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新しい恋。
番外編 リリアンナの後悔④
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このまま永遠に眠りにつければよかったのに……
目が覚めればまた白い天井が見えた。
現実は心が軽くなることもなく、自分が仕出かしたことに反省してももう元には戻らない。
なのに足元にしがみつかれていた亡くなった人たちの手が消えていることに気がついた。
ただ涙が溢れて…子供のようにわんわん泣いた。
大きな声で……涙も鼻水も出て。
誰が見てても気にならない、そんなことどうでもよかった。
感情が溢れ出し、ひたすら泣いた。
泣き続け、涙も出なくなった頃……
部屋の角に居る人に話しかけた。
「わたしはもう平民です。あの北の塔を出たわたしはここにとどまる資格はないと思います」
部屋の角にいたお兄様に話しかけた。
ずっとわたしの泣き顔を見ていた。
気づいていたけど、もうどうでもよかった。
「わたしは君と向き合うこともせず君を甘やかすことしかしなかった。いま君がこんなことになった一端はわたしの所為なのだろう」
このオリソン国の国王がわたしの顔を見て、唇を噛み辛そうに話しかける。
「お兄様……言え国王陛下……わたしの過ちは身分に甘えて好き放題して来たことです。自分には何の価値も力もないのにお兄様の力を借りて傲慢でわがまま放題に好きなことをして来ました」
「それで良しだと思わせたのはわたしだ」
「もういい大人のわたしが陛下やカイ様の所為にするのはおかしいですよね?どうぞ塔から出ないといけないのならわたしを市井へ放り出してください」
「しかし、今まで贅沢三昧で生きて来たお前に市井で暮らすことができるわけがないだろう?」
「もし……そうだとしてもそれまでです。北の塔で過ごして死を怖いものだと思わなくなりました。でもだからと言って自ら生きることを捨てません。わたしの罪は死んで楽になるものではないのだから。生き続けることが償いですよね」
ーー本当は今すぐに死にたい。そうすれば楽になれるから。でもね楽になってはいけない。
事故で亡くなった人達のことを死んで楽になるからと忘れてはいけない。
「お前が主犯ではないことはわかった。だがきっかけの一つであることは確かだ。……罪は軽くなった。北の塔での幽閉はなくなる、その代わり市井で暮らすことになる身ひとつで」
「わかりました……すぐに出ていきます」
「わたしは王だ。だが今はリリアンナの兄でしかない。兄として今は話す………このトランクはリリアンナにとって思い出の品だ、持って行きなさい。
まだ体は酷いものだ、市井に出ればすぐに死んでしまう……兄として生きてほしい。だから、市井に出たらこの住所へ向かってほしい。
ここでなら生きる方法を教えてくれる……もう二度と会うことはないだろう……愛している大切なリリアンナ」
少し体が小刻みに震えながらわたしを抱きしめて額にキスを落とした。
どれくらいの時間抱きしめられたのだろう……
そっと体が離れていった。
「………俺は行くね」
小さな声で呟くと振り返らずに部屋を出ていった。
わたしはお兄様の背中を黙って見送った。
一人になり部屋の中よく見回すと、街中で着られているワンピースと靴、帽子が置かれていた。
わたしはベッドから出るとその服に着替えた。
そして横にはサンドイッチの入った紙袋。
わたしが大好きな生クリームとイチゴの入ったサンドイッチとたまごのサンドイッチが入っていた。
お兄様が置いてくれたものだと思い、「ありがとうございます」と聞こえてはいないのにお礼を言うと、トランクと紙袋を持ち部屋を出た。
住み慣れた王宮……ここは離宮にある医務室だった。
わたしを見ても誰も振り返らない。
ーー今の痩せ細って化粧もしていないわたしがリリアンナだとは気がつかないのよね。
わたしは前だけを見て歩き出した。
ーーわたしの贖罪は続く。
目が覚めればまた白い天井が見えた。
現実は心が軽くなることもなく、自分が仕出かしたことに反省してももう元には戻らない。
なのに足元にしがみつかれていた亡くなった人たちの手が消えていることに気がついた。
ただ涙が溢れて…子供のようにわんわん泣いた。
大きな声で……涙も鼻水も出て。
誰が見てても気にならない、そんなことどうでもよかった。
感情が溢れ出し、ひたすら泣いた。
泣き続け、涙も出なくなった頃……
部屋の角に居る人に話しかけた。
「わたしはもう平民です。あの北の塔を出たわたしはここにとどまる資格はないと思います」
部屋の角にいたお兄様に話しかけた。
ずっとわたしの泣き顔を見ていた。
気づいていたけど、もうどうでもよかった。
「わたしは君と向き合うこともせず君を甘やかすことしかしなかった。いま君がこんなことになった一端はわたしの所為なのだろう」
このオリソン国の国王がわたしの顔を見て、唇を噛み辛そうに話しかける。
「お兄様……言え国王陛下……わたしの過ちは身分に甘えて好き放題して来たことです。自分には何の価値も力もないのにお兄様の力を借りて傲慢でわがまま放題に好きなことをして来ました」
「それで良しだと思わせたのはわたしだ」
「もういい大人のわたしが陛下やカイ様の所為にするのはおかしいですよね?どうぞ塔から出ないといけないのならわたしを市井へ放り出してください」
「しかし、今まで贅沢三昧で生きて来たお前に市井で暮らすことができるわけがないだろう?」
「もし……そうだとしてもそれまでです。北の塔で過ごして死を怖いものだと思わなくなりました。でもだからと言って自ら生きることを捨てません。わたしの罪は死んで楽になるものではないのだから。生き続けることが償いですよね」
ーー本当は今すぐに死にたい。そうすれば楽になれるから。でもね楽になってはいけない。
事故で亡くなった人達のことを死んで楽になるからと忘れてはいけない。
「お前が主犯ではないことはわかった。だがきっかけの一つであることは確かだ。……罪は軽くなった。北の塔での幽閉はなくなる、その代わり市井で暮らすことになる身ひとつで」
「わかりました……すぐに出ていきます」
「わたしは王だ。だが今はリリアンナの兄でしかない。兄として今は話す………このトランクはリリアンナにとって思い出の品だ、持って行きなさい。
まだ体は酷いものだ、市井に出ればすぐに死んでしまう……兄として生きてほしい。だから、市井に出たらこの住所へ向かってほしい。
ここでなら生きる方法を教えてくれる……もう二度と会うことはないだろう……愛している大切なリリアンナ」
少し体が小刻みに震えながらわたしを抱きしめて額にキスを落とした。
どれくらいの時間抱きしめられたのだろう……
そっと体が離れていった。
「………俺は行くね」
小さな声で呟くと振り返らずに部屋を出ていった。
わたしはお兄様の背中を黙って見送った。
一人になり部屋の中よく見回すと、街中で着られているワンピースと靴、帽子が置かれていた。
わたしはベッドから出るとその服に着替えた。
そして横にはサンドイッチの入った紙袋。
わたしが大好きな生クリームとイチゴの入ったサンドイッチとたまごのサンドイッチが入っていた。
お兄様が置いてくれたものだと思い、「ありがとうございます」と聞こえてはいないのにお礼を言うと、トランクと紙袋を持ち部屋を出た。
住み慣れた王宮……ここは離宮にある医務室だった。
わたしを見ても誰も振り返らない。
ーー今の痩せ細って化粧もしていないわたしがリリアンナだとは気がつかないのよね。
わたしは前だけを見て歩き出した。
ーーわたしの贖罪は続く。
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