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さんじゅうに
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シエルはわたしの言葉を、わたしの気持ちを理解してくれた?
「婚約解消は出来ない。君を愛しているんだ、あと少しで王宮騎士になれる。そのためにリーリエ様の護衛として頑張ってきた。君との将来のために頑張ってきたんだ。
………なのに、何故?リーリエ様にどんなに誘われても彼女の言葉に乗らなかったのは君がいたからだ」
「どんなに謝ってももう心が離れてしまえば元には戻ることはないの。
シエル?わたしの言葉を今やっと聞き入れてくれても……もう遅いの。
ずっと貴方を愛していたわ。でもね、貴方の言葉に少しずつわたしの気持ちは削られていったの。
貴方の酷い言葉がわたしの貴方への愛情を削っていったの。もうどこにも残っていないの。あるのは懐かしい思い出と幼馴染としての情だけ」
「もう一度だけチャンスが欲しい。俺はライナのために騎士になった、ライナを守りたいと思って騎士になったんだ」
「守る?あれだけ攻撃しておいて信用してくれることもなく怒りに任せてあれだけ酷い事を言ったのに?守るどころか攻撃してきただけなのに?」
ーー思い出すだけで胸が痛い、心が辛いと叫んでいる。愛した人に裏切られた、嫌われた、信用されなかった、この辛さを貴方はわかっているの?
今のシエルは自分が一番辛いみたいな顔をしてわたしに縋っている。
ーーどうして?わたしの話は聞き入れてくれなかったのに。
自分だけが傷ついた顔をしているの?
「ライナ愛してるんだ」
シエルはわたしの両肩を掴んだ。
「痛い、離して」
彼の掴む手はかなり強い。肩が痛くて身動き取れない。
シエルはそのままわたしの顔に唇を近づけてきた。
「やめて、シエル。わたし達はもう婚約解消をするの、これ以上貴方を嫌いにさせないで」
震えて大きな声を出せないわたしの声は彼には届かない。
ーーやめて、助けて!
隣の部屋にいるお父様達にもわたしの小さな声は聞こえていない。
ーーいやだ、もう好きでもない人とキスなんてしたくない。
シエルの優しいキスが好きだった。
シエルの優しい笑顔が好きだった。
シエルの優しい声が好きだった。
今は……無理。
助けて、お父様!誰かお願い。
バズール!どうして肝心な時に助けに来てくれないの?
わたしはシエルに唇を塞がれた。
彼の体を叩いて「いやだ、やめて」と抵抗した。
なのに彼の舌はわたしの中に入り込んでくる。
ーー気持ちが悪い。やめて!!
涙が溢れてきても彼を叩いて抵抗してもやめてくれない。
彼の手がわたしの胸にそしてスカートの中に入り込もうとしている。
「……っん……」
シエルから離れようと何度も体を動かそうとするのに騎士である彼の力には勝てない。
何度もキスをされ耳元で「愛している」と囁かれた。
ーーそんな言葉はもう要らない!やめて!
少しずつドレスを脱がされ始めた。
助けて欲しい。でもこんな姿誰にもみられたくない。
頭がパニックになっていく。
シエルに会わなければよかった。後悔だけが押し寄せてきた。
スカートの中に手を入れられお尻を触られた。シエルは次第に興奮して我を忘れている、太ももを撫でられた。
逃げなきゃ、このままでは婚約解消どころか無理やり処女を奪われて結婚しなきゃいけなくなってしまう。
ーーどうして隣の部屋にいるはずのお父様は助けに来てくれないの?
わたしは抵抗するのをやめた。彼に身を任せるようにキスを強請った。するとシエルの力は抜けてわたしに夢中でキスをした。
ーー今だわ。
わたしはシエルの股間に思いっきり足を振り上げて蹴りを入れた。
「……っうっ……あっ」
シエルはそのまま蹲った。
「お父様、助けて!」
わたしは大きな声で叫んだ。
「ライナ!」
隣の部屋から入ってきたお父様とおじ様……そしてなぜかまたバズールがいた。
「みんな、遅い!わたしもう少しでシエルに襲われるところだったじゃない!」
お父様達はシエルが股間をおさえて蹲っているのをみた、その後わたしの服がはだけているのをみて、真っ青になった。
「す、すまない。シエルがひたすら謝っているのだと思っていたんだ」
「だから乗り込もうと言ったじゃないですか!」
バズールがお父様に文句を言っている。
「す、すまない……まさかシエルがライナを襲っているなんて思わなかったんだ。静かになったから……シエルが謝っていると思っていた」
おじ様も必死でわたしに謝る。
「シエル、もうこれ以上ライナに嫌われるようなことはするな!最後くらいカッコよく別れろ!」
「お前に何がわかる?俺はずっとライナが好きであと少しで王宮騎士になってライナと幸せに暮らせると思っていたんだ!なのに……ちくしょう……」
シエルは床に顔を埋めて両手を握りしめて床を何度も叩いた。
「本当に好きならどんな噂を聞いてもシエルだけはライナの味方でいなきゃいけなかったんじゃないのか?例え全ての人がライナの悪い噂を信じてもシエルだけは信じてあげるのが本当の愛だろう?」
「俺だって最初は噂なんて信じなかった。だけど、屋敷の人達が何人もライナのことを悪く言うんだ、リーリエ様もライナから酷い事を言われたと涙ぐんでいたし……ライナは俺と会おうとしない。俺が心配して言った言葉も怒っているだけだと思われて……」
「はあ……こんなことになっても悪いのはライナなんだ?」
バズールは大きな溜息をついて呆れたと言うように冷たい眼差しで彼をみた。
「バズール、ありがとうもういいわ、シエル、この紙にサインをして」
床に座り項垂れていたシエルはそろそろと仕方なく立ち上がり、言われたところにサインを書いた。
その指先は震えていた。気が付いていたけどわたしから何か言うべきことではないと思って無言で彼から紙を受け取った。
「婚約解消は出来ない。君を愛しているんだ、あと少しで王宮騎士になれる。そのためにリーリエ様の護衛として頑張ってきた。君との将来のために頑張ってきたんだ。
………なのに、何故?リーリエ様にどんなに誘われても彼女の言葉に乗らなかったのは君がいたからだ」
「どんなに謝ってももう心が離れてしまえば元には戻ることはないの。
シエル?わたしの言葉を今やっと聞き入れてくれても……もう遅いの。
ずっと貴方を愛していたわ。でもね、貴方の言葉に少しずつわたしの気持ちは削られていったの。
貴方の酷い言葉がわたしの貴方への愛情を削っていったの。もうどこにも残っていないの。あるのは懐かしい思い出と幼馴染としての情だけ」
「もう一度だけチャンスが欲しい。俺はライナのために騎士になった、ライナを守りたいと思って騎士になったんだ」
「守る?あれだけ攻撃しておいて信用してくれることもなく怒りに任せてあれだけ酷い事を言ったのに?守るどころか攻撃してきただけなのに?」
ーー思い出すだけで胸が痛い、心が辛いと叫んでいる。愛した人に裏切られた、嫌われた、信用されなかった、この辛さを貴方はわかっているの?
今のシエルは自分が一番辛いみたいな顔をしてわたしに縋っている。
ーーどうして?わたしの話は聞き入れてくれなかったのに。
自分だけが傷ついた顔をしているの?
「ライナ愛してるんだ」
シエルはわたしの両肩を掴んだ。
「痛い、離して」
彼の掴む手はかなり強い。肩が痛くて身動き取れない。
シエルはそのままわたしの顔に唇を近づけてきた。
「やめて、シエル。わたし達はもう婚約解消をするの、これ以上貴方を嫌いにさせないで」
震えて大きな声を出せないわたしの声は彼には届かない。
ーーやめて、助けて!
