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シエルから久しぶりに連絡があった。
お父様達はずっと断ってくれていたが最後になるのでもう一度だけ会ってみたかった。
彼の心の中が知りたかった。
何度もデートをキャンセルされ無視をされ続けた。こちらもそれならと彼からの連絡は一切断っていた。
シエルからすればわたしがヤキモチを妬いて拗ねているのだろうと思っているようだった。
まだ婚約解消のことは両親に聞いていないようだし。
二人で会ったのはいつもデートをしていた公園だった。
ベンチに座り噴水を眺めてシエルの方を向かないでいると……
「ライナどうして今まで連絡すらくれなかったんだ?伯爵家の仕事も突然辞めてしまっただろう?」
最初からわたしを責めるの?
「………ふー…シエルはどうしてわたしが辞めたと思ったの?」
「我儘から?仕事が嫌になったのか?」
「そっかぁ、そう見えるのね?」
「リーリエ様が君の仕事が雑でよくサボるしみんなからの評判も悪いと聞いたんだ。メイド仲間と上手くいってなかったんだろう?」
「そっかぁ、そんな風にわたしのこと思っていたのね」
「俺がいくら連絡しても無視。君は変わってしまったんだね」
「そっかぁ、そう思ってたんだ」
「いい加減にその返事の仕方やめてくれないか?まともに返事をしてくれ。
このままでは君との結婚も考え直さないといけなくなる。それにリーリエ様が君を再教育してあげるからもう一度雇ってやってもいいと言ってくれた」
「そっかぁ、結婚を考え直すのね?」
わたしはベンチから立って
「シエル、ありがとう。色々心配してくれてよくわかったわ」
わたしが彼を見て優しく微笑むと彼は安心したのか
「ライナがいつもの顔に戻って安心したよ。リーリエ様にも伝えておくよ」
「何を?」
わたしがキョトンとした顔をすると
「もちろん再教育と再雇用だよ」と嬉しそうに言った。
「わたしは返事をしたかしら?」
「え?だってわかったって……」
シエルはわたしの言葉にあからさまに驚いてみせた。
「そう、そう捉えたのね?」
「違うのか?俺と一緒に居たくて働き出したんだろう?」
「そっかぁそんな時もあったわね。ごめんなさい、わたし用事を思い出したから行くわね」
「おいちょっと待って!久しぶりに会えたんだ。せっかくだから一緒に食事でもしよう」
わたしの手首を掴んで彼は「どうして帰るのか?」と不思議そうな顔をしてわたしを見た。
「シエルごめんなさい。リーリエ様の屋敷に戻ることはないわ。今は父の仕事の手伝いで忙しいの」
「手伝い?君はそんなことが出来るのか?君は勉強が苦手なんだろう?だから高等部へ行かずに俺のいる職場で働き出したんだろう?」
「本気でシエルはそう思っていたの?わたしは勉強は普通に出来たわ、もちろんすごく成績が良かったわけではないのは確かよ。ただ貴方を愛していたから同じ場所で過ごしたかっただけ」
「そんな我儘なことを考えていたのか?」
「我儘?シエルにはわたしがそう見えているのね」
わたしはシエルの手を振り払った。
ーーどうしてシエルは忘れてしまったの?
