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新しい恋。
番外編 留学2年目のバズール②
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バズールと久しぶりのデート。
今日はわたしの誕生日。だから二人でお出掛け。
なんてテンション上げていたのは家を出る前までだった。
わたしは今サマンサと二人で小さな家を借りて暮らしている。
朝早くからサマンサが髪の毛を綺麗にまとめてくれた。
ふわふわにカールをしてサイドを編み込みにしてもらった。淡いレモンイエローのワンピースを着てサンダルを履いた。
一日歩き回ってもいいようにサマンサが選んでくれたデート服だ。
バズールが迎えにきてくれたのに、その横には何故か女の子がいた。
「え?誰?」
「ライナごめん。そこでこの子にぶつかって怪我をさせてしまったんだ」
よく見ると女の子は膝から血が出ていた。
「サマンサ、消毒薬とガーゼ!早く!」
リビングの椅子に座ってもらって、バズールは客間に追い出した。
スカートを捲り、膝の消毒。
「い、痛っ」
「あ、ごめんなさい、そっと優しくするわね」
膝からは血が滲んでいたけど思ったより傷は酷くなかった。
傷薬を塗ってガーゼを貼って、テープで止めて一応手当ては終了。
これくらいの怪我なら痕も残らず綺麗に治りそう。
「バズール入ってきていいわよ」
「ライナありがとう助かったよ」
「で、どうしたの?」
「俺がライナの家の手前の角を曲がろうとしたらこの子とぶつかったんだ」
女の子をよくよく見るとたぶんわたしより2、3歳年下くらいの女の子に見えた。
ワンピースは街でよく見る平民の子が来ている今流行りのプリーツが多めのスカートだった。
とても可愛らしい顔をしている。こんな可愛い子の足を怪我させてしまって、バズールはどうするのだろう。
そう思っていると女の子は椅子から立ちあがった。
「傷の手当てをしていただいてありがとうございました。わたしも曲がろうとしたらぶつかったのでお互い様です……ただ……あの…」
少し赤い顔をしてバズールを見た。
「………あっ…あれは事故だから気にしないで」
「事故?」わたしは二人の変な空気にキョトンとして聞いた。
「あ、あの、ぶつかった時に……あ、あの、お互いの唇が少し………」
「違う!言い方間違えないで!君の頬に俺の口が少し当たっただけだから!その後起きあがろうとしたら君がまたつまづいて俺の口の近くに君の口が当たったんであって、口は触れていない。それに起きあがろうとして転んでその傷だって出来たんだ!」
バズールが少し苛立ちながらその女の子に話しているのをじーーっと黙って聞いていた。
女の子は涙を潤ませて「そんな……酷い」と言った。
だが一瞬、目が笑っているのをわたしは見逃さなかった。
この子、バズールを狙ってわざとにぶつかったのかも。バズールはとにかくモテる。本人は全く女の子に興味がないから鬱陶しがっているけど、リーリエ様もリリアンナ様も本気でバズールのことを好きだったと思う。
幼馴染だからこそ今までのしつこい女の子のアプローチを見てきている。何度わたしも巻き込まれたか……
わたしは大きな溜息をついた。
「バズール、それでこの子どうするのかしら?」
「馬車を頼んでいるから一緒に乗せて家まで送って、それから出掛けよう」
「わかったわ」
「おうちは何処?」
「わたしの家は、ミレリー通りの3番街です、バズール様が送ってくださるなんて嬉しいです」
頬をピンク色に染めてバズールの腕にしがみつく女の子を横目にわたしは「じゃあ行ってくるわ」とサマンサに告げた。
女の子は当たり前のようにバズールに手を出してきた。
「悪いけど君の手を取ることはできないよ。さっきまで歩いてここに来たはずだ。手当てしたのに歩けないわけないだろう?」
女の子は悔しそうに唇を噛んで、何故かわたしを睨んだ。
ーーえ?どうしてわたしが睨まれるの?
女の子は仕方なく一人で馬車まで歩き出した。
馬車は我が家の前に停まっていた。バズールが今日のデートのために頼んでくれていたのだ。二人で乗るはずだった馬車に何故か知らない女の子が乗り込みしかもバズールの横に座った。
「悪いけど俺の隣はライナしか座れないと決まっているんだ」
そう言うとバズールは向かいの席に座り「ライナここに座って」とわたしに座るように促した。
わたしはもちろんバズールの横に座った。
目の前に座ってる女の子はムスッとしたまま、わたしを睨みつけていた。
ーーうーん、これは怪我から始まる恋愛を期待しているのかしら?わたしは悪者か悪役令嬢?
