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11話
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お母様とリヴェールが少しぎこちないけど親子らしい会話をするようになった。
今日は何事もなく姉様達と三人で本を読んで静かに過ごしていた。
「アニア?」
お母様がわたしを呼びにきた。
「お母様?アニアに何か用があるの?ここに来てからいつもアニアだけ。わたし達は除け者みたい」
「うん、どうしてそんなにアニアだけを可愛がるの?」
最近お姉様達はわたしにヤキモチを妬いていた。
わたしだけ遊びに連れて行ってもらったわけでもなくおやつを多く貰っているわけでもない。
だけど子供達は大人の動きに敏感だからわたしがいつもお母様に一人多く声をかけられたり、お祖母様(リヴェール)にこっそりと会いに行ったことを面白くないと感じていた。
「あら?二人ともごめんなさい。嘘はいけないわね。でも男の子達には言うつもりはないけど、二人にはアニアの秘密を教えるわね?協力してくれるかしら?」
ーーえ?話すの?
わたしが驚いていると
「アニアには前世の記憶があるの」
「この前お母様がくださった本のお姫様みたいな?」
そして掻い摘んで話をした。
「それで今からアニアは娘に会いにいくの。よかったら二人も見守ってあげて」
「「………わかったわ」」
ーーえ?そんな単純に受け入れてくれるの?
わたしが目を見開いて姉様二人を見ていたら
「アニア……寝ている時、『ダイアナ……』って言いながら泣いていたもの」
「何度も『やめて嫌だ』とか『リヴェール、アシュア』って知らない人の名を呼んでいたわ。リヴェールってお祖母様のことだったのよね?」
「………うん」
お姉様二人の間に挟まれて二人と手を繋いだ。
二人の姉様のおかげで、緊張は和らいだ。
部屋に入ると、前世のわたしの姿に似た、ううん、それ以上に美しく成長していまや母親になり、慈愛に満ちた優しい雰囲気を持った女性になっていた。
わたしを見て「お母様?」と声をかけてきた。
「ダイアナ……会いたかった」
周りから見るとダイアナが母でアニアが娘に見えるはず。
なのに実際の会話は6歳のわたしが35歳の女性に娘のように話しかけている。多分かなり不思議な光景だと思う。
「ダイアナ、貴女を置いて死んでしまってごめんなさい。ずっと辛い思いをして過ごしたと聞いたわ。だけどあの可愛かったキースと結婚して幸せに暮らしているのよね?嬉しいわ」
「エレファ?わたしのことはわからないの?」
ダイアナしか見えていなかったわたしは二人がいることに気が付かなかった。
「アシュア?それに……キース?」
「そうよ、まさか本当に記憶を持って生まれ変わるなんて………学生の頃冗談でいったことがあったわよね?わたしに、国には蘇りの魔法があるのって。冗談だと半信半疑だったけど、貴女が亡くなったとわかっていても、また会えるとずっと思って過ごしたのよ?
でもわたし達のところへ戻ってくるの遅すぎじゃない?」
「わたしもそう思うわ」今度はリヴェールも部屋に入ってきてアシュアとわたしに近づいた。
するとダイアナが、「ずるい、わたしに一番会いたくて戻ってきてくださったのよ」と言ってわたしを思いっきり抱きしめた。
「く、苦しい」
わたしの声に姉様が慌ててやってきて
「アニアに何するんですか!」
「アニアを離して!」
と、ダイアナからわたしを奪い返した。
「もう!アニアは小さくてか弱いんです!」
姉様はわたしをむぎゅっと抱きしめて、大人達に文句を言った。
「ほんとね、エレファだと思ってつい」
「ごめんなさい、アニア」
「ダイアナ、キース、久しぶりね。この子達の母親のジャスティアよ。まさかわたくしの大切なアニアがエレファ様の生まれ変わりなんて思ってもいなかったわ。それも、お義母様達はいつか会えると信じていたなんてね。わたくしそっちの方に驚いたわ」
「信じていたんじゃなくて、信じたかったのよ」
「そう、エレファの絶望を知った時、わたしは助けられなかったことを後悔していたから」
二人は悲しそうにもう一度わたしの前に来ると跪きわたしと目線を合わせた。
「エレファ、貴女に謝りたかったのよ。助けてあげられなかったこと」
「ううん、わたしが助けを求めなかっただけ。それにダイアナをずっと二人は守ってくれたのよね?ありがとう」
