【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?

たろ

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よんじゅうろく。

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 17歳になったわたしは一年早く学校を卒業して文官となり働き始めた。

 イアン様は屋敷ではとても優しく紳士だった。だけど職場では宰相補佐をしていて鬼のように忙しいので、全く違う人のようだった。

「カレン、僕について来るのは大変だけど、ひたすら見て覚えて。まずはそれが仕事だからね」

 そう言われて何も出来ないけどイアン様について回った。

 ただ書類を持つだけの日もあれば、少し離れた場所で立ってるだけの日もあった。

 特に仕事は与えてもらえずひたすらついて回る日々。
 だけど少しずつイアン様の動きもわかって来て、人の顔も覚えて、自分がどう動くべきなのか立ち位置もわかるようになって来た。

 もちろんまだまだ覚えるべきことはあるけど、ひと月間ストーカーのようにそばに居続けたので、今はイアン様にこき使われるようになった。
 仕事を与えてもらえるって幸せなことだと思う。

 たとえ、許容範囲を超えていても……毎日ほぼ残業になっていても………

 ーーーはああ、とてもじゃないけど一人暮らしなんてしなきゃよかった。

 今更ながら後悔している。

 家に帰ると何にもしたくない。

 買い置きしているパンを齧って牛乳を飲んだら湯浴みをして寝る。朝起きたら身なりを整えて朝食すら食べないで出勤。
 昼の食堂での時間が唯一のまともな食事。

 食堂で売っているパンと惣菜を買って夕飯にするのがわたしの毎日。買い損ねたらパンだけなんて当たり前。

 こんな生活していることをオリエ様やマチルダさんに知られたら強制的に連れ戻されそう。

 なんとか仕事に慣れた頃、久しぶりにオリソン国へ戻って来たヒュートがわたしの家に顔を出した。




「なんなの?この汚い家?」

「………忙しくて……掃除する暇もないの」

「休みくらいあるはずだろう?」

「休みの日はひたすら眠りたいもの」

 ヒュートに言われて部屋を見回す。

 洗い物は街の洗濯屋さんにお願いしている。下着類だけは流石に手洗いしてるけど……食事はほぼ食堂頼り。休みの日は市場に行って出来合いのものを買って食べているので調理はしない。
 掃除だけは……誰もしてくれない。

「はああ、はい、これお土産」
 そう言ってわたしの大好きな日持ちするお菓子をくれた。
 チョコレートとかクッキーとか焼き菓子とか。

 これで朝食用が出来た。

「これを主食として食べたらダメだからね?もう一度オリエ様に相談しなくっちゃ。俺もうすぐこの国を出るのにカレンを残していくのが不安だよ」

「……国を出るの?」

「うん、新しい国に出店が決まったんだ。しばらくはそこに住んでうちの商会の名を広めないといけないからね。カレンとはしばらくお別れになってしまう」

「……………」

 返事を返せなかった。

 ずっと近くにいてそれが当たり前だと思ってた。幼い頃から離れていてもいつも一番心配して何かあれば駆けつけてくれたヒュート……

「…………カレン……仕事辞めて一緒についてくる?」

 突然のヒュートの思いがけない言葉……

「なんで……そんなこと言うの?」

「うん?だってカレンが泣きそうだから…ねっ?」

「ヒュートはわたしを好きではないわ。そしてわたしもヒュートだけは好きにはなれない」

「そうだね……俺はカレンを好きになる資格はないからね」

「資格とか……そんなことではない………貴方はわたしを……わたくしを……愛することはないでしょう」

 ヒュートが困った顔をしてわたしを見つめた。



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