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さんじゅう。
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アイリ様とキャサリン様が男子と楽しそうに話していた。
二人のことは出来るだけ避けていたのであまり目に入ることはなかった。
だけどあの貪欲な目……貴族社会はどうしても親の地位により子供の世界もそれぞれの関係が出来てしまう。
アイリ様は確か男爵家。キャサリン様も同じ男爵家。
普通ならオスカー殿下と恋人同士になどなれない。それにキャサリン様だって公爵家に我が物顔で出入りしている。
興味がなさすぎてどうでもいいと思っていた二人の共通点。
『効きが悪い』と言う言葉。
やっぱり気になる。セルジオと話したかったけど今はそんなことより二人のこと。
そっと隠れて二人の様子を見ていたら、男子と別れて二人で歩き出した。とりあえず追いかけてみることにした。
楽しく話している二人に、わたしの姿には気づかれていないようだ。
こっちは……やはり王族専用の特別室の方だ。
だけどあそこは殿下達王族の許可がないと出入りは出来ない。
わたしは許可を得ているから入れるけどそれでも入る時は女性騎士からボディチェックされる。
「通していただいていいかしら?」
護衛騎士達はアイリ様の言葉に静かに頷き「どうぞ」と二人を通した。全く何もせずに。
わたしはどうしようか迷ったけど、護衛騎士の前に行き「放課後も勉強をしたいのだけどいいかしら」と言ってみた。
「わかりました。ボディチェックさせていただきます」
やはりわたしにはいつもの対応だった。
特に護衛騎士達は表情も変えずおかしなところはない。
何故あの二人は簡単に入れたのだろう。
二人を見失って廊下を歩いていると扉が少しだけ開いている部屋を見つけた。なんとなく気になってそっと覗いたら、そこにアイリ様とキャサリン様、そしてオスカー殿下とセルジオの四人が楽しそうに会話をしていた。
ーーーなんだ、殿下達が招いたから簡単に入れたのね。
納得してしまえば疑問はなくなる。
ーーー帰ろう。
そう思った時………
「……カレン…た………ほんと使…ない……」
ーーーわたし?
わたしのことを話しているようだ。
足を止め思わず耳を傾けた。
「もう!あの公爵夫婦を利用してもっとカレン様をいじめてやろうと思ったのに、リオネル様が邪魔してきたからうまく行かなくなったわ」
「残念ね。わたしはこの二人がとても素直に聞いてくれるわ。カレン様とセルジオ様なんて婚約までしたのよ」
「ほんとまさかアイリ様の言葉で婚約までするなんて思わなかったわ」
「薬の効き目ってかなりすごいわね。今日はお二人にさらに香油の効果を強めるためにここに来てもらったから、見て!お二人ともわたし達の思い通りに言うことを聞いてくれるわ」
「ほんと、こんな会話を目の前でしているのに全然表情すら変わらないのだもの。ふふ、楽しいわ」
キャサリン様は二人の顔を指先で撫でながら言った。
ーーー何?これは?
キャサリン様とアイリ様がセルジオに命令して婚約をさせたと言うの?
薬の効き目?セルジオは操られていたの?そんな風には見えなかった。
会話だって変じゃなかったはず……
セルジオと過ごした最近のことを思い出しても、婚約者としておかしな態度はなかった。
彼の屋敷でお茶をしたり楽しく会話をして過ごした。勉強だってずっと教えてくれたし、わたしのことを(仮)とは言え婚約者として大切に扱ってくれた。
全てが彼女達によって仕向けられたことなんて思えない。
でも……ここを早く立ち去らなきゃ。
ここにこれ以上居ては危険だ。立ち聞きしているとわかったら何をされるかわからない。
そう思って立ち去ろうとしたら、目の前に………
ーーーどうして?彼がここに……
わたしの口を後ろから押さえて声が出ないようにされた。
わたしは驚きと恐怖で目を見開いた。
二人のことは出来るだけ避けていたのであまり目に入ることはなかった。
だけどあの貪欲な目……貴族社会はどうしても親の地位により子供の世界もそれぞれの関係が出来てしまう。
アイリ様は確か男爵家。キャサリン様も同じ男爵家。
普通ならオスカー殿下と恋人同士になどなれない。それにキャサリン様だって公爵家に我が物顔で出入りしている。
興味がなさすぎてどうでもいいと思っていた二人の共通点。
『効きが悪い』と言う言葉。
やっぱり気になる。セルジオと話したかったけど今はそんなことより二人のこと。
そっと隠れて二人の様子を見ていたら、男子と別れて二人で歩き出した。とりあえず追いかけてみることにした。
楽しく話している二人に、わたしの姿には気づかれていないようだ。
こっちは……やはり王族専用の特別室の方だ。
だけどあそこは殿下達王族の許可がないと出入りは出来ない。
わたしは許可を得ているから入れるけどそれでも入る時は女性騎士からボディチェックされる。
「通していただいていいかしら?」
護衛騎士達はアイリ様の言葉に静かに頷き「どうぞ」と二人を通した。全く何もせずに。
わたしはどうしようか迷ったけど、護衛騎士の前に行き「放課後も勉強をしたいのだけどいいかしら」と言ってみた。
「わかりました。ボディチェックさせていただきます」
やはりわたしにはいつもの対応だった。
特に護衛騎士達は表情も変えずおかしなところはない。
何故あの二人は簡単に入れたのだろう。
二人を見失って廊下を歩いていると扉が少しだけ開いている部屋を見つけた。なんとなく気になってそっと覗いたら、そこにアイリ様とキャサリン様、そしてオスカー殿下とセルジオの四人が楽しそうに会話をしていた。
ーーーなんだ、殿下達が招いたから簡単に入れたのね。
納得してしまえば疑問はなくなる。
ーーー帰ろう。
そう思った時………
「……カレン…た………ほんと使…ない……」
ーーーわたし?
わたしのことを話しているようだ。
足を止め思わず耳を傾けた。
「もう!あの公爵夫婦を利用してもっとカレン様をいじめてやろうと思ったのに、リオネル様が邪魔してきたからうまく行かなくなったわ」
「残念ね。わたしはこの二人がとても素直に聞いてくれるわ。カレン様とセルジオ様なんて婚約までしたのよ」
「ほんとまさかアイリ様の言葉で婚約までするなんて思わなかったわ」
「薬の効き目ってかなりすごいわね。今日はお二人にさらに香油の効果を強めるためにここに来てもらったから、見て!お二人ともわたし達の思い通りに言うことを聞いてくれるわ」
「ほんと、こんな会話を目の前でしているのに全然表情すら変わらないのだもの。ふふ、楽しいわ」
キャサリン様は二人の顔を指先で撫でながら言った。
ーーー何?これは?
キャサリン様とアイリ様がセルジオに命令して婚約をさせたと言うの?
薬の効き目?セルジオは操られていたの?そんな風には見えなかった。
会話だって変じゃなかったはず……
セルジオと過ごした最近のことを思い出しても、婚約者としておかしな態度はなかった。
彼の屋敷でお茶をしたり楽しく会話をして過ごした。勉強だってずっと教えてくれたし、わたしのことを(仮)とは言え婚約者として大切に扱ってくれた。
全てが彼女達によって仕向けられたことなんて思えない。
でも……ここを早く立ち去らなきゃ。
ここにこれ以上居ては危険だ。立ち聞きしているとわかったら何をされるかわからない。
そう思って立ち去ろうとしたら、目の前に………
ーーーどうして?彼がここに……
わたしの口を後ろから押さえて声が出ないようにされた。
わたしは驚きと恐怖で目を見開いた。
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