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よんじゅうご。
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「ヒュート、これなんかいいんじゃないかな?」
「それは、売れないだろう?」
「えっ?そうかな?可愛いと思うんだけどな」
ヒュートと新しい商品開発をしている。今考えているのは部屋に置く飾り物。
鉱山で採れた原石の屑石を使っていろんなものを作っている。
庶民が買えるブローチやネックレスはもちろんだけど、部屋に飾る置き物も考え始めた。
細かい彫刻に小さな屑石の宝石を使う。
天使とか動物とか女性が好むものをとわたしが言うと、「そうか?」と反対意見を言われる。
お互いに意見を言い合い新しいものを考えるのは楽しい。
もちろん専門の人たちの意見も聞いて最終的には決定するのだけど、わたし達の言い合いは名物になっていてみんなも周りで楽しんでいる。
だけどもうすぐ学校を卒業するわたしは結局文官を目指すことにした。試験を受けてイアン様の部署で働くことになった。
イアン様曰く、カレンはしっかりしているけど放っておくと何をしでかすかわからないから監視しておかないといけない。………らしい。
イアン様の屋敷で過ごしている時、勉強と商会の仕事にと体の限界まで頑張ってしまって、何度か倒れてしまったので信用されていない。
最近はカイさんとも仲良くなった。メルーさんやマーラさん達とも親しくなれてオリソン国に来てよかったとしみじみ思えるようになった。
前世の王妃としての記憶は勿論あるけどそれに悩まされるほど辛い思いはしなくなった。
国を捨てて1年。
オリヴィアに手紙を書いて連絡は取り合ってはいるけどまだ一度も帰国したことはなかった。兄様から両親のことについてたまに報告があるが、わたしに会いたがっているらしい。
会ってどうするのか?疑問に思ってしまう。
セルジオとはこの一年連絡をとっていない。
彼も卒業してオスカー殿下の側近として頑張っているのだろう。
もうすぐわたしもオリエ様達と別れて一人暮らしを始める。
やっとオリソン国に慣れて来たので一人で頑張って生きていこうと決めた。
オリエ様はもちろんマチルダさん達にもかなり反対されてしまったけど、元々一人で生きていくためにこの国に来たんだもの。
「カレン、いつでもこの家に遊びに来てね。この家はカレンの家でもあるのよ」
そう言ってくれるオリエ様は生まれたばかりの女の子を抱っこして幸せそうにしている。
わたしにとっても可愛い妹のような気持ちで赤ちゃんを見ている。ヒュートが揶揄うように「カレンもそろそろ誰かと結婚も考える頃では?」と言ってくる。
「ヒュートこそ恋人はいないの?おじ様達が心配してたじゃない」
「俺は……いいや。カレン、早く幸せになれ。そうしたら俺も安心するから」
ヒュートの最近の口癖。
「ヒュートったらそんなに心配しなくても大丈夫だよ。この国は早く結婚するのが当たり前じゃないもの。わたしが育った国とは違うわ」
「ばあか、お前みたいに頑張りすぎる奴は誰か見張ってなきゃいけないだろう?」
「心配性だね?」
ヒュートが突然真面目な顔をして言い出した。お互い気がついているのにいつも最後の言葉は言わないでいる。
「仕方ないだろう?ずっと手のかかる妹だと思ってるんだから」
「あら?そんなこと頼んだ覚えはないわ」
「ほんと素直じゃないよね?昔っから」
「そうね、昔っからそうだったわ」
ヒュートとの別れが近づいて来ている。互いにそう思いながら今を過ごしていた。
「それは、売れないだろう?」
「えっ?そうかな?可愛いと思うんだけどな」
ヒュートと新しい商品開発をしている。今考えているのは部屋に置く飾り物。
鉱山で採れた原石の屑石を使っていろんなものを作っている。
庶民が買えるブローチやネックレスはもちろんだけど、部屋に飾る置き物も考え始めた。
細かい彫刻に小さな屑石の宝石を使う。
天使とか動物とか女性が好むものをとわたしが言うと、「そうか?」と反対意見を言われる。
お互いに意見を言い合い新しいものを考えるのは楽しい。
もちろん専門の人たちの意見も聞いて最終的には決定するのだけど、わたし達の言い合いは名物になっていてみんなも周りで楽しんでいる。
だけどもうすぐ学校を卒業するわたしは結局文官を目指すことにした。試験を受けてイアン様の部署で働くことになった。
イアン様曰く、カレンはしっかりしているけど放っておくと何をしでかすかわからないから監視しておかないといけない。………らしい。
イアン様の屋敷で過ごしている時、勉強と商会の仕事にと体の限界まで頑張ってしまって、何度か倒れてしまったので信用されていない。
最近はカイさんとも仲良くなった。メルーさんやマーラさん達とも親しくなれてオリソン国に来てよかったとしみじみ思えるようになった。
前世の王妃としての記憶は勿論あるけどそれに悩まされるほど辛い思いはしなくなった。
国を捨てて1年。
オリヴィアに手紙を書いて連絡は取り合ってはいるけどまだ一度も帰国したことはなかった。兄様から両親のことについてたまに報告があるが、わたしに会いたがっているらしい。
会ってどうするのか?疑問に思ってしまう。
セルジオとはこの一年連絡をとっていない。
彼も卒業してオスカー殿下の側近として頑張っているのだろう。
もうすぐわたしもオリエ様達と別れて一人暮らしを始める。
やっとオリソン国に慣れて来たので一人で頑張って生きていこうと決めた。
オリエ様はもちろんマチルダさん達にもかなり反対されてしまったけど、元々一人で生きていくためにこの国に来たんだもの。
「カレン、いつでもこの家に遊びに来てね。この家はカレンの家でもあるのよ」
そう言ってくれるオリエ様は生まれたばかりの女の子を抱っこして幸せそうにしている。
わたしにとっても可愛い妹のような気持ちで赤ちゃんを見ている。ヒュートが揶揄うように「カレンもそろそろ誰かと結婚も考える頃では?」と言ってくる。
「ヒュートこそ恋人はいないの?おじ様達が心配してたじゃない」
「俺は……いいや。カレン、早く幸せになれ。そうしたら俺も安心するから」
ヒュートの最近の口癖。
「ヒュートったらそんなに心配しなくても大丈夫だよ。この国は早く結婚するのが当たり前じゃないもの。わたしが育った国とは違うわ」
「ばあか、お前みたいに頑張りすぎる奴は誰か見張ってなきゃいけないだろう?」
「心配性だね?」
ヒュートが突然真面目な顔をして言い出した。お互い気がついているのにいつも最後の言葉は言わないでいる。
「仕方ないだろう?ずっと手のかかる妹だと思ってるんだから」
「あら?そんなこと頼んだ覚えはないわ」
「ほんと素直じゃないよね?昔っから」
「そうね、昔っからそうだったわ」
ヒュートとの別れが近づいて来ている。互いにそう思いながら今を過ごしていた。
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