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にじゅうさん
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「……違います、いや、違わない……ミレガー伯爵家は違法な物を密輸しています……そのことを指摘されたのがあなたの父親であるパシェード男爵……いえ、伯爵様です。このまま裁判を起こされてさらに悪事まで追求されてはミレガー伯爵家は窮地に追い込まれます。なので脅すためにあなたを誘拐することにしたのはミレガー伯爵様の意向でもありわたしの意向でもあります」
「どうして?伯爵のため?娘さんのことで脅されているのではないのですか?」
「確かに旦那様にお金を渡すからあなたを攫って脅して欲しいと言われました。娘の病気は心臓病です。治療するには高額なお金がいるのも事実ですが、ミレガー伯爵家が潰れれば働いている使用人達は路頭に迷う者もたくさんいます。
わたしは執事です、みんなを守るためにもあなたのお父上の裁判を辞めさせたいと思っています、いえ、辞めさせることはできなくても少しでも時間を稼ぎたかった」
「なぜですか?」
「使用人達を解雇ではなく紹介状を持たせて他へ移してあげたかったのです」
「………確かにミレガー伯爵家が潰れれば使用人は解雇されますね……でもだからと言って貴方がそこまでする必要はあるのですか?」
「ですから、娘の治療費のためでもあるのです。わたしはたくさんのお金をもらえます。……使用人のことはついでみたいなものです」
ーーバイセン様はついでだと言ったけど、本当は使用人達のことも思っているのがわかる。わたしが働いている時も彼は厳しく指導してくれたけど、とても優しい人だった。
旦那様に誘拐のことを頼まれた時点で断ることはできない。ならば娘のため、使用人のために自分だけが犠牲になるつもりなのだろう。
「……奥様を巻き込んだのは?」
「わたしがたまたま計画を知ってしまって、無理やり手伝いをしたのです。運が良ければわたし達の顔がバレないで済むかもしれないと浅はかなことを考えておりました」
「………わたしは毎回睡眠薬で眠らされていたし真っ暗な部屋で過ごしたので犯人の顔は知らないわ。
わたしは犯人がいない間にこっそり逃げたの、だから犯人のことは全くわからないわ」
そう言ってから「わたしは今からここを逃げ出します」と言って微笑んだ。
二人は驚き固まっていた。
でも………首を横に振った。
「バレなければいいと思ったのは確かです。でももういいのです、悪いことをして作ったお金で娘の命を助けてもわたし達は一生娘の顔をまともに見て暮らすことができなくなります、あなたのお顔を見ていてそう思いました、ただ……我儘なお願いですが……娘を孤児院に入れる手続きだけはしてもらえないでしょうか?まだ8歳なのです。遅くに生まれた娘です……一人では生きていけません」
「わたしは犯人の顔なんて見ていないの。だからそのお願いは聞けないわ。
わたしはバイセン様にとてもお世話になりました。あなたは誘拐してもわたしが傷つかないように気を遣ってくださいました。
この場所はたぶんミレガー伯爵家の別邸ですよね?外の景色に見覚えがあります。誰も来ないようにしてくださっていたんでしょう?
バイセン様が全ての罪を被るつもりで誰もここに近寄らせないようにしていた。だからここには誰もいないんですよね?」
「君は相変わらず優しい考え方しかしない子だね。わたしは君を攫って君の父上を脅している、それだけだ……だからわたしは罪を償う、ミレガー伯爵の罪をわたしは知っているのだから全て話そうと思う……ただ……妻には多少でも温情を与えてもらえたら嬉しい」
わたし達が話し込んでいる間に、誰かがこの屋敷に侵入していた。
「ガタッ」
「だ、誰?」
バイセン様の奥様が慌ててわたしの前に立った。
バイセン様も私たちを庇うようにさらに前に立ち扉の方へと目を向けた。
「ライナ!」
ーーこの声はバズール?
わたしはバズール達が助けに来てくれたとわかった時思わず体が動いた。
「二人ともわたしの後ろに!」
扉が開き剣を持った騎士達が周りを取り囲んでいた。
「ライナ!助けに来た」
「バズール、わたしは捕まっていない。ここには自分の意思でいるの。その剣を持った人達を後ろにさげてちょうだい」
「何を言ってるんだ?そいつらはお前の父親を脅しているんだぞ」
「違うわ、全てミレガー伯爵が悪いの。この人達はただの犠牲者よ!」
「お前は何甘いことを言ってるんだ!今の状況をわかってもいないくせに」
「わかっていないのはバズールよ!わたしはこの人達からは何もされていない。毎日美味しいご飯を食べてお話して楽しく過ごしただけなのだから!」
「ったく、とにかくここから出よう!その二人も拘束はしない。だが一緒に来てもらう」
二人は「ライナ様もういいのです」「きちんと罪は償います」とわたしに言ったが、わたしはその言葉を無視することにした。
「わたしはお二人について来ただけです。それが真実です」
ーーーーー
わたし達は何故かホテルに連れて行かれた。
「もうすぐライナのお父さんも駆けつけるからね」
わたしの顔を見て不機嫌に言った。
心配かけていたのに、『わたしは何もされていません』なんて通用するわけがない。
それでも二人を助けたい。
お父様達がここに来るまでにせめてバズールだけでも懐柔することにした。わたしの味方を一人でもつければ二人を助けやすくなる。
わたしは必死だったのだと思う。
そして、バズールに全てを話した。
するとバズールはさっきまで不機嫌だったのに今は不機嫌を通り越して怒っていて、手はテーブルの上をトントンと小刻みに叩き、下を向いて大きな溜息を何度もついている。
わたしに怒鳴りたいのにそれを堪えているのがよくわかる。長年一緒に育った彼なので態度である程度わかってしまう。
もうそろそろ爆発しそう。
「……ねぇ、バズール?わたしの話理解してくれたかしら?」
「ライナ様、もういいのです。自分のしたことにはきちんと責任を負うべきなのですから」
バイセン様は横でわたしに何度もそう言うのだけど
「わたしはわたしの意思であなた方について行った。それが真実です」
キッパリと言い切ると
「で?ライナはそれで押し通せると思っているの?」
と呆れながらわたしに聞くバズール。
「押し通す?違うは事実なの」
あくまでわたしの意思。
「どうして?伯爵のため?娘さんのことで脅されているのではないのですか?」
「確かに旦那様にお金を渡すからあなたを攫って脅して欲しいと言われました。娘の病気は心臓病です。治療するには高額なお金がいるのも事実ですが、ミレガー伯爵家が潰れれば働いている使用人達は路頭に迷う者もたくさんいます。
わたしは執事です、みんなを守るためにもあなたのお父上の裁判を辞めさせたいと思っています、いえ、辞めさせることはできなくても少しでも時間を稼ぎたかった」
「なぜですか?」
「使用人達を解雇ではなく紹介状を持たせて他へ移してあげたかったのです」
「………確かにミレガー伯爵家が潰れれば使用人は解雇されますね……でもだからと言って貴方がそこまでする必要はあるのですか?」
「ですから、娘の治療費のためでもあるのです。わたしはたくさんのお金をもらえます。……使用人のことはついでみたいなものです」
ーーバイセン様はついでだと言ったけど、本当は使用人達のことも思っているのがわかる。わたしが働いている時も彼は厳しく指導してくれたけど、とても優しい人だった。
旦那様に誘拐のことを頼まれた時点で断ることはできない。ならば娘のため、使用人のために自分だけが犠牲になるつもりなのだろう。
「……奥様を巻き込んだのは?」
「わたしがたまたま計画を知ってしまって、無理やり手伝いをしたのです。運が良ければわたし達の顔がバレないで済むかもしれないと浅はかなことを考えておりました」
「………わたしは毎回睡眠薬で眠らされていたし真っ暗な部屋で過ごしたので犯人の顔は知らないわ。
わたしは犯人がいない間にこっそり逃げたの、だから犯人のことは全くわからないわ」
そう言ってから「わたしは今からここを逃げ出します」と言って微笑んだ。
二人は驚き固まっていた。
でも………首を横に振った。
「バレなければいいと思ったのは確かです。でももういいのです、悪いことをして作ったお金で娘の命を助けてもわたし達は一生娘の顔をまともに見て暮らすことができなくなります、あなたのお顔を見ていてそう思いました、ただ……我儘なお願いですが……娘を孤児院に入れる手続きだけはしてもらえないでしょうか?まだ8歳なのです。遅くに生まれた娘です……一人では生きていけません」
「わたしは犯人の顔なんて見ていないの。だからそのお願いは聞けないわ。
わたしはバイセン様にとてもお世話になりました。あなたは誘拐してもわたしが傷つかないように気を遣ってくださいました。
この場所はたぶんミレガー伯爵家の別邸ですよね?外の景色に見覚えがあります。誰も来ないようにしてくださっていたんでしょう?
