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にじゅうなな。
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「兄様……どこへ行くんですか?」
馬車に乗せられて、どこかへ向かっている。
「ちょっと黙ってて」
そう言って冷たく濡らしたハンカチをわたしの腫れた頬にあてる。
「い、痛いです」
「すまない、駆けつけるのが遅れてしまった。こんなに腫れ上がって!
キャサリンには屋敷に来ないように言っていたはずなのに、いつの間にか屋敷に入り込んでいたんだ。屋敷の者には彼女を入れないように言いつけていたが、あの女は簡単には諦めないようだ」
「兄様………なんだか変です」
ーーーいつもの兄様は淡々としていてとても冷たい人。わたしになんて興味もないはず。
「……後悔してるんだ……今更だけど。昔は父上や母上がカレンに対して冷たい態度を取るのもカレンの自業自得だと多少は思ってた。君が幼い頃から王都にいると体調を崩すし、祖父母にだけ懐くから両親からしたら苛立っていたんだと思う、だからと言っていくらキャサリンのせいとは言え、あんなことをしてはいけないのだけど」
「………はあ……」
そんなこと今更言われてもどうでもいいかな。
キャサリン様の所為だというところは気になるけど……もう関わり合いたくない。
「あ、あの……ところでエマ達は今どこにいるんですか?」
「うーん、それが……「えっ?何かあったんですか?」
「違う違う!両親がエマやキースを無理やり屋敷から追い出そうとしたから俺がみんなをある場所に連れて行ってるんだ。ただ……その場所がよく考えたらカレンにとっては嫌かもしれないと思ってね……カレンは王城が苦手だろう?」
「……はぁ、まぁ、そうですね」
「あの人達が手出ししにくい場所がいいと思ってとりあえず王太子殿下の宮に連れて行ってるんだ。今から行くのもその宮なんだ。
……もちろんカレンがそこにずっといる訳ではないよ。カレンには俺のもう一つの家に住んでもらうつもりだからね。ただそこは狭い家だからたくさんの使用人に、いてもらうことはできないんだ」
「兄様の家?」
「うん、キャサリンとは距離を置いておかないとつけ込まれると困るからね。カレンも感じてるだろう?
あの子はどこかおかしいと」
「………わたしもあまり接しないようにしていたので……ただ今日のキャサリン様はちょっと異常でした……わたしを嘲笑うのを隠そうともしませんでした。いつもなら隠すようにこっそりと笑っていたのに……」
思い出すだけですっごく嫌な気分になってしまう。
「エマ達を王太子殿下の王宮に連れて行ってるって……そんなことしていいのですか?」
なんだかさっきから兄様の発言はおかしなところがある。
「まぁ殿下には許可をもらっているし、この件は殿下からの依頼でもあるからね」
「よくわからないのですが……」
やはりわたしには理解不能だ。兄様の考えていることは……
「うん、キャサリンはある犯罪を犯しているんだ。それにカレンは巻き込まれてしまっている。ごめんね、助けてあげたかったのに薬を見つけるのが遅くなってしまった。それにあんなに酷い状況になっていると思っていなかった。まさか実の娘に手を挙げるなんて……本当にすまない」
「公爵夫婦があんな態度を取るのにもう慣れてしまいました。それこそ今更ですよ。わたしが嫌いならさっさとわたしを捨てればいいのに。
利用したいのにわたしがセルジオと婚約してしまったから腹立たしいのはわかるのですけど、突然『逃げろ』なんて訳のわからないことを言い出したり、あの人たちのことはよくわからないです」
「君にそのことも説明しなければいけないね。ただまだ全てを話すわけにはいかないんだ。これは個人的な話だけでは終わらないことだから……」
兄様が「どこまで話せるか一度王太子殿下と相談してみるよ」と言った。
「わかりました。とにかくエマ達の顔を見たいです」
わたしは王太子殿下の使用人用の部屋にいたみんなと会えて思わず涙ぐんだ。
「みんなごめんね、嫌な思いをさせて」
馬車に乗せられて、どこかへ向かっている。
「ちょっと黙ってて」
そう言って冷たく濡らしたハンカチをわたしの腫れた頬にあてる。
「い、痛いです」
「すまない、駆けつけるのが遅れてしまった。こんなに腫れ上がって!
