【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?

たろ

文字の大きさ
上 下
48 / 50

よんじゅうなな。

しおりを挟む
 ヒュートが重い口を開いた。

「カレンはいつから気がついていたの?」

「……よくわからないの……だけどずっと違和感があったの。ヒュートといると楽しいし安心するの。だけど……前世の記憶が戻ってからたまに……だけどヒュートといると思い出すの……すごく……思い出すの。一番思い出したくない陛下のことを………それまでは自分が死ぬときのことが多かったのに………」

「俺もカレンがこの国に来てから全てを思い出した………自分があの国で国王陛下だったことを……夜会に出た時に今の国王陛下やオスカー殿下を見た時に何か感じるものはあった。それが何なのかよくわからなかったけど、懐かしかったり……それ以外にも……」

「お互い知らない顔をしてこのまま過ごすべきだったのか……だけど今だから話せるのよね。あの時のことを………」

 わたしは前世の王妃に意識を手放した。
 そしてヒュートも……



「フランソア………」

「貴方には申し訳ないことをいたしました」

「違う………わたしは確かにセリーヌを愛していた……だが、君のことを愛したのも本当なんだ。君をあんな形でしか縛ることができなかった。王妃として頑張る君に感謝すらせず無理矢理……」

「ふっ………もういいのです……わたくしの人生はあの時幕を閉じたはずなのに……今更こんな形で前世の人達に出会うことになるなんて……そう言えば貴方の愛したセリーヌ様はアイリ様が生まれ変わっていましたわ……今はちょっと……色々あってどうなってるのかわからないけど……」

「そのことは知っている。ヒュートが調べたよ。わたしが愛したセリーヌは……あの時も青い薔薇を育てていた……彼女が愛した青い薔薇……それだけで全てがわかったんだ……わたしは愚かな男だった。まさか魅了にかかっていたなんて……それでも彼女を愛した心は本物だったんだろう。何もないところに魅了はかからない……増幅されるのだから」

「そうね、カレンが両親に嫌われたのもカレン自身をやはり嫌っている気持ちが増幅されたからあんなに酷かったのよね。貴方がわたくしに興味がなかったのも、そう言うことだと思うわ」

 フランソアの顔には陛下への愛情はもうなかった。陛下がどんなに謝罪しようとどんなに今から愛を乞おうとももうフランソアには陛下を受け入れる心は残っていない。

「前世のわたくし達の記憶は全て消すべきなのよ……今の時代を生きるカレンやヒュート達には必要ないの。これが最後だと思う……わたくしはあの頃確かに貴方を愛していました……だけどその思いはもう終わったの……」

「わかっている……お互い何故今になって出会ってしまったのか……」

「最後にお互いお別れがちゃんとできていなかったのかもしれないわね」

「心残り か……」

「ええ、わたしはもうこの世に未練は何もないわ。カレンの記憶からも消えるつもり」

「そうだな……それが一番……君と最後に話せてよかった……もう思い残すことはないよ……」

「ミハインを立派な王に導いてくれてありがとうございました……」
 
「あの子は自らの力であの国を良い方向へと導いてくれた……全ては君が礎を築いてくれたからだ……君の背中を見て彼は育ったからね」

「ふふっ、貴方も王としては素晴らしかったと思うわ。夫としてはどうかと思うけど」

「………いつか生まれ変わったら次は……いや、うん……すまない……お互いいつかまた全く記憶のない新しい世界で知り合えたらいいと思う……」

「そうね………でもその時はお互い惹かれ合わないかもしれないわね」

「ああ、そうか……いや、わたしは、それでも君を探し当てられると思う……」

「さよなら貴方」

 フランソアが優しく微笑んだ。

「さよなら」

 フランソアは陛下を軽くハグするとすぐに離れた。そしてカレンへと意識を戻した。


「ヒュート?………あっ、この国を出るんだったわね?寂しくなるけど頑張ってね」

「………ああ、カレンももう少し女らしくしないと嫁の貰い手すらないと思うよ」

 ヒュートはそう言って部屋の中を見回して苦笑いをした。

「失礼ね、わたしだっていつか好きな人くらいできると思うわ」

「………じゃあ帰るよ……」

「うん?気をつけて」

 ヒュートがなんだかいつもと違う。ちょっと考えたけど突然変になった理由がわからないので、そのまま放っておこうと思った。次に会う時はいつものヒュートに戻っているだろうから。

 そう思ってヒュートを送り出した。

「またね」と言って。



 
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...