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じゅうに。
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「カレン様、後で話をしたい」
わたしのそばに来て小さな声でセルジオ様が声をかけてきた。
「えっ?」
思わず声が出て公爵夫婦にじろっと睨まれた。
「じゃあ、後で」
それだけ言うとさっさと自分の居たところに戻って行った。
ヒュートが心配して「やっぱりカレンに用事があったみたいだね。大丈夫?一緒についていこうか?」と聞いてくれた。
「彼とは幼馴染なの、別に平気よ」
「うん、わかったよ、でも何かあったらすぐに声かけて」
「ありがとう」
二人でコソコソ話していたら、我が家の名前が呼ばれた。
公爵夫婦の後ろについていき、国王両陛下と王太子殿下、オスカー殿下に挨拶をした。
陛下と王妃様には幼い頃よく遊んでもらった。優しいおじ様とおば様として接していた。
あの頃はよくわかっていなかったのよね。今は恐ろしくて絶対そんなことできないけど。
「カレン、久しぶりだな。美しく成長して嬉しく思う」
「ほんと、あのお転婆だったカレンがこんなお淑やかになるなんて。是非次回はわたくしのお茶会に参加して欲しいわ」
「ありがとうございます」
余計なことは言わない。ただ柔かに微笑むだけ。
「ミラー公爵。やっと王都に戻ってきた娘と暮らせてよかったな」
「………はい」
公爵は小さな声で陛下に返事をした。
「カレンも王都で公爵令嬢として社交をしこの国の若者達を引っ張って行って欲しい。期待しているぞ」
「頑張りたいと思います」
ーーーさっさと卒業して文官になってこの王都から出ていく予定だけどね。
ヒュートのこともご存知のようで話しかけてくれた。
「グラント商会には大変世話になっている。グラント商会が我が国にもたらした品の数々、おかげで国民は豊かになれた。新しい美術品、なかなか手に入らない本、珍しい宝石、そして新しい文化や考え方。この功績はとても素晴らしい」
ーーーなんだかヒュートが一番褒められてるわ。
一緒にいてわたしまで嬉しく感じる。
チラッと公爵夫婦を見ると、『無』の状態だった。
こんな時二人はどんな顔をしたらいいのかわからないのだろう。わたしが褒められても、ヒュートが褒められても。困ってるだろうな、国王陛下の前で怒ったり文句も言えないし。
話が終わりもう一度頭を下げてその場を後にした。
「これでわたしの仕事は終わりましたので、お二人とはもう失礼いたしますね」
もうこれ以上、この二人といる必要はない。
さっさと逃げよう。そしてセルジオ様に捕まる前に。
そう思ったのに「カレン様」とわたしの後ろから声をかけてきた。
ーーーハァー捕まった。
「何か御用ですか?」仕方なく振り返った。
「後で話があると言ったはずだが?」
「わかりました……では、そこで」と言って、椅子が置いてあるテーブルに仕方なく移動しようとした。
どこに居てもどうせ人がいてザワザワしていて話にならないもの。どこでもいいでしょう。
そう思っていたら「部屋は用意してあるからこっちに」と会場から出て王族専用の特別室へと連れてこられた。
「許可はとってあるから」
「………わかったわ」
仕方なく部屋に入ると、使用人数人が、話が聞こえないであろう扉の外に立っている。
流石に15歳とはいえ男性であるセルジオ様と二人っきりで部屋にいることはできない。
扉を少し開けて外に使用人が待機してくれている。
ソファに座りセルジオ様自ら紅茶を淹れてくれた。
「セルジオ様って相変わらず器用ですね」
「美味しそうだろう?」
「ええ、とてもいい匂いがしていますね」
カップを持ち、少し口付けた。あっ…やっぱりわたしが飲み慣れた領地の紅茶の味。
「あの……わたしに話とはいったいなんでしょうか?」
「カレン様には婚約者はいないと聞いている」
「あ、はい、まだ15歳ですし、公爵様達は何も言いませんから」
「公爵様?」
「あっ、お父様…ですね。ずっと離れて暮らしていたもので」
なんとか言い訳をした。
まさか自分の親に他人のような呼び方をしているなんて言えない。
「まだ君のご両親には確認をとっていないんだけど……僕と婚約して欲しいんだ」
「はあっ?何故?どうして?セルジオ様ってわたしのこと好きなの?」
「そんなわけないだろう!」
「ですよね?」
ーーーだったら何故?
