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じゅうなな。
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王都に来てからとわたしはだんだん体調が悪化していった。
学校へ通いたくても突然倒れたり寝込むことが増えてきた。
オリヴィア達も度々見舞いに来てくれた。
だけど思ったより体は言うことを聞いてくれない。
「領地に帰りたい」
思わず弱音が出てしまう。
飛び級で卒業しようと目論んでいたのに、今は学校へ通えなくなっている。特待生として学費も免除されているのに……
「カレン様、今日は天気がいいですよ、少しだけお庭を散歩しませんか?」
エマが声をかけてくれた。
「そうね」
キースが車椅子に乗せてくれて、エマが車椅子を押してくれた。
公爵家のタウンハウスの庭は庭師達が愛情を込めて手入れをしている。
中庭には噴水やゆっくり寛げるベンチが置いてある。薔薇のガーデンハウスも造られていて、中に入ると色とりどりの薔薇が咲いていて、見る者の目を楽しませてくれる。
花を見て楽しんでいるとエマが思い出したように言った。
「ヒュート様がとても心配しております。旦那様達に許可を得てお見舞いに本日来る予定になっています」
「ヒュートが?まだ帰っていないのね?ヒュートには心配をかけちゃったし、夜会のこともお礼を言ってなかったから気になってたの」
「ルロワール様の家を拠点にして商会の仕事を頑張っているみたいです」
「ふふふっ、さすが商売人ね。投資したお金、また増えてくれそうね」
「はい、期待しております!」
実はエマも最近少しだけおためしで投資したらしい。
「でもあのお二人がヒュートが来ることを許可してくれるのかしら?」
「大丈夫でした」
「……そう、だったらよかったわ」
ヒュートは公爵夫人の嫌っているお祖母様の甥っ子の子供。だからか、ヒュート達のことをあまりよく思っていない。
「カレン様……そろそろお部屋に戻りましょうか?」
「そうね、外に出ているとやっぱり疲れてしまうわ」
エマが車椅子を押して屋敷に向かっていると、前からもう会いたくないと思っている二人が歩いてきた。
「あら?カレン様?ふふふ、まだお体が悪いのね」
キャサリン様が声をかけてきた。
その横で楽しそうにしていた公爵夫人はわたしを見るなり顔を顰めた。
どう答えようか考えていると
「人が心配して話しかけているのに返事すらしないの?あなたは?」
夫人はやはり難癖をつけてきた。
またため息が出る。
体調の悪い時に言われてしまうと腹を立てるより思わず悲しくなる。
もうこの人達を嫌っているのに、もう諦めてしまっているはずなのに、やっぱり少しは期待していた。
心配してくれているのでは?と………
わたしが倒れた時意識のないわたしを心配して会いにきてくれたとキースは言っていたけど、やっぱり間違いだったのだろう。そう彼らの気まぐれだったのだろう。
本気で心配なんてしていなかったはず。
だから今のこの状況が本当の答えなのだ。
車椅子に座っているわたしは二人に笑顔を向けた。
「素敵なお花を拝見させていただいておりました。公爵夫人、キャサリン様」
「…なっ!…………」
公爵夫人はまだ何か言い足りなかったのかわたしの背中に向けて叫ぼうとしていた。
だけど言うのをやめて「キャサリン行きましょう」とわたし達が先ほどまでいたガーデンハウスへ行ってしまった。
「エマ、早く部屋に帰りたいわ。ヒュートが来るまで横になりたいの」
お昼は食欲がなくてジュースだけ飲んで終わった。
ヒュートが来るまで遅れている勉強をしようと本を広げた。まだ集中力がなくてすぐに疲れてしまうけど気持ちだけは焦っていた。
遅れれば領地に戻るのが遅くなる。
早く卒業してこの屋敷から逃げ出したい。
「カレン、体調が悪い時に勉強しても捗らないぞ。それよりもゆっくり休め」
そう言ってヒュートが本を取り上げた。
「でも……」
「でもじゃない!それよりこの薬を飲んでみて」
「薬?お医者様に処方されているから大丈夫よ」
「知ってる。だけどこの薬はカレンが今一番必要としている薬だと思う」
「一番必要?」
「眠れないんだろう?眠れても怖い夢を見てしまうんだろう?」
「…………うん、この王都に来てからずっとなの……」
「原因は?元々怖い夢を見ていたのは知ってる。だけど王都に来てから酷くなったんだろう?原因はわかる?」
「原因かはわからない……でも王城にいると嫌な気持ちになったの。よくわからないけど死にたくなるの……」
「この薬はこの国では手に入らない。やっと今日届いたんだ、君のために仕入れてきたから必ず飲んで」
「わかったわ、飲むから」
