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バズール編③
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リーリエが俺にまとわりつくようになったのは……彼女が高等部に入った頃だった。
ライナが働く伯爵家のご令嬢。
そしてシエルのことを気に入って色々シエルにちょっかいをかけていると情報だけは入っていた。
学校でのリーリエは、いつも男子を侍らせて自分がお姫様にでもなった気分でいるみたいだ。
俺からしたら頭が空っぽのお花畑の中でしか過ごせないトラブルメーカーでしかない。
婚約者のいる男子達を手玉に取り女子生徒達はリーリエのことをかなり恨んでいる。
15歳にして体で男子を懐柔している女子生徒。何人かの男子は彼女と関係を持っていると噂されている。
今は確かに以前と違い純潔は重視されていない。
しかしだからと言って15歳にして性に自由すぎるのは如何なものだろう。特に婚約者のいる男子を狙うなんて……
リーリエにとって男子は獲物で狙った獲物が落ちないことはあり得ないのだろう。
だから俺は彼女に執拗なまでに執着されて狙われているようだ。
ライナはと言うと、シエルとの仕事を楽しそうに語っていた。腹が立つけど、好きな子が頬を染めて楽しそうに婚約者のことを話しているのだから黙って聞いているしかなかった。
ーーシエルなんか……
何度そう言いそうになった。
あいつはライナが思っているほど純情でも誠実でもない。
ライナのことが好きすぎて、あいつも俺と同じで拗らせている。
そんな二人の間にあのリーリエはか弱そうなフリをして入り込んでいる。
そしてシエルを自分のものにしようとライナのことを傷つけている。
俺と一緒の時なら守れるのに……屋敷で働いているライナはリーリエの我儘なシエルへの執着心のせいで傷つけられている。
シエルはリーリエの護衛騎士になった途端、ライナとの約束を守らなくなった。
本人の意思なのかと思い調べたが、リーリエが何かと理由をつけてシエルの休みを奪いライナとの約束を断らせているようだ。
ーー俺にとってはリーリエの行動は都合がいいのかもしれない。二人を引き裂いてくれるのだから……でもライナがあんなに傷つけられるのを見て平気ではいられない。
なんとかしてあげたくても狡猾なリーリエが屋敷でしていることには手が出せない。
俺はひたすら情報を集めることしかできなかった。
リーリエの屋敷の使用人数人にはお金を渡して何かしらの情報を聞き出していてよかった。
『マルシェ』を予約したのもライナがシエルとの約束を反故にされるだろうと前もって聞いていたからだ。
少しでもライナの辛い気持ちを紛らわせてあげたかった。
ーーーーー
そして、思った通りライナは……
「仕方ないわ、荷物もあるから従兄弟のバズールについて来てもらおう」
と、サマンサに呟いていたらしい。
サマンサも俺と情報交換している一人だ。
お互いライナが傷つかないように何かできないか協力しあっている。
サマンサ曰く……働く屋敷でリーリエがシエルに甘える姿をライナに態と見せているらしい。
ーーライナのことを傷つけやがって!
「ライナ、そんなムスッとして歩くのやめてよ」
「バズールはわたしのどこを見てムスッとしていると言うの?こんな笑顔なのに」
必死で笑顔を作ろうとするライナ。
ーーどう見ても不機嫌なのは確かなのに傷ついているくせに、俺の前ではそれを出そうとしない。
「ったく、シエルはライナを放って何してんだよ」
「休日返上でお嬢様の護衛らしいわ」
「リーリエ嬢だろう?学園でも噂になってる。儚げで護ってやりたくなるって、男子からはね。女子からは結構嫌われてる」
「え?なんで?」
「だって婚約者のいる男子に媚びて二人の関係を壊して楽しんでいるらしいよ。って俺の友達が言ってた」
「………わたしとシエルのことも壊したいのかしら?」
「うーん、あり得るね」
「ふー、でもそれで壊れるならそれまでの関係なのかも」
「あんなにシエルが大好きだったのにいいの?」
「最近あまりにもデートをキャンセルされるし屋敷では目も合わせてくれないの。もうそろそろ我慢の限界は過ぎたかも」
「じゃあ今度の夜会はどうするの?」
「エスコートならお父様がいるし諦めるわ」
ドレスを取りに入ったお店には何故かリーリエとシエルがいた。
ーーったく、こんな時に出会うなんて!
「……あ……お嬢様、こんにちわ」
ライナは慌てて頭を下げて挨拶をした。
隣にいた俺はリーリエと爵位が同じなので自ら挨拶しないで立っていた。
「あら?ライナ、今日はデートなの?」
リーリエの意地悪な言葉にライナは顔を引き攣らせながらもなんとか笑顔で答えた。
ーーこんな女の所為でライナが傷つくなんて!
