28 / 50
にじゅうはち。
しおりを挟む
「カレン様!よかった。無事だったんですね」
エマが走ってきてわたしに抱きついた。
そしてわたしの顔を見るなり、怒りで声を振るわせた。
「その頬は…あの男ですか?わたしの大事なカレン様に何をしたんです!許さない!絶対許せない!」
そう言いながら涙をポロポロ流し始めた。
キースはすぐに氷水を持ってきて「これでまずは冷やしましょう」と言ってわたしの頬を冷やし始めた。
他の使用人達もわたしのそばに来て話しかけてくれる。みんな無事でよかった。顔を見れてなんだかホッとしたのか、体の力が抜けてしまった。
「カレン様?」
「大丈夫ですか?」
「うん、ごめん。ちょっと横になりたい、かな」
通された部屋は客室だった。
すぐにソファに横になるように言われ、そのまましばらく目を閉じた。
「心配しないでね、みんなの顔を見たらホッとしたの」
気がつけばそのまま眠りについてしまった。
「熱い……誰か…… ごめんなさい……わたくしが貴方を愛したから……熱い…………グレン、ごめんなさい……リオネル……貴方を残していってごめんなさい………わたくしは……弱すぎた……人を恨み人を妬むことしか出来なかった………」
ーーー誰かがそばに居るのがわかる。
なのに目を開けられない。
体が熱い……頭が痛い……この夢は何?
いつものように飛び降りる夢じゃない。
懐かしい顔。でも会いたくなかった。ううん、会いたくても会ったらいけない人達。
胸が苦しくて切なくて涙が出た。
声を掛けることもできない………
目覚めると近くに人の気配がした。
「だ、れ……?」
「よかった、カレン様はずっとうなされていたんですよ。客用の寝室をお借りしてベッドに移ったんです。かなり熱が高くて心配しました」
エマが「心配ばかりかけないでください。心臓がもちません」と泣き出した。
「……ごめんね」
エマの顔を見たらやっぱりホッとした。誰よりも心を許せる大切な人。エマから引き離されればわたしはどうなっていただろう。
もうあの屋敷で息することも辛かったかもしれない。
「王太子殿下にご挨拶しなきゃ。兄様は?」
「先ほどまでここにいらっしゃいましたが、今はお仕事があるからと席を外しております。また後で顔を出すと言っておりました」
「うん、わかった………もう少し寝るね」
「はいゆっくり眠ってください」
わたしはエマがそばに居てくれるのに安心してまた眠りについた。
ーーーーーー
「カレン様………薬が効いて眠れるようになったと思ったのに……また酷くなってしまって……」
「俺たちは見守ってあげるしかない。エマ、何があっても俺とエマはカレン様の味方でいよう」
「うん、キース。わたし達はフランソア様のそばに居たのに心をお守りすることが出来なかったわ。死を止めることも出来なかった。今世こそ何があっても守ってみせるわ、絶対に幸せになってもらうの」
「当たり前だ。もう2度とあんな悲しい思いはしたくない。なのにあの毒親とキャサリンとか言う女、俺たちの大事な主に酷いことばかりしやがって!」
「もっと力のある人間に生まれ変わりたかった。そしたらあんな親達簡単に切り捨ててやるのに」
「そしたらそばに居ることができなかった。俺たちはそばに居られるんだ。俺たちなりに守るしかない」
ーーーーーーー
次の日、体調が戻ると兄様の家に向かうことになった。
結局王太子殿下はお忙しくて挨拶することができなかった。また後日話をしようと言われ、わたしは王宮を去った。
たくさんの使用人は必要ないので王宮でしばらく働かせてもらうことになった。
エマだけは『何があってもついて行きます』と引きさがらなかったので、兄様も『エマだけだよ』と許してくれた。
着いたのは街中から外れた場所にある小さな一軒家だった。と言っても平民の家からするとかなり大きめなのかもしれない。
「ここは俺の隠れ家なんだ。カレンの護衛としてキースにも来てもらうようにしているから安心して」
ーーーよかった。流石に女二人は怖かったもの。
「ちなみに俺もたまにこの家に泊まることがあるからね。小さいとはいえ、部屋数はそれなりにあるからみんなの部屋はそれぞれあると思うよ。じゃあ俺はまた両親のところへ行って来るから、ゆっくり過ごしてね。必要なものは適当に買い揃えていいからね」
「ありがとうございます」
「エマ、明日からまた学校に通おうと思うの」
「そんな焦らなくてもいいんじゃないですか?」
「ううん、今回わかったの。やっぱり頑張って学校を卒業するしかないって。一人の力で生きていくためにも知識を身につけ、社会に出て生きていく力を持たないと口だけではどうしようもないもの。みんなに助けられないと生きていけない……そんなの悔しいじゃない」
「それでもわたしはおそばに居ます。キースと二人カレン様から離れません!」
「ふふ、ありがとう。二人を雇えるように頑張って働かなきゃ」
「大丈夫です。わたしとキースが働いてカレン様を食べさせますので!」
エマが走ってきてわたしに抱きついた。
そしてわたしの顔を見るなり、怒りで声を振るわせた。
「その頬は…あの男ですか?わたしの大事なカレン様に何をしたんです!許さない!絶対許せない!」
そう言いながら涙をポロポロ流し始めた。
キースはすぐに氷水を持ってきて「これでまずは冷やしましょう」と言ってわたしの頬を冷やし始めた。
他の使用人達もわたしのそばに来て話しかけてくれる。みんな無事でよかった。顔を見れてなんだかホッとしたのか、体の力が抜けてしまった。
「カレン様?」
「大丈夫ですか?」
「うん、ごめん。ちょっと横になりたい、かな」
通された部屋は客室だった。
すぐにソファに横になるように言われ、そのまましばらく目を閉じた。
「心配しないでね、みんなの顔を見たらホッとしたの」
気がつけばそのまま眠りについてしまった。
「熱い……誰か…… ごめんなさい……わたくしが貴方を愛したから……熱い…………グレン、ごめんなさい……リオネル……貴方を残していってごめんなさい………わたくしは……弱すぎた……人を恨み人を妬むことしか出来なかった………」
ーーー誰かがそばに居るのがわかる。
なのに目を開けられない。
体が熱い……頭が痛い……この夢は何?
いつものように飛び降りる夢じゃない。
懐かしい顔。でも会いたくなかった。ううん、会いたくても会ったらいけない人達。
胸が苦しくて切なくて涙が出た。
声を掛けることもできない………
目覚めると近くに人の気配がした。
「だ、れ……?」
「よかった、カレン様はずっとうなされていたんですよ。客用の寝室をお借りしてベッドに移ったんです。かなり熱が高くて心配しました」
エマが「心配ばかりかけないでください。心臓がもちません」と泣き出した。
「……ごめんね」
エマの顔を見たらやっぱりホッとした。誰よりも心を許せる大切な人。エマから引き離されればわたしはどうなっていただろう。
もうあの屋敷で息することも辛かったかもしれない。
「王太子殿下にご挨拶しなきゃ。兄様は?」
「先ほどまでここにいらっしゃいましたが、今はお仕事があるからと席を外しております。また後で顔を出すと言っておりました」
「うん、わかった………もう少し寝るね」
「はいゆっくり眠ってください」
わたしはエマがそばに居てくれるのに安心してまた眠りについた。
ーーーーーー
「カレン様………薬が効いて眠れるようになったと思ったのに……また酷くなってしまって……」
「俺たちは見守ってあげるしかない。エマ、何があっても俺とエマはカレン様の味方でいよう」
「うん、キース。わたし達はフランソア様のそばに居たのに心をお守りすることが出来なかったわ。死を止めることも出来なかった。今世こそ何があっても守ってみせるわ、絶対に幸せになってもらうの」
「当たり前だ。もう2度とあんな悲しい思いはしたくない。なのにあの毒親とキャサリンとか言う女、俺たちの大事な主に酷いことばかりしやがって!」
「もっと力のある人間に生まれ変わりたかった。そしたらあんな親達簡単に切り捨ててやるのに」
「そしたらそばに居ることができなかった。俺たちはそばに居られるんだ。俺たちなりに守るしかない」
ーーーーーーー
次の日、体調が戻ると兄様の家に向かうことになった。
結局王太子殿下はお忙しくて挨拶することができなかった。また後日話をしようと言われ、わたしは王宮を去った。
たくさんの使用人は必要ないので王宮でしばらく働かせてもらうことになった。
エマだけは『何があってもついて行きます』と引きさがらなかったので、兄様も『エマだけだよ』と許してくれた。
着いたのは街中から外れた場所にある小さな一軒家だった。と言っても平民の家からするとかなり大きめなのかもしれない。
「ここは俺の隠れ家なんだ。カレンの護衛としてキースにも来てもらうようにしているから安心して」
ーーーよかった。流石に女二人は怖かったもの。
「ちなみに俺もたまにこの家に泊まることがあるからね。小さいとはいえ、部屋数はそれなりにあるからみんなの部屋はそれぞれあると思うよ。じゃあ俺はまた両親のところへ行って来るから、ゆっくり過ごしてね。必要なものは適当に買い揃えていいからね」
「ありがとうございます」
「エマ、明日からまた学校に通おうと思うの」
「そんな焦らなくてもいいんじゃないですか?」
「ううん、今回わかったの。やっぱり頑張って学校を卒業するしかないって。一人の力で生きていくためにも知識を身につけ、社会に出て生きていく力を持たないと口だけではどうしようもないもの。みんなに助けられないと生きていけない……そんなの悔しいじゃない」
「それでもわたしはおそばに居ます。キースと二人カレン様から離れません!」
「ふふ、ありがとう。二人を雇えるように頑張って働かなきゃ」
「大丈夫です。わたしとキースが働いてカレン様を食べさせますので!」
78
お気に入りに追加
1,883
あなたにおすすめの小説

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる