【完結】貴方の瞳に映るのは

たろ

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7話

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 熱も下がり家族みんなと一緒に朝ごはんを食べた。

「アニア、これ食べていいよ」「俺もこれやるよ」

「あ、いらない。そんなに食べれないもの」


「ねえアニア、後で絵本を読んであげるわ」

「うん、姉様、騎士様とお姫様のお話がいいな」

「ふふ、母様と父様みたいね」

「うん!」

「俺はかっこいい騎士様で母様は可愛らしい姫様だからな」
 お父様は嬉しそうに言った。

「あら?わたしは可愛いじゃなくて美しい!のよ」
 お母様はとても綺麗だ。そして堂々としている。

 そんなお母様が子供の私たちはみんな大好き。

「アニア、やっと熱が下がったのだから無理しないで寝ていなさいね。あんた達はアニアを無理やり外に連れ出さないでね。少しずつ体力を付けてあげないといけないの、なんでも無理やりは良くないの」

「わかってるよ」

「アニア今日は私たちと一緒に過ごしましょうね」

 記憶が戻ってからも特に何も変わることなく穏やかに日々は過ぎていった。


 ◇ ◇ ◇

「ねえ貴方、アニアが最近おかしいと思わない?」

「そうか?別に変わったところはないと思うけど」

「高熱を出した時、アニアがね言ったの。
『………ダイアナ……幸せにしているのかしら?会いたいわ』
 6歳の子供の言葉ではなかったわ。まるで母親のような言葉……それも……ダイアナって」

「ダイアナ?まさか君の祖国の初恋の君のキースの嫁さん?」

「ええ、わたしの初恋の……うん?なんで知っているのよ?わたしの初恋?え?どう言うことなの!」

「へっ?何でって……お前が初恋を拗らせて我儘言ってダイアナに意地悪していたこと知っているからかな……ま、いいじゃないか」

「良くないわ!説明しなさい!」

 夫はその後、わたしとの結婚の話がきたので、どんな娘か知りたくて、わたしが居た侯爵家の騎士に扮してわたしを見ていたらしい。

 我儘放題な姿も国王のお父様に怒鳴り込んでいった姿も見ていたと聞いたけど、夫婦になって十五年も経つのに全く知らなかった。

「お前が面白くってつい目が離せなかったんだ。裏表がなくて感情のままに生きていて、意地悪な癖にすぐ傷ついた顔をして。元気そうにしているのに誰もいなくなると落ち込んで。俺はお前の本当に心から笑っている顔が見たいと思ったんだ。ま、その笑った顔は俺がさせなきゃいけないと心に決めてお前を娶った」

「ふーん、わたしに惚れたのね?」

「当たり前だろう?だから俺はお前しか勃たないんだ!」

「辺境伯の呪いね?ほんと男って馬鹿ね。子供達もそんな馬鹿な呪いを受けるのかしら?やめて欲しいわ」

「本気で好きになったら呪いなんて屁でもないさ。喜んで受けると思うぞ」


「この世の中には呪いもあるけど魔力を持った王族がいるって知ってる?」

「噂には聞いたことがある。確かブラン王国の王族だったかな」

「信じてる?」

「さあ、見たこともないからな、どうだろう」

「わたしは……目の前で『真実の血判』というものを見たの。血染めの日記。それは真実しか書かれていないものでブラン王族にしか書けないらしいの。
 それがあったからダイアナの祖父は捕まったわ。わたしはその祖父に嵌められて知らないうちに違法薬物を売っていたの。だけどお父様とお義母様が助けてくれた。その代わり王女の地位は剥奪されてしまったけどね。
 その日記にはもう一つ、ダイアナを守る守護の魔法がかかっていたらしいの。だからダイアナは辛いことはあっても酷い怪我や死ぬほどのことはされなかったと聞いたわ。攫われたりしたけど必ず何事もなく助け出されたのも守護魔法のおかげらしいの。
 エレファ様がダイアナのために命を削ってかけた最後の彼女への愛だったのよね」

「アニアは……エレファ様の生まれ変わりだと?」
 ウィリーが怪訝な顔をした。

「わからないわ、でもね、子供らしい表情が最近減った気がするの。気づかないふりはしているけど……もしエレファ様でエレファ様の記憶を取り戻したら、アニアはどんなに今辛いのか……考えただけでわたしまで辛くなるわ」

「何があったんだ?」

「あまりにも惨たらしい話よ」
 わたしはウィリーに二十年以上前にあった話を聞かせた。

「くそっ、何だ!それは!その父親も夫のダニエルも糞でしかない!アニアは……アニアのところに行ってくる」

「やめなさい!今は夜中なのよ!寝ている子を起こさないで!」

 止めたくせについ「わたしがちょっと見てくるわ」と言ってしまった。

「おい、だったら俺も行く」

 二人でアニアの部屋をそっと覗いた。

 スヤスヤ眠っているのかと思ったのに……

「やめてください、いや、やめて!」

「ダイアナにだけは手を出さないでください。お願いします」

 泣きながら叫んでいた。

「アニア……エレファ様?もう大丈夫です、あの男は死にました、貴女に酷いことをする人はもういません。ダイアナは幸せに暮らしています」

 わたしは手を握って話しかけた。

「………ダイアナ……愛しているわ」

 6歳の娘はアニアのはずなのに、ここにいるのは苦しみながら耐え忍んでるエレファ様だった。













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