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新しい恋。
よん
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バズールに会いに男子寮へと向かった。
女子寮と男子寮は大きな壁で二つに分けられている。隣に行って門番さんに面会の申し込みをしないといけない。
「バズール・フェルドナーに面会したいのですが」
申し込みをすると
「はあまたか……彼は誰とも会わないよ」
と冷たく言われた。
「え?」
わたしが驚いた顔をすると
「フェルドナー様は一切面会を受け付けていないんだ。帰ってもらってもいいかな?」
「あ、あの、わたしの名前はライナ・パシェードです、こちらが身分証明書です。わたしとバズールはいとこ同士です」
「その言い訳は通用しないよ、さあ帰りなさい」
わたしの身分証明書に目も通さずに追い払おうとする門番さんに何と言おうか考えていると後ろから声が聞こえた。
「ライナ嬢?どうしたんだ?」
「あ……ケイン様……」
先生の研究室に通っているケイン様が声をかけてくれた。
「従兄弟のバズールに会いにきたのですが……」
「なるほど……門番の君はきちんと身分証明書を確認したの?ライナ嬢はバズール殿といとこ同士で親戚の場合、会うことは制限されていないはずだよ?もちろん相手が会わないというなら仕方がないけどね」
「…バズール様から面会は全て断るように言われております。今までもたくさんの令嬢が会いたいと押しかけてきて迷惑をしているのです。従姉妹と偽った人も何人もおりますし」
門番さんも無理やり押しかけてくる令嬢達にほとほと困っているのだろう。
「あ、あの、この身分証明書は本物です。ここに親戚の欄にお互いの名前が載っています」
親戚の場合は友人よりも制約が厳しくない。
男子寮と女子寮での問題事はもしも何かあれば門番さんの責任になる。
もちろん外で会うのは自由なんだけど寮では不純異性交友は絶対禁止。
なのに人気のある男性に対しては、ここに来れば会えるかもと無理やり押し寄せてくる令嬢は多い。
だからこそ親戚や婚約者などは特別許可を作っていて、証明書があれば通してもらえる。
今までは、バズールが会いにきてくれていた。わたしから会いに行くことはなかった。
バズールが来てくれて当たり前だった事に甘えていたのだとつくづく思った。
バズールは女子寮の門番さんには顔を覚えられていたくらいわたしに会いに来てくれていたのだ。
わたしはと言うと初めてで全く相手にもされなかった。
それも仕方がないのだと自身を反省しながら、ケイン様が門番さんと話してくれて中に通してもらえる事になってホッとした。
「ケイン様ありがとうございました」
わたしは中に通されてケイン様に連れられて建物の中に入った。
そして面談室に通された。
ケイン様は「じゃあ僕は行くね」と手を振り部屋に帰っていった。
わたしはバズールがくる間ソワソワしながら待っていた。
しばらく待っていると
「ライナ?」
バズールが慌てて着替えて走ってきたのがわかった。
「いきなりごめんなさい」
「どうしたんだ?何か急用?」
「ううん、最近会うことがなかったから……話がしたいなと思って……それと……これ」
そう言って切符をテーブルの上に置いた。
「これは?」
「お父様がバズールと一緒に冬の長期休暇帰って来れるようにと切符が送られてきたの。伯父様から手紙は来ていない?」
「あー、忙しくて読んでない」
「そっか、だからバズールから何も話がなかったのね………わたし………あの、あのね、………これ」
そう言ってバズールにお菓子の入った箱を渡した。
「うん?これは何?」
「バズールがした事は許せないけど、でもわたしの態度が悪かったことは認めるわ……ずっと無視して避けてごめんなさい。
わたしが焼いたクッキーなの。まだ初心者だから不恰好だけど味見をしてみたら食べれるので……よかったら食べてください」
わたしは真っ赤になりながらバズールに頭を下げてお菓子を渡した。
「…………俺も悪かった。反省してる」
バズールもバツが悪そうにしながら謝ってくれた。
「ついカーッとなってあんなことしてごめん。反省している」
バズールもわたしと同じで意地を張っていたみたい。何度も謝りに行ったのに会おうともしないわたしに対して怒って意地を張っていたみたい。
「バズールが……会ってもあんなに冷たい表情でわたしを見るから……すっごい傷ついたんだから」
「冷たい?あ……違う……あれは…怒っているライナにどう接していいのかわからなくて固まってただけだから」
「そうは見えなかったわ」
「仕方がないだろう?どう許して貰えばいいのかわからなかったんだ、もう諦めるしかないと思ってたから」
「今まで喧嘩してもすぐ仲直りできたのにね」
「いや、お前が許さなかったんだろう」
「だってバズールったらリリアンナ殿下を好きだと言ったじゃない」
「俺が?いつ?」
「たまたま通りかかった時に……
『ふふ、素直になりなさい。わたしのこと好きでしょう?』
『はい、好きですね』
って話してたじゃない」
「あ、あっ、あれ?あれは……
『どう?バズール?わたしに惚れた?』
『あー、人間性には惚れました』
っていう会話が前にあるんだ。そして最後に
『性格だけなら』と付け加えたんだ。
リリアンナ殿下は我儘放題で自由奔放に見えるけど、市井に行って人々の声を聞き入れられる人なんだ。その事に対して話しただけだ」
「そうなんだ……リリアンナ殿下といる時のバズールはとても楽しそうだったから……それにリリアンナ殿下のお気に入りだと聞いているわ。
いずれバズールに降嫁されるのだと噂されているからわたしなんかもう相手にするのも嫌なのだと思ってたの」
「俺とリリアンナ殿下が?」
バズールは初めて聞いたと驚いた顔をしている。
「知らないの?」
「今はリリアンナ殿下の側近として忙しい時間を過ごしているのは確かだし、気に入られているのも確かだ。でもそれはいずれ国に戻った時に王太子殿下の側近としての勉強になるから仕えているだけだ。リリアンナ殿下は全ての人は自分を愛するものだと思っている。だから俺が敬愛するのが当たり前だと思っているし俺自身も今はそれほどリリアンナ殿下のことを悪い人ではないと思っているし尊敬しているところもある」
「そっか、わたしが先生を尊敬しているのと同じね」
「いや違うから、俺はライナみたいにギルバート様に夢中じゃないから」
「いつわたしが先生に夢中になったと言うの?わたしは先生の助手をしながら商会に少しでも役立つことを勉強になればいいなと思って頑張っているの!」
「嘘だ。ライナこそいつも楽しそうにしてるじゃないか!」
「それはバズールでしょう!」
「だから俺は……」
「「……………」」
「ふふ、また、言い合いになって喧嘩になったら仲直り出来なくなるわ」
「そうだな、ごめんライナ。ライナは別にギルバート様を好きな訳ではなかったんだ」
「へ?先生を好き?」
ーー先生を好き?意識したことなんてなかった。
どうしてバズールはそんなこと思ったのかしら?
女子寮と男子寮は大きな壁で二つに分けられている。隣に行って門番さんに面会の申し込みをしないといけない。
「バズール・フェルドナーに面会したいのですが」
申し込みをすると
「はあまたか……彼は誰とも会わないよ」
と冷たく言われた。
「え?」
わたしが驚いた顔をすると
「フェルドナー様は一切面会を受け付けていないんだ。帰ってもらってもいいかな?」
「あ、あの、わたしの名前はライナ・パシェードです、こちらが身分証明書です。わたしとバズールはいとこ同士です」
「その言い訳は通用しないよ、さあ帰りなさい」
わたしの身分証明書に目も通さずに追い払おうとする門番さんに何と言おうか考えていると後ろから声が聞こえた。
「ライナ嬢?どうしたんだ?」
「あ……ケイン様……」
先生の研究室に通っているケイン様が声をかけてくれた。
「従兄弟のバズールに会いにきたのですが……」
「なるほど……門番の君はきちんと身分証明書を確認したの?ライナ嬢はバズール殿といとこ同士で親戚の場合、会うことは制限されていないはずだよ?もちろん相手が会わないというなら仕方がないけどね」
「…バズール様から面会は全て断るように言われております。今までもたくさんの令嬢が会いたいと押しかけてきて迷惑をしているのです。従姉妹と偽った人も何人もおりますし」
門番さんも無理やり押しかけてくる令嬢達にほとほと困っているのだろう。
「あ、あの、この身分証明書は本物です。ここに親戚の欄にお互いの名前が載っています」
親戚の場合は友人よりも制約が厳しくない。
男子寮と女子寮での問題事はもしも何かあれば門番さんの責任になる。
もちろん外で会うのは自由なんだけど寮では不純異性交友は絶対禁止。
なのに人気のある男性に対しては、ここに来れば会えるかもと無理やり押し寄せてくる令嬢は多い。
だからこそ親戚や婚約者などは特別許可を作っていて、証明書があれば通してもらえる。
今までは、バズールが会いにきてくれていた。わたしから会いに行くことはなかった。
バズールが来てくれて当たり前だった事に甘えていたのだとつくづく思った。
バズールは女子寮の門番さんには顔を覚えられていたくらいわたしに会いに来てくれていたのだ。
わたしはと言うと初めてで全く相手にもされなかった。
それも仕方がないのだと自身を反省しながら、ケイン様が門番さんと話してくれて中に通してもらえる事になってホッとした。
「ケイン様ありがとうございました」
わたしは中に通されてケイン様に連れられて建物の中に入った。
そして面談室に通された。
ケイン様は「じゃあ僕は行くね」と手を振り部屋に帰っていった。
わたしはバズールがくる間ソワソワしながら待っていた。
しばらく待っていると
「ライナ?」
バズールが慌てて着替えて走ってきたのがわかった。
「いきなりごめんなさい」
「どうしたんだ?何か急用?」
「ううん、最近会うことがなかったから……話がしたいなと思って……それと……これ」
そう言って切符をテーブルの上に置いた。
「これは?」
「お父様がバズールと一緒に冬の長期休暇帰って来れるようにと切符が送られてきたの。伯父様から手紙は来ていない?」
「あー、忙しくて読んでない」
「そっか、だからバズールから何も話がなかったのね………わたし………あの、あのね、………これ」
そう言ってバズールにお菓子の入った箱を渡した。
「うん?これは何?」
「バズールがした事は許せないけど、でもわたしの態度が悪かったことは認めるわ……ずっと無視して避けてごめんなさい。
わたしが焼いたクッキーなの。まだ初心者だから不恰好だけど味見をしてみたら食べれるので……よかったら食べてください」
わたしは真っ赤になりながらバズールに頭を下げてお菓子を渡した。
「…………俺も悪かった。反省してる」
バズールもバツが悪そうにしながら謝ってくれた。
「ついカーッとなってあんなことしてごめん。反省している」
バズールもわたしと同じで意地を張っていたみたい。何度も謝りに行ったのに会おうともしないわたしに対して怒って意地を張っていたみたい。
「バズールが……会ってもあんなに冷たい表情でわたしを見るから……すっごい傷ついたんだから」
「冷たい?あ……違う……あれは…怒っているライナにどう接していいのかわからなくて固まってただけだから」
「そうは見えなかったわ」
「仕方がないだろう?どう許して貰えばいいのかわからなかったんだ、もう諦めるしかないと思ってたから」
「今まで喧嘩してもすぐ仲直りできたのにね」
「いや、お前が許さなかったんだろう」
「だってバズールったらリリアンナ殿下を好きだと言ったじゃない」
「俺が?いつ?」
「たまたま通りかかった時に……
『ふふ、素直になりなさい。わたしのこと好きでしょう?』
『はい、好きですね』
って話してたじゃない」
「あ、あっ、あれ?あれは……
『どう?バズール?わたしに惚れた?』
『あー、人間性には惚れました』
っていう会話が前にあるんだ。そして最後に
『性格だけなら』と付け加えたんだ。
リリアンナ殿下は我儘放題で自由奔放に見えるけど、市井に行って人々の声を聞き入れられる人なんだ。その事に対して話しただけだ」
「そうなんだ……リリアンナ殿下といる時のバズールはとても楽しそうだったから……それにリリアンナ殿下のお気に入りだと聞いているわ。
いずれバズールに降嫁されるのだと噂されているからわたしなんかもう相手にするのも嫌なのだと思ってたの」
「俺とリリアンナ殿下が?」
バズールは初めて聞いたと驚いた顔をしている。
「知らないの?」
「今はリリアンナ殿下の側近として忙しい時間を過ごしているのは確かだし、気に入られているのも確かだ。でもそれはいずれ国に戻った時に王太子殿下の側近としての勉強になるから仕えているだけだ。リリアンナ殿下は全ての人は自分を愛するものだと思っている。だから俺が敬愛するのが当たり前だと思っているし俺自身も今はそれほどリリアンナ殿下のことを悪い人ではないと思っているし尊敬しているところもある」
「そっか、わたしが先生を尊敬しているのと同じね」
「いや違うから、俺はライナみたいにギルバート様に夢中じゃないから」
「いつわたしが先生に夢中になったと言うの?わたしは先生の助手をしながら商会に少しでも役立つことを勉強になればいいなと思って頑張っているの!」
「嘘だ。ライナこそいつも楽しそうにしてるじゃないか!」
「それはバズールでしょう!」
「だから俺は……」
「「……………」」
「ふふ、また、言い合いになって喧嘩になったら仲直り出来なくなるわ」
「そうだな、ごめんライナ。ライナは別にギルバート様を好きな訳ではなかったんだ」
「へ?先生を好き?」
ーー先生を好き?意識したことなんてなかった。
どうしてバズールはそんなこと思ったのかしら?
応援ありがとうございます!
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