【完結】今夜さよならをします

たろ

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新しい恋。

番外編  留学2年目のバズール③

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 改めてのデートはわたしが行きたいと言っていた展覧会へ。

 オリソン国の芸術家達だけではなく他国で有名な作家さんの絵や彫刻も飾られていて見るだけでワクワクする。

「ライナはほんとこう言うの好きだよな」

「うん、楽しい。お父様の仕事柄いろんな絵画や工芸品を見ていたからかもしれないけど、他国にはその土地の文化に反映されたものがたくさんあってそれを知らない人たちに伝えられるってとっても素敵なことだと思うの」

「うちの親も事務的なことは手伝っているけど実際飛び回って探して来ているのはライナの親父さんだもんな。俺もいつかは二人の後を継ぐことになるけどもっと勉強しないといけないな」

「うん、でもわたし家にいるだけの奥さんになるつもりはないの。一緒に商会をやっていきたい」

「そっかあ、一緒にか……ま、それもいいかもな」

「何?その言い方!嫌なの?」

「違う、さっきはさライナにまた俺の嫌なところ見せたしさ、いい気分じゃなかっただろう?」

「ああ、あの女の子ね。思い出したの。バズールって昔っから塩対応なのによくあんなことあったよね。リーリエ様もリリアンナ様も同じだったし。リリアンナ様には結婚迫られて了承しようとしたしね」

 わたしが笑いながら言うと髪を思いっきり掻きむしった。

「あれは……お前に害があるならあの人と結婚してお前にこれ以上迷惑かけないようにしようと思ったからだ。好きだったなわけじゃない。だけど困っている人にはすぐに手を差し伸べられる、そこは尊敬していたんだ。でも恋愛感情は持てなかった。お前のこと何度も諦めようとしたけどやっぱり無理だった。諦めるのはお前が誰かと結婚した時だとずっと思ってたんだ」

 バズールの言葉に胸がツキンっと痛んだ。
 シエルのことが好きだった時もバズールはずっと見守ってくれていたんだ。


「……リリアンナ様、市井で暮らしていると聞いたわ。列車事故の主犯ではなかったらしいわね」

「俺もそれは聞いた。でも、やってはいけないことをしたから罪は償わないとな」

「うん、許されないことをしたと思ってる、でも、頑張って生きてほしい。頑張って生きることも罪を償う贖罪になると思うの」

「ああそうだね」
 バズールは側近だったからリリアンナ様のいいところも知っていたのだろう。
 わたしは苦手だったけど、それでもあの堂々としたところや屈託のない笑顔は忘れられない。

 そこで話すのはやめた。

 わたし達の中ではもうリリアンナ様のことで話すことはないだろう。


 展覧会の後はバズールの行きたいと言っていたところへ向かった。
 そこは、珍しいお茶を出してくれる喫茶店だった。

「ここは、いろんな国のお茶を飲ませてくれるところなんだ。少量ずつ出してくれるから飲み比べ出来て楽しいんだ。ついでにそれに合わせたお菓子も出るんだ」

 わたし達は別々の飲み比べセットを頼んだ。

 お互い交換して飲んでは感想を言い合った。

「気候によって同じ葉の種類でもこんなに味が変わるんだね」

「うん、土壌の違いでも全く変わるらしい」

「ふふ、バズールの立てたデートって全部わたしが興味があるものばかりね」

「ライナってロマンティックなデートよりやっぱり君の興味のあるところへ行くのが一番喜ぶと思ったんだ」

「うんとっても楽しい」

 ーーバズールが必死で朝のことを無かったことにする姿にわたしはクスッと笑った。

 幼い頃から知っているバズール、お互いのいいところも悪いところも知っている。

 そしてバズールは夜星の見えるレストランに連れて行ってくれた。

 テラス席は周りに人がいない個室に近い感じになっていてゆっくりと食事を楽しめた。

 たくさんの星が輝いていて薄明かりのランプでの食事はとても素敵だった。
「ねえバズール、弟に爵位を譲ったけどいいの?うちの爵位は同じ伯爵でも新参者でまだまだ力はないわ、名前だけの伯爵よ?」

「俺はライナと結婚できたらそれでいい、力は俺がこれからつけていく。ライナは俺について来てくれたらそれでいい、絶対もう迷わない。ライナを幸せにするのは俺だって思ってる、他の人に譲る気はないよ」

「うん、期待してるよ」

「はいこれ」
 そっと渡されたのは……指輪だった。

「誕生日プレゼント……そして俺が卒業したら結婚しよう」

 今日のバズールはカッコつけるつもりだったのに、最初の出鼻を挫かれてずっと落ち込んで、それがなんだか可笑しくて。

「うん、幸せにしてね。わたしもバズールを幸せにするから」

 そして、わたしとバズールはオリソン国で結婚式を挙げた。

 この二年間はわたしにとってかけがえのない時間になったから。
 愛する人とこの国の人達に祝福されて結婚ができてとても幸せだった。

 そんな私たちの結婚式に……オリエ様とイアン様が出席してくれた。

 その二人を温かい目で見守っていたのは……カイさん達、二人の関係を知っている人達だった。

「オリエ様……わたしは素直じゃなくてバズールのこと好きだったのに気がつかなくて認めたくなくて遠回りしてしまいました。……オリエ様は……」

 本当はここから先の言葉を言いたかった。
 でもオリエ様の顔を見たらもう言えなくなった。

 泣きそうな顔……わたしなんかよりも辛い思いをして今を生きているんだもの。二人の世界に知らないわたしが踏み込むべきではない。

「ごめんなさい……わたし……オリエ様に助けていただいてそばに居ていただいて、とても安心して過ごすことができました。わたしの幸せを……分けてあげたい……幸せになって欲しくて……もうすぐこの国を離れますが、どうか幸せになってください。大好きですオリエ様」

 わたしの精一杯の気持ちがオリエ様の負担になりませんように…要らないことを言ったと少し後悔しながらも……わたしはオリエ様の幸せを願わずにいられなかった。

 そしてわたし達がオリソン国をさった後……二人は……




 ◇ ◇ ◇

「ねえバズール、最近髭を伸ばしているのはどうして?」

「うん、やっと髭が濃いくなって来たんだ。このまま伸ばそうと思って。これで女性が俺を避けてくれそうだろう?」

 ーー髭が伸びたバズールもかっこいいと思うのはわたしだけ?なのかしら。








 ◆ ◆ ◆

 イアンとオリエの恋は番外編から削除いたしました。

 8月25日から

【イアンとオリエの恋】として別作品として移すことになりました。

 そこに新しい話を少し追加いたします。

 感想をいただいた方達には申し訳ないと思っています。
 タグが消えてしまった方もいると思います。

 本当にすみません。

 ですがもしあと少し読んでもいいかなと思う方がいたらちょっと覗いてみてください。

           たろ





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感想 95

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みんなの感想(95件)

海野すじこ
2024.11.12 海野すじこ

バズールもシエルも結局は同じ。
途中リーリエと重なって見えたとか、お気に入りのオモチャとか言われて思う事があったならシエルと同じ事になるって危機感感じなかったのかな?
バズールは特にそれを目の当たりにしてるはずだけど。

自分から王女の護衛から外して下さいって早く願い出ていればライナの誤解はすぐに解けたはず。

ライナも結局はバズールもシエルと同じ事してるからバズールに何も言えない相談もできない、行動できなくなるって仕方ないんじゃないのかな?
バズールも信頼を失うような誤解させるようなことしてしまっているんだから。

散々シエルで辛い目にあったのに「またか···」って思えばどうしていいかわからないよね?

普通独身だったり男性関係に問題のある人に独身のそれもイケメンの護衛つける側にも問題ある···。
ちゃんと上司に相談して護衛対象に好意を持たれ仕事に不都合が起こる可能性がある事と、自分の大事な人に誤解されたくないので独身女性の護衛からは外してほしいと相談すべきだったかな。

独身の護衛対象には既婚者の護衛(恋愛対象になり得ない人材)をつけるように問題点を報告する事もできたのでは?

普通は男女の問題にならないように恋愛対象にならないような護衛をつけるのが普通。
それもお互い独身とか王族の護衛って既婚してなきゃダメとか規則があったような···?

一応問題点を上司に相談するくらいはできたんじゃない?一応仕事なんだから。

「王女が自分に好意を持たれているようなので、私では王女の護衛は務まらないようです。
仕事の内容も王女様の相手をしろという指示はありませんし、護衛対象に恋愛感情を持たれると仕事に問題が起こりかねませんので同性の護衛か部署移動をお願いします」と言えば角は立たないよね?

規定の仕事以上の事頼まれている時点で断る事もできるはずだよね?それ以上のお願いは仕事じゃないもの。

仕事で護衛してるんだから相手が私情を挟んだ時点で職務規定以上の事ですので答えられませんとキッパリ断ればいいのに。

シエルもバズールも仕事と私情のそういう線引きができない所が無理かなと思いました。
線引きができないなら一生主人公は異性の心配しなきゃいけないし、できればきっちりした人と恋愛して、心配事なく安心して相談したり言いたい事言い合える関係を築ける人と幸せになって欲しい気持ち。

解除
ななし
2024.11.05 ななし

私だったらバズールは嫌だな⤵️
一生、女の心配しないといけないなんて地獄だわ
正直、どの女にも優しいとかそんな
態度だから皆に勘違いさせて酷い目に会うし相手も可哀想しつこくしたら
冷たい態度って最初から線引きしろよって思うのは私だけかなぁ😞

解除
銀時
2024.10.16 銀時

中等部を卒業してからある一部の記憶が抜けている…シエルとは幼馴染の設定では?その事だけがちょっと引っかかってます。
完結お疲れ様でした!

解除

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