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新しい恋。

じゅうご

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 わたしが意識を取り戻したのは列車事故から数日後だった。

 目を覚ますと真っ白な天井。
 重たくて動かすのがやっとの体。
 頭だけを動かして周囲を見た。

 誰もいない静かな部屋。

 簡素な木の棚とテーブルと椅子2脚がポツンと置いてある。

 わたしの腕には点滴……そして手を動かすとお腹に違和感があった。

 やはりあの時の血はお腹からだった。

 包帯を巻かれているのがわかる。

 痛みが……少しずつ感じてきた。

 生きていた。死を覚悟していたのに……

 誰かに目が覚めたことを知らせたいのに……喉が渇き声がなかなか出てこようとしない。

「…………っ……う………」

 ーー誰か……水……

 しばらく痛みと喉の渇きに耐えていると部屋に入ってきた………

「ライナ様?」
 サマンサはわたしの顔を見ると慌ててベッドに近づいてきた。

「よかった……目覚めたんですね?」

「………み、み………ず…」

「お水ですね?お待ちください」
 サマンサはテーブルの上に置いてある水差しからコップに水を注いでわたしの口にコップを当ててゆっくりと飲ませてくれた。

 ゴクゴク飲んでなんとか喉の渇きが少しだけおさまった。

「ライナ様、すぐにお医者様をお呼びします」

 サマンサは急いで病室を出て行った。

 わたしは少しだけ落ち着いた喉の渇きにホッとしながらじっとサマンサが戻ってくるのを待った。




 それからはお父様とお母様が病室に来てわたしの姿を見て「やっと意識が戻ってよかった」と涙を流して喜んでくれた。

 わたしのお腹はガラスの破片で切って大量の血が流れたらしい。でも一命は取り留めた。
 危険な状態ではあったらしい。

「お前は強運の持ち主だ」とお父様が苦笑いをした。

 サマンサが入院中寝泊まりしてわたしの看護をしてくれることになった。

「長期休暇中でよかった」

 何度となくお父様達がそう言うのだが何のことかわからずにいたが、聞き返すことはしなかった。

 自分のことだと思っていなかったから。
 マーサはわたしの様子が少しおかしいのでは?と、

「ライナ様少し質問をしてもよろしいですか?」
 と言い出した。
 わたしが頷くと質問を始めた。

「列車事故のことは覚えていますか?」

「もちろんよ。とても痛かったわ」

「どうして列車に乗っていたのですか?」

「どうしてって……どうしてかしら?」

「では列車には誰と乗っていましたか?」

「ふふ、何を言っているの?一人に決まっているわ」

「留学していたこと覚えていますか?」

「もちろんよ?バズールが確か留学したのよね?」

「ライナ様……」
 サマンサは青い顔をして「少しお待ちください」と言って先生を呼びに行った。

 順調に回復していると聞いていたのにわたしは先生から診察を受けることになった。

「記憶がいくつか欠乏しているようです、逆行性健忘症のようです。検査してみないとわかりませんが」

「……記憶……?忘れている?」

 ーー確かにどうして列車に乗ったのか覚えていない。

「そう言えば……バズールは留学したままなのかしら?もうずっと会っていないもの」

「ライナ様がバズール様のことを何も聞かないのはおかしいとは思っていました……意識を取り戻してまだ三日なので、わたし達もあえて話題にしないようにしてはいましたが……」

「ねぇ、どう言うことなの?」

 なんだか嫌な予感がする。
 大事なことを忘れているの?

 バズールが現れないのは留学中だからだと思っていた。

「バズール様は……まだ意識が戻りません」

「え?バズールが?どうして?」

 いつも憎まれ口ばかりのバズール……何があったの?













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