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じゅう。
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全ての用意が終わり、少しだけゆっくりと自分の部屋で寛いだ。
馬車は、ヒュートが用意してくれる。
時間になったら門へ行けば待ってくれているはず。
紅茶は大好きな領地で採れた茶葉。
飲み慣れたこの味にホッとしつつ朝早くからの用意に疲れた体を少しでも休憩させてあげようとソファでのんびりとしていた。
コンコン。
エマが何か用事があったのかしら?
「はい?」
返事もなく黙って入ってきたので「どうしたの?」とティーカップを置いてから振り返った。
そこに立っていたのは、キャサリン様と公爵夫人だった。
キャサリン様は何故か楽しそうな顔をしていた。公爵夫人は怒りを隠しもせずわたしを睨む。
心当たりがないので(今日のデビュタントのこと?)気にもせず無視することにした。
「カレン、そのドレスはどう言うことかしら?」
「わたしの大切なお祖母様が贈ってくださったドレスですわ。公爵夫人」
その言葉に体を震わせて怒りを抑えているのが見ていてわかった。
キャサリン様はニヤニヤと楽しそうにわたしを見つめていた。
ーーー何が楽しいのかしら?
「………わたくしが用意したドレスはどうしたの?」
「えっ?用意するとは聞いたけど……届いてはいません…けど?」
確かにこの人達が用意するとは言ったけど断ったし、受け取っていないし、どんなものかも知らない。
「ハア、そんなにわたくしが用意したドレスが嫌だなんて思わなかったわ。そんなにお義母様が大切?あの人がどんな人か知らないくせに」
「……お祖母様はわたしにたくさんの愛情を注いでくださいました。公爵夫人こそお祖母の何を知っていると言うのですか?それにわたしはドレスはお祖母様から贈られたのでお断りしております。
娘でもないわたしに贈るよりそちらのキャサリン様に贈って差し上げた方が喜ばれるのではなくて?」
「あら?カレン様いい事言うわね。そう思ってわたしがドレスは頂いたの!とっても素敵なドレスだったわ。来年のデビュタントで着れば、注目を浴びるのはわたしよ!
そんな貧相なドレスで社交界デビューするなんて無様だわ」
「だ、そうですわ、公爵夫人」
苦笑するしかない。この子は人のモノを盗んだと言う感覚はないのだろう。
夫人は呆気に取られて固まって返事をしなかった。
「ではもうすぐヒュートが迎えに来ますので、出て行って頂けますか?少しゆっくりして体を休めたいので」
二人に席を立つように促して、扉を開けた。
「カレン様ってほんと愛想はないし可愛らしさもないのね。その髪の色は両親どちらにも似ていないのでしょう?本当にお二人の子供なの?」
楽しそうにクスクス笑うキャサリン様に公爵夫人はさらに目を大きくさせた。
ーーーそれってわたしが貰い子と言ってるならまだいいけど、夫人が浮気して出来た子と言ってるとも聞こえる発言だわ。
頭の痛いお花畑発言なのになんだか楽しくなってきた。
だって流石に怒るかしらと思ったら、苦笑するわたしを睨みつけ部屋から出て行ったんだもの。
キャサリン様は何も悪いことは言っていない。正論だと思っている。
あの二人は一体どこが良くてキャサリン様を可愛がっているのだろう。もしかして、この天然の花畑が可愛く見えるのかしら?
領地に腕の良い眼科医がいたから紹介しようかしら?
エマがヒュートが迎えに来てくれたと言いに来たのでわたしは門に向かう。
途中公爵様と公爵夫人と廊下ですれ違った。その横にはもちろんキャサリン様。
親子のようにいる三人に笑顔で挨拶をしてわたしはヒュートのところへ向かった。
夜会が終わるまでわたしの体力持つかしら?
馬車は、ヒュートが用意してくれる。
時間になったら門へ行けば待ってくれているはず。
紅茶は大好きな領地で採れた茶葉。
飲み慣れたこの味にホッとしつつ朝早くからの用意に疲れた体を少しでも休憩させてあげようとソファでのんびりとしていた。
コンコン。
エマが何か用事があったのかしら?
「はい?」
返事もなく黙って入ってきたので「どうしたの?」とティーカップを置いてから振り返った。
そこに立っていたのは、キャサリン様と公爵夫人だった。
キャサリン様は何故か楽しそうな顔をしていた。公爵夫人は怒りを隠しもせずわたしを睨む。
心当たりがないので(今日のデビュタントのこと?)気にもせず無視することにした。
「カレン、そのドレスはどう言うことかしら?」
「わたしの大切なお祖母様が贈ってくださったドレスですわ。公爵夫人」
その言葉に体を震わせて怒りを抑えているのが見ていてわかった。
キャサリン様はニヤニヤと楽しそうにわたしを見つめていた。
ーーー何が楽しいのかしら?
「………わたくしが用意したドレスはどうしたの?」
「えっ?用意するとは聞いたけど……届いてはいません…けど?」
確かにこの人達が用意するとは言ったけど断ったし、受け取っていないし、どんなものかも知らない。
「ハア、そんなにわたくしが用意したドレスが嫌だなんて思わなかったわ。そんなにお義母様が大切?あの人がどんな人か知らないくせに」
「……お祖母様はわたしにたくさんの愛情を注いでくださいました。公爵夫人こそお祖母の何を知っていると言うのですか?それにわたしはドレスはお祖母様から贈られたのでお断りしております。
娘でもないわたしに贈るよりそちらのキャサリン様に贈って差し上げた方が喜ばれるのではなくて?」
「あら?カレン様いい事言うわね。そう思ってわたしがドレスは頂いたの!とっても素敵なドレスだったわ。来年のデビュタントで着れば、注目を浴びるのはわたしよ!
そんな貧相なドレスで社交界デビューするなんて無様だわ」
「だ、そうですわ、公爵夫人」
苦笑するしかない。この子は人のモノを盗んだと言う感覚はないのだろう。
夫人は呆気に取られて固まって返事をしなかった。
「ではもうすぐヒュートが迎えに来ますので、出て行って頂けますか?少しゆっくりして体を休めたいので」
二人に席を立つように促して、扉を開けた。
「カレン様ってほんと愛想はないし可愛らしさもないのね。その髪の色は両親どちらにも似ていないのでしょう?本当にお二人の子供なの?」
楽しそうにクスクス笑うキャサリン様に公爵夫人はさらに目を大きくさせた。
ーーーそれってわたしが貰い子と言ってるならまだいいけど、夫人が浮気して出来た子と言ってるとも聞こえる発言だわ。
頭の痛いお花畑発言なのになんだか楽しくなってきた。
だって流石に怒るかしらと思ったら、苦笑するわたしを睨みつけ部屋から出て行ったんだもの。
キャサリン様は何も悪いことは言っていない。正論だと思っている。
あの二人は一体どこが良くてキャサリン様を可愛がっているのだろう。もしかして、この天然の花畑が可愛く見えるのかしら?
領地に腕の良い眼科医がいたから紹介しようかしら?
エマがヒュートが迎えに来てくれたと言いに来たのでわたしは門に向かう。
途中公爵様と公爵夫人と廊下ですれ違った。その横にはもちろんキャサリン様。
親子のようにいる三人に笑顔で挨拶をしてわたしはヒュートのところへ向かった。
夜会が終わるまでわたしの体力持つかしら?
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