「彼はフェルドナー伯爵の嫡男のバズールと申します、わたしの従兄弟なんです。今日はドレスを取りにきたので付き合ってもらっています」
ライナは引き攣りながらも笑顔で答えた。
シエルの方を見ようともせずに。
「バズール様って言ったら3年生の?成績が優秀で生徒会長をされていますよね?お会いしてみたかったの。今度学校でご一緒にランチしませんか?」
笑顔で俺に甘えるように声をかけた。
「俺が君と?何故?」
「え?」
俺の反応にリーリエは怪訝な顔をした。
ーーなんで好きでもない女とランチしないといけないんだ!何度も断っただろう!
「だってせっかく知り合いになったのですもの、だからランチくらい一緒に食べて差し上げたいの」
ーー何が『差し上げたい』だ!お前なんかと飯が食えるか!
「いや結構です、知り合いっていま初めて顔を知って挨拶しただけだよね?知り合いでも友達でもないからね」
「……そんな酷いわ」
目に涙をためて潤んだ瞳で俺を見つめた。
ーー男はこれに引っかかるんだろうけど俺は気持ち悪いとしか思えなかった。
「酷い?別におかしなことは言っていないよ。ライナ行くよ、君のために予約をとっている『マルシェ』の時間が間に合わなくなるよ。さっさとドレスをもらって行こう」
俺は付き合いきれないといった顔をしてリーリエからさっさと離れてライナの肩を抱き寄せて店の中へと入った。
ライナが体を小刻みに震わせていた。
本当はリーリエなんかに会って悔しいんだろう。シエルが全くライナのことを見ようとしないし反応もしなかった。いくら仕事とは言え婚約者であるライナをあそこまで無視できるなんて……
シエルはリーリエにもう落とされてしまったんだろうか?
「マルシェ?あのなかなか予約が取れないお店?え?狡い」
遠くからそんな声が聞こえてきたけど俺は完全無視。
そしてライナの耳元で囁いた。
「うわぁ、あの子、ヤバイな、自分が声をかければどんな男も靡くと思っているよ」
ライナは後ろをチラッと振り返るとシエルがリーリエにそっと寄り添って慰めていた。
俺はライナを傷つけるリーリエとシエルに腹を立てながら、ライナはシエルになんか渡すもんかと決意した。
もう遠慮はしない。
ライナのことは俺が守りたい。
ライナが働く伯爵家のご令嬢。
そしてシエルのことを気に入って色々シエルにちょっかいをかけていると情報だけは入っていた。
学校でのリーリエは、いつも男子を侍らせて自分がお姫様にでもなった気分でいるみたいだ。
俺からしたら頭が空っぽのお花畑の中でしか過ごせないトラブルメーカーでしかない。
婚約者のいる男子達を手玉に取り女子生徒達はリーリエのことをかなり恨んでいる。
15歳にして体で男子を懐柔している女子生徒。何人かの男子は彼女と関係を持っていると噂されている。
今は確かに以前と違い純潔は重視されていない。
しかしだからと言って15歳にして性に自由すぎるのは如何なものだろう。特に婚約者のいる男子を狙うなんて……
リーリエにとって男子は獲物で狙った獲物が落ちないことはあり得ないのだろう。
だから俺は彼女に執拗なまでに執着されて狙われているようだ。
ライナはと言うと、シエルとの仕事を楽しそうに語っていた。腹が立つけど、好きな子が頬を染めて楽しそうに婚約者のことを話しているのだから黙って聞いているしかなかった。
ーーシエルなんか……
何度そう言いそうになった。
あいつはライナが思っているほど純情でも誠実でもない。
ライナのことが好きすぎて、あいつも俺と同じで拗らせている。
そんな二人の間にあのリーリエはか弱そうなフリをして入り込んでいる。
そしてシエルを自分のものにしようとライナのことを傷つけている。
俺と一緒の時なら守れるのに……屋敷で働いているライナはリーリエの我儘なシエルへの執着心のせいで傷つけられている。
シエルはリーリエの護衛騎士になった途端、ライナとの約束を守らなくなった。
本人の意思なのかと思い調べたが、リーリエが何かと理由をつけてシエルの休みを奪いライナとの約束を断らせているようだ。
ーー俺にとってはリーリエの行動は都合がいいのかもしれない。二人を引き裂いてくれるのだから……でもライナがあんなに傷つけられるのを見て平気ではいられない。
なんとかしてあげたくても狡猾なリーリエが屋敷でしていることには手が出せない。
俺はひたすら情報を集めることしかできなかった。
リーリエの屋敷の使用人数人にはお金を渡して何かしらの情報を聞き出していてよかった。
『マルシェ』を予約したのもライナがシエルとの約束を反故にされるだろうと前もって聞いていたからだ。
少しでもライナの辛い気持ちを紛らわせてあげたかった。
ーーーーー
そして、思った通りライナは……
「仕方ないわ、荷物もあるから従兄弟のバズールについて来てもらおう」
と、サマンサに呟いていたらしい。
サマンサも俺と情報交換している一人だ。
お互いライナが傷つかないように何かできないか協力しあっている。
サマンサ曰く……働く屋敷でリーリエがシエルに甘える姿をライナに態と見せているらしい。
ーーライナのことを傷つけやがって!
