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新しい恋。
ご
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バズールとなんとか仲直りが出来てホッとしたのも束の間、冬の長期休暇が始まるまでの2週間は、試験と先生の助手で忙しくてお互い会う暇もなく過ごしていた。
「ライナは長期休暇はどうするんだ?」
「先生?帰国しようと思っていますが何かありましたか?」
「あ、いや、そうか……うん、それがいいと思う。絶対帰っているように。わかったな?」
「は、はい」
何でそんなことを言うのかわからないけど返事をした。
先生はどこか遠くを見つめソワソワしている気がする。何かあったのかしら?
その後、ケイン様がそっとわたしのそばに来て「ちょっといい?」と声をかけてきた。
部屋を出て廊下でケイン様が頭を掻きながら、困った顔でわたしの顔を覗き込んで来た。
「……先生は心配しているんだ。君の従兄弟のバズール殿とリリアンナ殿下が婚約したいと言い出したからね」
「え?」
わたしは突然の話に目を見開いて絶句した。
ーー二人はなんでもないと言っていたのに……
わたしはただの従姉妹……知らなくても仕方がないのかもしれない。なのにまたバズールのことを考えると胸が痛む。
ーーやっぱり一番仲の良い従兄弟がわたしのそばを離れてしまうのってこんなに辛いものなのね。
「僕とリリアンナ殿下は実は親戚なんだ。婚約の話が出たこともあったんだけど……リリアンナ殿下は僕を気に入らなくて話は流れたんだ……
そして今度はバズール殿との話が出ているんだけど……リリアンナ殿下は自分の思い通りにならないと気が済まない。
バズール殿は今のところその気がないみたいなんだ。たぶん……君がいるからね、邪魔になる君にどうするかわからないから先生は心配しているんだと思う」
「……どうしてわたしが関係あるのですか?それこそ……わたしはただの従姉妹なんです。バズールが誰と婚約しようとわたしには関係がないと思うのですが……」
「うーん、確かに君たちは今のところ、いとこ同士だけどとても仲が良いだろう?」
「まぁ幼馴染でもあリますし、ずっと一緒に育ちましたから……でもどうしてそんなにリリアンナ殿下はわたしに絡もうとしてくるのでしょう?会えば必ず何か話しかけてくるのですが………その言葉は少し……わたしを嫌っているような……気がするのですが……」
リリアンナ殿下から言われる言葉を思い出しながら思わずケイン様に話してしまって「あっ…」と口を手で塞いだ。
「大丈夫だよ、今は僕しかいないからね。リリアンナ殿下はこの国で一番高貴なお方だ。自分の思い通りに全ていくものだと思っているし今までそうしてきた。それは、良いところでもある。
行動力があり国民達にとって良くないところはきちんと正そうとする。でも悪い方に向けばただの傲慢でしかない。気に入らないものは排除し無理やりにでも手に入れる。我慢することを知らないんだ」
「そうですか……バズールと仲が良いわたしは目障りなのですね」
ケイン様の言葉に納得してしまった。
会えば必ず声をかけてくるリリアンナ殿下。
少し小馬鹿にしたように笑うのはわたしを見下しているから。
『ライナ様、今日も叔父様のところへ行かれるの?あんな薄暗い部屋でたくさんの本に囲まれていたら陰気臭くならないかしら?』
『本日はとても良い天気なのに…そんな簡素な服装で部屋に閉じこもってばかりいたら、好きな男性から振り向いてもらえなくてよ?』
『あら?バズールったらいつもわたしのことに夢中で貴女のことを放っているみたいで、ごめんなさいね』
リリアンナ殿下から言われた言葉を思い出してみた。
言われるたびになんとも気が重くなり出来るだけ出会わないように無意識に避けていた。
「ケイン様…………留学を諦めた方がいいのでしょうか?」
「僕は親戚と言っても遠縁でしかないから彼女を止めるだけの力はない。先生も出来るだけ気にはしているみたいなんだ。だから君にたくさん仕事を振っているだろう?」
「あっ、確かに」
最近ものすごく忙しかったのはそう言うことなのだと納得した。
「と言うことで俺が今度からしばらくライナの護衛になるから」
わたしの後ろから突然声が聞こえてきた。
「えっ?だ、誰ですか?」
「あーー、ごめん、驚かせて。俺の名前はカイ。俺がライナの護衛をすればリリアンナは近づいてこないし、俺がいなくても俺が守っているとわかれば迂闊に手を出してこない」
「カイ様、ライナ嬢に今から話そうと思っていたのにいきなり出て来ないでください」
「まどろっこしいのは嫌いなんだ。ライナよろしく」
カイさんはわたしに手を差し出した。
人懐っこい笑顔は何故か初めて会ったのに安心してしまい警戒心をつい解いてしまった。
手を差し出そうとしたら
「ライナ、俺が悪い奴だったら今何されていたかわかるか?殺されているかもしれないし犯されているかもしれない。ケインから狙われていると聞いたのなら危機感を持て」
さっきまで優しく感じていたカイさんが突然怖くなった。
「危機感……」
その言葉にやっと自分が狙われているかもしれないと言う事に対して意識することが出来た。
「ご迷惑をお掛けしますが、しばらくの間よろしくお願いします」
「俺がいない時は、俺の家の居候のオリエが守る事になっている。女性だけどそこらへんの男より強いから安心しろ」
わたしの目の前にいるのはブロンドの髪に青い瞳の美しい女性だった。
こんな綺麗な女性の騎士がいるなんて……思わず見惚れてしまった。
「オリエと申します。護衛をさせていただきますのでよろしくお願い致します」
背筋が伸びて姿勢が良く美しいオリエ様、こんな素敵な人に護衛されるなんてとても光栄な事だと伝えると、優しい笑顔をわたしに向けた。
「早く解決すると良いですね」
オリエ様はそう言うと挨拶だけして去っていった。
「オリエは綺麗だったろう?俺を追ってこの国へ来たんだ」
「そんなこと言ってたら奥様に捨てられても知りませんよ」
ケイン様がカイさんに笑いながら言うと
「俺は嫁さん一筋だから女遊びは絶対しない」
と真剣な顔をして言っているのをつい笑顔で見てしまう。
初めて会った人なのにもうこの人に魅了されてしまった、なんだか太陽みたいなあたたかな人だと思った。
「ライナは長期休暇はどうするんだ?」
「先生?帰国しようと思っていますが何かありましたか?」
「あ、いや、そうか……うん、それがいいと思う。絶対帰っているように。わかったな?」
「は、はい」
何でそんなことを言うのかわからないけど返事をした。
先生はどこか遠くを見つめソワソワしている気がする。何かあったのかしら?
その後、ケイン様がそっとわたしのそばに来て「ちょっといい?」と声をかけてきた。
部屋を出て廊下でケイン様が頭を掻きながら、困った顔でわたしの顔を覗き込んで来た。
「……先生は心配しているんだ。君の従兄弟のバズール殿とリリアンナ殿下が婚約したいと言い出したからね」
「え?」
わたしは突然の話に目を見開いて絶句した。
ーー二人はなんでもないと言っていたのに……
わたしはただの従姉妹……知らなくても仕方がないのかもしれない。なのにまたバズールのことを考えると胸が痛む。
ーーやっぱり一番仲の良い従兄弟がわたしのそばを離れてしまうのってこんなに辛いものなのね。
「僕とリリアンナ殿下は実は親戚なんだ。婚約の話が出たこともあったんだけど……リリアンナ殿下は僕を気に入らなくて話は流れたんだ……
そして今度はバズール殿との話が出ているんだけど……リリアンナ殿下は自分の思い通りにならないと気が済まない。
バズール殿は今のところその気がないみたいなんだ。たぶん……君がいるからね、邪魔になる君にどうするかわからないから先生は心配しているんだと思う」
「……どうしてわたしが関係あるのですか?それこそ……わたしはただの従姉妹なんです。バズールが誰と婚約しようとわたしには関係がないと思うのですが……」
「うーん、確かに君たちは今のところ、いとこ同士だけどとても仲が良いだろう?」
「まぁ幼馴染でもあリますし、ずっと一緒に育ちましたから……でもどうしてそんなにリリアンナ殿下はわたしに絡もうとしてくるのでしょう?会えば必ず何か話しかけてくるのですが………その言葉は少し……わたしを嫌っているような……気がするのですが……」
リリアンナ殿下から言われる言葉を思い出しながら思わずケイン様に話してしまって「あっ…」と口を手で塞いだ。
「大丈夫だよ、今は僕しかいないからね。リリアンナ殿下はこの国で一番高貴なお方だ。自分の思い通りに全ていくものだと思っているし今までそうしてきた。それは、良いところでもある。
行動力があり国民達にとって良くないところはきちんと正そうとする。でも悪い方に向けばただの傲慢でしかない。気に入らないものは排除し無理やりにでも手に入れる。我慢することを知らないんだ」
「そうですか……バズールと仲が良いわたしは目障りなのですね」
ケイン様の言葉に納得してしまった。
会えば必ず声をかけてくるリリアンナ殿下。
少し小馬鹿にしたように笑うのはわたしを見下しているから。
『ライナ様、今日も叔父様のところへ行かれるの?あんな薄暗い部屋でたくさんの本に囲まれていたら陰気臭くならないかしら?』
『本日はとても良い天気なのに…そんな簡素な服装で部屋に閉じこもってばかりいたら、好きな男性から振り向いてもらえなくてよ?』
『あら?バズールったらいつもわたしのことに夢中で貴女のことを放っているみたいで、ごめんなさいね』
リリアンナ殿下から言われた言葉を思い出してみた。
言われるたびになんとも気が重くなり出来るだけ出会わないように無意識に避けていた。
「ケイン様…………留学を諦めた方がいいのでしょうか?」
「僕は親戚と言っても遠縁でしかないから彼女を止めるだけの力はない。先生も出来るだけ気にはしているみたいなんだ。だから君にたくさん仕事を振っているだろう?」
「あっ、確かに」
最近ものすごく忙しかったのはそう言うことなのだと納得した。
「と言うことで俺が今度からしばらくライナの護衛になるから」
わたしの後ろから突然声が聞こえてきた。
「えっ?だ、誰ですか?」
「あーー、ごめん、驚かせて。俺の名前はカイ。俺がライナの護衛をすればリリアンナは近づいてこないし、俺がいなくても俺が守っているとわかれば迂闊に手を出してこない」
「カイ様、ライナ嬢に今から話そうと思っていたのにいきなり出て来ないでください」
「まどろっこしいのは嫌いなんだ。ライナよろしく」
カイさんはわたしに手を差し出した。
人懐っこい笑顔は何故か初めて会ったのに安心してしまい警戒心をつい解いてしまった。
手を差し出そうとしたら
「ライナ、俺が悪い奴だったら今何されていたかわかるか?殺されているかもしれないし犯されているかもしれない。ケインから狙われていると聞いたのなら危機感を持て」
さっきまで優しく感じていたカイさんが突然怖くなった。
「危機感……」
その言葉にやっと自分が狙われているかもしれないと言う事に対して意識することが出来た。
「ご迷惑をお掛けしますが、しばらくの間よろしくお願いします」
「俺がいない時は、俺の家の居候のオリエが守る事になっている。女性だけどそこらへんの男より強いから安心しろ」
わたしの目の前にいるのはブロンドの髪に青い瞳の美しい女性だった。
こんな綺麗な女性の騎士がいるなんて……思わず見惚れてしまった。
「オリエと申します。護衛をさせていただきますのでよろしくお願い致します」
背筋が伸びて姿勢が良く美しいオリエ様、こんな素敵な人に護衛されるなんてとても光栄な事だと伝えると、優しい笑顔をわたしに向けた。
「早く解決すると良いですね」
オリエ様はそう言うと挨拶だけして去っていった。
「オリエは綺麗だったろう?俺を追ってこの国へ来たんだ」
「そんなこと言ってたら奥様に捨てられても知りませんよ」
ケイン様がカイさんに笑いながら言うと
「俺は嫁さん一筋だから女遊びは絶対しない」
と真剣な顔をして言っているのをつい笑顔で見てしまう。
初めて会った人なのにもうこの人に魅了されてしまった、なんだか太陽みたいなあたたかな人だと思った。
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