【完結】今夜さよならをします

たろ

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新しい恋。

はち

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 マリアナがわたしの前に現れた。騎士がマリアナを守るように連れて来てくれた。

「マリアナ!」
 わたしはマリアナに抱きついた。そしてすぐに離れて彼女の体を見て回った。

 顔にも手にも腕にも傷はない。

「……良かったわ、無事でいてくれて」

「ライナ心配かけてごめん。知らない部屋に連れて行かれて薬で眠らされていたの。目が覚めたら騎士様達に助け出されていたから何も知らないの」

「怖い思いはしなかったんだね?良かった」

「話はケイン様に聞いた。わたしは確かに巻き込まれたけどライナが悪いわけではないわ。貴女が働いていたという元伯爵家のお嬢様が勝手に一人でこの国に来て一人で勝手にライナを恨んで、でもライナに手出しできなくて仲の良いわたしを攫って貴女を困らせようとしたと聞いたわ。ライナ、そんな女のせいで婚約解消させられて……辛かったでしょう?」

 マリアナの言葉に少し違和感はあった。

 でもその時はマリアナが無事だと知って何も考えられなかった。





 次の日、わたしはカイさんに呼ばれ、オリエ様に付き添われて王宮へと向かった。

 そこには先生、カイさん、そしてリリアンナ殿下、さらに国王陛下が待っていた。

 わたしは慌ててみんなに頭を下げて挨拶をしようとしたら

「今日は挨拶は必要ない、これは非公式の場である」

 陛下の言葉に思わず顔をあげて知っている顔である先生とカイさんへ視線を向けた。
 二人は静かに頷いただけで表情は冴えなかった。

 普段なら笑顔を見せてくれる二人が神妙な顔をしていた。いくら陛下の前とは言え空気が異常に重たい。
 ピリピリした空気の中、わたしは言葉を発することすらできずに緊張しながら次の誰かの言葉を待っていた。

 豪華な広間に五人が重たい空気の中に佇んでいた。

 陛下だけが豪華絢爛と言える椅子に座り、残りの四人は立っていた。

 騎士は二人だけ。
 そのうち一人はオリエ様、そしてもう一人は男性だった。


「………今回の件ではライナ嬢に迷惑をかけてすまない。君の大切な友人にも怖い思いをさせてしまった」

 わたしはどう答えようか悩んだ。

 ーーわたしに謝罪、陛下自ら……

 非公式とは言え外国から来た、やっと伯爵令嬢になったばかりの低位貴族の娘のわたしに……

 それに何故かみんなの浮かない顔が気になった。

 わたしに謝罪……でも怖い思いをしたのはマリアナなのに……

 と、ふと考えてしまう。

 ここに被害者であるマリアナがいないことに。

 わたしの考えていることがわかったかのように、先生が申し訳なさそうに話し出した。

「ライナ、今回の事件のことは表沙汰には出来ない。君の友人を巻き込んでしまったことは本当に申し訳ないとは思っている。ある程度リリアンナの動きを予測していたのだが、リーリエ嬢を放置して好き勝手させるなんて思ってもいなかった」

「ではリーリエ様の一存で動かれたのですか?」

 知らない国にやって来て一人で人を眠らせ攫うなんて出来るものなのだろうかと思わず考えてしまった。 

 わたしの質問にどう答えようか悩んでいる先生。

 その時カイさんが横から話し出した。

「ライナには知る権利がある。だが納得してもらえなくても俺たちは国として動かなければいけないので個人の考えや感情は捨てて話す」

 そう言って話し出した内容は……

 リリアンナ殿下は、リーリエ様を修道院から黙って連れ出して、しばらくリリアンナ殿下の離宮で過ごさせていたらしい。
 そのあと、リーリエ様を市井に放り出したそうだ。

 そして、わたしを狙っていたけど守りが固く何も出来ずにいて、仕方なくわたしと仲が良いマリアナを攫ってわたしを脅そうとしたらしい。

 リーリエ様がわたしを攫おうとした目的はやはりご両親が捕まり伯爵家が没落したことで人生が変わってしまったことで、わたしへの復讐なのだろうと思った。

 でもリーリエ様が知らない国にやって来て情報を集めて、わたしに護衛が付いていて攫うのが難しいなんて分かるものなのか疑問に思った。

 カイさんの話には詳しい内容というよりも簡潔に話しただけという印象しか感じない。
 肝心な話はしていないことを感じ取れた。

「発言してもよろしいでしょうか?」
 わたしはみんなに一言伝えて了解を得た。

「カイさんも先生も話しにくいのは感じております。わたしへの謝罪はあっても巻き込まれたマリアナへの謝罪はないのでしょうか?」

 リリアンナ殿下は確かに落ち込んではいるようだ。俯いているしいつものような覇気も感じない。
 でもだからと言って反省しているようにも見えない。

 自分には関係ない話をしている、という態度にしか見えない。
 だって俯いてはいても、早く終わればいいのにという感じで面倒臭そうな態度をしているのは手に取るようにわかる。

「どうして平民に謝罪をしないといけないの?」

 俯いていた殿下は頭を上げて馬鹿にしたようにわたしを見た。








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