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2話
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ダニエルと話すようになってわたしのそばに居てくれるアシュアとリヴェールは心配をしてくれた。
「ダニエルと話して嫌な思いはしていないの?」
「顔はいいと思うんだけど、性格がね、人を近づけようとしないし、エレファが傷つかないか心配だわ」
「ダニエルは話したらとても優しいわ、それに彼の笑った顔って可愛いのよ?」
「笑う?」
「可愛い?」
二人はわたしの言葉に驚いて「エレファ人違いしているの?」と言い出した。
「違うわ、ダニエルって冷たそうにしているけど話すととても楽しいの。最近は二人で土壌について話し合っているのよ」
「土壌?」「何、恋愛じゃないの?その会話おかしいわ」
「恋愛?違うわ、わたしの国の土地は農作物を育てるのにとても合っているみたいで、この国と何が違うのか話し合ったりしているの。
あと、失われた魔力、なんて言われているけど本当なのか知りたいみたいで、会うたびに色々質問してくるから答えているだけなの」
「それにしてはエレファ楽しそうだと思うけど?」
「えっ?もちろん楽しいわ。わたしの母国のことを興味を持っていろいろ質問してくれるのだもの」
「はあ、エレファ、貴女その顔、どう見てもダニエルに恋している顔よ」
リヴェールが呆れながらわたしに言った。
わたしは生まれて初めて恋をした?……らしい。
「ダニエルのことが………好き⁈えっ?」
無自覚だったのに、突然意識してしまうと駄目だった。ダニエルのことを考えると思わず顔が真っ赤になった。
「わたしってダニエルが本当に好きなの?ねえ?」
二人に聞くと、「気づかないなんて鈍感な子ね」と苦笑された。
ダニエルを意識してばかりいると、話せなくなって
「エレファ?どうしたんだ?俺が何かした?」
わたしの顔を覗き込んで心配そうに声を掛けてきた。
「う、う、ううん、違う、何もしていないの。ただ恥ずかしくって」
「恥ずかしい?」
「うっ、だってわたし恋ってどんなものか知らなかったの。話すことが恥ずかしいとか会うだけでドキドキするとか知らなかったんだもん」
「恋?誰が?」
「わたし……ダニエルのことが好きらしいの」
「らしいって…それって……」
「無自覚だったの。だって人を好きになったことなんてなかったんだもの。お父様やお兄様のこと大好きだから恋ってそんな感じなのだと思っていたの、ダニエルのことは意識すらしていなくて、あの、それでね、、」
「あーーー」
ダニエルが頭をボリボリ掻きながら、「なんなんだよ、無自覚って!俺すっごいアピールしてたつもりだったのに。全く気がついていなかったの?」
「……えっ?」
「俺、ずっとエレファが好きだから話しかけてきたんだ。今頃になって好きって気がついたなんてちょっとショックだよ、遅い!」
「だって、わかんないんだもの。ダニエルがわたしにだけ笑ってくれるのが嬉しかったわ。女の子ではわたしとだけ話してくれていたしとても嬉しいと思っていたの。ドキドキするのも嬉しくなるのも悲しくなってしまうのも全てダニエルのことなの。
そしたらリヴェールがその気持ちが恋なんだって教えてくれたの」
「俺も…ずっとエレファが気になっていたんだ。だからあの二人がいない時になんとか話しかけたいと思っていたら、あの女子の集団が絡んできたから慌てて追い払ったんだ。せっかく話せるチャンスにあの子達は邪魔だからね」
「え?そうだったの?正義感からかと思っていたわ」
「誰が好き好んであんな連中に絡むんだ?俺はうるさい女の集団がどうしても苦手なんだ」
「そうだったのね」
それからのダニエルは今まで以上に優しかった。
一緒に昼食を摂ったり、休みの日はいろんなところへ連れて行ってくれた。
2年間の留学が終われば、わたしはブラン王国へ帰らないといけない。
日に日に元気がなくなっていくのをダニエルは心配してくれた。
未だに本当の理由を話せないでいるわたしは狡いと思う。嫌われたくない、愛しているんだもの。
でも国へ帰れば好きでもない男性と結婚するしかない。お父様から手紙が届いた。
いつものようにたわいもない内容だったのに最後のところに……
『婚約者が決まった。相手とのことは帰ってきてから……』
婚約者が決まったと書いてあったところまで読んで手紙は捨てた。ショックだった。
いずれは結婚しないといけないのはわかっていたのに、恋に浮かれて現実を見ていなかった。
「エレファ?」
ダニエルが優しくわたしの名を呼ぶ声が好き。
ダニエルの服の清潔な石鹸の匂いが好き。
大きい手で優しく触る彼が好き。
普段冷たい表情しか見せないのにわたしにだけ特別な笑顔を見せてくれるダニエルを愛している。
「好き、愛しているわ」
ダニエルにしがみついて、振り払われないことをいい事に抱きついたまま甘えた。
「お願い、わたしを離さないで」
「エレファがブラン王国へ帰らないといけないから悩んでいるんだろう?」
「何故……分かるの?」
「だって卒業まであと少し。日に日に落ち込んでいくから」
「わたし……向こうに戻ったら結婚させられるわ」
「うん、いい事だね」
「酷いわ、わたしもう貴方に会えなくなるのよ?」
「結婚相手の名前きちんと聞いた?」
「聞かないわ、だって貴方じゃなきゃ嫌だもの。貴方じゃないのなら名前なんて知らなくていい」
「君の婚約者はね、俺だよ」
「うっそ⁈え?どう言う事なの?なんで?どうして?」
「だってずっと君といるためには結婚するしかないからね。何度も何度も君の父上である国王陛下にお願いしたんだ」
「そうなの?」
「もちろんずっと断られ続けたんだけどね。諦めたら君は俺以外の男の手を取る事になる。どうしてもそれだけは嫌だった。愛していいのも、愛されるのも俺だけだからね。父上を説得して君との結婚の了承を得たんだ。そして君の両親に何度も断られながら結婚したいと申し込んだ」
「ほんとぉ?」
「うん、君の両親は他所の国に嫁がせる事に難色を示したんだけど『絶対に幸せにします』と言ったんだ」
「どうしてもっと早くにわたしに教えてくれなかったの?」
「だって、手紙が届いてるはずだし、もしかしてまだわざと君に知らせていないのかと思って様子を伺っていたんだ」
「うっ……馬鹿みたいに悩んでしまったわ……」
ダニエルをチラッと見た。
「でもね、とっても嬉しい。ダニエルわたしと結婚してください、愛しています」
「狡い、先に言うなんて!俺もエレファを愛しています。結婚しよう」
そしてわたし達は結婚をした。
「ダニエルと話して嫌な思いはしていないの?」
「顔はいいと思うんだけど、性格がね、人を近づけようとしないし、エレファが傷つかないか心配だわ」
「ダニエルは話したらとても優しいわ、それに彼の笑った顔って可愛いのよ?」
「笑う?」
「可愛い?」
二人はわたしの言葉に驚いて「エレファ人違いしているの?」と言い出した。
「違うわ、ダニエルって冷たそうにしているけど話すととても楽しいの。最近は二人で土壌について話し合っているのよ」
「土壌?」「何、恋愛じゃないの?その会話おかしいわ」
「恋愛?違うわ、わたしの国の土地は農作物を育てるのにとても合っているみたいで、この国と何が違うのか話し合ったりしているの。
あと、失われた魔力、なんて言われているけど本当なのか知りたいみたいで、会うたびに色々質問してくるから答えているだけなの」
「それにしてはエレファ楽しそうだと思うけど?」
「えっ?もちろん楽しいわ。わたしの母国のことを興味を持っていろいろ質問してくれるのだもの」
「はあ、エレファ、貴女その顔、どう見てもダニエルに恋している顔よ」
リヴェールが呆れながらわたしに言った。
わたしは生まれて初めて恋をした?……らしい。
「ダニエルのことが………好き⁈えっ?」
無自覚だったのに、突然意識してしまうと駄目だった。ダニエルのことを考えると思わず顔が真っ赤になった。
「わたしってダニエルが本当に好きなの?ねえ?」
二人に聞くと、「気づかないなんて鈍感な子ね」と苦笑された。
ダニエルを意識してばかりいると、話せなくなって
「エレファ?どうしたんだ?俺が何かした?」
わたしの顔を覗き込んで心配そうに声を掛けてきた。
「う、う、ううん、違う、何もしていないの。ただ恥ずかしくって」
「恥ずかしい?」
「うっ、だってわたし恋ってどんなものか知らなかったの。話すことが恥ずかしいとか会うだけでドキドキするとか知らなかったんだもん」
「恋?誰が?」
「わたし……ダニエルのことが好きらしいの」
「らしいって…それって……」
