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じゅういち
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お祖母様の屋敷で過ごしたおかげで少しだけ気持ちも落ち着いて我が家に帰ってきた。
今は父の仕事を手伝いながら勉強も本格的に始めた。
留学先はお父様が探してくれている。
「ライナはシエルとの婚約解消をして留学したら婚約者はどうする?こちらでいい人を見つけておいた方がいいかい?それとも君が帰ってくるまで待つかい?」
お父様はもう先のことを心配してくれている。
まだ早いのに,
「わたしは……まだそこまでは考えられません。今は新しい夢を見つけたので頑張りたい…それだけです」
「貴方ったら気が早いのよ、まだシエルとの婚約も解消していないのよ?それにライナだって気持ちの整理をする時間は必要よ。いざとなればバズールもいるのだし」
「バズールか……あれはしつこいからな」
「しつこい?お父様、よくわかりませんがバズールは従兄弟ですよ?それも伯爵家の嫡男でしょう?それならばカイリの方が養子にするならいいと思います」
「養子?」
「ええ、わたしが結婚相手が見つからなければバズールを養子にもらうつもりなのでしょう?確かにバズールは優秀ですが彼は伯爵家の後継者です。ですからそこはカイリの方がよろしいかと」
「ライナはカイリと結婚したいの?」
「へ?結婚?カイリとですか?」
ーーわたしと?
「カイリはまだ14歳ですよ?わたしと4歳も歳が離れています。どうして結婚になるのですか?」
「そうだな………お前はまだしばらくはゆっくりとするべきだな」
「そう言っているでしょう、貴方は気が早すぎるのよ」
お父様達はよくわからないけど納得してくれたようだった。
シエルと婚約解消もしていないのに結婚なんて考えられない。
わたしとバズール?カイリ?
大体バズールは伯爵家の跡取りなのに。
ーーーーーー
お父様の仕事の合間に時間を作り試験勉強を始めたのはいいのだけど………
「はあ、一人で勉強してもわからないことが多いわ。一応高等部の卒業資格はとっているけど、留学のための勉強となると少し特殊だから対策も必要よね。やっぱりここはバズールに頼るしかないのかも」
バズールも卒業試験と留学の試験で忙しそう。
そう思いながらも………
それでも対策だけでも教えて欲しいとお願いしたらその日の夕方には我が家にきてくれた。
「ライナどこがわからないの?」
「わからないと言うよりもどこを勉強したらいいのかわからないの」
「あっ、そこかぁ、まずはこの参考書を使ってみて」
「持ってきてくれたの?」
「とりあえず俺が勉強し終わったのを持ってきた」
「助かる。行き詰まっていたの」
「……うん?ここ?これはね……」
バズールがわたしの隣に来て勉強を教えてくれた。
彼の息がわたしの耳元で聞こえてきた。
なんだか近過ぎて居心地が悪く感じた。
ーーあれ?バズールの手ってこんなに大きかったかしら?わたしと同じくらいだったのは……もうずっと昔のことだった……
同じ歳のいとこ同士、同じくらいの背、いつも二人は何をするのも一緒だった。
なのに………
お父様がバズールと結婚なんて馬鹿なことを言い出すから何だか変に意識してしまう。
お互いいとこ同士で幼馴染みたいなもの。なんでも言い合える仲なのに。今さら男として意識するなんてあるはずないのに。
「うん?人が一生懸命に教えてるのに何違うこと考えているんだ?」
そう言ってバズールは私の鼻をギュッとつまんだ。
「もう痛いじゃない!」
私が怒るとバズールはぶっと笑った。
「やっといつものライナに戻ったな。なんだかしおらしくしているから心配してたんだ」
「失礼ね。私だって色々考える時もあるのよ?」
「ふうん、シエルのことでも考え込んでるの?」
「シエル?……何も考えていなかったわ」
「へえあれだけシエルシエルってうるさいライナが?本気で婚約解消するつもりなんだ」
「本気でしなくてどうするの?」
「だってライナのことだから後悔して泣き続けそうな気がする。それなら解消するのはやめた方がいいんじゃない?一度話し合ってみたら?」
「話し合おうとして結局私が我儘だとか真面目に仕事もしないでいたとか再雇用してもらって再教育してもらえとかあんな訳のわからないことを言うシエルとはもう無理!絶対無理!」
ーー思い出しただけでムカつく!
