

(どうすればミルに素直になれるんだろう)

 なかなか会話も続かない。

 この重たい険悪な空気をなんとかしようとリヴィは必死だった。

 なのにミルヒーナはどうでもよさそうに紅茶を飲むだけ。そんな態度に少し苛立ってくる。












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