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じゅうさん
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リーリエ様はお店の中で泣き出した。
わたしは悪者なのだろうか。
仕方なくお店の奥のお客様専用の個室に入ってもらい落ち着くまで声をかけずに静かに待った。
「ライナ様、ミレガー伯爵様がお見えになりました」
「ありがとう、伯父様を呼んできてちょうだい」
わたしではもう対応出来ないので同じ伯爵でもある伯父様に来てもらうことにした。
ミレガー伯爵はわたしの顔を覚えていた。
「君は……うちの使用人だったはずだが?」
「はい、お世話になりましたが今はお暇させて頂いております」
「うちの娘を嘘つき呼ばわりしたのは君か?」
「違います。リーリエ様がうちのお店で買われたネックレスが偽物だと言われたので、箱の認証番号とネックレスについているはずの商会の印がどちらもないのでこちらはうちの商会が売ったものではないとご説明させていただいただけです」
「お父様、渡すときに偽物を渡されたのではないのかしら?そして本物はこのライナが盗んだと思うの」
「商品をお渡しする時はお客様の目の前で中身を確認していただき納得された上でサインをしていただいております。なので偽物にすり替えることなどあり得ません」
「……確かに、わたしはこの目で確認して買った。それにこのネックレスは私が買ったものではない。リーリエ、ルビーのネックレスはわたしが妻に贈ったものでお前に贈ってはいない。これはどうしたんだ?」
「え?お母様のお部屋からもちろんもらったのよ?お母様が宝石箱に入れていたから」
「勝手に盗ったのか?」
「何を仰っているのかわからないわ?だってお母様のものはわたしのものよ?」
リーリエ様は何を言っているの?と言う顔をしてキョトンとしていた。
「リーリエは黙って妻のものを使っているのか?」
「どうしてお父様はそんな怖いお顔をするの?……リーリエこわい」
そう言うとリーリエ様は両手で顔を覆って泣き出した。
「リーリエ、す、すまない。泣かないでくれ」
伯爵はリーリエ様に優しく宥めようとしていたがますます泣き出して店内の方まで泣き声が届きそうな勢いだった。
わたしは溜息をついた。
「ミレガー伯爵、こちらの不手際でないことがお分かり頂けたのならこれからのことをお話ししたいと思います」
「は?これからとは?」
ミレガー伯爵はわたしを小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「リーリエ様にはきちんとお話ししておりますが、わたしは嘘をついていると言われ盗人呼ばわりされました。何度も違うと否定しましたが聞き入れていただけませんでした」
「お前は使用人だろう?疑われても仕方がない身分だ、もういいだろう、わたし達は帰らせてもらうよ」
ミレガー伯爵も聞く耳を持たない人物のようだ。
ーー伯父様早くきてくれないかしら?
ここで引きとめておかないとさっさと帰っていきそうだわ。
「申し訳ございませんがもうすぐ当店の代表者が来ますのでお待ちいただけないでしょうか?」
頭を下げてお願いすると
「うるさい!退け!」
わたしを振り払いリーリエ様を連れて帰ろうとした。
わたしの体は振り払われた勢いでテーブルの方へと倒れてしまった。
ガタッ。
勢いよく転んでテーブルの角に頭をぶつけてしまった。
「……ラ、ライナ様!」
お店の従業員がわたしのそばに慌ててやって来てわたしの顔を覗き込んだ。
「…あっ……血が……」
額から生温かい血が流れてきているのがわかる。
目に入りそうになり額の血を手で拭くと、手は真っ赤になっていた。
ーー痛いし頭がクラクラする。
「タオルです」従業員が急いでタオルを渡してくれた。止血をするためタオルを傷口にあてるとズキッと痛みが走る。
「わ、わたしは何も悪くはない。か、帰らせてもらう。リーリエ早く帰ろう」
「逃げないでください」
怒りの声が扉の方から聞こえて来た。
ーー伯父様とお父様が物凄く怖い顔をしているのがぼんやりと見えた。その姿を見てわたしはホッとしたのか、フラッとしてそのまま意識を手放した。
「ライナ!」
わたしを呼ぶ声が聞こえた。
ーーーーー
目が覚めたら頭がズキズキと痛むしクラクラするし、意識はあるのだけど目をあけることが出来なかった。
「……だ、誰かい…ません…か?」
小さな掠れた声がなんとか出た。
「ライナ様!」
サマンサの声が聞こえた。
「……サ…マンサ?」
「はい」
「頭…が痛…いの」
「すぐにお医者様をお呼び致します」
サマンサが部屋の外へと走って行ったのがわかった。
待っている間なんとか痛みを堪えて目をあけると……
窓の外は真っ暗だった。
ーーもう夜なのね。
ーーここは……病院?かしら?