「ライナ、そんなムスッとして歩くのやめてよ」
「バズールはわたしのどこを見てムスッとしていると言うの?こんな笑顔なのに」
必死で笑顔を作ろうとするライナ。
ーーどう見ても不機嫌なのは確かなのに傷ついているくせに、俺の前ではそれを出そうとしない。
「ったく、シエルはライナを放って何してんだよ」
「休日返上でお嬢様の護衛らしいわ」
「リーリエ嬢だろう?学園でも噂になってる。儚げで護ってやりたくなるって、男子からはね。女子からは結構嫌われてる」
「え?なんで?」
「だって婚約者のいる男子に媚びて二人の関係を壊して楽しんでいるらしいよ。って俺の友達が言ってた」
「………わたしとシエルのことも壊したいのかしら?」
「うーん、あり得るね」
「ふー、でもそれで壊れるならそれまでの関係なのかも」
「あんなにシエルが大好きだったのにいいの?」
「最近あまりにもデートをキャンセルされるし屋敷では目も合わせてくれないの。もうそろそろ我慢の限界は過ぎたかも」
「じゃあ今度の夜会はどうするの?」
「エスコートならお父様がいるし諦めるわ」
ドレスを取りに入ったお店には何故かリーリエとシエルがいた。
ーーったく、こんな時に出会うなんて!
「……あ……お嬢様、こんにちわ」
ライナは慌てて頭を下げて挨拶をした。
隣にいた俺はリーリエと爵位が同じなので自ら挨拶しないで立っていた。
「あら?ライナ、今日はデートなの?」
リーリエの意地悪な言葉にライナは顔を引き攣らせながらもなんとか笑顔で答えた。
ーーこんな女の所為でライナが傷つくなんて!
「彼はフェルドナー伯爵の嫡男のバズールと申します、わたしの従兄弟なんです。今日はドレスを取りにきたので付き合ってもらっています」
ライナは引き攣りながらも笑顔で答えた。
シエルの方を見ようともせずに。
「バズール様って言ったら3年生の?成績が優秀で生徒会長をされていますよね?お会いしてみたかったの。今度学校でご一緒にランチしませんか?」
笑顔で俺に甘えるように声をかけた。
「俺が君と?何故?」
「え?」
俺の反応にリーリエは怪訝な顔をした。
ーーなんで好きでもない女とランチしないといけないんだ!何度も断っただろう!
「だってせっかく知り合いになったのですもの、だからランチくらい一緒に食べて差し上げたいの」
ーー何が『差し上げたい』だ!お前なんかと飯が食えるか!
「いや結構です、知り合いっていま初めて顔を知って挨拶しただけだよね?知り合いでも友達でもないからね」
「……そんな酷いわ」
目に涙をためて潤んだ瞳で俺を見つめた。
ーー男はこれに引っかかるんだろうけど俺は気持ち悪いとしか思えなかった。
「酷い?別におかしなことは言っていないよ。ライナ行くよ、君のために予約をとっている『マルシェ』の時間が間に合わなくなるよ。さっさとドレスをもらって行こう」
俺は付き合いきれないといった顔をしてリーリエからさっさと離れてライナの肩を抱き寄せて店の中へと入った。
ライナが体を小刻みに震わせていた。
本当はリーリエなんかに会って悔しいんだろう。シエルが全くライナのことを見ようとしないし反応もしなかった。いくら仕事とは言え婚約者であるライナをあそこまで無視できるなんて……
シエルはリーリエにもう落とされてしまったんだろうか?
「マルシェ?あのなかなか予約が取れないお店?え?狡い」
遠くからそんな声が聞こえてきたけど俺は完全無視。
そしてライナの耳元で囁いた。
「うわぁ、あの子、ヤバイな、自分が声をかければどんな男も靡くと思っているよ」
ライナは後ろをチラッと振り返るとシエルがリーリエにそっと寄り添って慰めていた。
俺はライナを傷つけるリーリエとシエルに腹を立てながら、ライナはシエルになんか渡すもんかと決意した。
もう遠慮はしない。
ライナのことは俺が守りたい。
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