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さんじゅうろく。
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結局そのままわたしは帰宅した。
「カレン様!大丈夫ですか?」
真っ青な顔をしていたのだろう。
エマが泣きそうな顔をしてわたしのそばに来た。
キースは帰り馬車の乗り降りがまともにできないわたしを抱えてくれた。
二人の顔を見ることがわたしにとって唯一の安らぎだった。
なのに………
「しばらく横になりたい」
一人になりたかった。
頭の中には思い出したくない前世の記憶がどんどん入り込んでくる。それに合わせて自分なのに自分じゃない、フランソアとしての人格が入ってくる。
だけどわたしはカレンとして生きてきた。なのにフランソアとして生きた日々やその時の考え方や性格までがわたしの中に入ってこようとする。
しかし全てを受け入れるだけの心の余裕はなかった。
だから……?
言い訳ばかり。
前世で幸せだったらたぶん受け入れていたかもしれない。
不幸だったから受け入れられない?
ーーーあの北の塔から飛び降りたわたくしはやっと楽になれると思っていたのに。
そう、後悔ばかりの人生だった。もう二度とあんな辛い思いはしたくない。思い出したくもない。そう思っていたのに……
カレンになっても前世の自分がわたしを責めてくる。
わたしは幸せになってはいけないの?
今世で悪いことをしていないつもりだった。だけど両親からされてきたことは前世の行いが悪いから?
わたしは……もし何度生まれ変わってもこうして罰を与えられるの?それなら生まれ変わりたくはない。
それならもう生きていたくない。
悪いことをした。だけど………こんなに苦しまなければいけないの?もっと世の中には酷いことをした人はいると思う……そんなことを考えるからわたしは罰を受けるのかな……
また、北の塔へ行こう。
あそこから飛び降りれば……
わたしの中のフランソアが何度も何度も『カレン!やめて』『悪いのはわたくしなの!』と心の中で叫んでフランソアはわたしを止める。
ーーーーーちゃんとあの北の塔で最後まで生きなかったわたくしがいけない。
惨めでも辛くても一生を後悔しながら反省しながら生きなければいけなかったのに……わたくしは死を簡単に選んでしまった……それが罰なのね。
だけど……わたくしはカレンにもう罪の意識を持ってほしくはない。だって罪はわたくしのものであってカレンのものではないもの。
反省するのも罰を受けるのもわたくしだけにして欲しい。
カレンは今世を幸せに生きて欲しいのーーー
前世のフランソアがわたしに何度も語りかけてきた。
幼い頃から嫌というほど見続けた北の塔から飛び降りる女性の姿。
ーーー怖かった。苦しかった。
何故いつもあんな夢を見るのか分からなかった。王都にいるのが嫌だった。
王城はわたしにとっていづらい場所だった。
苦しくて、辛い。
トントンッ。
扉をノックする音にやっと我に返った。
「は、はい」返事をすると中に入ってきたのは兄様だった。
「カレン、外は真っ暗だよ?お腹は空いてない?」
優しくわたしに話しかける兄様。
「お腹………ううん、だ…いじょうぶ…かな……」
「カレン……聞いたよ。学校でのこと」
「あっ………オスカー殿下?」
「キャサリンとアイリ令嬢が捕まって王城の牢に入れられたんだ。そこにカレンもいたんだろう?」
ーーーそのことだったんだ……よかった……今は前世のことは何も話したくない。
わたしはホッとした顔をしていた。
それを兄様はじっと見ていたけどわたしは気が付かなかった。
「ハアー」軽いため息が漏れた。
「兄様?」兄様のため息を聞いて兄様の方を見た。
「カレンに両親のことを話さなきゃいけないね」
「公爵夫婦のこと………あっ、そうですね……」
頭がいっぱいで二人のこと全く忘れていた。
「父上と母上はキャサリンが洗脳していたんだ」
ーーーオスカー殿下がそう言えば言ってたな。
「カレンに対しての言動や仕打ちは、キャサリンが父親に言われて使い始めた香油の所為なんだ」
「そうですか……」
興味がない。どうでもいいこと。
内心はそう思いながら話を聞いた。
「カレン様!大丈夫ですか?」
真っ青な顔をしていたのだろう。
エマが泣きそうな顔をしてわたしのそばに来た。
キースは帰り馬車の乗り降りがまともにできないわたしを抱えてくれた。
二人の顔を見ることがわたしにとって唯一の安らぎだった。
なのに………
「しばらく横になりたい」
一人になりたかった。
頭の中には思い出したくない前世の記憶がどんどん入り込んでくる。それに合わせて自分なのに自分じゃない、フランソアとしての人格が入ってくる。
だけどわたしはカレンとして生きてきた。なのにフランソアとして生きた日々やその時の考え方や性格までがわたしの中に入ってこようとする。
しかし全てを受け入れるだけの心の余裕はなかった。
だから……?