わたしのそばに来て小さな声でセルジオ様が声をかけてきた。
「えっ?」
思わず声が出て公爵夫婦にじろっと睨まれた。
「じゃあ、後で」
それだけ言うとさっさと自分の居たところに戻って行った。
ヒュートが心配して「やっぱりカレンに用事があったみたいだね。大丈夫?一緒についていこうか?」と聞いてくれた。
「彼とは幼馴染なの、別に平気よ」
「うん、わかったよ、でも何かあったらすぐに声かけて」
「ありがとう」
二人でコソコソ話していたら、我が家の名前が呼ばれた。
公爵夫婦の後ろについていき、国王両陛下と王太子殿下、オスカー殿下に挨拶をした。
陛下と王妃様には幼い頃よく遊んでもらった。優しいおじ様とおば様として接していた。
あの頃はよくわかっていなかったのよね。今は恐ろしくて絶対そんなことできないけど。
「カレン、久しぶりだな。美しく成長して嬉しく思う」
「ほんと、あのお転婆だったカレンがこんなお淑やかになるなんて。是非次回はわたくしのお茶会に参加して欲しいわ」
「ありがとうございます」
余計なことは言わない。ただ柔かに微笑むだけ。
「ミラー公爵。やっと王都に戻ってきた娘と暮らせてよかったな」
「………はい」
公爵は小さな声で陛下に返事をした。
「カレンも王都で公爵令嬢として社交をしこの国の若者達を引っ張って行って欲しい。期待しているぞ」
「頑張りたいと思います」
ーーーさっさと卒業して文官になってこの王都から出ていく予定だけどね。
ヒュートのこともご存知のようで話しかけてくれた。
「グラント商会には大変世話になっている。グラント商会が我が国にもたらした品の数々、おかげで国民は豊かになれた。新しい美術品、なかなか手に入らない本、珍しい宝石、そして新しい文化や考え方。この功績はとても素晴らしい」
ーーーなんだかヒュートが一番褒められてるわ。
一緒にいてわたしまで嬉しく感じる。
チラッと公爵夫婦を見ると、『無』の状態だった。
こんな時二人はどんな顔をしたらいいのかわからないのだろう。わたしが褒められても、ヒュートが褒められても。困ってるだろうな、国王陛下の前で怒ったり文句も言えないし。
話が終わりもう一度頭を下げてその場を後にした。
「これでわたしの仕事は終わりましたので、お二人とはもう失礼いたしますね」
もうこれ以上、この二人といる必要はない。
さっさと逃げよう。そしてセルジオ様に捕まる前に。
そう思ったのに「カレン様」とわたしの後ろから声をかけてきた。
ーーーハァー捕まった。
「何か御用ですか?」仕方なく振り返った。
「後で話があると言ったはずだが?」
「わかりました……では、そこで」と言って、椅子が置いてあるテーブルに仕方なく移動しようとした。
どこに居てもどうせ人がいてザワザワしていて話にならないもの。どこでもいいでしょう。
そう思っていたら「部屋は用意してあるからこっちに」と会場から出て王族専用の特別室へと連れてこられた。
「許可はとってあるから」
「………わかったわ」
仕方なく部屋に入ると、使用人数人が、話が聞こえないであろう扉の外に立っている。
流石に15歳とはいえ男性であるセルジオ様と二人っきりで部屋にいることはできない。
扉を少し開けて外に使用人が待機してくれている。
ソファに座りセルジオ様自ら紅茶を淹れてくれた。
「セルジオ様って相変わらず器用ですね」
「美味しそうだろう?」
「ええ、とてもいい匂いがしていますね」
カップを持ち、少し口付けた。あっ…やっぱりわたしが飲み慣れた領地の紅茶の味。
「あの……わたしに話とはいったいなんでしょうか?」
「カレン様には婚約者はいないと聞いている」
「あ、はい、まだ15歳ですし、公爵様達は何も言いませんから」
「公爵様?」
「あっ、お父様…ですね。ずっと離れて暮らしていたもので」
なんとか言い訳をした。
まさか自分の親に他人のような呼び方をしているなんて言えない。
「まだ君のご両親には確認をとっていないんだけど……僕と婚約して欲しいんだ」
「はあっ?何故?どうして?セルジオ様ってわたしのこと好きなの?」
「そんなわけないだろう!」
「ですよね?」
ーーーだったら何故?
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