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じゅうろく。
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あの二人が部屋を出て行った。
すると気持ちが落ち着いて来た。
何故あの二人といるとこんなに心が乱れるのだろう。
「キースごめんなさい」
「あの屋敷には……帰りたくないですよね?」
「帰るしかないわ。あそこしか居場所がないもの。領地に戻ればお祖父様達が酷いことをされるかもしれないし、追い出すと言っていたもの。あの人達ならやりかねないわ」
「………旦那様達はたしかに……冷たい。だけどカレン様が倒れている間……何度もここに来ていたんです。とても心配そうにしていました」
「そんなこと信じられない。それに……駄目なの。あの人達の顔を見ると、とても嫌な気持ちになるの。今までのことだけじゃない。わからないけどあの人達が駄目なの」
自分でもわからない。だけど、何故かあの人達の顔を見るとゾワっとする。
特にこの王城にいるとおかしくなる。
「お医者様に許可をもらって来ます。とにかくエマのところに帰りましょう」
「うん」
その言葉に安心してキースが来るのを待っていた。
カーテンを開けてもらうと今日はとてもいい天気だった。
青い空に鳥が飛んでいくのが窓から見えた。
わたしも鳥のように自由に飛んでいきたい。
カタッ。
扉から音が聞こえた。
「キース?早かったわね」
扉に視線を移すとそこに立っていたのはオスカー殿下だった。
「あっ…」驚いて小さな声が思わず出てしまった。
「やっと意識が戻ったと聞いたんだ」
「あ、すみません。ご迷惑をおかけいたしました」
「ベランダでカレンが倒れているのに気がついた時、とても驚いたよ。僕は気が付かなかったけどあの時何かあったのかい?」
ーーー殿下がアイリ様とイチャイチャしていただけです。
そう言いたいのだけど……
その姿を見て苦しくなった。そして………思い出そうとすると何故か頭が痛くなる。
そんなこと殿下には言えない。
「ご心配をおかけいたしました。ただ体調が悪くてベランダで風に当たっていたのですが、そのまま気を失ってしまったみたいなんです」
うまく誤魔化せたかしら?
ぎこちない笑顔になってしまった。
「そうか…だったらいいんだけど…3日も目を覚まさなかったから心配したよ、しっかりここで療養して欲しい。この部屋は医師達がいる部屋に一番近い場所なんだけど公爵令嬢のカレンには質素すぎるだろう?王族専用の個室に移るように伝えてある、もう少し辛抱してくれ」
「わたし…もう体調も落ち着いたので家に帰るつもりです、今うちの使用人が準備をしてくれています」
「駄目だ、しっかり医師に診てもらわないと!」
殿下の突然の大きな声にビクッとした。
「……ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ。セルジオも心配しているんだ、君とセルジオの婚約の話ももちろん知っている。カレン、セルジオと是非婚約していて欲しい」
「……していて?」
殿下のその言葉に違和感を感じた。
「うん、それが君を守るのに一番いいと思ってる」
「守るって何から?セルジオ様も殿下もよくわからないわ。それに……わたし自身も……この王都に戻って来てから……いつも苦しい……」
思わず溢れてしまった言葉にハッとして言うのをやめた。
いつも夢に出てくる塔。それがこの王城にあるからなのか。目を覚ませばほとんど忘れてしまうのに塔から落ちていくところだけはずっと頭の中に残っている。
この場所は危険。よくわからないけど長くいてはいけない。
「殿下の気持ちはありがたいのですが、わたしは……エマとキースのところに帰りたいのです。あそこがわたしの居場所だから」
「使用人の二人だね?でもそこには君の苦手な人たちもいるんだろう?」
「………関わらなければいいだけですから………会わないように部屋から出なければ………」
殿下の問いに答えると言うより、自分に言い聞かせるように呟いた。
これからあの人達とどう接していけばいいのか。
「カレン……僕たちは幼馴染だ。何かあれば相談して来て欲しい」
「ふふっ、セルジオ様も殿下もそんな昔のこと今さら…気にしなくてもいいのに。殿下は大切な恋人がいるのですからわたしのことなど放っておいてください」
アイリ様のことを思い出して気を遣ってそう言うと
「アイリは……」何故か唇を噛んで一瞬黙ってしまった。
そして口角だけを片方あげて作り笑いをした。
「そうだな、うん……だけど君は大切な幼馴染なんだ」
そう言って苦しそうに微笑んだ。
そのあとキースが帰る支度をしてくれて、わたしはキースに用意してもらった車椅子に乗せてもらいあの二人のいる屋敷へと帰った。
エマが泣きながら抱きついて来たので何度も「心配かけてごめんね」と謝った。
そのあと緊張からか熱を出してしまいそのまままた寝込んでしまった。
すると気持ちが落ち着いて来た。
何故あの二人といるとこんなに心が乱れるのだろう。
「キースごめんなさい」
「あの屋敷には……帰りたくないですよね?」
「帰るしかないわ。あそこしか居場所がないもの。領地に戻ればお祖父様達が酷いことをされるかもしれないし、追い出すと言っていたもの。あの人達ならやりかねないわ」
「………旦那様達はたしかに……冷たい。だけどカレン様が倒れている間……何度もここに来ていたんです。とても心配そうにしていました」
「そんなこと信じられない。それに……駄目なの。あの人達の顔を見ると、とても嫌な気持ちになるの。今までのことだけじゃない。わからないけどあの人達が駄目なの」
自分でもわからない。だけど、何故かあの人達の顔を見るとゾワっとする。
特にこの王城にいるとおかしくなる。
「お医者様に許可をもらって来ます。とにかくエマのところに帰りましょう」
「うん」
その言葉に安心してキースが来るのを待っていた。
カーテンを開けてもらうと今日はとてもいい天気だった。
青い空に鳥が飛んでいくのが窓から見えた。
わたしも鳥のように自由に飛んでいきたい。
カタッ。
扉から音が聞こえた。
「キース?早かったわね」
扉に視線を移すとそこに立っていたのはオスカー殿下だった。
「あっ…」驚いて小さな声が思わず出てしまった。
「やっと意識が戻ったと聞いたんだ」
「あ、すみません。ご迷惑をおかけいたしました」
「ベランダでカレンが倒れているのに気がついた時、とても驚いたよ。僕は気が付かなかったけどあの時何かあったのかい?」
ーーー殿下がアイリ様とイチャイチャしていただけです。
そう言いたいのだけど……
その姿を見て苦しくなった。そして………思い出そうとすると何故か頭が痛くなる。
そんなこと殿下には言えない。
「ご心配をおかけいたしました。ただ体調が悪くてベランダで風に当たっていたのですが、そのまま気を失ってしまったみたいなんです」
うまく誤魔化せたかしら?
ぎこちない笑顔になってしまった。
「そうか…だったらいいんだけど…3日も目を覚まさなかったから心配したよ、しっかりここで療養して欲しい。この部屋は医師達がいる部屋に一番近い場所なんだけど公爵令嬢のカレンには質素すぎるだろう?王族専用の個室に移るように伝えてある、もう少し辛抱してくれ」
「わたし…もう体調も落ち着いたので家に帰るつもりです、今うちの使用人が準備をしてくれています」
「駄目だ、しっかり医師に診てもらわないと!」
殿下の突然の大きな声にビクッとした。
「……ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ。セルジオも心配しているんだ、君とセルジオの婚約の話ももちろん知っている。カレン、セルジオと是非婚約していて欲しい」
「……していて?」
殿下のその言葉に違和感を感じた。
「うん、それが君を守るのに一番いいと思ってる」
「守るって何から?セルジオ様も殿下もよくわからないわ。それに……わたし自身も……この王都に戻って来てから……いつも苦しい……」
思わず溢れてしまった言葉にハッとして言うのをやめた。
いつも夢に出てくる塔。それがこの王城にあるからなのか。目を覚ませばほとんど忘れてしまうのに塔から落ちていくところだけはずっと頭の中に残っている。
この場所は危険。よくわからないけど長くいてはいけない。
「殿下の気持ちはありがたいのですが、わたしは……エマとキースのところに帰りたいのです。あそこがわたしの居場所だから」
「使用人の二人だね?でもそこには君の苦手な人たちもいるんだろう?」
「………関わらなければいいだけですから………会わないように部屋から出なければ………」
殿下の問いに答えると言うより、自分に言い聞かせるように呟いた。
これからあの人達とどう接していけばいいのか。
「カレン……僕たちは幼馴染だ。何かあれば相談して来て欲しい」
「ふふっ、セルジオ様も殿下もそんな昔のこと今さら…気にしなくてもいいのに。殿下は大切な恋人がいるのですからわたしのことなど放っておいてください」
アイリ様のことを思い出して気を遣ってそう言うと
「アイリは……」何故か唇を噛んで一瞬黙ってしまった。
そして口角だけを片方あげて作り笑いをした。
「そうだな、うん……だけど君は大切な幼馴染なんだ」
そう言って苦しそうに微笑んだ。
そのあとキースが帰る支度をしてくれて、わたしはキースに用意してもらった車椅子に乗せてもらいあの二人のいる屋敷へと帰った。
エマが泣きながら抱きついて来たので何度も「心配かけてごめんね」と謝った。
そのあと緊張からか熱を出してしまいそのまままた寝込んでしまった。
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