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新しい恋。
番外編 留学2年目のバズール
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「バズール!ちょっとそこ退いて!」
ライナが留学を終えて俺だけがあと一年オリソン国に残る予定だった。
なのに目の前にいるのは……ライナ。
『わたし、一年間ギルバート様のところで助手として働くことになったの!』
嬉しそうに話すライナを俺は何も返事をせずに聞いていた。
やっと両思いになれて、無理やり婚約者の地位に納まったのに……なんで一番居て欲しくないこの場所を選ぶ?
俺は今日ライナに頼まれてギルバート様の仕事を一緒に手伝っている。
たくさんの書類の山と馬鹿みたいにある本の山。
ここから今度提出する法案に関する参考文献を纏めた用紙を探し出すと言う仕事だ。
それも失くしたのは1枚だけ。
総勢十人で必死で探した。
5時間かけて1枚の用紙を救出した。
俺はリリアンナ殿下の側近の仕事がなくなり、今は国に帰ったら文官になる為、オリソン国で見習いとして仕事をしている。
その用紙を持ってイアン様と王宮へと急ぎ帰っている。
俺の上司はイアン・シャトナー、シャトナー国の元王太子でオリエ様の元夫らしい。
二人の話は禁句だとカイ様に言われた。
「いいか、オリエは素直じゃないんだ。イアンのことを話すとすぐダンマリになる。噂が気になって仕方がないくせに!」
と言っていた。
ライナが集めた情報によると、オリエ様はオリソン国にカイ様が連れて来た。そして女騎士となり今もカイ様の自宅で暮らしている。
イアン様はアルク国で文官として働いていた。平民から男爵の地位をもらい、頑張っていたらしい。
一度はオリエ様に告白するも断られ、ここで終わるかと思ったら、オリソン国の国王とシャルトー国の王子で今は特使としてこちらの国で仕事をしているイーサン様の計らいでイアン様がオリソン国で仕事をしている。
カイ様が引き抜いて来たらしい。
俺はイアン様の横顔をチラリとみた。
馬に乗り前を先導しているのはオリエ様。
その後ろに俺とイアン様がついて行っている。
オリエ様は気にもせず仕事をこなす。
イアン様はその後ろ姿を愛情を込めた目で見つめながら馬を走らせていた。
二人が仕事のこと以外で話すことも目線を合わすこともない。
だけどお互いが意識をしているのはわかる。
28歳のイアン様は俺から見てもかっこいい大人の男性だ。
王宮内でも女性達からの人気はすごい。
独身の中では一番モテているかもしれない。
オリエ様ももちろん人気はある。だけどオリエ様にはカイ様と言う怪物が後見人としているので簡単には手を出せない。
遊びで付き合おうものならどこかに飛ばされてしまうかもしれない。
カイ様は自分の懐に入れた者にはとことん大事にする人。オリエ様はもちろんライナも大事にされている。
王宮に着くとオリエ様は俺たちに頭を下げて何処かへ行ってしまった。
二人の間に会話はなかった。
「バズール、急ぐぞ。全くギルバート様は研究にばっかりのめり込んで大事なものを適当に扱うんだから!」
俺はギルバート様にヤキモチを妬いていた頃をふと思い出した。
いつもライナはあそこに入り浸って、時には朝帰りをしていた。
「何やってんだよ!」と思っていたけど、今の現状を見ると何やってるって…ボロボロになりながらひたすら本や参考資料と睨めっこして、外国の難しい言葉や古語を訳したりと俺が思った以上に真剣で、そしてそこには恋愛なんてどこにもなかった。
俺は今イアン様のもとで勉強をしている。自分は結構成績も良く優秀だと思い込んでいたけど、俺なんか全然駄目だった。
あと一年、ライナの横に立てる男になる為に俺はもっと努力をしなければ。
ライナに追いついて彼女に向き合える人になりたい。
もうライナのために身を引いてライナの幸せを願うことなんてしない。ライナを自分が幸せに出来る男になる。
明日はライナの誕生日。
勉強も仕事も終わらせてライナのために休みを作った。
「イアン様、絶対に今日中に終わらせましょう!俺明日は大事なデートなんです」
「ふうん、いいな。俺なんか……」
そう言うと窓から外にいる騎士団の集団に目を向けていた。
「バズール、間違えるな。思っていることは絶対、相手に言葉できちんと伝えろよ」
「あ、は、はい」
イアン様の言葉はとても重たく感じた。
◆ ◆ ◆
明日はライナとバズールのデート編の予定です。
ライナが留学を終えて俺だけがあと一年オリソン国に残る予定だった。
なのに目の前にいるのは……ライナ。
『わたし、一年間ギルバート様のところで助手として働くことになったの!』
嬉しそうに話すライナを俺は何も返事をせずに聞いていた。
やっと両思いになれて、無理やり婚約者の地位に納まったのに……なんで一番居て欲しくないこの場所を選ぶ?