隣の部屋にいるお父様達にもわたしの小さな声は聞こえていない。
ーーいやだ、もう好きでもない人とキスなんてしたくない。
シエルの優しいキスが好きだった。
シエルの優しい笑顔が好きだった。
シエルの優しい声が好きだった。
今は……無理。
助けて、お父様!誰かお願い。
バズール!どうして肝心な時に助けに来てくれないの?
わたしはシエルに唇を塞がれた。
彼の体を叩いて「いやだ、やめて」と抵抗した。
なのに彼の舌はわたしの中に入り込んでくる。
ーー気持ちが悪い。やめて!!
涙が溢れてきても彼を叩いて抵抗してもやめてくれない。
彼の手がわたしの胸にそしてスカートの中に入り込もうとしている。
「……っん……」
シエルから離れようと何度も体を動かそうとするのに騎士である彼の力には勝てない。
何度もキスをされ耳元で「愛している」と囁かれた。
ーーそんな言葉はもう要らない!やめて!
少しずつドレスを脱がされ始めた。
助けて欲しい。でもこんな姿誰にもみられたくない。
頭がパニックになっていく。
シエルに会わなければよかった。後悔だけが押し寄せてきた。
スカートの中に手を入れられお尻を触られた。シエルは次第に興奮して我を忘れている、太ももを撫でられた。
逃げなきゃ、このままでは婚約解消どころか無理やり処女を奪われて結婚しなきゃいけなくなってしまう。
ーーどうして隣の部屋にいるはずのお父様は助けに来てくれないの?
わたしは抵抗するのをやめた。彼に身を任せるようにキスを強請った。するとシエルの力は抜けてわたしに夢中でキスをした。
ーー今だわ。
わたしはシエルの股間に思いっきり足を振り上げて蹴りを入れた。
「……っうっ……あっ」
シエルはそのまま蹲った。
「お父様、助けて!」
わたしは大きな声で叫んだ。
「ライナ!」
隣の部屋から入ってきたお父様とおじ様……そしてなぜかまたバズールがいた。
「みんな、遅い!わたしもう少しでシエルに襲われるところだったじゃない!」
お父様達はシエルが股間をおさえて蹲っているのをみた、その後わたしの服がはだけているのをみて、真っ青になった。
「す、すまない。シエルがひたすら謝っているのだと思っていたんだ」
「だから乗り込もうと言ったじゃないですか!」
バズールがお父様に文句を言っている。
「す、すまない……まさかシエルがライナを襲っているなんて思わなかったんだ。静かになったから……シエルが謝っていると思っていた」
おじ様も必死でわたしに謝る。
「シエル、もうこれ以上ライナに嫌われるようなことはするな!最後くらいカッコよく別れろ!」
「お前に何がわかる?俺はずっとライナが好きであと少しで王宮騎士になってライナと幸せに暮らせると思っていたんだ!なのに……ちくしょう……」
シエルは床に顔を埋めて両手を握りしめて床を何度も叩いた。
「本当に好きならどんな噂を聞いてもシエルだけはライナの味方でいなきゃいけなかったんじゃないのか?例え全ての人がライナの悪い噂を信じてもシエルだけは信じてあげるのが本当の愛だろう?」
「俺だって最初は噂なんて信じなかった。だけど、屋敷の人達が何人もライナのことを悪く言うんだ、リーリエ様もライナから酷い事を言われたと涙ぐんでいたし……ライナは俺と会おうとしない。俺が心配して言った言葉も怒っているだけだと思われて……」
「はあ……こんなことになっても悪いのはライナなんだ?」
バズールは大きな溜息をついて呆れたと言うように冷たい眼差しで彼をみた。
「バズール、ありがとうもういいわ、シエル、この紙にサインをして」
床に座り項垂れていたシエルはそろそろと仕方なく立ち上がり、言われたところにサインを書いた。
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