キャサリンには屋敷に来ないように言っていたはずなのに、いつの間にか屋敷に入り込んでいたんだ。屋敷の者には彼女を入れないように言いつけていたが、あの女は簡単には諦めないようだ」
「兄様………なんだか変です」
ーーーいつもの兄様は淡々としていてとても冷たい人。わたしになんて興味もないはず。
「……後悔してるんだ……今更だけど。昔は父上や母上がカレンに対して冷たい態度を取るのもカレンの自業自得だと多少は思ってた。君が幼い頃から王都にいると体調を崩すし、祖父母にだけ懐くから両親からしたら苛立っていたんだと思う、だからと言っていくらキャサリンのせいとは言え、あんなことをしてはいけないのだけど」
「………はあ……」
そんなこと今更言われてもどうでもいいかな。
キャサリン様の所為だというところは気になるけど……もう関わり合いたくない。
「あ、あの……ところでエマ達は今どこにいるんですか?」
「うーん、それが……「えっ?何かあったんですか?」
「違う違う!両親がエマやキースを無理やり屋敷から追い出そうとしたから俺がみんなをある場所に連れて行ってるんだ。ただ……その場所がよく考えたらカレンにとっては嫌かもしれないと思ってね……カレンは王城が苦手だろう?」
「……はぁ、まぁ、そうですね」
「あの人達が手出ししにくい場所がいいと思ってとりあえず王太子殿下の宮に連れて行ってるんだ。今から行くのもその宮なんだ。
……もちろんカレンがそこにずっといる訳ではないよ。カレンには俺のもう一つの家に住んでもらうつもりだからね。ただそこは狭い家だからたくさんの使用人に、いてもらうことはできないんだ」
「兄様の家?」
「うん、キャサリンとは距離を置いておかないとつけ込まれると困るからね。カレンも感じてるだろう?
あの子はどこかおかしいと」
「………わたしもあまり接しないようにしていたので……ただ今日のキャサリン様はちょっと異常でした……わたしを嘲笑うのを隠そうともしませんでした。いつもなら隠すようにこっそりと笑っていたのに……」
思い出すだけですっごく嫌な気分になってしまう。
「エマ達を王太子殿下の王宮に連れて行ってるって……そんなことしていいのですか?」
なんだかさっきから兄様の発言はおかしなところがある。
「まぁ殿下には許可をもらっているし、この件は殿下からの依頼でもあるからね」
「よくわからないのですが……」
やはりわたしには理解不能だ。兄様の考えていることは……
「うん、キャサリンはある犯罪を犯しているんだ。それにカレンは巻き込まれてしまっている。ごめんね、助けてあげたかったのに薬を見つけるのが遅くなってしまった。それにあんなに酷い状況になっていると思っていなかった。まさか実の娘に手を挙げるなんて……本当にすまない」
「公爵夫婦があんな態度を取るのにもう慣れてしまいました。それこそ今更ですよ。わたしが嫌いならさっさとわたしを捨てればいいのに。
利用したいのにわたしがセルジオと婚約してしまったから腹立たしいのはわかるのですけど、突然『逃げろ』なんて訳のわからないことを言い出したり、あの人たちのことはよくわからないです」
「君にそのことも説明しなければいけないね。ただまだ全てを話すわけにはいかないんだ。これは個人的な話だけでは終わらないことだから……」
兄様が「どこまで話せるか一度王太子殿下と相談してみるよ」と言った。
「わかりました。とにかくエマ達の顔を見たいです」
わたしは王太子殿下の使用人用の部屋にいたみんなと会えて思わず涙ぐんだ。
「みんなごめんね、嫌な思いをさせて」
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