【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?

たろ

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さんじゅうに。

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 前世の記憶って……?

 頭が痛い………

 ーーーああ、まただ。

 あの高い塔からわたしが飛び降りる。夢で見ているいつもの光景がここで思い出される。

 これが前世の記憶ならわたしは高い塔から飛び降りて死ぬのだ。

 怖い?ううん、怖くない。
 そうかわたしに死ねと言ってるのね。

 マックス様のわたしを見る目はとても冷たい。

 何かを前世でしたのだろうか?

 何かを?何……を?


「貴女は全く覚えていないのですね?」

「わたし………?」

「僕は貴女に初めて会った日、思い出してしまいました。前世でのことを………」

「前世………?」
 たまに聞こえてくるあの声……のこと?

「僕の名前はハザード。近衛騎士をしていました。従姉妹の名前はマキナ。優しくて素直で……可愛い妹のような存在……俺がそばで守ってあげることはできなかったけど愛する人と結ばれて幸せそうに暮らしていました。なのにマキナは子供を出産する時に命を失ってしまった……」


「ハザード?」
 ーーーわからない。それがわたしとどういう関係なのか?

「わたしがマキナ?でも……わたしは塔から飛び降りて死んだ……」

「マキナなわけないでしょう!へぇ、貴女は自殺したんだ。ははは、俺と同じだ。いや、俺は貴女に殺されたようなものだ」

「わたしがマックス様を殺した?」

「カレン様、貴女はほとんど覚えていないみたいだね?僕は前世の記憶を思い出してこんなに苦しんでいるのに……」

「ごめんなさい、わたしは何をしたの?」

 頭が痛い。頭がクラクラする。

 でも逃げたらダメ。

 だって今までこの王都に来ると体調が悪くなったり居心地が悪かったりそんな日々の繰り返しで……理由もわからず苦しくて辛くて……だからわたしが前世で何かをしたというなら納得するしかなかった。

 マックス様がわたしを憎んでいる姿を見て、全てを受け止めるしかない。



 マックス様が突然話し出した。 

 

『騙された、主犯は王妃だ、俺はマキナを忘れ新しい幸せを見つけようとしたグレン様が許せなかった。だけど子供を殺そうと思ったわけではない。軽い症状だと聞いていた。まさか死にそうになるとは思わなかった。俺は殺される、ならば責任を取り自分で自ら死を選ぶ』




「それは……どういうこと?」

「俺が死ぬ時に書いた遺書。俺は貴女に騙された。グレン様がマキナが死んだ後に愛する人ができた。その子供を俺は殺そうとしてしまった。ちょっとグレン様を困らせようとしたつもりがとんでもない事件になってしまったんだ。そんな話に乗ってしまった俺が悪い……関係のない子供を巻き込んでしまった。
 だけど貴女のグレン様への執着はあまりにも酷かった。そんな貴女が塔から飛び降りた?ははっ、いい気味だ!」

「………わたしは王妃だったの?フランソア……」

 ひとり呟いた。

 ーーーわからない、だけど………だから王城にある北の塔を見ると体調が悪くなったり気持ちが落ち着かなくなったりするんだ……

 何故か納得した。

 マックス様は悲しそうにわたしを見た。

「カレン様……貴女は今を必死で生きている。親からの抑圧から逃れるため、今を……だけど僕は……いや、俺はハザードの記憶を持っている俺は貴女を許せない。何故俺の前に現れた。マックスとして生きている僕ならカレン様を応援できたのに……俺は……貴女は王妃として国民に慕われていた。たくさんの人達に愛される王妃だった。なのに貴女は陛下に囚われ心を壊していった。そしてその歪んだ心がグレン様へと向かった。あの二人の存在が貴女を壊した。だけどその弱さは貴女自身……そして、貴女の言葉に惑わされたのも俺自身……わかっているのに……やはり恨んでしまう………」

「ごめんなさい………どうしても思い出せない……」



「あら?カレン様じゃない?」

 扉から顔を覗かせたのはキャサリン様とアイリ様だった。

「お二人はこんなところで何をしているのかしら」
「セルジオ様という婚約者がいるのに……ふふっ、浮気?なぁんてね?」

 ーーーセルジオとオスカー殿下はいないみたい。なんでお二人がここに?

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