バズールもうんざりしているみたいで始終わたしの顔だけしか見ない。
馬車が彼女の家の近くに着くと、バズールはさっさと降ろした。
「今度俺に纏わりついたら次は警務官に訴えるからね」
バズールは冷たい表情で彼女を見た。
久しぶりにバズールが女の子に追われて迷惑をかけられる姿を見た。
そういつもバズールはこんな風に女の子にストーカーまがいのことをされていたのを思い出した。
バズールはだから優しいのにいつも周りに対してピリピリしてたんだった。オリソン国へ来てからのバズールは少し警戒感が緩んでいたけど、やっぱり周りはバズールを放ってはいないのよね。
「ライナ嫌な思いをさせてごめん、俺にチャンスをくれないか?」
「何言ってるの。別にバズールが何かしたわけではないわ。久しぶりに思い出したの、バズールっていつも女の子たちにストーカーされたり纏わりつかれたりしてたの」
「ごめん、ライナには迷惑かけたくなかったのに」
「ううん、気持ちを切り替えて楽しもう」
今日はわたしの誕生日。だから二人でお出掛け。
なんてテンション上げていたのは家を出る前までだった。
わたしは今サマンサと二人で小さな家を借りて暮らしている。
朝早くからサマンサが髪の毛を綺麗にまとめてくれた。
ふわふわにカールをしてサイドを編み込みにしてもらった。淡いレモンイエローのワンピースを着てサンダルを履いた。
一日歩き回ってもいいようにサマンサが選んでくれたデート服だ。
バズールが迎えにきてくれたのに、その横には何故か女の子がいた。
「え?誰?」
「ライナごめん。そこでこの子にぶつかって怪我をさせてしまったんだ」
よく見ると女の子は膝から血が出ていた。
「サマンサ、消毒薬とガーゼ!早く!」
リビングの椅子に座ってもらって、バズールは客間に追い出した。
スカートを捲り、膝の消毒。
「い、痛っ」
「あ、ごめんなさい、そっと優しくするわね」
膝からは血が滲んでいたけど思ったより傷は酷くなかった。
傷薬を塗ってガーゼを貼って、テープで止めて一応手当ては終了。
これくらいの怪我なら痕も残らず綺麗に治りそう。
「バズール入ってきていいわよ」
「ライナありがとう助かったよ」
「で、どうしたの?」
「俺がライナの家の手前の角を曲がろうとしたらこの子とぶつかったんだ」
女の子をよくよく見るとたぶんわたしより2、3歳年下くらいの女の子に見えた。
ワンピースは街でよく見る平民の子が来ている今流行りのプリーツが多めのスカートだった。
とても可愛らしい顔をしている。こんな可愛い子の足を怪我させてしまって、バズールはどうするのだろう。
そう思っていると女の子は椅子から立ちあがった。
「傷の手当てをしていただいてありがとうございました。わたしも曲がろうとしたらぶつかったのでお互い様です……ただ……あの…」
少し赤い顔をしてバズールを見た。
「………あっ…あれは事故だから気にしないで」
「事故?」わたしは二人の変な空気にキョトンとして聞いた。
「あ、あの、ぶつかった時に……あ、あの、お互いの唇が少し………」
「違う!言い方間違えないで!君の頬に俺の口が少し当たっただけだから!その後起きあがろうとしたら君がまたつまづいて俺の口の近くに君の口が当たったんであって、口は触れていない。それに起きあがろうとして転んでその傷だって出来たんだ!」
バズールが少し苛立ちながらその女の子に話しているのをじーーっと黙って聞いていた。
女の子は涙を潤ませて「そんな……酷い」と言った。
だが一瞬、目が笑っているのをわたしは見逃さなかった。
この子、バズールを狙ってわざとにぶつかったのかも。バズールはとにかくモテる。本人は全く女の子に興味がないから鬱陶しがっているけど、リーリエ様もリリアンナ様も本気でバズールのことを好きだったと思う。
幼馴染だからこそ今までのしつこい女の子のアプローチを見てきている。何度わたしも巻き込まれたか……
わたしは大きな溜息をついた。
「バズール、それでこの子どうするのかしら?」
「馬車を頼んでいるから一緒に乗せて家まで送って、それから出掛けよう」
「わかったわ」
「おうちは何処?」
「わたしの家は、ミレリー通りの3番街です、バズール様が送ってくださるなんて嬉しいです」
頬をピンク色に染めてバズールの腕にしがみつく女の子を横目にわたしは「じゃあ行ってくるわ」とサマンサに告げた。
女の子は当たり前のようにバズールに手を出してきた。
「悪いけど君の手を取ることはできないよ。さっきまで歩いてここに来たはずだ。手当てしたのに歩けないわけないだろう?」
女の子は悔しそうに唇を噛んで、何故かわたしを睨んだ。
ーーえ?どうしてわたしが睨まれるの?
女の子は仕方なく一人で馬車まで歩き出した。
馬車は我が家の前に停まっていた。バズールが今日のデートのために頼んでくれていたのだ。二人で乗るはずだった馬車に何故か知らない女の子が乗り込みしかもバズールの横に座った。
「悪いけど俺の隣はライナしか座れないと決まっているんだ」
そう言うとバズールは向かいの席に座り「ライナここに座って」とわたしに座るように促した。
わたしはもちろんバズールの横に座った。
目の前に座ってる女の子はムスッとしたまま、わたしを睨みつけていた。
ーーうーん、これは怪我から始まる恋愛を期待しているのかしら?わたしは悪者か悪役令嬢?
バズールもうんざりしているみたいで始終わたしの顔だけしか見ない。
馬車が彼女の家の近くに着くと、バズールはさっさと降ろした。
「今度俺に纏わりついたら次は警務官に訴えるからね」
バズールは冷たい表情で彼女を見た。
久しぶりにバズールが女の子に追われて迷惑をかけられる姿を見た。
そういつもバズールはこんな風に女の子にストーカーまがいのことをされていたのを思い出した。
バズールはだから優しいのにいつも周りに対してピリピリしてたんだった。オリソン国へ来てからのバズールは少し警戒感が緩んでいたけど、やっぱり周りはバズールを放ってはいないのよね。
「ライナ嫌な思いをさせてごめん、俺にチャンスをくれないか?」
「何言ってるの。別にバズールが何かしたわけではないわ。久しぶりに思い出したの、バズールっていつも女の子たちにストーカーされたり纏わりつかれたりしてたの」
「ごめん、ライナには迷惑かけたくなかったのに」
「ううん、気持ちを切り替えて楽しもう」
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