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よんじゅうなな。
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ヒュートが重い口を開いた。
「カレンはいつから気がついていたの?」
「……よくわからないの……だけどずっと違和感があったの。ヒュートといると楽しいし安心するの。だけど……前世の記憶が戻ってからたまに……だけどヒュートといると思い出すの……すごく……思い出すの。一番思い出したくない陛下のことを………それまでは自分が死ぬときのことが多かったのに………」
「俺もカレンがこの国に来てから全てを思い出した………自分があの国で国王陛下だったことを……夜会に出た時に今の国王陛下やオスカー殿下を見た時に何か感じるものはあった。それが何なのかよくわからなかったけど、懐かしかったり……それ以外にも……」
「お互い知らない顔をしてこのまま過ごすべきだったのか……だけど今だから話せるのよね。あの時のことを………」
わたしは前世の王妃に意識を手放した。
そしてヒュートも……
「フランソア………」
「貴方には申し訳ないことをいたしました」
「違う………わたしは確かにセリーヌを愛していた……だが、君のことを愛したのも本当なんだ。君をあんな形でしか縛ることができなかった。王妃として頑張る君に感謝すらせず無理矢理……」
「ふっ………もういいのです……わたくしの人生はあの時幕を閉じたはずなのに……今更こんな形で前世の人達に出会うことになるなんて……そう言えば貴方の愛したセリーヌ様はアイリ様が生まれ変わっていましたわ……今はちょっと……色々あってどうなってるのかわからないけど……」
「そのことは知っている。ヒュートが調べたよ。わたしが愛したセリーヌは……あの時も青い薔薇を育てていた……彼女が愛した青い薔薇……それだけで全てがわかったんだ……わたしは愚かな男だった。まさか魅了にかかっていたなんて……それでも彼女を愛した心は本物だったんだろう。何もないところに魅了はかからない……増幅されるのだから」
「そうね、カレンが両親に嫌われたのもカレン自身をやはり嫌っている気持ちが増幅されたからあんなに酷かったのよね。貴方がわたくしに興味がなかったのも、そう言うことだと思うわ」
フランソアの顔には陛下への愛情はもうなかった。陛下がどんなに謝罪しようとどんなに今から愛を乞おうとももうフランソアには陛下を受け入れる心は残っていない。
「前世のわたくし達の記憶は全て消すべきなのよ……今の時代を生きるカレンやヒュート達には必要ないの。これが最後だと思う……わたくしはあの頃確かに貴方を愛していました……だけどその思いはもう終わったの……」
「わかっている……お互い何故今になって出会ってしまったのか……」
「最後にお互いお別れがちゃんとできていなかったのかもしれないわね」
「心残り か……」
「ええ、わたしはもうこの世に未練は何もないわ。カレンの記憶からも消えるつもり」
「そうだな……それが一番……君と最後に話せてよかった……もう思い残すことはないよ……」
「ミハインを立派な王に導いてくれてありがとうございました……」
「あの子は自らの力であの国を良い方向へと導いてくれた……全ては君が礎を築いてくれたからだ……君の背中を見て彼は育ったからね」
「ふふっ、貴方も王としては素晴らしかったと思うわ。夫としてはどうかと思うけど」
「………いつか生まれ変わったら次は……いや、うん……すまない……お互いいつかまた全く記憶のない新しい世界で知り合えたらいいと思う……」
「そうね………でもその時はお互い惹かれ合わないかもしれないわね」
「ああ、そうか……いや、わたしは、それでも君を探し当てられると思う……」
「さよなら貴方」
フランソアが優しく微笑んだ。
「さよなら」
フランソアは陛下を軽くハグするとすぐに離れた。そしてカレンへと意識を戻した。
「ヒュート?………あっ、この国を出るんだったわね?寂しくなるけど頑張ってね」
「………ああ、カレンももう少し女らしくしないと嫁の貰い手すらないと思うよ」
ヒュートはそう言って部屋の中を見回して苦笑いをした。
「失礼ね、わたしだっていつか好きな人くらいできると思うわ」
「………じゃあ帰るよ……」
「うん?気をつけて」
ヒュートがなんだかいつもと違う。ちょっと考えたけど突然変になった理由がわからないので、そのまま放っておこうと思った。次に会う時はいつものヒュートに戻っているだろうから。
そう思ってヒュートを送り出した。
「またね」と言って。
「カレンはいつから気がついていたの?」
「……よくわからないの……だけどずっと違和感があったの。ヒュートといると楽しいし安心するの。だけど……前世の記憶が戻ってからたまに……だけどヒュートといると思い出すの……すごく……思い出すの。一番思い出したくない陛下のことを………それまでは自分が死ぬときのことが多かったのに………」
「俺もカレンがこの国に来てから全てを思い出した………自分があの国で国王陛下だったことを……夜会に出た時に今の国王陛下やオスカー殿下を見た時に何か感じるものはあった。それが何なのかよくわからなかったけど、懐かしかったり……それ以外にも……」
「お互い知らない顔をしてこのまま過ごすべきだったのか……だけど今だから話せるのよね。あの時のことを………」
わたしは前世の王妃に意識を手放した。
そしてヒュートも……
「フランソア………」
「貴方には申し訳ないことをいたしました」
「違う………わたしは確かにセリーヌを愛していた……だが、君のことを愛したのも本当なんだ。君をあんな形でしか縛ることができなかった。王妃として頑張る君に感謝すらせず無理矢理……」
「ふっ………もういいのです……わたくしの人生はあの時幕を閉じたはずなのに……今更こんな形で前世の人達に出会うことになるなんて……そう言えば貴方の愛したセリーヌ様はアイリ様が生まれ変わっていましたわ……今はちょっと……色々あってどうなってるのかわからないけど……」
「そのことは知っている。ヒュートが調べたよ。わたしが愛したセリーヌは……あの時も青い薔薇を育てていた……彼女が愛した青い薔薇……それだけで全てがわかったんだ……わたしは愚かな男だった。まさか魅了にかかっていたなんて……それでも彼女を愛した心は本物だったんだろう。何もないところに魅了はかからない……増幅されるのだから」
「そうね、カレンが両親に嫌われたのもカレン自身をやはり嫌っている気持ちが増幅されたからあんなに酷かったのよね。貴方がわたくしに興味がなかったのも、そう言うことだと思うわ」
フランソアの顔には陛下への愛情はもうなかった。陛下がどんなに謝罪しようとどんなに今から愛を乞おうとももうフランソアには陛下を受け入れる心は残っていない。
「前世のわたくし達の記憶は全て消すべきなのよ……今の時代を生きるカレンやヒュート達には必要ないの。これが最後だと思う……わたくしはあの頃確かに貴方を愛していました……だけどその思いはもう終わったの……」
「わかっている……お互い何故今になって出会ってしまったのか……」
「最後にお互いお別れがちゃんとできていなかったのかもしれないわね」
「心残り か……」
「ええ、わたしはもうこの世に未練は何もないわ。カレンの記憶からも消えるつもり」
「そうだな……それが一番……君と最後に話せてよかった……もう思い残すことはないよ……」
「ミハインを立派な王に導いてくれてありがとうございました……」
「あの子は自らの力であの国を良い方向へと導いてくれた……全ては君が礎を築いてくれたからだ……君の背中を見て彼は育ったからね」
「ふふっ、貴方も王としては素晴らしかったと思うわ。夫としてはどうかと思うけど」
「………いつか生まれ変わったら次は……いや、うん……すまない……お互いいつかまた全く記憶のない新しい世界で知り合えたらいいと思う……」
「そうね………でもその時はお互い惹かれ合わないかもしれないわね」
「ああ、そうか……いや、わたしは、それでも君を探し当てられると思う……」
「さよなら貴方」
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「さよなら」
フランソアは陛下を軽くハグするとすぐに離れた。そしてカレンへと意識を戻した。
「ヒュート?………あっ、この国を出るんだったわね?寂しくなるけど頑張ってね」
「………ああ、カレンももう少し女らしくしないと嫁の貰い手すらないと思うよ」
ヒュートはそう言って部屋の中を見回して苦笑いをした。
「失礼ね、わたしだっていつか好きな人くらいできると思うわ」
「………じゃあ帰るよ……」
「うん?気をつけて」
ヒュートがなんだかいつもと違う。ちょっと考えたけど突然変になった理由がわからないので、そのまま放っておこうと思った。次に会う時はいつものヒュートに戻っているだろうから。
そう思ってヒュートを送り出した。
「またね」と言って。
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