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にじゅう
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「バズール、勘違いしないでね、勉強が遅れているの。もちろん近くにはうちの使用人達もいるので変な噂はたたないわ。男好きなんて言われたくないもの」
バズールはなんとも言えない困った顔で苦笑いをこぼす。
なんだかわたしの変な発言の所為で勘違いされたみたい……
お互い気まずい空気になって黙っているとサマンサが
「はい!お二人とも時間は有限でございます。急いで食事をしてお勉強に取りかかりましょう」と言ってくれた。
「そ、そうね。さっさと始めなくっちゃ、ミレガー夫人のおかげで無駄な時間を使ってしまったもの」
「ミレガー夫人のことはどうする?」
「うん?放っておくわ、お父様達がなんとかしてくださると思うの」
「……やっぱり潰してしまうしかないか………」
バズールの怖い一言は聞かなかったことにした。
だってそんなこと出来るわけないもの。
基本優しいバズールを知っているわたしには彼のそんな言葉は信じられず、怒ってくれているのだと思うことにした。
それから食事が終わり勉強を始めた。
わからないところも多く遅い時間まで勉強をした。
大雨の中両親は帰らず、わたしはサマンサと三人で勉強に集中することになった。
「ふあぁ~、そろそろ寝ましょうか?サマンサもごめんね、一緒に付き合ってもらって」
「気になさらないでください。ライナ様のそばにいるのは当たり前のことですので」
「ライナ、俺のこと褒めてよ!眠たいのに何時間も付き合ったんだからな。ところで留学先は決めたの?」
「うーん、お父様に任せているの」
「自分のことなのに?」
「だってシエルとの未来しか考えていなかったのよ?新しいことを始めたいと思っていてもどうしたいのかはまだわからない、わからないから探したいの」
「そっか……ずっとシエルとの未来しか見ていなかったんだ」
「うんまぁ……それももうすぐ終わるのだけどね」
自分で言っておきながら胸がズキンと痛んだ。
「婚約解消のための手続きが終わったんだ?」
「うん、教会からの許可も出たのであとはお互いのサインをしたら終わりなの……お父様が最後にどうするって聞かれたの」
「最後に?」
「うん、わたしね、最後にシエルに会って話してみようと思うの。わたしのことを嫌いになった理由……それに彼は婚約解消のことを知らなくて突然言われるのよ?わたしのことを嫌いでも結婚はするのだと思っていると思うの……やっぱりショックだと思うのよ?彼の将来が変わってしまうのだから……」
「同情?それともまだ愛情が残ってるの?」
「わからないの、だってここ最近彼に会っていないし……会った時は……いつも不機嫌で酷いことしか言われていないもの……あんなに大好きだったのにね」
勉強の手を止めて夜遅いのにシエルと話し出した。もちろんサマンサや執事もまだ近くにいてくれた。
そうでなければ従兄弟とは言え変な噂をされることがある。二人もそれぞれ書類などの仕事をしていたのでもう少しだけ起きていても大丈夫だと言われた。
「で、いつ会うの?」
「わたしの試験がひと月後だからその後にお願いするつもりなの」
「そうか……試験上手くいくといいね、希望の学校を指定できる方がやはり留学してもやり甲斐があるからね」
「バズールの留学先はオリソン国だったかしら?新しい国になったばかりで身分の差など関係なく自分の実力と成績で認めてもらえると聞いたわ、とても興味深いわよね?」
「俺は伯爵家嫡男としてではなくてただのバズールとして向こうの国で過ごしてみたいんだ。井の中の蛙にはなりたくない、絶対に自分に自信をつけたいんだ。夢のためにも」
「夢があるの?知らなかったわ」
初めて聞いた言葉に驚いた。
「うん、ずっとずっと諦めなきゃと思ってたのに諦められなかった夢。卒業して留学したら諦めるつもりだったんだ……だけどもう一度チャレンジしてみようと思っているんだ」
「まぁ知らなかったわ。バズールにはそんな叶えたい夢があったのね?絶対叶うと思うわ、だってバズールはどんな人よりも努力家だし優しいし、頭もいいし、人当たりだけなら猫被っていていいし……それに作り笑いは完璧だし……えっとお……」
「もういいよ、俺のいいところ言ってくれてるんだろうけど、最後の方の言葉は何?」
「え?バズールってとってもモテるのに、よく考えたら誰ともお付き合いしていないし浮いた噂なんてなかったなと……それに従兄弟とはいえバズールと居るとご令嬢達にいつもわたし睨まれていたなと思い出したの。
作り笑いしかしないバズールなのに……本当のバズールはあんな爽やかじゃないもの。楽しい時は楽しいってしっかり笑うし大人っぽいフリしているけど本当は感情のままにすぐ怒るしよく笑うし、年相応なのに。
みんな本当のバズールのことを知ったらますます好きになってもらえると思ったの」
「ライナは俺の本当の姿を知っている唯一だもんね」
「ふふ、長年ずっと一緒にいたのだもの。バズールのことはなんでも知っているわ……あ、でも、叶えたい夢があったなんて……どうして教えてくれなかったの?」
「教えないのではなくて、言えなかったんだ」
バズールはそう言うと少し寂しそうにした。
「いつか俺の夢、話してあげるよ」
