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新しい恋。
にじゅうよん
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学校での生活に慣れてきた頃、リリアンナ殿下という名前が聞こえてくることが増えた。
『リリアンナ殿下が幽閉されるらしい』
『他国に嫁ぐことになっていたがその話も消えてしまったらしい』
『何人もの人が亡くなったんだ。当たり前だよ』
そんな話が耳に入ってくる。
わたしの乗った列車の事故をおこしバズールに呪いをかけたとカイさんは言っていた。
でもわたしはバズールが突然意識を取り戻したし、呪いなんてあり得ない話なので信じていなかった。
でも、この国に来て知ったのだけど、リリアンナ様……殿下は本当に列車事故を指示してたくさんの人が亡くなり怪我をしたようだ。
その責任を取り幽閉されることになった。
わたしはギルバート先生に呼ばれて王宮へ行くことになった。
迎えに来てくれた騎士の方は女性の人だった。
わたしを見てにっこりと微笑んだ、まるで知り合いのように。
わたしはぎこちなく挨拶をして微笑み返した。
王宮内の奥の間に通された。
そこには、ギルバート先生とカイさん、そして国王陛下がいらっしゃった。
わたしは深々と頭を下げて挨拶をした。
「久しぶりだな、ライナ嬢」
陛下はわたしと会ったことがあるらしい。
でもわたしには記憶がない。だから仕方なく本当のことを告げることにした。
「不敬な発言をお許しください。わたしにはここで暮らした記憶がございません。ですのでわたしは……「ああ、そうだったな。すまない。その記憶もリリアンナの所為だった」
陛下は眉を顰め、少し苛立ったような声で話し出した。
「リリアンナは反省するどころかさらに犯罪を犯してしまった。それも罪もない国民の命まで奪うことになってしまった。
本人もまさかこんな大事になるとは思っていなかったらしい。流石に怖くなって部屋から出ることも出来ずにいた。
指示をされて事故を起こした者たちは捕らえた。リリアンナは一生涯外の景色を見ることは叶わないだろう。死刑にされてもおかしくないことをしてしまった……だが仮にも王族。
我が国の法律では簡単に死刑にはできない、だから死んだほうがマシだと思える一生を送って生き続けてもらうことにした」
その言葉には一切家族の愛情は感じられなかった。憎悪しか感じられず、近くにいるだけでゾッとして鳥肌が立った。
ただ、どんな罰なのか内容は具体的には話そうとしなかった。たぶん…わたしには聞かせられない内容なのだろう。
「君を呼んだのは君の記憶を戻すためだ。本当は君を意識不明にして永遠に眠り続ける呪いをかける予定がバズールが咄嗟に庇って彼が呪いを受けてしまったんだ。そしてその代わりに君がバズールの呪いを受けた。リリアンナはね、バズールから君の記憶を消し去ろうとしたんだ」
「バズールからわたしのことを?……忘れさせる?」
「君が邪魔だったんだろう。自分が無理矢理嫁ぐことになってきみとバズールだけが幸せになるのが許せなかったらしい」
「わたしとバズールが幸せ……?」
陛下の横にいるカイさんがすまなそうに話し出した。
「ライナ、バズールの呪いは術師を捕まえて解呪した。だがライナの呪いをかけた術師は捕まえることが出来なかったんだ。列車事故に巻き込まれて亡くなっていた。かけるだけかけてさっさと死にやがった。だから解呪方法がなかなか見つからなくて時間がかかってしまったんだ」
「……そうだったんですね」
わたしはカイさんがわたしの前にまた来ると言ったのに現れなかった理由にやっと納得した。
「もしかして、バズールに何も聞いていないのか?」
ギルバート先生が驚き、聞いてきた。
「……はい」
コクっと頷くしかなかった。
ーーわたしは……何も知らない。たぶんバズールは記憶のないわたしに知らせたくなくて敢えて教えなかったのだと思う。それが彼の優しさだから。
「ならば選んで欲しい。記憶を取り戻すのか、それともそのままで一生過ごすのか?」
「え?それはどういうことでしょう?」
「君の失った記憶はリーリエ嬢やリリアンナにまつわることが殆どだ。嫌な思い出が多いのだと思う。今生活に支障がないのならそのままでいることも選べる。全てを思い出すことだけが幸せとは限らないんじゃないのか?」
先生の優しい言葉に、思い出さなくてもいいと言われそんなものかと納得してしまった。確かにあまり不便だとは感じていない。
たまに人と会うと違和感を感じるしわからないもどかしさはあるけど、それに慣れれば困ることではなくなった。
わたしにとって必要な人の記憶は残っているからなのかもしれない。
でも……それでも……なくなった記憶もわたしにとって大切なものだったのでは?