お医者様が来てすぐに診察をしてくれた。
「頭を強く打っております。それにかなりの出血もありましたのでしばらくは絶対安静です」
「………はい」
「薬を出しておきますので少しは痛みも和らぐと思います」
「……ありがとう…ございます」
わたしは薬を飲んでまたそのまま眠りについてしまった。
朝目覚めると体が怠くて、熱を測ると高熱が出ていた。
結局四日間も熱が下がらずそのまま寝込んでしまうことになった。
◆ ◆ ◆
最後に貴方と。
ショートショートを書いています。
もしよろしければ。
今回は……悲しいお話です。
わたしは悪者なのだろうか。
仕方なくお店の奥のお客様専用の個室に入ってもらい落ち着くまで声をかけずに静かに待った。
「ライナ様、ミレガー伯爵様がお見えになりました」
「ありがとう、伯父様を呼んできてちょうだい」
わたしではもう対応出来ないので同じ伯爵でもある伯父様に来てもらうことにした。
ミレガー伯爵はわたしの顔を覚えていた。
「君は……うちの使用人だったはずだが?」
「はい、お世話になりましたが今はお暇させて頂いております」
「うちの娘を嘘つき呼ばわりしたのは君か?」
「違います。リーリエ様がうちのお店で買われたネックレスが偽物だと言われたので、箱の認証番号とネックレスについているはずの商会の印がどちらもないのでこちらはうちの商会が売ったものではないとご説明させていただいただけです」
「お父様、渡すときに偽物を渡されたのではないのかしら?そして本物はこのライナが盗んだと思うの」
「商品をお渡しする時はお客様の目の前で中身を確認していただき納得された上でサインをしていただいております。なので偽物にすり替えることなどあり得ません」
「……確かに、わたしはこの目で確認して買った。それにこのネックレスは私が買ったものではない。リーリエ、ルビーのネックレスはわたしが妻に贈ったものでお前に贈ってはいない。これはどうしたんだ?」
「え?お母様のお部屋からもちろんもらったのよ?お母様が宝石箱に入れていたから」
「勝手に盗ったのか?」
「何を仰っているのかわからないわ?だってお母様のものはわたしのものよ?」
リーリエ様は何を言っているの?と言う顔をしてキョトンとしていた。
「リーリエは黙って妻のものを使っているのか?」
「どうしてお父様はそんな怖いお顔をするの?……リーリエこわい」
そう言うとリーリエ様は両手で顔を覆って泣き出した。
「リーリエ、す、すまない。泣かないでくれ」
伯爵はリーリエ様に優しく宥めようとしていたがますます泣き出して店内の方まで泣き声が届きそうな勢いだった。
わたしは溜息をついた。
「ミレガー伯爵、こちらの不手際でないことがお分かり頂けたのならこれからのことをお話ししたいと思います」
「は?これからとは?」
ミレガー伯爵はわたしを小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「リーリエ様にはきちんとお話ししておりますが、わたしは嘘をついていると言われ盗人呼ばわりされました。何度も違うと否定しましたが聞き入れていただけませんでした」
「お前は使用人だろう?疑われても仕方がない身分だ、もういいだろう、わたし達は帰らせてもらうよ」
ミレガー伯爵も聞く耳を持たない人物のようだ。
ーー伯父様早くきてくれないかしら?
ここで引きとめておかないとさっさと帰っていきそうだわ。
「申し訳ございませんがもうすぐ当店の代表者が来ますのでお待ちいただけないでしょうか?」
頭を下げてお願いすると
「うるさい!退け!」
わたしを振り払いリーリエ様を連れて帰ろうとした。
わたしの体は振り払われた勢いでテーブルの方へと倒れてしまった。
ガタッ。
勢いよく転んでテーブルの角に頭をぶつけてしまった。
「……ラ、ライナ様!」
お店の従業員がわたしのそばに慌ててやって来てわたしの顔を覗き込んだ。
「…あっ……血が……」
額から生温かい血が流れてきているのがわかる。
目に入りそうになり額の血を手で拭くと、手は真っ赤になっていた。
ーー痛いし頭がクラクラする。
「タオルです」従業員が急いでタオルを渡してくれた。止血をするためタオルを傷口にあてるとズキッと痛みが走る。
「わ、わたしは何も悪くはない。か、帰らせてもらう。リーリエ早く帰ろう」
「逃げないでください」
怒りの声が扉の方から聞こえて来た。
ーー伯父様とお父様が物凄く怖い顔をしているのがぼんやりと見えた。その姿を見てわたしはホッとしたのか、フラッとしてそのまま意識を手放した。
「ライナ!」
わたしを呼ぶ声が聞こえた。
ーーーーー
目が覚めたら頭がズキズキと痛むしクラクラするし、意識はあるのだけど目をあけることが出来なかった。
「……だ、誰かい…ません…か?」
小さな掠れた声がなんとか出た。
「ライナ様!」
サマンサの声が聞こえた。
「……サ…マンサ?」
「はい」
「頭…が痛…いの」
「すぐにお医者様をお呼び致します」
サマンサが部屋の外へと走って行ったのがわかった。
待っている間なんとか痛みを堪えて目をあけると……
窓の外は真っ暗だった。
ーーもう夜なのね。
ーーここは……病院?かしら?
お医者様が来てすぐに診察をしてくれた。
「頭を強く打っております。それにかなりの出血もありましたのでしばらくは絶対安静です」
「………はい」
「薬を出しておきますので少しは痛みも和らぐと思います」
「……ありがとう…ございます」
わたしは薬を飲んでまたそのまま眠りについてしまった。
朝目覚めると体が怠くて、熱を測ると高熱が出ていた。
結局四日間も熱が下がらずそのまま寝込んでしまうことになった。
◆ ◆ ◆
最後に貴方と。
ショートショートを書いています。
もしよろしければ。
今回は……悲しいお話です。
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