「ダイアナ、貴女に会いたくてずっとずっと謝りたくて……ごめんなさい。貴女に辛い思いばかりさせてしまったこと。わたしの心残りは貴女だった。
だけどわたしの代わりにリヴェールとアシュアが貴女を守ってくれた、キースが貴女を愛してくれた。わたしは記憶が戻ったことを感謝するわ………だけどもうそろそろこの魔法も消えそう……わたしのお母様がかけてくれたわたしに……記憶を取り戻してくれたの……ダニエルには会わないと決めているの。
みんなお願い……そろそろダニエルを許して……あのお義父様にあの頃逆らえる人なんて殆どいなかった。ダニエルもわたしもダイアナもみんな被害者だったの」
「お母様は恨んでいないの?」
「ダニエルのこと?とっても…恨んでいるわ、馬鹿!浮気者!って思っているわ。
だけど彼、わたしが死ぬ直前ずっと手を握り『ごめん、愛している、ずっと君だけなんだ。なんであんな女に負けたんだ。父上に負けたんだ。薬なんかに負けてすまない』ってずっとずっと泣いて謝るんだものね。
そんなことより……ダイアナをわたしのそばに連れてきて欲しかったのに。
あの自分勝手のせいでダイアナと最後一緒にいられなくて……こんな未練が残ったのよ?だけどそのおかげで、新しい人生を歩んでいるアニアの中のわたしが記憶を取り戻せたの。だから最後にあの馬鹿に感謝しているわ」
「お母様……」
「ダイアナ、貴女の幸せな姿を見られたからよかったわ。キース、浮気はしないでね」
「はいエレファ様、俺はダイアナを愛していますから」
「そうね、キースはずっとダイアナを大切にしてくれたもの」
ーーああ、もう、わたしはエレファではなくなるわ。
「みんな会えて嬉しかったわ………また…いつか会いましょう……」
「「エレファ?」」「お母様!」「アニア?」
わたしはそのままバタッと倒れた。
今日は何事もなく姉様達と三人で本を読んで静かに過ごしていた。
「アニア?」
お母様がわたしを呼びにきた。
「お母様?アニアに何か用があるの?ここに来てからいつもアニアだけ。わたし達は除け者みたい」
「うん、どうしてそんなにアニアだけを可愛がるの?」
最近お姉様達はわたしにヤキモチを妬いていた。
わたしだけ遊びに連れて行ってもらったわけでもなくおやつを多く貰っているわけでもない。
だけど子供達は大人の動きに敏感だからわたしがいつもお母様に一人多く声をかけられたり、お祖母様(リヴェール)にこっそりと会いに行ったことを面白くないと感じていた。
「あら?二人ともごめんなさい。嘘はいけないわね。でも男の子達には言うつもりはないけど、二人にはアニアの秘密を教えるわね?協力してくれるかしら?」
ーーえ?話すの?
わたしが驚いていると
「アニアには前世の記憶があるの」
「この前お母様がくださった本のお姫様みたいな?」
そして掻い摘んで話をした。
「それで今からアニアは娘に会いにいくの。よかったら二人も見守ってあげて」
「「………わかったわ」」
ーーえ?そんな単純に受け入れてくれるの?
わたしが目を見開いて姉様二人を見ていたら
「アニア……寝ている時、『ダイアナ……』って言いながら泣いていたもの」
「何度も『やめて嫌だ』とか『リヴェール、アシュア』って知らない人の名を呼んでいたわ。リヴェールってお祖母様のことだったのよね?」
「………うん」
お姉様二人の間に挟まれて二人と手を繋いだ。
二人の姉様のおかげで、緊張は和らいだ。
部屋に入ると、前世のわたしの姿に似た、ううん、それ以上に美しく成長していまや母親になり、慈愛に満ちた優しい雰囲気を持った女性になっていた。
わたしを見て「お母様?」と声をかけてきた。
「ダイアナ……会いたかった」
周りから見るとダイアナが母でアニアが娘に見えるはず。
なのに実際の会話は6歳のわたしが35歳の女性に娘のように話しかけている。多分かなり不思議な光景だと思う。
「ダイアナ、貴女を置いて死んでしまってごめんなさい。ずっと辛い思いをして過ごしたと聞いたわ。だけどあの可愛かったキースと結婚して幸せに暮らしているのよね?嬉しいわ」
「エレファ?わたしのことはわからないの?」
ダイアナしか見えていなかったわたしは二人がいることに気が付かなかった。
「アシュア?それに……キース?」
「そうよ、まさか本当に記憶を持って生まれ変わるなんて………学生の頃冗談でいったことがあったわよね?わたしに、国には蘇りの魔法があるのって。冗談だと半信半疑だったけど、貴女が亡くなったとわかっていても、また会えるとずっと思って過ごしたのよ?