バズールがいつもの揶揄うような顔ではなく真面目な顔で言うのでドキッとした。
◆ ◆ ◆
【最後に貴女と。】
番外編今日で完結します。
最後にやっとパトリーナが幸せになります。
もしよければ覗いてみてください。
バズールはなんとも言えない困った顔で苦笑いをこぼす。
なんだかわたしの変な発言の所為で勘違いされたみたい……
お互い気まずい空気になって黙っているとサマンサが
「はい!お二人とも時間は有限でございます。急いで食事をしてお勉強に取りかかりましょう」と言ってくれた。
「そ、そうね。さっさと始めなくっちゃ、ミレガー夫人のおかげで無駄な時間を使ってしまったもの」
「ミレガー夫人のことはどうする?」
「うん?放っておくわ、お父様達がなんとかしてくださると思うの」
「……やっぱり潰してしまうしかないか………」
バズールの怖い一言は聞かなかったことにした。
だってそんなこと出来るわけないもの。
基本優しいバズールを知っているわたしには彼のそんな言葉は信じられず、怒ってくれているのだと思うことにした。
それから食事が終わり勉強を始めた。
わからないところも多く遅い時間まで勉強をした。
大雨の中両親は帰らず、わたしはサマンサと三人で勉強に集中することになった。
「ふあぁ~、そろそろ寝ましょうか?サマンサもごめんね、一緒に付き合ってもらって」
「気になさらないでください。ライナ様のそばにいるのは当たり前のことですので」
「ライナ、俺のこと褒めてよ!眠たいのに何時間も付き合ったんだからな。ところで留学先は決めたの?」
「うーん、お父様に任せているの」
「自分のことなのに?」
「だってシエルとの未来しか考えていなかったのよ?新しいことを始めたいと思っていてもどうしたいのかはまだわからない、わからないから探したいの」
「そっか……ずっとシエルとの未来しか見ていなかったんだ」
「うんまぁ……それももうすぐ終わるのだけどね」
自分で言っておきながら胸がズキンと痛んだ。
「婚約解消のための手続きが終わったんだ?」
「うん、教会からの許可も出たのであとはお互いのサインをしたら終わりなの……お父様が最後にどうするって聞かれたの」
「最後に?」
「うん、わたしね、最後にシエルに会って話してみようと思うの。わたしのことを嫌いになった理由……それに彼は婚約解消のことを知らなくて突然言われるのよ?わたしのことを嫌いでも結婚はするのだと思っていると思うの……やっぱりショックだと思うのよ?彼の将来が変わってしまうのだから……」
「同情?それともまだ愛情が残ってるの?」
「わからないの、だってここ最近彼に会っていないし……会った時は……いつも不機嫌で酷いことしか言われていないもの……あんなに大好きだったのにね」
勉強の手を止めて夜遅いのにシエルと話し出した。もちろんサマンサや執事もまだ近くにいてくれた。
そうでなければ従兄弟とは言え変な噂をされることがある。二人もそれぞれ書類などの仕事をしていたのでもう少しだけ起きていても大丈夫だと言われた。
「で、いつ会うの?」
「わたしの試験がひと月後だからその後にお願いするつもりなの」
「そうか……試験上手くいくといいね、希望の学校を指定できる方がやはり留学してもやり甲斐があるからね」
「バズールの留学先はオリソン国だったかしら?新しい国になったばかりで身分の差など関係なく自分の実力と成績で認めてもらえると聞いたわ、とても興味深いわよね?」
「俺は伯爵家嫡男としてではなくてただのバズールとして向こうの国で過ごしてみたいんだ。井の中の蛙にはなりたくない、絶対に自分に自信をつけたいんだ。夢のためにも」
「夢があるの?知らなかったわ」
初めて聞いた言葉に驚いた。
「うん、ずっとずっと諦めなきゃと思ってたのに諦められなかった夢。卒業して留学したら諦めるつもりだったんだ……だけどもう一度チャレンジしてみようと思っているんだ」
「まぁ知らなかったわ。バズールにはそんな叶えたい夢があったのね?絶対叶うと思うわ、だってバズールはどんな人よりも努力家だし優しいし、頭もいいし、人当たりだけなら猫被っていていいし……それに作り笑いは完璧だし……えっとお……」
「もういいよ、俺のいいところ言ってくれてるんだろうけど、最後の方の言葉は何?」
「え?バズールってとってもモテるのに、よく考えたら誰ともお付き合いしていないし浮いた噂なんてなかったなと……それに従兄弟とはいえバズールと居るとご令嬢達にいつもわたし睨まれていたなと思い出したの。
作り笑いしかしないバズールなのに……本当のバズールはあんな爽やかじゃないもの。楽しい時は楽しいってしっかり笑うし大人っぽいフリしているけど本当は感情のままにすぐ怒るしよく笑うし、年相応なのに。
みんな本当のバズールのことを知ったらますます好きになってもらえると思ったの」
「ライナは俺の本当の姿を知っている唯一だもんね」
「ふふ、長年ずっと一緒にいたのだもの。バズールのことはなんでも知っているわ……あ、でも、叶えたい夢があったなんて……どうして教えてくれなかったの?」
「教えないのではなくて、言えなかったんだ」
バズールはそう言うと少し寂しそうにした。
「いつか俺の夢、話してあげるよ」
バズールがいつもの揶揄うような顔ではなく真面目な顔で言うのでドキッとした。
◆ ◆ ◆
【最後に貴女と。】
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