辛いから悲しかったからもう忘れていてもいいなんて……おかしいと思ってしまう。
しばらく頭の中で色々と考え込んでいた。
どうしよう、どうするべきなのか?
「わたしは、記憶を取り戻したいです。カイさん、お願いします」
「わかった」
それからわたしは別の部屋へと女性騎士から案内された。
そこは診療所のようだった。
ベッドに寝かされると、男の人がわたしに優しく話しかけてきた。
「体の力を抜いてゆっくりと眠りにつきましょう」
その言葉を聞いたのが最後でそのまま意識を失った。
目覚めるとサマンサが借りている家のわたし専用の部屋で眠りについていたようだ。
「ここは………」
最近ずっと重たく感じていた頭の中がスッキリとした気分で目覚めることができた。
「ライナ、起きたんだ」
わたしの声に反応したのはバズールだった。
「バズール?どうしてここにいるの?」
「君の解呪が終わってこの家に運ばれてきたと連絡が入ってここに来たんだ」
「そう……」
ーー今は何時?
壁時計に目をやると、もう夜の8時を過ぎているようだった。
「あっ……5時間も経っているのね」
「違うよ、あの解呪からまる二日以上経ってるんだ」
「え?二日?」
「なかなか目覚めないから心配したんだ、カイ様が目覚める時間は人によって曖昧だと言ってた。それにしても長い眠りだったね。
で、記憶は戻った?」
ーーあっ、思い出してる……
シエルのこともリーリエ様のことも、そしてリリアンナ殿下のことも。
それから一番大事なバズールとのことも……
「あの列車事故の時……わたしを庇ったせいで頭を強く打ったのよね?そしてわたしの代わりに呪いを受けたんだった。わたしは運悪くガラスの破片でお腹を怪我してしまってそのまま意識を失ったんだけど、男の人が「ちくしょう失敗した!」「この女と男、逆の呪いがかかっているぞ」と薄れゆく記憶の中で話しているのを聞いたの…」
「うん、俺が意識を失って身が覚めた時、ライナが記憶を失っていると知って、今幸せなら思い出す必要はないと思ったんだ。嫌なこと忘れてるんならちょうどいいだろう?」
「でもわたし……大事なこと忘れていたみたい」
「大事なこと?」
『リリアンナ殿下が幽閉されるらしい』
『他国に嫁ぐことになっていたがその話も消えてしまったらしい』
『何人もの人が亡くなったんだ。当たり前だよ』
そんな話が耳に入ってくる。
わたしの乗った列車の事故をおこしバズールに呪いをかけたとカイさんは言っていた。
でもわたしはバズールが突然意識を取り戻したし、呪いなんてあり得ない話なので信じていなかった。
でも、この国に来て知ったのだけど、リリアンナ様……殿下は本当に列車事故を指示してたくさんの人が亡くなり怪我をしたようだ。
その責任を取り幽閉されることになった。
わたしはギルバート先生に呼ばれて王宮へ行くことになった。
迎えに来てくれた騎士の方は女性の人だった。
わたしを見てにっこりと微笑んだ、まるで知り合いのように。
わたしはぎこちなく挨拶をして微笑み返した。
王宮内の奥の間に通された。
そこには、ギルバート先生とカイさん、そして国王陛下がいらっしゃった。
わたしは深々と頭を下げて挨拶をした。
「久しぶりだな、ライナ嬢」
陛下はわたしと会ったことがあるらしい。
でもわたしには記憶がない。だから仕方なく本当のことを告げることにした。
「不敬な発言をお許しください。わたしにはここで暮らした記憶がございません。ですのでわたしは……「ああ、そうだったな。すまない。その記憶もリリアンナの所為だった」
陛下は眉を顰め、少し苛立ったような声で話し出した。
「リリアンナは反省するどころかさらに犯罪を犯してしまった。それも罪もない国民の命まで奪うことになってしまった。
本人もまさかこんな大事になるとは思っていなかったらしい。流石に怖くなって部屋から出ることも出来ずにいた。
指示をされて事故を起こした者たちは捕らえた。リリアンナは一生涯外の景色を見ることは叶わないだろう。死刑にされてもおかしくないことをしてしまった……だが仮にも王族。
我が国の法律では簡単に死刑にはできない、だから死んだほうがマシだと思える一生を送って生き続けてもらうことにした」
その言葉には一切家族の愛情は感じられなかった。憎悪しか感じられず、近くにいるだけでゾッとして鳥肌が立った。
ただ、どんな罰なのか内容は具体的には話そうとしなかった。たぶん…わたしには聞かせられない内容なのだろう。
「君を呼んだのは君の記憶を戻すためだ。本当は君を意識不明にして永遠に眠り続ける呪いをかける予定がバズールが咄嗟に庇って彼が呪いを受けてしまったんだ。そしてその代わりに君がバズールの呪いを受けた。リリアンナはね、バズールから君の記憶を消し去ろうとしたんだ」
「バズールからわたしのことを?……忘れさせる?」
「君が邪魔だったんだろう。自分が無理矢理嫁ぐことになってきみとバズールだけが幸せになるのが許せなかったらしい」
「わたしとバズールが幸せ……?」
陛下の横にいるカイさんがすまなそうに話し出した。
「ライナ、バズールの呪いは術師を捕まえて解呪した。だがライナの呪いをかけた術師は捕まえることが出来なかったんだ。列車事故に巻き込まれて亡くなっていた。かけるだけかけてさっさと死にやがった。だから解呪方法がなかなか見つからなくて時間がかかってしまったんだ」
「……そうだったんですね」
わたしはカイさんがわたしの前にまた来ると言ったのに現れなかった理由にやっと納得した。
「もしかして、バズールに何も聞いていないのか?」
ギルバート先生が驚き、聞いてきた。
「……はい」
コクっと頷くしかなかった。
ーーわたしは……何も知らない。たぶんバズールは記憶のないわたしに知らせたくなくて敢えて教えなかったのだと思う。それが彼の優しさだから。
「ならば選んで欲しい。記憶を取り戻すのか、それともそのままで一生過ごすのか?」
「え?それはどういうことでしょう?」
「君の失った記憶はリーリエ嬢やリリアンナにまつわることが殆どだ。嫌な思い出が多いのだと思う。今生活に支障がないのならそのままでいることも選べる。全てを思い出すことだけが幸せとは限らないんじゃないのか?」
先生の優しい言葉に、思い出さなくてもいいと言われそんなものかと納得してしまった。確かにあまり不便だとは感じていない。
たまに人と会うと違和感を感じるしわからないもどかしさはあるけど、それに慣れれば困ることではなくなった。
わたしにとって必要な人の記憶は残っているからなのかもしれない。
でも……それでも……なくなった記憶もわたしにとって大切なものだったのでは?
辛いから悲しかったからもう忘れていてもいいなんて……おかしいと思ってしまう。
しばらく頭の中で色々と考え込んでいた。
どうしよう、どうするべきなのか?
「わたしは、記憶を取り戻したいです。カイさん、お願いします」
「わかった」
それからわたしは別の部屋へと女性騎士から案内された。
そこは診療所のようだった。
ベッドに寝かされると、男の人がわたしに優しく話しかけてきた。
「体の力を抜いてゆっくりと眠りにつきましょう」
その言葉を聞いたのが最後でそのまま意識を失った。
目覚めるとサマンサが借りている家のわたし専用の部屋で眠りについていたようだ。
「ここは………」
最近ずっと重たく感じていた頭の中がスッキリとした気分で目覚めることができた。
「ライナ、起きたんだ」
わたしの声に反応したのはバズールだった。
「バズール?どうしてここにいるの?」
「君の解呪が終わってこの家に運ばれてきたと連絡が入ってここに来たんだ」
「そう……」
ーー今は何時?
壁時計に目をやると、もう夜の8時を過ぎているようだった。
「あっ……5時間も経っているのね」
「違うよ、あの解呪からまる二日以上経ってるんだ」
「え?二日?」
「なかなか目覚めないから心配したんだ、カイ様が目覚める時間は人によって曖昧だと言ってた。それにしても長い眠りだったね。
で、記憶は戻った?」
ーーあっ、思い出してる……
シエルのこともリーリエ様のことも、そしてリリアンナ殿下のことも。
それから一番大事なバズールとのことも……
「あの列車事故の時……わたしを庇ったせいで頭を強く打ったのよね?そしてわたしの代わりに呪いを受けたんだった。わたしは運悪くガラスの破片でお腹を怪我してしまってそのまま意識を失ったんだけど、男の人が「ちくしょう失敗した!」「この女と男、逆の呪いがかかっているぞ」と薄れゆく記憶の中で話しているのを聞いたの…」
「うん、俺が意識を失って身が覚めた時、ライナが記憶を失っていると知って、今幸せなら思い出す必要はないと思ったんだ。嫌なこと忘れてるんならちょうどいいだろう?」
「でもわたし……大事なこと忘れていたみたい」
「大事なこと?」
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