【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?

たろ

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なな。

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 新しいクラスにはオリヴィアのおかげで馴染むことができた。

 王都の貴族子女は、プライドが高く話しにくいかと思ったけど、それはわたしの偏見だったみたい。

 キャサリン様や意地悪な男の子は確かにいるけど、みんながみんなそんな訳ではない。

 優しい気立ての良い令嬢は沢山いた。

 もちろんツンツン気味の令嬢やわたしを遠くから冷たい視線で見ている令嬢もいる。

 キャサリン様と仲の良い令嬢達はわたしをとても怪しんで近づこうとしない。
 貴族の大人の世界と同じで、子供達にもしっかり派閥が出来ているようだ。

 わたしはとりあえず、『君子危うきに近寄らず』で、オリヴィア達とできるだけ行動する。

「カレンは何故か人に絡まれやすいのよね、出来るだけわたし達から離れないように!」

「そうするわ。都会の人間にはまだ慣れないから」


 なんて言ってたのに、すぐわたしは一人で行動することになった。

 先生に呼び出されてしまい、一人廊下を歩いていた。

「ここはどこかしら?」
 周りをきょろきょろと見ても、教室なんてみんな同じだし廊下だってどこも同じ景色。

「はあ、迷子になったみたい」

 苦手なのよね、何故か昔っから道を覚えるのが……

 かと言って転校してきたばかりで知らない生徒がほとんどで、迷子になったからわたしのクラスの教室を教えて欲しいとは……言いづらい。
 それは恥ずかしすぎる。

 とりあえず、校舎を出て、見覚えのある景色のところまで行って、そこから教室を目指すしかないわ。

 階段を降りて校舎を出て中庭を歩き回った。


「殿下だわ」
「素敵ね、とても絵になるお二人だわ」
「きゃっ、かっこいい」

 そんな声が聞こえてきた。

 みんなの視線の方へ目をやると、美しい顔の二人が仲睦まじく歩いていた。

 殿下……第二王子のオスカー様とたぶん恋人なのか婚約者なのかわからないけど、女の子と腕を組んで歩いていた。

 ーーーうん、殿下らしい女の子の趣味だわ。気づかれないように目を合わせないように気をつけよう。

 周囲で騒いでいる女の子達から離れるように回れ右をして、もと来た道を歩こうとした。

「カレン!」

 わたしの背中に声をかけてきた。その声は……

 聞こえないフリをしてもいいかしら。うん、そうしよう。そう思ったのに、わたしの肩をぐいっと掴まれた。

「カレン様」
 その声は殿下の側近の一人、セルジオ様だった。

「痛っ!」
 力の入った手、わたしはその手を振り払った。

「触らないでください」

「あっ、失礼しました。何度か殿下が声をかけたのに去ろうとするから思わず追いかけてしまいました」

 ーーー放っておいて欲しかったわ。

 わたしが無言でセルジオ様を睨むと彼は一瞬怯んだ。本人も強く肩を掴んだ自覚はあったのだろう。

「転校してきたと噂では聞いておりました。殿下もお会いしたいと言っておりますので、是非今からご一緒にお茶でも如何ですか?」

 オリヴィアが言っていた。学校には王室専用の部屋が用意されていると。

「わたし、まだ先生に頼まれた書類を書かないといけないので、時間がないのです。申し訳ございませんがまたの機会によろしくお願いいたしますわ。殿下にもそうお伝えください」

 作り笑いで頭を下げて、その場を去ろうとした。

「カレン、久しぶりだな」
 ーーーハァー、せっかく断ったのに殿下自らやって来たわね。

「オスカー殿下にご挨拶申し上げます」

 わたしはカーテシーをして、柔かに挨拶をした。

「ここは学校だから気楽に話しかけてくれないか?」

「わかりました」
 殿下から了解を得たので、隣にいる女の子をチラッと見ながら話しかけた。

「殿下、お茶の誘いありがとうございました。わたくし、今急ぎの用がございまして参加できませんが是非またの機会がございましたらお声をかけていただければ嬉しく思います」

 ーーーもう二度と声かけてくるな!

 そう思いながら言うと、殿下の隣の女の子は不機嫌な感情を隠しもせず

「オスカー様ぁ、アイリ、早く部屋に行きたいわ」と甘えた声でわたしを牽制した。

「わかったよ、アイリ。カレンまたゆっくりと話そう」

「ありがとうございます」
 ーーー話すことなんてないのだけど?

 殿下が立ち去ったのにセルジオ様はまだ目の前にいる。

「セルジオ様?殿下のあとを追わなくていいの?」

「カレン様はずっとこの辺をウロウロしていただろう?」
 そう言うと少し考えてからボソッとわたしに向かって呟いた。

「………迷子?………」

「ぐっ……それが何か?」

 バレたなら仕方がない。虚勢を張ってもセルジオ様にはすぐバレる。幼い頃のお茶会で何度も迷子になって助けてもらっているから。

「まさかまだ迷子になるとは……」
 呆れながらも面白いのか、クククッと笑い出した。

「セルジオ様、笑ってないでわたしを教室に案内してくれませんか?」

 一つ年上の殿下とセルジオ様。

 彼らは王都にいた頃の幼馴染でお茶会の時よく一緒に遊んでいた。この学校に転校してきて、出来れば関わり合いになりたくなかった。

 学校で一番注目されているであろう二人と仲が良かったなんて知られたら、また何を言われるかわからないもの。

 だけどこの場所で、殿下がわざわざ話しかけてきた。もうその光景をしっかり周りは見てしまった。隠す必要がなくなった。

 公爵令嬢であるわたしは幼い頃殿下の遊び相手の一人としてお茶会のたびにセルジオ様達と共に仲良くしていた。ちなみにセルジオ様は宰相閣下の息子でわたしと同じで殿下の遊び相手の一人だった。

 相変わらず女の子に優しい殿下を見て、関われば何かと噂されそうで、出来るだけ会わないようにしようと心に誓った。



 いつも殿下を見ると、心の中で危険だと感じる。絶対に親しくなってはいけない。

 セルジオ様も優しくてお兄様のような人だけど、関わるべき人ではない。


ーーーあんな辛い思いはもうしたくない。


なんだろう、頭の中にそんな言葉が浮かんだ。
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