いつも会うと責められてばかり。私が一体何をしたと言うの?確かにシエルと一緒にいたくて働き出したのは認めるわ。でも仕事は真面目にしていたつもりだしシエルに責められる謂れはないわ。
「シエルがそんなことを?あんなにライナのことを大切にしていたのに?」
バズールはなんだか考え込んでしまった。
わたしは思い出してムカつきながら勉強をしていると
「ライナ、こんなんじゃ勉強にならない。君の悪いところは他にすぐ気が散るところだ。やる気がないなら俺帰るよ」
バズールが珍しく本気で怒っている。
「ごめんなさい、つい色々考えてた。真面目に勉強するから教えて!」
バズールは私の頭を持っていた本でパコッと叩いた。
ーー痛くはないけど……うん、気合いよね?
「じゃあやるよ」
「うん!」
それからはバズールは時間がある時は私の勉強を見に来てくれた。おかげでどうしていいかわからなかった勉強の仕方もわかって前に進んできた。
これならなんとか試験も受けられそう。
シエルは、あれから何も言ってはこない。
そろそろ弁護士さんから連絡がくる頃だ。
わたしが望んで婚約解消をするのに……それでいいのに……この気の重たさはいったい何故なのだろう。
リーリエ様のあの勝ち誇った顔、わたしを見下しているかのような振る舞い、それを何も言わないで否定すらしてくれないシエル。リーリエ様にわたし達が婚約していることすら言ってくれなかったシエル。
彼にわたしの気持ちを伝えずに「さよなら」してしまって後悔しないのだろうか?
せめて一言くらい何か言ってやりたいと思うのはそれこそ我儘なのかしら?
今は父の仕事を手伝いながら勉強も本格的に始めた。
留学先はお父様が探してくれている。
「ライナはシエルとの婚約解消をして留学したら婚約者はどうする?こちらでいい人を見つけておいた方がいいかい?それとも君が帰ってくるまで待つかい?」
お父様はもう先のことを心配してくれている。
まだ早いのに,
「わたしは……まだそこまでは考えられません。今は新しい夢を見つけたので頑張りたい…それだけです」
「貴方ったら気が早いのよ、まだシエルとの婚約も解消していないのよ?それにライナだって気持ちの整理をする時間は必要よ。いざとなればバズールもいるのだし」
「バズールか……あれはしつこいからな」
「しつこい?お父様、よくわかりませんがバズールは従兄弟ですよ?それも伯爵家の嫡男でしょう?それならばカイリの方が養子にするならいいと思います」
「養子?」
「ええ、わたしが結婚相手が見つからなければバズールを養子にもらうつもりなのでしょう?確かにバズールは優秀ですが彼は伯爵家の後継者です。ですからそこはカイリの方がよろしいかと」
「ライナはカイリと結婚したいの?」
「へ?結婚?カイリとですか?」
ーーわたしと?
「カイリはまだ14歳ですよ?わたしと4歳も歳が離れています。どうして結婚になるのですか?」
「そうだな………お前はまだしばらくはゆっくりとするべきだな」
「そう言っているでしょう、貴方は気が早すぎるのよ」
お父様達はよくわからないけど納得してくれたようだった。
シエルと婚約解消もしていないのに結婚なんて考えられない。
わたしとバズール?カイリ?