あんなに優しかったのに。
彼の優しい声が好きだった。
「ライナ」と呼んでくれる声。
「シエルわたしは帰るわ」
「…ライナ……」
彼の手を振り払って家に帰った。彼の声に振り返ることはしなかった。
屋敷に帰るとサマンサがわたしの顔を見て急いでやってきた。
「お嬢様、お早いお帰りでしたね。大丈夫ですか?」
「大丈夫?」
「顔色が真っ青です」
「……そう…かも知れないわ。なんだか疲れてしまったの、今日は夕飯はいらないわ、一人にして欲しいの」
部屋に戻ると部屋着に着替えてすぐに横になった。
「ハア、シエルはわたしの何を見ていたのかしら?」
ーーわたしは我儘なのかな?好きな人のそばに居たいと思った、少しでも彼の仕事を理解したかった。いずれは我が家を継ぐことになる。
そうなれば忙しくて一緒にいる時間は減ってしまう。だから今だけでもと思ったのに。
「ライナ、入ってもいいかしら?」
「お母様?どうぞ」
お母様がわたしを心配して顔を出した。
「少しは食事を摂った方がいいわ、スープとサンドイッチを持ってきたから後で食べてちょうだい」
「ご心配かけて申し訳ありません」
お母様は普段あまりわたしのことを干渉しないでくれている。伯爵家に働きに行くことも反対はしなかった。
「……ミレガー伯爵夫人はとても素敵な方よ。でも娘さんは歳をとってから生まれたからなのか少し我儘に育ったみたいね。あまり良い噂を聞かないわ。シエルは護衛騎士として彼女のそばにいて真面目過ぎるのが仇となったのかも知れないわね。護衛としての仕事と私情を混合させてしまっているのね。『護る』と言うことを勘違いしてしまったのかも」
「だからと言ってわたしを蔑ろにしてもいいのかな?わたしは我儘で仕事もサボるし雑な仕事しかしないのだと言われたの」
「シエルがそんなことを言ったの?」
お母様の顔色が変わった。
少し……いやかなり怖い。
「ライナ向こうの有責で婚約解消することが決まったわ。ただまだ向こうはシエルに伝えていないの」
「わたしから伝えるつもりはないわ、でもおじ様達もそろそろ話さないといけないのでは?」
「普通はそうよね、婚約解消は本人の将来を左右することなのだから。シエルは三男だからこのままでは貴族でなくなり平民になるかも知れないわね。
でもね、シエルの父親である男爵がとても怒っているのよ。だから解消するまで事実を伝えるつもりはないと言っているの」
「わたしも今日彼に会って……わたしも彼のことを諦めたけど…彼もわたしのことをなんとも思っていないのだとよくわかりました。わたし達の間には長い時間一緒にいて愛し合っていたと思っていたけど、それはわたしの一方的な勘違いだとよくわかりました」
「シエルは馬鹿ね、ライナを蔑ろにして、さらに将来を犠牲にしてしまったことにすら気が付かないなんて……」
お母様にとってシエルは自分の息子みたいに可愛がっていたし、将来は息子になるはずだった。だからわたしに対しての行動にも腹が立っているけど、彼自身に対しても思うところがあるようだ。
お父様達はずっと断ってくれていたが最後になるのでもう一度だけ会ってみたかった。
彼の心の中が知りたかった。
何度もデートをキャンセルされ無視をされ続けた。こちらもそれならと彼からの連絡は一切断っていた。
シエルからすればわたしがヤキモチを妬いて拗ねているのだろうと思っているようだった。
まだ婚約解消のことは両親に聞いていないようだし。
二人で会ったのはいつもデートをしていた公園だった。
ベンチに座り噴水を眺めてシエルの方を向かないでいると……
「ライナどうして今まで連絡すらくれなかったんだ?伯爵家の仕事も突然辞めてしまっただろう?」
最初からわたしを責めるの?
「………ふー…シエルはどうしてわたしが辞めたと思ったの?」
「我儘から?仕事が嫌になったのか?」
「そっかぁ、そう見えるのね?」
「リーリエ様が君の仕事が雑でよくサボるしみんなからの評判も悪いと聞いたんだ。メイド仲間と上手くいってなかったんだろう?」
「そっかぁ、そんな風にわたしのこと思っていたのね」
「俺がいくら連絡しても無視。君は変わってしまったんだね」
「そっかぁ、そう思ってたんだ」
「いい加減にその返事の仕方やめてくれないか?まともに返事をしてくれ。
このままでは君との結婚も考え直さないといけなくなる。それにリーリエ様が君を再教育してあげるからもう一度雇ってやってもいいと言ってくれた」
「そっかぁ、結婚を考え直すのね?」
わたしはベンチから立って
「シエル、ありがとう。色々心配してくれてよくわかったわ」
わたしが彼を見て優しく微笑むと彼は安心したのか
「ライナがいつもの顔に戻って安心したよ。リーリエ様にも伝えておくよ」
「何を?」
わたしがキョトンとした顔をすると
「もちろん再教育と再雇用だよ」と嬉しそうに言った。
「わたしは返事をしたかしら?」
「え?だってわかったって……」
シエルはわたしの言葉にあからさまに驚いてみせた。
「そう、そう捉えたのね?」
「違うのか?俺と一緒に居たくて働き出したんだろう?」
「そっかぁそんな時もあったわね。ごめんなさい、わたし用事を思い出したから行くわね」
「おいちょっと待って!久しぶりに会えたんだ。せっかくだから一緒に食事でもしよう」
わたしの手首を掴んで彼は「どうして帰るのか?」と不思議そうな顔をしてわたしを見た。
「シエルごめんなさい。リーリエ様の屋敷に戻ることはないわ。今は父の仕事の手伝いで忙しいの」
「手伝い?君はそんなことが出来るのか?君は勉強が苦手なんだろう?だから高等部へ行かずに俺のいる職場で働き出したんだろう?」
「本気でシエルはそう思っていたの?わたしは勉強は普通に出来たわ、もちろんすごく成績が良かったわけではないのは確かよ。ただ貴方を愛していたから同じ場所で過ごしたかっただけ」
「そんな我儘なことを考えていたのか?」
「我儘?シエルにはわたしがそう見えているのね」
わたしはシエルの手を振り払った。
ーーどうしてシエルは忘れてしまったの?