言い訳ばかり。
前世で幸せだったらたぶん受け入れていたかもしれない。
不幸だったから受け入れられない?
ーーーあの北の塔から飛び降りたわたくしはやっと楽になれると思っていたのに。
そう、後悔ばかりの人生だった。もう二度とあんな辛い思いはしたくない。思い出したくもない。そう思っていたのに……
カレンになっても前世の自分がわたしを責めてくる。
わたしは幸せになってはいけないの?
今世で悪いことをしていないつもりだった。だけど両親からされてきたことは前世の行いが悪いから?
わたしは……もし何度生まれ変わってもこうして罰を与えられるの?それなら生まれ変わりたくはない。
それならもう生きていたくない。
悪いことをした。だけど………こんなに苦しまなければいけないの?もっと世の中には酷いことをした人はいると思う……そんなことを考えるからわたしは罰を受けるのかな……
また、北の塔へ行こう。
あそこから飛び降りれば……
わたしの中のフランソアが何度も何度も『カレン!やめて』『悪いのはわたくしなの!』と心の中で叫んでフランソアはわたしを止める。
ーーーーーちゃんとあの北の塔で最後まで生きなかったわたくしがいけない。
惨めでも辛くても一生を後悔しながら反省しながら生きなければいけなかったのに……わたくしは死を簡単に選んでしまった……それが罰なのね。
だけど……わたくしはカレンにもう罪の意識を持ってほしくはない。だって罪はわたくしのものであってカレンのものではないもの。
反省するのも罰を受けるのもわたくしだけにして欲しい。
カレンは今世を幸せに生きて欲しいのーーー
前世のフランソアがわたしに何度も語りかけてきた。
幼い頃から嫌というほど見続けた北の塔から飛び降りる女性の姿。
ーーー怖かった。苦しかった。
何故いつもあんな夢を見るのか分からなかった。王都にいるのが嫌だった。
王城はわたしにとっていづらい場所だった。
苦しくて、辛い。
トントンッ。
扉をノックする音にやっと我に返った。
「は、はい」返事をすると中に入ってきたのは兄様だった。
「カレン、外は真っ暗だよ?お腹は空いてない?」
優しくわたしに話しかける兄様。
「お腹………ううん、だ…いじょうぶ…かな……」
「カレン……聞いたよ。学校でのこと」
「あっ………オスカー殿下?」
「キャサリンとアイリ令嬢が捕まって王城の牢に入れられたんだ。そこにカレンもいたんだろう?」
ーーーそのことだったんだ……よかった……今は前世のことは何も話したくない。
わたしはホッとした顔をしていた。
それを兄様はじっと見ていたけどわたしは気が付かなかった。
「ハアー」軽いため息が漏れた。
「兄様?」兄様のため息を聞いて兄様の方を見た。
「カレンに両親のことを話さなきゃいけないね」
「公爵夫婦のこと………あっ、そうですね……」
頭がいっぱいで二人のこと全く忘れていた。
「父上と母上はキャサリンが洗脳していたんだ」
ーーーオスカー殿下がそう言えば言ってたな。
「カレンに対しての言動や仕打ちは、キャサリンが父親に言われて使い始めた香油の所為なんだ」
「そうですか……」
興味がない。どうでもいいこと。
内心はそう思いながら話を聞いた。
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