俺は今日ライナに頼まれてギルバート様の仕事を一緒に手伝っている。
たくさんの書類の山と馬鹿みたいにある本の山。
ここから今度提出する法案に関する参考文献を纏めた用紙を探し出すと言う仕事だ。
それも失くしたのは1枚だけ。
総勢十人で必死で探した。
5時間かけて1枚の用紙を救出した。
俺はリリアンナ殿下の側近の仕事がなくなり、今は国に帰ったら文官になる為、オリソン国で見習いとして仕事をしている。
その用紙を持ってイアン様と王宮へと急ぎ帰っている。
俺の上司はイアン・シャトナー、シャトナー国の元王太子でオリエ様の元夫らしい。
二人の話は禁句だとカイ様に言われた。
「いいか、オリエは素直じゃないんだ。イアンのことを話すとすぐダンマリになる。噂が気になって仕方がないくせに!」
と言っていた。
ライナが集めた情報によると、オリエ様はオリソン国にカイ様が連れて来た。そして女騎士となり今もカイ様の自宅で暮らしている。
イアン様はアルク国で文官として働いていた。平民から男爵の地位をもらい、頑張っていたらしい。
一度はオリエ様に告白するも断られ、ここで終わるかと思ったら、オリソン国の国王とシャルトー国の王子で今は特使としてこちらの国で仕事をしているイーサン様の計らいでイアン様がオリソン国で仕事をしている。
カイ様が引き抜いて来たらしい。
俺はイアン様の横顔をチラリとみた。
馬に乗り前を先導しているのはオリエ様。
その後ろに俺とイアン様がついて行っている。
オリエ様は気にもせず仕事をこなす。
イアン様はその後ろ姿を愛情を込めた目で見つめながら馬を走らせていた。
二人が仕事のこと以外で話すことも目線を合わすこともない。
だけどお互いが意識をしているのはわかる。
28歳のイアン様は俺から見てもかっこいい大人の男性だ。
王宮内でも女性達からの人気はすごい。
独身の中では一番モテているかもしれない。
オリエ様ももちろん人気はある。だけどオリエ様にはカイ様と言う怪物が後見人としているので簡単には手を出せない。
遊びで付き合おうものならどこかに飛ばされてしまうかもしれない。
カイ様は自分の懐に入れた者にはとことん大事にする人。オリエ様はもちろんライナも大事にされている。
王宮に着くとオリエ様は俺たちに頭を下げて何処かへ行ってしまった。
二人の間に会話はなかった。
「バズール、急ぐぞ。全くギルバート様は研究にばっかりのめり込んで大事なものを適当に扱うんだから!」
俺はギルバート様にヤキモチを妬いていた頃をふと思い出した。
いつもライナはあそこに入り浸って、時には朝帰りをしていた。
「何やってんだよ!」と思っていたけど、今の現状を見ると何やってるって…ボロボロになりながらひたすら本や参考資料と睨めっこして、外国の難しい言葉や古語を訳したりと俺が思った以上に真剣で、そしてそこには恋愛なんてどこにもなかった。
俺は今イアン様のもとで勉強をしている。自分は結構成績も良く優秀だと思い込んでいたけど、俺なんか全然駄目だった。
あと一年、ライナの横に立てる男になる為に俺はもっと努力をしなければ。
ライナに追いついて彼女に向き合える人になりたい。
もうライナのために身を引いてライナの幸せを願うことなんてしない。ライナを自分が幸せに出来る男になる。
明日はライナの誕生日。
勉強も仕事も終わらせてライナのために休みを作った。
「イアン様、絶対に今日中に終わらせましょう!俺明日は大事なデートなんです」
「ふうん、いいな。俺なんか……」
そう言うと窓から外にいる騎士団の集団に目を向けていた。
「バズール、間違えるな。思っていることは絶対、相手に言葉できちんと伝えろよ」
「あ、は、はい」
イアン様の言葉はとても重たく感じた。
◆ ◆ ◆
明日はライナとバズールのデート編の予定です。
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