あんなに優しかったのに。
彼の優しい声が好きだった。
「ライナ」と呼んでくれる声。
「シエルわたしは帰るわ」
「…ライナ……」
彼の手を振り払って家に帰った。彼の声に振り返ることはしなかった。
屋敷に帰るとサマンサがわたしの顔を見て急いでやってきた。
「お嬢様、お早いお帰りでしたね。大丈夫ですか?」
「大丈夫?」
「顔色が真っ青です」
「……そう…かも知れないわ。なんだか疲れてしまったの、今日は夕飯はいらないわ、一人にして欲しいの」
部屋に戻ると部屋着に着替えてすぐに横になった。
「ハア、シエルはわたしの何を見ていたのかしら?」
ーーわたしは我儘なのかな?好きな人のそばに居たいと思った、少しでも彼の仕事を理解したかった。いずれは我が家を継ぐことになる。
そうなれば忙しくて一緒にいる時間は減ってしまう。だから今だけでもと思ったのに。
「ライナ、入ってもいいかしら?」
「お母様?どうぞ」
お母様がわたしを心配して顔を出した。
「少しは食事を摂った方がいいわ、スープとサンドイッチを持ってきたから後で食べてちょうだい」
「ご心配かけて申し訳ありません」
お母様は普段あまりわたしのことを干渉しないでくれている。伯爵家に働きに行くことも反対はしなかった。
「……ミレガー伯爵夫人はとても素敵な方よ。でも娘さんは歳をとってから生まれたからなのか少し我儘に育ったみたいね。あまり良い噂を聞かないわ。シエルは護衛騎士として彼女のそばにいて真面目過ぎるのが仇となったのかも知れないわね。護衛としての仕事と私情を混合させてしまっているのね。『護る』と言うことを勘違いしてしまったのかも」
「だからと言ってわたしを蔑ろにしてもいいのかな?わたしは我儘で仕事もサボるし雑な仕事しかしないのだと言われたの」
「シエルがそんなことを言ったの?」
お母様の顔色が変わった。
少し……いやかなり怖い。
「ライナ向こうの有責で婚約解消することが決まったわ。ただまだ向こうはシエルに伝えていないの」
「わたしから伝えるつもりはないわ、でもおじ様達もそろそろ話さないといけないのでは?」
「普通はそうよね、婚約解消は本人の将来を左右することなのだから。シエルは三男だからこのままでは貴族でなくなり平民になるかも知れないわね。
でもね、シエルの父親である男爵がとても怒っているのよ。だから解消するまで事実を伝えるつもりはないと言っているの」
「わたしも今日彼に会って……わたしも彼のことを諦めたけど…彼もわたしのことをなんとも思っていないのだとよくわかりました。わたし達の間には長い時間一緒にいて愛し合っていたと思っていたけど、それはわたしの一方的な勘違いだとよくわかりました」
「シエルは馬鹿ね、ライナを蔑ろにして、さらに将来を犠牲にしてしまったことにすら気が付かないなんて……」
お母様にとってシエルは自分の息子みたいに可愛がっていたし、将来は息子になるはずだった。だからわたしに対しての行動にも腹が立っているけど、彼自身に対しても思うところがあるようだ。
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