薬を飲んだけど別になんの変化もなかった。
まっ、すぐに効果なんて出ないもの。
ヒュートのおかげで嫌な気分になっていたけど少しだけ気持ちが軽くなった。
学校へ通いたくても突然倒れたり寝込むことが増えてきた。
オリヴィア達も度々見舞いに来てくれた。
だけど思ったより体は言うことを聞いてくれない。
「領地に帰りたい」
思わず弱音が出てしまう。
飛び級で卒業しようと目論んでいたのに、今は学校へ通えなくなっている。特待生として学費も免除されているのに……
「カレン様、今日は天気がいいですよ、少しだけお庭を散歩しませんか?」
エマが声をかけてくれた。
「そうね」
キースが車椅子に乗せてくれて、エマが車椅子を押してくれた。
公爵家のタウンハウスの庭は庭師達が愛情を込めて手入れをしている。
中庭には噴水やゆっくり寛げるベンチが置いてある。薔薇のガーデンハウスも造られていて、中に入ると色とりどりの薔薇が咲いていて、見る者の目を楽しませてくれる。
花を見て楽しんでいるとエマが思い出したように言った。
「ヒュート様がとても心配しております。旦那様達に許可を得てお見舞いに本日来る予定になっています」
「ヒュートが?まだ帰っていないのね?ヒュートには心配をかけちゃったし、夜会のこともお礼を言ってなかったから気になってたの」
「ルロワール様の家を拠点にして商会の仕事を頑張っているみたいです」
「ふふふっ、さすが商売人ね。投資したお金、また増えてくれそうね」
「はい、期待しております!」
実はエマも最近少しだけおためしで投資したらしい。
「でもあのお二人がヒュートが来ることを許可してくれるのかしら?」
「大丈夫でした」
「……そう、だったらよかったわ」
ヒュートは公爵夫人の嫌っているお祖母様の甥っ子の子供。だからか、ヒュート達のことをあまりよく思っていない。
「カレン様……そろそろお部屋に戻りましょうか?」
「そうね、外に出ているとやっぱり疲れてしまうわ」
エマが車椅子を押して屋敷に向かっていると、前からもう会いたくないと思っている二人が歩いてきた。
「あら?カレン様?ふふふ、まだお体が悪いのね」
キャサリン様が声をかけてきた。
その横で楽しそうにしていた公爵夫人はわたしを見るなり顔を顰めた。
どう答えようか考えていると
「人が心配して話しかけているのに返事すらしないの?あなたは?」
夫人はやはり難癖をつけてきた。
またため息が出る。
体調の悪い時に言われてしまうと腹を立てるより思わず悲しくなる。
もうこの人達を嫌っているのに、もう諦めてしまっているはずなのに、やっぱり少しは期待していた。
心配してくれているのでは?と………
わたしが倒れた時意識のないわたしを心配して会いにきてくれたとキースは言っていたけど、やっぱり間違いだったのだろう。そう彼らの気まぐれだったのだろう。
本気で心配なんてしていなかったはず。
だから今のこの状況が本当の答えなのだ。
車椅子に座っているわたしは二人に笑顔を向けた。
「素敵なお花を拝見させていただいておりました。公爵夫人、キャサリン様」
「…なっ!…………」
公爵夫人はまだ何か言い足りなかったのかわたしの背中に向けて叫ぼうとしていた。
だけど言うのをやめて「キャサリン行きましょう」とわたし達が先ほどまでいたガーデンハウスへ行ってしまった。
「エマ、早く部屋に帰りたいわ。ヒュートが来るまで横になりたいの」
お昼は食欲がなくてジュースだけ飲んで終わった。
ヒュートが来るまで遅れている勉強をしようと本を広げた。まだ集中力がなくてすぐに疲れてしまうけど気持ちだけは焦っていた。
遅れれば領地に戻るのが遅くなる。
早く卒業してこの屋敷から逃げ出したい。
「カレン、体調が悪い時に勉強しても捗らないぞ。それよりもゆっくり休め」
そう言ってヒュートが本を取り上げた。
「でも……」
「でもじゃない!それよりこの薬を飲んでみて」
「薬?お医者様に処方されているから大丈夫よ」
「知ってる。だけどこの薬はカレンが今一番必要としている薬だと思う」
「一番必要?」
「眠れないんだろう?眠れても怖い夢を見てしまうんだろう?」
「…………うん、この王都に来てからずっとなの……」
「原因は?元々怖い夢を見ていたのは知ってる。だけど王都に来てから酷くなったんだろう?原因はわかる?」
「原因かはわからない……でも王城にいると嫌な気持ちになったの。よくわからないけど死にたくなるの……」
「この薬はこの国では手に入らない。やっと今日届いたんだ、君のために仕入れてきたから必ず飲んで」
「わかったわ、飲むから」
薬を飲んだけど別になんの変化もなかった。
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