でもわたし達のところへ戻ってくるの遅すぎじゃない?」
「わたしもそう思うわ」今度はリヴェールも部屋に入ってきてアシュアとわたしに近づいた。
するとダイアナが、「ずるい、わたしに一番会いたくて戻ってきてくださったのよ」と言ってわたしを思いっきり抱きしめた。
「く、苦しい」
わたしの声に姉様が慌ててやってきて
「アニアに何するんですか!」
「アニアを離して!」
と、ダイアナからわたしを奪い返した。
「もう!アニアは小さくてか弱いんです!」
姉様はわたしをむぎゅっと抱きしめて、大人達に文句を言った。
「ほんとね、エレファだと思ってつい」
「ごめんなさい、アニア」
「ダイアナ、キース、久しぶりね。この子達の母親のジャスティアよ。まさかわたくしの大切なアニアがエレファ様の生まれ変わりなんて思ってもいなかったわ。それも、お義母様達はいつか会えると信じていたなんてね。わたくしそっちの方に驚いたわ」
「信じていたんじゃなくて、信じたかったのよ」
「そう、エレファの絶望を知った時、わたしは助けられなかったことを後悔していたから」
二人は悲しそうにもう一度わたしの前に来ると跪きわたしと目線を合わせた。
「エレファ、貴女に謝りたかったのよ。助けてあげられなかったこと」
「ううん、わたしが助けを求めなかっただけ。それにダイアナをずっと二人は守ってくれたのよね?ありがとう」
「ダイアナ、貴女に会いたくてずっとずっと謝りたくて……ごめんなさい。貴女に辛い思いばかりさせてしまったこと。わたしの心残りは貴女だった。
だけどわたしの代わりにリヴェールとアシュアが貴女を守ってくれた、キースが貴女を愛してくれた。わたしは記憶が戻ったことを感謝するわ………だけどもうそろそろこの魔法も消えそう……わたしのお母様がかけてくれたわたしに……記憶を取り戻してくれたの……ダニエルには会わないと決めているの。
みんなお願い……そろそろダニエルを許して……あのお義父様にあの頃逆らえる人なんて殆どいなかった。ダニエルもわたしもダイアナもみんな被害者だったの」
「お母様は恨んでいないの?」
「ダニエルのこと?とっても…恨んでいるわ、馬鹿!浮気者!って思っているわ。
だけど彼、わたしが死ぬ直前ずっと手を握り『ごめん、愛している、ずっと君だけなんだ。なんであんな女に負けたんだ。父上に負けたんだ。薬なんかに負けてすまない』ってずっとずっと泣いて謝るんだものね。
そんなことより……ダイアナをわたしのそばに連れてきて欲しかったのに。
あの自分勝手のせいでダイアナと最後一緒にいられなくて……こんな未練が残ったのよ?だけどそのおかげで、新しい人生を歩んでいるアニアの中のわたしが記憶を取り戻せたの。だから最後にあの馬鹿に感謝しているわ」
「お母様……」
「ダイアナ、貴女の幸せな姿を見られたからよかったわ。キース、浮気はしないでね」
「はいエレファ様、俺はダイアナを愛していますから」
「そうね、キースはずっとダイアナを大切にしてくれたもの」
ーーああ、もう、わたしはエレファではなくなるわ。
「みんな会えて嬉しかったわ………また…いつか会いましょう……」
「「エレファ?」」「お母様!」「アニア?」
わたしはそのままバタッと倒れた。
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