バイセン様が全ての罪を被るつもりで誰もここに近寄らせないようにしていた。だからここには誰もいないんですよね?」
「君は相変わらず優しい考え方しかしない子だね。わたしは君を攫って君の父上を脅している、それだけだ……だからわたしは罪を償う、ミレガー伯爵の罪をわたしは知っているのだから全て話そうと思う……ただ……妻には多少でも温情を与えてもらえたら嬉しい」
わたし達が話し込んでいる間に、誰かがこの屋敷に侵入していた。
「ガタッ」
「だ、誰?」
バイセン様の奥様が慌ててわたしの前に立った。
バイセン様も私たちを庇うようにさらに前に立ち扉の方へと目を向けた。
「ライナ!」
ーーこの声はバズール?
わたしはバズール達が助けに来てくれたとわかった時思わず体が動いた。
「二人ともわたしの後ろに!」
扉が開き剣を持った騎士達が周りを取り囲んでいた。
「ライナ!助けに来た」
「バズール、わたしは捕まっていない。ここには自分の意思でいるの。その剣を持った人達を後ろにさげてちょうだい」
「何を言ってるんだ?そいつらはお前の父親を脅しているんだぞ」
「違うわ、全てミレガー伯爵が悪いの。この人達はただの犠牲者よ!」
「お前は何甘いことを言ってるんだ!今の状況をわかってもいないくせに」
「わかっていないのはバズールよ!わたしはこの人達からは何もされていない。毎日美味しいご飯を食べてお話して楽しく過ごしただけなのだから!」
「ったく、とにかくここから出よう!その二人も拘束はしない。だが一緒に来てもらう」
二人は「ライナ様もういいのです」「きちんと罪は償います」とわたしに言ったが、わたしはその言葉を無視することにした。
「わたしはお二人について来ただけです。それが真実です」
ーーーーー
わたし達は何故かホテルに連れて行かれた。
「もうすぐライナのお父さんも駆けつけるからね」
わたしの顔を見て不機嫌に言った。
心配かけていたのに、『わたしは何もされていません』なんて通用するわけがない。
それでも二人を助けたい。
お父様達がここに来るまでにせめてバズールだけでも懐柔することにした。わたしの味方を一人でもつければ二人を助けやすくなる。
わたしは必死だったのだと思う。
そして、バズールに全てを話した。
するとバズールはさっきまで不機嫌だったのに今は不機嫌を通り越して怒っていて、手はテーブルの上をトントンと小刻みに叩き、下を向いて大きな溜息を何度もついている。
わたしに怒鳴りたいのにそれを堪えているのがよくわかる。長年一緒に育った彼なので態度である程度わかってしまう。
もうそろそろ爆発しそう。
「……ねぇ、バズール?わたしの話理解してくれたかしら?」
「ライナ様、もういいのです。自分のしたことにはきちんと責任を負うべきなのですから」
バイセン様は横でわたしに何度もそう言うのだけど
「わたしはわたしの意思であなた方について行った。それが真実です」
キッパリと言い切ると
「で?ライナはそれで押し通せると思っているの?」
と呆れながらわたしに聞くバズール。
「押し通す?違うは事実なの」
あくまでわたしの意思。
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