大体バズールは伯爵家の跡取りなのに。
ーーーーーー
お父様の仕事の合間に時間を作り試験勉強を始めたのはいいのだけど………
「はあ、一人で勉強してもわからないことが多いわ。一応高等部の卒業資格はとっているけど、留学のための勉強となると少し特殊だから対策も必要よね。やっぱりここはバズールに頼るしかないのかも」
バズールも卒業試験と留学の試験で忙しそう。
そう思いながらも………
それでも対策だけでも教えて欲しいとお願いしたらその日の夕方には我が家にきてくれた。
「ライナどこがわからないの?」
「わからないと言うよりもどこを勉強したらいいのかわからないの」
「あっ、そこかぁ、まずはこの参考書を使ってみて」
「持ってきてくれたの?」
「とりあえず俺が勉強し終わったのを持ってきた」
「助かる。行き詰まっていたの」
「……うん?ここ?これはね……」
バズールがわたしの隣に来て勉強を教えてくれた。
彼の息がわたしの耳元で聞こえてきた。
なんだか近過ぎて居心地が悪く感じた。
ーーあれ?バズールの手ってこんなに大きかったかしら?わたしと同じくらいだったのは……もうずっと昔のことだった……
同じ歳のいとこ同士、同じくらいの背、いつも二人は何をするのも一緒だった。
なのに………
お父様がバズールと結婚なんて馬鹿なことを言い出すから何だか変に意識してしまう。
お互いいとこ同士で幼馴染みたいなもの。なんでも言い合える仲なのに。今さら男として意識するなんてあるはずないのに。
「うん?人が一生懸命に教えてるのに何違うこと考えているんだ?」
そう言ってバズールは私の鼻をギュッとつまんだ。
「もう痛いじゃない!」
私が怒るとバズールはぶっと笑った。
「やっといつものライナに戻ったな。なんだかしおらしくしているから心配してたんだ」
「失礼ね。私だって色々考える時もあるのよ?」
「ふうん、シエルのことでも考え込んでるの?」
「シエル?……何も考えていなかったわ」
「へえあれだけシエルシエルってうるさいライナが?本気で婚約解消するつもりなんだ」
「本気でしなくてどうするの?」
「だってライナのことだから後悔して泣き続けそうな気がする。それなら解消するのはやめた方がいいんじゃない?一度話し合ってみたら?」
「話し合おうとして結局私が我儘だとか真面目に仕事もしないでいたとか再雇用してもらって再教育してもらえとかあんな訳のわからないことを言うシエルとはもう無理!絶対無理!」
ーー思い出しただけでムカつく!
いつも会うと責められてばかり。私が一体何をしたと言うの?確かにシエルと一緒にいたくて働き出したのは認めるわ。でも仕事は真面目にしていたつもりだしシエルに責められる謂れはないわ。
「シエルがそんなことを?あんなにライナのことを大切にしていたのに?」
バズールはなんだか考え込んでしまった。
わたしは思い出してムカつきながら勉強をしていると
「ライナ、こんなんじゃ勉強にならない。君の悪いところは他にすぐ気が散るところだ。やる気がないなら俺帰るよ」
バズールが珍しく本気で怒っている。
「ごめんなさい、つい色々考えてた。真面目に勉強するから教えて!」
バズールは私の頭を持っていた本でパコッと叩いた。
ーー痛くはないけど……うん、気合いよね?
「じゃあやるよ」
「うん!」
それからはバズールは時間がある時は私の勉強を見に来てくれた。おかげでどうしていいかわからなかった勉強の仕方もわかって前に進んできた。
これならなんとか試験も受けられそう。
シエルは、あれから何も言ってはこない。
そろそろ弁護士さんから連絡がくる頃だ。
わたしが望んで婚約解消をするのに……それでいいのに……この気の重たさはいったい何故なのだろう。
リーリエ様のあの勝ち誇った顔、わたしを見下しているかのような振る舞い、それを何も言わないで否定すらしてくれないシエル。リーリエ様にわたし達が婚約していることすら言ってくれなかったシエル。
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