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さんじゅうさん。

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「カレン様ぁ、ふふっ、少しは思い出しましたかぁ?わたしのこと」

 アイリ様が楽しそうにわたしの顔を見ている。

「思い出す……どうしてみんなそんなことを言うの?わからない、思い出すのは自分が飛び降りた時のことだけ……」

「ずるいですね。いつもあんなに必死で陛下を見ていたじゃないですか?愛していたのでしょう?なのにいつも『わたしはなんとも思っていません!』みたいな顔をして澄ましていましたよね?」

「貴女は……アイリ様は……」
 ーーー誰なの?

「わかりませんか?記憶がないのならばわからないですよね?ふふふっ」

「カレン様は、いつも他人からの愛を求めるだけで自分から愛を乞おうとはしないんですね?」

 キャサリン様もクスクスと笑っている。

「いつも?それはどう言う意味?」

「だって本当はわたしのことが羨ましかったんですよね?わたしの隣で笑っているご両親を見る目、あれは愛を欲しているからでしょう?
 前世でもそうでした。グレン様を愛しているなんて気持ち悪いですっ。本当は陛下の愛が欲しくてその愛が歪んでいたんですよね?」

「貴女達は一体何を言っているの?」

「ほんと、記憶がないって羨ましいですね。わたし達は前世を思い出して辛いのに………貴女は全く覚えていない様子。だから意地悪をしたくなるんですよ」

「わたしは………前世で酷いことをしたんですね………だから飛び降りた………」

「さあ?わたし自身は嫌がらせをされてはいないわ。でも貴女はわたしが死んだあと、陛下に愛されたのにどうして自殺なんてしたのですか?
 わたしはグレンと陛下のそばにいたかったのに……グレンにしたことは許せないわ」

 アイリ様がわたしを睨んでいる。

 そして………

「キャサリン様はグレン様の最愛の人だった。マキナ様はグレン様に愛されてそしてやはり子供を産むと同時に亡くなったの。同じ苦しみを知っているの。貴女は生きて息子を育てることが出来たのに……」

 気持ちが悪い……頭が痛い………

『陛下を愛していたの………グレン……貴方に執着するしか心の拠り所がなかった………酷いことばかりしてごめんなさい……』

 頭の中でもう一人のわたしがそう言ってる……


 ーーーあっ………あーー…………

「…………わたしは…………わたくしは…………何故………またこの世界に………もう生きたくないのに……」


 体に力が入らない。

 この人たちは……陛下の最愛だったセリーヌ様……
 そして、キャサリン様はグレンの亡くなった妻のマキナ様……

 マックス様は……近衛騎士のハザード。

「ごめんなさい………思い出さなくて………わたくし………」

 何を言えばいいのかすらわからない。

 前世を思い出したからと言ってどうしたらいいのかわからない。みんなわたしを恨んでいる……

 まだはっきりと全てを思い出してはいない。

 ただ、陛下に愛されたかった……セリーヌ様が羨ましいと思った。だけどセリーヌ様に何かをしようとは思わなかった……

 グレンにその分執着してしまったから……

 フラフラと体が揺れて倒れそうになった。

「カレン!」

 わたしを呼ぶ声がなんとかわたしの意識を保たせてくれた。







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