「無自覚だったの。だって人を好きになったことなんてなかったんだもの。お父様やお兄様のこと大好きだから恋ってそんな感じなのだと思っていたの、ダニエルのことは意識すらしていなくて、あの、それでね、、」
「あーーー」
ダニエルが頭をボリボリ掻きながら、「なんなんだよ、無自覚って!俺すっごいアピールしてたつもりだったのに。全く気がついていなかったの?」
「……えっ?」
「俺、ずっとエレファが好きだから話しかけてきたんだ。今頃になって好きって気がついたなんてちょっとショックだよ、遅い!」
「だって、わかんないんだもの。ダニエルがわたしにだけ笑ってくれるのが嬉しかったわ。女の子ではわたしとだけ話してくれていたしとても嬉しいと思っていたの。ドキドキするのも嬉しくなるのも悲しくなってしまうのも全てダニエルのことなの。
そしたらリヴェールがその気持ちが恋なんだって教えてくれたの」
「俺も…ずっとエレファが気になっていたんだ。だからあの二人がいない時になんとか話しかけたいと思っていたら、あの女子の集団が絡んできたから慌てて追い払ったんだ。せっかく話せるチャンスにあの子達は邪魔だからね」
「え?そうだったの?正義感からかと思っていたわ」
「誰が好き好んであんな連中に絡むんだ?俺はうるさい女の集団がどうしても苦手なんだ」
「そうだったのね」
それからのダニエルは今まで以上に優しかった。
一緒に昼食を摂ったり、休みの日はいろんなところへ連れて行ってくれた。
2年間の留学が終われば、わたしはブラン王国へ帰らないといけない。
日に日に元気がなくなっていくのをダニエルは心配してくれた。
未だに本当の理由を話せないでいるわたしは狡いと思う。嫌われたくない、愛しているんだもの。
でも国へ帰れば好きでもない男性と結婚するしかない。お父様から手紙が届いた。
いつものようにたわいもない内容だったのに最後のところに……
『婚約者が決まった。相手とのことは帰ってきてから……』
婚約者が決まったと書いてあったところまで読んで手紙は捨てた。ショックだった。
いずれは結婚しないといけないのはわかっていたのに、恋に浮かれて現実を見ていなかった。
「エレファ?」
ダニエルが優しくわたしの名を呼ぶ声が好き。
ダニエルの服の清潔な石鹸の匂いが好き。
大きい手で優しく触る彼が好き。
普段冷たい表情しか見せないのにわたしにだけ特別な笑顔を見せてくれるダニエルを愛している。
「好き、愛しているわ」
ダニエルにしがみついて、振り払われないことをいい事に抱きついたまま甘えた。
「お願い、わたしを離さないで」
「エレファがブラン王国へ帰らないといけないから悩んでいるんだろう?」
「何故……分かるの?」
「だって卒業まであと少し。日に日に落ち込んでいくから」
「わたし……向こうに戻ったら結婚させられるわ」
「うん、いい事だね」
「酷いわ、わたしもう貴方に会えなくなるのよ?」
「結婚相手の名前きちんと聞いた?」
「聞かないわ、だって貴方じゃなきゃ嫌だもの。貴方じゃないのなら名前なんて知らなくていい」
「君の婚約者はね、俺だよ」
「うっそ⁈え?どう言う事なの?なんで?どうして?」
「だってずっと君といるためには結婚するしかないからね。何度も何度も君の父上である国王陛下にお願いしたんだ」
「そうなの?」
「もちろんずっと断られ続けたんだけどね。諦めたら君は俺以外の男の手を取る事になる。どうしてもそれだけは嫌だった。愛していいのも、愛されるのも俺だけだからね。父上を説得して君との結婚の了承を得たんだ。そして君の両親に何度も断られながら結婚したいと申し込んだ」
「ほんとぉ?」
「うん、君の両親は他所の国に嫁がせる事に難色を示したんだけど『絶対に幸せにします』と言ったんだ」
「どうしてもっと早くにわたしに教えてくれなかったの?」
「だって、手紙が届いてるはずだし、もしかしてまだわざと君に知らせていないのかと思って様子を伺っていたんだ」
「うっ……馬鹿みたいに悩んでしまったわ……」
ダニエルをチラッと見た。
「でもね、とっても嬉しい。ダニエルわたしと結婚してください、愛しています」
「狡い、先に言うなんて!俺もエレファを愛しています。結婚しよう」
そしてわたし達は結婚をした。
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