上 下
35 / 50

さんじゅうご。

しおりを挟む
「えっ?うそっ!」
「なんで?おじ様達はあんなに効いていたのに……」

「僕もセルジオも君たちに近づくために予め予防の為の薬を飲んでいたんだ。ほんとっ、君たち前世の時はどんな人だったか詳しくは知らないけど今世は最悪だね。まっ、セリーヌ様は僕が生まれる前に亡くなっているから話しか知らないけど。父上は何故こんな人を愛したのだろう?
 そして………グレン様とマキナ様はとても仲が良かった。あんなに愛し合っていたのに……今世では性格が捻じ曲がってる。カレン様は……父上の所為で性格が捻じ曲がったけど、今世では素直で優しい人になって僕はとても嬉しい……だけど、公爵夫婦からされてきたこと守れなくてごめん……いくら王子でも子供の僕にはなんの力もなかった……」

「オスカー殿下?貴方は……まさか……ミハイン……?」

「僕が前世の記憶が戻ったのは貴女がこの学園に転入してきた頃だった。多分ここにいるみんな君がこの王都に戻ってきてからのようだ。
 最初は自分だけだと思っていた。国王としてこの国を守り死んだ後すぐにまた生まれ変わったらしい。
 不思議だったよ……僕は自分の息子である今の国王の息子として生まれたんだ」

 オスカー殿下はなんとも言えない顔をして苦笑いをしていた。

「それを知った時、笑ってしまった……母上………貴女に前世の記憶がないことがわかって………もうそのままでいて欲しいと願ってはいたのに……アイリ達が貴女に何かしら悪さをするのを見て見ぬ振りできないし、さらに彼女達も記憶が戻ったのが分かって、どうにか彼女達を止めようと動いてはいたんだ。
 犯罪者でもある二人の令嬢達の扱いは難しくてね。証拠を集めなきゃいけないし、彼女達の言いなりになったフリをしてずっと過ごしていたんだ」

「………セルジオは知ってたの?」

「殿下に話を聞いた時は信じられなかった……だけど、まぁ、殿下では知り得ない昔の王族の話を聞かされてしまったからね、調べてみれば辻褄が合うことばかりで信用するしかなかったよ」

「……マックス様……ううん、ハザード……わたくしの行いが貴方を死に追いやったこと、今更言い訳など出来ないわ……ごめんなさいとしか言えない」

「カレン様………貴女が悪いわけではない……分かってるんだ。アリシアに優しく接してくれる、今を必死で生きている貴女の姿を僕は知っている。なのに前世の……俺は貴女を許せないんだ……」

「………わたくしは生まれ変わるべきではなかった……どうして今ここに生きているのかしら…」


 重たい空気の中、突然二人が大きな声を出した。

「離しなさい!」「やめなさい!何するの?」


 アイリ様とキャサリン様がさっきまで静かだったことを思い出し、二人のいる場所に目を向けた。

 ーーーえっ……?


 二人はいつの間にか拘束されていた。騎士達がいつの間にかこの部屋に来ていた。

 オスカー殿下が
「やっと君たちの罪である香油の出所もわかったし君たちが使用していると証人も見つかったんでそろそろ拘束させてもらうよ」

「はああ?オスカー様はわたしを愛しているはずよ!やめさせて!痛いわ、ちょっと触らないで!」
「なんでわたしまで!やめて、もう痛いわ!」

「キャサリン、君はやり過ぎた。公爵夫婦はかなり重度の洗脳をされていたようだ。元に戻るのは簡単ではないだろう」

「ふふふっ、おじ様達はわたしを愛してくれていたの。あれは香油のせいではないわ。本当にわたしを大切に思ってくれていたのよ?」

 誇らしげに語るキャサリン様にわたしも思わず頷いた。

「………そうね……わたしなんかよりキャサリン様は愛されていたわ」

「カレン様……貴女を見ているとイライラするわ、惨めに生きていけばいいのよ!記憶が戻ってからはさらにそう思うようになったわ。
 貴女の人生は幸せになんてなる必要はないのよ」

「キャサリン様、やめてくれ。僕も……記憶が戻ってからは混乱して何度もカレン様を恨んだ。目の前にいるのは王妃様ではないのについ当たりたくなる。今もそうだ。
 ……だけど……カレン様はカレン様であって、王妃様ではないんだ……」

「なに一人だけ良い子になってるの?」
 アイリ様が拘束されながらもマックス様に叫んだ。

 わたしはこの場でどうしたら良いのかわからなかった。記憶は少しずつ戻ってきてはいるけど全てを思い出したとは言えない。

 だけどマキナ様への嫉妬は確かにあった。グレンと二人が幸せに過ごすのが許せなかった。あれはグレンを愛していたのではなく、陛下にそっくりなグレンが幸せな姿を見るのが嫌だっただけ……今ならわかる……グレンを愛していたのではなく陛下を愛していたからグレンに執着してしまった……

 わたくしがこうしてもう一度生きることは……幸せになることを求めることは、罪なのだろうか……

 カレンとしての人生は、前世の王妃としての人生と重なり、わたくしの罪を今世でもカレンに背負わせて生きなければいけないの………?



 





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】旦那様は元お飾り妻を溺愛したい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:2,699

はずれの聖女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:205pt お気に入り:1,061

親友と恋人に裏切られて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,015pt お気に入り:236

あなたに恋した私はもういない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:3,045

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:2,271

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,949pt お気に入り:733

処理中です...