88 / 109
新しい恋。
じゅうさん
しおりを挟む
バズールの声を聞いて慌てて鍵を開けた。
ガチャッ。
扉が開いた瞬間、バズールは頭を思いっきり下げて
「遅れてごめん!」と謝った。
「どうしたの?どうやって汽車に……」
疑問しか浮かばない。
「ギリギリで汽車に乗り込んだのはいいけど、切符が見つからなくて車掌さんに怪しまれて今まで捕まってた」
「捕まる?え?……じゃあ見つかったの?」
「うん、入れてたはずの内ポケットに入ってなくて必死で服のポケット探したら何故か俺……手の中に隠し持ってた」
「それって……握りしめていたこと忘れてたの?」
「慌てて汽車に乗り込んだから改札通って切符を見せた時に無意識に持っていたみたい………」
「ぷっ!バズールったら……もう来ないんだと思ってた、約束の時間になっても来ないから」
「ごめん、完全に寝坊した。目覚まししてたのに止めてまた寝てた」
「ふふ、確かにバズールって起きるの苦手だものね。今は起こしてくれるメイドもいないもの。自力で起きるのってやっぱり大変なの?」
「昨日は色々あって寝れなかったからね」
「……あっ………う、うん、そうだよね」
「ライナこそ昨日は大丈夫だった?王宮に呼び出されたんだろう?」
「あーーー、うん、自分の悪いところを教えていただいたかな……」
ーー昨日のリリアンナ殿下の言葉を思い出すと胸が痛い。
『婚約解消をした傷モノ』
『バズールと幸せに暮らしてみせる』
リリアンナ殿下に言われた言葉はたくさんあるけど、心に残った……ううん、抉られた言葉はこの二つ………
バズールの顔が見れずにまた窓の外の流れる景色に目をやる。
外の風景がどんどん変わっていくのを静かに見つめた。
内心、バズールとどう話せばいいのか……恋心を自覚してしまったわたしはわからなくて……
「俺も呼び出された。ライナが帰ったあとに」
その声には疲れがみえた。
やはり殿下はわたしの時のようにわあわあと喚き散らしたのだろうか。
「そう……」
どんな理由で呼ばれたかわかっているわたしはそれ以上言葉が見つからない。
ーーはあ、意識しすぎなのわかっているの。普通に普通にしなきゃ!
「……リリアンナ殿下には以前から何度か結婚の申し入れがあった……そして断ったことは知っているよな?」
「う、うん」
「昨日もまた申し込まれた。ライナも聞いている?」
「うっ……そ、そうだね」
ーー気になってるなんて言えない。
「俺……断ったんだ」
「…そ、そうなの…………」
ーーホッとした。だけど……リリアンナ殿下のことを考えると……たぶんもう一つの辺境伯のところへお嫁に行くことになるのだろう。
同じ人を好きになってしまったので……同情かもしれないけど、やっぱり辛いだろうなと思ってしまう。
好きな人と結ばれず無理やり嫁がされるなんて……
やっと自覚した恋心。
なのに今さらどんな顔をして接していいのかわからず素っ気なくなっている。
この態度はバズールが一番嫌いな態度なのを知ってて…
ーーもう喧嘩は嫌だわ、す、素直にならなきゃ。例えこの思いを本人に話さなくても……バズールは従兄弟……今さら好きですなんて言えるわけがないわ。
「なぁライナ……国に帰ったらミレガー元伯爵達の裁判の結果を知ることになると思う」
「うん」
「リーリエ嬢はオリソン国で犯罪を犯したからそのまま向こうで裁かれる……」
「うん……」
「リリアンナ殿下は辺境伯に一月後嫁ぐことが決まった。これは王命だから覆ることはない」
「うん」
「俺がリリアンナ殿下の申し入れを断れば好きでもない人の元へ後妻として嫁がなければいけないとわかってて断った」
「………うん」
「俺が受け入れれば殿下は幸せになれるのかもと一瞬考えた。だけど彼女は俺を愛していると言いながら俺の容姿やいずれ受け継ぐ爵位、俺の優秀な頭の中が好きだったらしい」
「う、う、…………んっ?」
ずっと窓の外を見ながらバズールと目線を合わせないようにしていたのに思わずバズールに目を向けた。
「ふっ………やっと俺の顔を見たな。なんなんだよ!俺の顔すらまともに見ないで!ライナらしくもない!」
「わたしらしいってどんな感じなの?」
ガチャッ。
扉が開いた瞬間、バズールは頭を思いっきり下げて
「遅れてごめん!」と謝った。
「どうしたの?どうやって汽車に……」
疑問しか浮かばない。
「ギリギリで汽車に乗り込んだのはいいけど、切符が見つからなくて車掌さんに怪しまれて今まで捕まってた」
「捕まる?え?……じゃあ見つかったの?」
「うん、入れてたはずの内ポケットに入ってなくて必死で服のポケット探したら何故か俺……手の中に隠し持ってた」
「それって……握りしめていたこと忘れてたの?」
「慌てて汽車に乗り込んだから改札通って切符を見せた時に無意識に持っていたみたい………」
「ぷっ!バズールったら……もう来ないんだと思ってた、約束の時間になっても来ないから」
「ごめん、完全に寝坊した。目覚まししてたのに止めてまた寝てた」
「ふふ、確かにバズールって起きるの苦手だものね。今は起こしてくれるメイドもいないもの。自力で起きるのってやっぱり大変なの?」
「昨日は色々あって寝れなかったからね」
「……あっ………う、うん、そうだよね」
「ライナこそ昨日は大丈夫だった?王宮に呼び出されたんだろう?」
「あーーー、うん、自分の悪いところを教えていただいたかな……」
ーー昨日のリリアンナ殿下の言葉を思い出すと胸が痛い。
『婚約解消をした傷モノ』
『バズールと幸せに暮らしてみせる』
リリアンナ殿下に言われた言葉はたくさんあるけど、心に残った……ううん、抉られた言葉はこの二つ………
バズールの顔が見れずにまた窓の外の流れる景色に目をやる。
外の風景がどんどん変わっていくのを静かに見つめた。
内心、バズールとどう話せばいいのか……恋心を自覚してしまったわたしはわからなくて……
「俺も呼び出された。ライナが帰ったあとに」
その声には疲れがみえた。
やはり殿下はわたしの時のようにわあわあと喚き散らしたのだろうか。
「そう……」
どんな理由で呼ばれたかわかっているわたしはそれ以上言葉が見つからない。
ーーはあ、意識しすぎなのわかっているの。普通に普通にしなきゃ!
「……リリアンナ殿下には以前から何度か結婚の申し入れがあった……そして断ったことは知っているよな?」
「う、うん」
「昨日もまた申し込まれた。ライナも聞いている?」
「うっ……そ、そうだね」
ーー気になってるなんて言えない。
「俺……断ったんだ」
「…そ、そうなの…………」
ーーホッとした。だけど……リリアンナ殿下のことを考えると……たぶんもう一つの辺境伯のところへお嫁に行くことになるのだろう。
同じ人を好きになってしまったので……同情かもしれないけど、やっぱり辛いだろうなと思ってしまう。
好きな人と結ばれず無理やり嫁がされるなんて……
やっと自覚した恋心。
なのに今さらどんな顔をして接していいのかわからず素っ気なくなっている。
この態度はバズールが一番嫌いな態度なのを知ってて…
ーーもう喧嘩は嫌だわ、す、素直にならなきゃ。例えこの思いを本人に話さなくても……バズールは従兄弟……今さら好きですなんて言えるわけがないわ。
「なぁライナ……国に帰ったらミレガー元伯爵達の裁判の結果を知ることになると思う」
「うん」
「リーリエ嬢はオリソン国で犯罪を犯したからそのまま向こうで裁かれる……」
「うん……」
「リリアンナ殿下は辺境伯に一月後嫁ぐことが決まった。これは王命だから覆ることはない」
「うん」
「俺がリリアンナ殿下の申し入れを断れば好きでもない人の元へ後妻として嫁がなければいけないとわかってて断った」
「………うん」
「俺が受け入れれば殿下は幸せになれるのかもと一瞬考えた。だけど彼女は俺を愛していると言いながら俺の容姿やいずれ受け継ぐ爵位、俺の優秀な頭の中が好きだったらしい」
「う、う、…………んっ?」
ずっと窓の外を見ながらバズールと目線を合わせないようにしていたのに思わずバズールに目を向けた。
「ふっ………やっと俺の顔を見たな。なんなんだよ!俺の顔すらまともに見ないで!ライナらしくもない!」
「わたしらしいってどんな感じなの?」
158
お気に入りに追加
8,435
あなたにおすすめの小説




〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる