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はち。
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学校は今の所平穏無事に過ごせていた。
キャサリン様の姿が少しでも目に入れば、さっと姿を消してしまう技を身につけた。
「もう!わたし達を置いて突然いなくならないで!」
オリヴィア達に怒られつつ「ごめんなさい」と謝った。
顔さえ合わせなければ問題は起こらない。
殿下の最近のお気に入りのアイリ様は一つ年上だしあまり接点がないので今の所絡むことがない。殿下もわたしにそんなに興味がないようで、目さえ合わせなければ大丈夫。
問題は今度の王宮である夜会。そうわたしのデビュタント。
エスコート役の親戚であるヒュート・グラントは友人宅にもう来ていると連絡があった。
その友人宅がルロワール様だった。うん、世の中狭い。
「カレン嬢、ヒュートは君の親戚なんだって聞いて驚いたよ。今度の夜会に大事な女の子をエスコートしたいからと、うちに泊まらせて欲しいと手紙が来ていたんだ。まさかその大事な女の子が君のことだとは思わなかったよ」
「突然だったからホテルも空きがなかったらしくて。ヒュートがどこに泊まるか心配していたんです。親戚だから我が家に泊めるのが普通なのに少々問題があって……泊めづらかったの」
「……うん、少しだけ事情は聞いてる。ヒュートの親とカレン嬢の親がそこまで仲良くないって言ってたからね」
「あっ、うん、そうなの」
ーーーよかった。一番ベストな答えね。
「それで、ヒュートもいることだし今度こそ我が家に招待したいんだ。アリシアから毎日のようにいつカレンお姉様が来てくれるんだってうるさいんだ」
「妹大好きなルロワール様なのにそんなこと言っていいの?」
わたしが揶揄うように言う。
「いくら可愛くてもあんなに言われたら流石に疲れるよ。それから、ルロワールじゃなくてマックス、そう呼んで欲しい」
「マックス様⁈…ふふっ。ではご招待喜んでお受けいたしますわ。可愛いアリシアちゃんにもお会いしたいです」
「うん、では今週末でも?」
「喜んで」
「こちらから馬車で迎えに行くよ」
「お願いするわ」
ーーー内心ホッとした。あの屋敷に休日ずっと居れば何かしら厄介なことがある。
そうキャサリン様の突撃とか、会いたくもない両親に会うかもしれないとか。ストレスしかないのよね。
朝起きて部屋で朝食をとり用意をして馬車に乗り学校へ行く。学校は思った以上に快適で友人達と楽しい時間を過ごした。
さらに放課後は図書室で学校の門が閉まるギリギリまで図書室で勉強をしてからお迎えの馬車に乗り帰る。
その後、部屋に閉じ籠り夕食。
湯浴みを済ませれば、眠るだけ。
わたしにとって屋敷は寝に帰るだけの場所。
だけどキースやエマ、クレド達が毎晩のように部屋にやってくる。そしてわたしの部屋は2時間ほどお茶会をする部屋になる。他の使用人も仕事が終われば顔を出す。
毎晩クレドが美味しいお菓子を作ってくれる。
それを楽しみに、わたしがいるべき場所ではないはずの部屋で、なんとか苦痛の中でも過ごすことができた。
ちなみにわたし達が毎晩食べるお菓子代はわたしが稼いでいる。
このことであの二人にとやかく言われることはない。
お祖母様の実家のグラント家が大きな商会を運営している。わたしは幼い頃からお小遣いを全てそこに投資している。
おかげで今では投資した倍以上のお金になっていて、毎月それなりの額が私の個人資産として入って来ている。
お菓子代はそこから出している。
この屋敷に来てから、食べさせてもらっているし寝るところもある。だけどそれ以上のことはしてもらっていない。ドレスも断ったし。
あ、だけど、学校には行かせてもらっている。それも最近書類を提出して、学費免除の権利を得た。
成績さえ上位でいることができれば、この国では学費もそれに伴う費用も全て免除される。制服も教科書も全てタダ!
最高だよね。
あの人達から恵んでもらって学校へ行くなんて嫌だった。本当は寮費もタダになるので寮に入りたいのだけど、それは流石にあの二人が許してくれない。
『寮費もいらないのです。わたしがこの屋敷にいる必要はありませんよね?わたしはここの娘ではないんですから。公爵様、わたしを解放してください』
彼らにそう言うと、わたしの頬は真っ赤になった。
そう頬を叩かれた。
青い顔をして体を小刻みに震わせてわたしを睨む公爵。
何故か俯いてしまう公爵夫人。
もうこの関係が元に戻ることはない。
赤く腫れた頬がそう言っていた。
そして週末、ルロワール家の馬車が迎えに来てくれた。
エマが付き添い馬車に乗った。
「カレンお姉様?」
馬車にはアリシアちゃんがちょこんと座っていた。満面の笑みのアリシアちゃんが、自分の隣の空いている席に「ここにどうぞ」と座るように勧めてくれた。
「お久しぶりです。お会いしたかったです」
「ほんとですか?わたしもずっとお会いしたかったです!お兄様に頼んで今日はお迎えに来ました」
わたしの前の席に座り顔を顰めているマックス様。
「すまない、どうしてもついてくると言って聞かないんだ。カレン嬢に会いたくて待ちきれなかったみたいなんだ」
「わたしも可愛いアリシアちゃんに会いたかったので嬉しいです」
アリシアちゃんは馬車の中で今日用意してあるお菓子の説明をしてくれた。
全てアリシアちゃんの大好きなお菓子らしく、聞いていて可愛すぎてもうニヤけるしかなかった。
屋敷に着くと我が家のタウンハウスと違い、ルロワール家は王都を中心に暮らしているので大きな屋敷を構えていた。
敷地も建物も我が家より大きい。なのにホッとする和やかな空気。
我が家のように人を寄せ付けない冷たい屋敷とは全く違っていた。
ルロワール侯爵夫婦にご挨拶をした。
お二人は優しく出迎えてくれて仲睦まじくみえた。
そして客間に通された。そこにはヒュートも座って待っていてくれた。
「ヒュート!態々この国まで来てくれてありがとう」
「カレンの頼みなら喜んで!」
ヒュートはわたしの2歳年上。やはり飛び級で学校は2年前に卒業してしまっている。今はおじ様の商会を手伝っていろんな国々を飛び回っている。
「素敵な宝石を贈ってくださってありがとう」
「気に入った?」
「もちろんよ。あれは真珠とグレーダイヤモンドよね?」
「うん、君の瞳の色に近い石を探したんだ。石言葉はあるがまま・強さだよ。なんだか君らしいなと思って」
「わたし?わたしは強くなんかないわ」
「君はどんな時でも強くあろうとしてるじゃないか。本当は誰よりも優しくて繊細なのにね」
ドキッとした。いつも強気でいるのは弱い自分を認めたくないし他人に悟られたくないから。
幼い頃から遊んでいるヒュートには隠していてもバレていた。
誤魔化すように微笑むしかなかった。
アリシアちゃんはそんな空気の中ーー
「カレンお姉様、そろそろヒュート兄様とのお話は終わらせて一緒にお茶でもして楽しいお話しませんか?」
「そうね、今日はアリシアちゃんに会いに来たのだもの、たくさんお話ししたいわ」
一日和やかに過ごすことが出来た。
キャサリン様の姿が少しでも目に入れば、さっと姿を消してしまう技を身につけた。
「もう!わたし達を置いて突然いなくならないで!」
オリヴィア達に怒られつつ「ごめんなさい」と謝った。
顔さえ合わせなければ問題は起こらない。
殿下の最近のお気に入りのアイリ様は一つ年上だしあまり接点がないので今の所絡むことがない。殿下もわたしにそんなに興味がないようで、目さえ合わせなければ大丈夫。
問題は今度の王宮である夜会。そうわたしのデビュタント。
エスコート役の親戚であるヒュート・グラントは友人宅にもう来ていると連絡があった。
その友人宅がルロワール様だった。うん、世の中狭い。
「カレン嬢、ヒュートは君の親戚なんだって聞いて驚いたよ。今度の夜会に大事な女の子をエスコートしたいからと、うちに泊まらせて欲しいと手紙が来ていたんだ。まさかその大事な女の子が君のことだとは思わなかったよ」
「突然だったからホテルも空きがなかったらしくて。ヒュートがどこに泊まるか心配していたんです。親戚だから我が家に泊めるのが普通なのに少々問題があって……泊めづらかったの」
「……うん、少しだけ事情は聞いてる。ヒュートの親とカレン嬢の親がそこまで仲良くないって言ってたからね」
「あっ、うん、そうなの」
ーーーよかった。一番ベストな答えね。
「それで、ヒュートもいることだし今度こそ我が家に招待したいんだ。アリシアから毎日のようにいつカレンお姉様が来てくれるんだってうるさいんだ」
「妹大好きなルロワール様なのにそんなこと言っていいの?」
わたしが揶揄うように言う。
「いくら可愛くてもあんなに言われたら流石に疲れるよ。それから、ルロワールじゃなくてマックス、そう呼んで欲しい」
「マックス様⁈…ふふっ。ではご招待喜んでお受けいたしますわ。可愛いアリシアちゃんにもお会いしたいです」
「うん、では今週末でも?」
「喜んで」
「こちらから馬車で迎えに行くよ」
「お願いするわ」
ーーー内心ホッとした。あの屋敷に休日ずっと居れば何かしら厄介なことがある。
そうキャサリン様の突撃とか、会いたくもない両親に会うかもしれないとか。ストレスしかないのよね。
朝起きて部屋で朝食をとり用意をして馬車に乗り学校へ行く。学校は思った以上に快適で友人達と楽しい時間を過ごした。
さらに放課後は図書室で学校の門が閉まるギリギリまで図書室で勉強をしてからお迎えの馬車に乗り帰る。
その後、部屋に閉じ籠り夕食。
湯浴みを済ませれば、眠るだけ。
わたしにとって屋敷は寝に帰るだけの場所。
だけどキースやエマ、クレド達が毎晩のように部屋にやってくる。そしてわたしの部屋は2時間ほどお茶会をする部屋になる。他の使用人も仕事が終われば顔を出す。
毎晩クレドが美味しいお菓子を作ってくれる。
それを楽しみに、わたしがいるべき場所ではないはずの部屋で、なんとか苦痛の中でも過ごすことができた。
ちなみにわたし達が毎晩食べるお菓子代はわたしが稼いでいる。
このことであの二人にとやかく言われることはない。
お祖母様の実家のグラント家が大きな商会を運営している。わたしは幼い頃からお小遣いを全てそこに投資している。
おかげで今では投資した倍以上のお金になっていて、毎月それなりの額が私の個人資産として入って来ている。
お菓子代はそこから出している。
この屋敷に来てから、食べさせてもらっているし寝るところもある。だけどそれ以上のことはしてもらっていない。ドレスも断ったし。
あ、だけど、学校には行かせてもらっている。それも最近書類を提出して、学費免除の権利を得た。
成績さえ上位でいることができれば、この国では学費もそれに伴う費用も全て免除される。制服も教科書も全てタダ!
最高だよね。
あの人達から恵んでもらって学校へ行くなんて嫌だった。本当は寮費もタダになるので寮に入りたいのだけど、それは流石にあの二人が許してくれない。
『寮費もいらないのです。わたしがこの屋敷にいる必要はありませんよね?わたしはここの娘ではないんですから。公爵様、わたしを解放してください』
彼らにそう言うと、わたしの頬は真っ赤になった。
そう頬を叩かれた。
青い顔をして体を小刻みに震わせてわたしを睨む公爵。
何故か俯いてしまう公爵夫人。
もうこの関係が元に戻ることはない。
赤く腫れた頬がそう言っていた。
そして週末、ルロワール家の馬車が迎えに来てくれた。
エマが付き添い馬車に乗った。
「カレンお姉様?」
馬車にはアリシアちゃんがちょこんと座っていた。満面の笑みのアリシアちゃんが、自分の隣の空いている席に「ここにどうぞ」と座るように勧めてくれた。
「お久しぶりです。お会いしたかったです」
「ほんとですか?わたしもずっとお会いしたかったです!お兄様に頼んで今日はお迎えに来ました」
わたしの前の席に座り顔を顰めているマックス様。
「すまない、どうしてもついてくると言って聞かないんだ。カレン嬢に会いたくて待ちきれなかったみたいなんだ」
「わたしも可愛いアリシアちゃんに会いたかったので嬉しいです」
アリシアちゃんは馬車の中で今日用意してあるお菓子の説明をしてくれた。
全てアリシアちゃんの大好きなお菓子らしく、聞いていて可愛すぎてもうニヤけるしかなかった。
屋敷に着くと我が家のタウンハウスと違い、ルロワール家は王都を中心に暮らしているので大きな屋敷を構えていた。
敷地も建物も我が家より大きい。なのにホッとする和やかな空気。
我が家のように人を寄せ付けない冷たい屋敷とは全く違っていた。
ルロワール侯爵夫婦にご挨拶をした。
お二人は優しく出迎えてくれて仲睦まじくみえた。
そして客間に通された。そこにはヒュートも座って待っていてくれた。
「ヒュート!態々この国まで来てくれてありがとう」
「カレンの頼みなら喜んで!」
ヒュートはわたしの2歳年上。やはり飛び級で学校は2年前に卒業してしまっている。今はおじ様の商会を手伝っていろんな国々を飛び回っている。
「素敵な宝石を贈ってくださってありがとう」
「気に入った?」
「もちろんよ。あれは真珠とグレーダイヤモンドよね?」
「うん、君の瞳の色に近い石を探したんだ。石言葉はあるがまま・強さだよ。なんだか君らしいなと思って」
「わたし?わたしは強くなんかないわ」
「君はどんな時でも強くあろうとしてるじゃないか。本当は誰よりも優しくて繊細なのにね」
ドキッとした。いつも強気でいるのは弱い自分を認めたくないし他人に悟られたくないから。
幼い頃から遊んでいるヒュートには隠していてもバレていた。
誤魔化すように微笑むしかなかった。
アリシアちゃんはそんな空気の中ーー
「カレンお姉様、そろそろヒュート兄様とのお話は終わらせて一緒にお茶でもして楽しいお話しませんか?」
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