32 / 50
さんじゅうに。
しおりを挟む前世の記憶って……?
頭が痛い………
ーーーああ、まただ。
あの高い塔からわたしが飛び降りる。夢で見ているいつもの光景がここで思い出される。
これが前世の記憶ならわたしは高い塔から飛び降りて死ぬのだ。
怖い?ううん、怖くない。
そうかわたしに死ねと言ってるのね。
マックス様のわたしを見る目はとても冷たい。
何かを前世でしたのだろうか?
何かを?何……を?
「貴女は全く覚えていないのですね?」
「わたし………?」
「僕は貴女に初めて会った日、思い出してしまいました。前世でのことを………」
「前世………?」
たまに聞こえてくるあの声……のこと?
「僕の名前はハザード。近衛騎士をしていました。従姉妹の名前はマキナ。優しくて素直で……可愛い妹のような存在……俺がそばで守ってあげることはできなかったけど愛する人と結ばれて幸せそうに暮らしていました。なのにマキナは子供を出産する時に命を失ってしまった……」
「ハザード?」
ーーーわからない。それがわたしとどういう関係なのか?
「わたしがマキナ?でも……わたしは塔から飛び降りて死んだ……」
「マキナなわけないでしょう!へぇ、貴女は自殺したんだ。ははは、俺と同じだ。いや、俺は貴女に殺されたようなものだ」
「わたしがマックス様を殺した?」
「カレン様、貴女はほとんど覚えていないみたいだね?僕は前世の記憶を思い出してこんなに苦しんでいるのに……」
「ごめんなさい、わたしは何をしたの?」
頭が痛い。頭がクラクラする。
でも逃げたらダメ。
だって今までこの王都に来ると体調が悪くなったり居心地が悪かったりそんな日々の繰り返しで……理由もわからず苦しくて辛くて……だからわたしが前世で何かをしたというなら納得するしかなかった。
マックス様がわたしを憎んでいる姿を見て、全てを受け止めるしかない。
マックス様が突然話し出した。
『騙された、主犯は王妃だ、俺はマキナを忘れ新しい幸せを見つけようとしたグレン様が許せなかった。だけど子供を殺そうと思ったわけではない。軽い症状だと聞いていた。まさか死にそうになるとは思わなかった。俺は殺される、ならば責任を取り自分で自ら死を選ぶ』
「それは……どういうこと?」
「俺が死ぬ時に書いた遺書。俺は貴女に騙された。グレン様がマキナが死んだ後に愛する人ができた。その子供を俺は殺そうとしてしまった。ちょっとグレン様を困らせようとしたつもりがとんでもない事件になってしまったんだ。そんな話に乗ってしまった俺が悪い……関係のない子供を巻き込んでしまった。
だけど貴女のグレン様への執着はあまりにも酷かった。そんな貴女が塔から飛び降りた?ははっ、いい気味だ!」
「………わたしは王妃だったの?フランソア……」
ひとり呟いた。
ーーーわからない、だけど………だから王城にある北の塔を見ると体調が悪くなったり気持ちが落ち着かなくなったりするんだ……
何故か納得した。
マックス様は悲しそうにわたしを見た。
「カレン様……貴女は今を必死で生きている。親からの抑圧から逃れるため、今を……だけど僕は……いや、俺はハザードの記憶を持っている俺は貴女を許せない。何故俺の前に現れた。マックスとして生きている僕ならカレン様を応援できたのに……俺は……貴女は王妃として国民に慕われていた。たくさんの人達に愛される王妃だった。なのに貴女は陛下に囚われ心を壊していった。そしてその歪んだ心がグレン様へと向かった。あの二人の存在が貴女を壊した。だけどその弱さは貴女自身……そして、貴女の言葉に惑わされたのも俺自身……わかっているのに……やはり恨んでしまう………」
「ごめんなさい………どうしても思い出せない……」
「あら?カレン様じゃない?」
扉から顔を覗かせたのはキャサリン様とアイリ様だった。
「お二人はこんなところで何をしているのかしら」
「セルジオ様という婚約者がいるのに……ふふっ、浮気?なぁんてね?」
ーーーセルジオとオスカー殿下はいないみたい。なんでお二人がここに?
68
お気に入りに追加
1,883
あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる