5 / 50
ご。
しおりを挟む
キャサリンはやはりやってきた。
だけど今回のわたしには自分の部屋で勉強をするという言い訳がある。
おかげで部屋から出なくともあの両親が何かを言ってくることはなかった。
前もって、転校する新しい学校の勉強に追いつくため、今は集中して勉強をしなければいけないと伝えてある。
ふふん。今のうちに勉強しっかりして飛び級で卒業するの。成人する18歳になれば両親に何を言われても好きにさせてもらうつもり。婚約なんて絶対しないわ。夢は文官になることだもの。
それも一年早く卒業して、就職してしまうつもり。そうすればあの両親から逃れられる。
文官になってしまえば自分でお金を稼げるし一人で生きていけるもの。地方への出向を願い出て王都を脱出するつもり!
公爵令嬢なんてクソ喰らえだわ!わたしは一人で生きていくんだもの。愛のない結婚なんて絶対したくない!
あの両親のように形だけの愛のない結婚生活なんて絶対イヤだわ。
「エマ、あの子帰ったかしら?」
「キャサリン様ですか?今日は旦那様と奥様と三人で劇を見にいくそうですよ」
「ほんと?嬉しいわ。この屋敷にわたし一人?」
「はい……カレン様だけを残してお出掛けになるなんて、酷いです!」
「全然!全く!大丈夫!嬉しいわ!
あの人達と同じ空気を吸わないでいいと思うと嬉しいの!今日はエマとキースと三人で夜のお茶会をして過ごしたいわ!」
「カレン様……本当にいいのですか?」
「何故?わたしはあの人達から『お前など娘ではない』と言われたのよ?捨てたのはあの人達よ?わたしは捨てられたの。だから彼らに情などないわ」
カタッ。
わたしとエマが話していたら扉の外で何か音がした。
思わず誰かわたしを呼びにきたのかと思ってビクッとした。
エマと二人でそっと扉の隙間から廊下の方を見たけど誰もいないようだった。
「気のせいみたいね。よかったわ、こんな話キャサリン様に聞かれたらまたあの二人に告げ口されてなんて言われるかわからないもの」
「……確かに、カレン様は何度もキャサリン様に嫌味や告げ口されて来ましたものね。それも何もしていないのに勝手に転んだだけで、カレン様に押されて転んだとか言い出すし。旦那様達からプレゼントされるたびに見せびらかして自慢するし、両親に愛されないカレン様は可哀想と言いながらクスッと笑っていたし!」
「さすがエマ!よく見てるわね?でもどうでもいいわ。キャサリン様がどんなにあの人たちから可愛がられても羨ましいと思ったことないもの。
わたしはお祖父様とお祖母様とおじ様達がいてくれたらいいの。愛情はたくさんもらっているもの。それに領地に帰ればみんなが待っていてくれるわ。
ただこの王都にわたしの居場所がないだけ。
少し我慢すれば出ていけるの、だから頑張るわ」
わたしはその時全く気が付かなかった。扉の影に隠れていた人に。わたし達の話を聞いていたなんて!
そしてその夜、エマとキースとそれに料理長のクレドや屋敷で仲良くなった使用人達も加わって、みんなでわたしの部屋でお茶会という名のおしゃべり会をして楽しんだ。
クッキーやケーキを料理長達がたくさん作ってくれた。みんなでわいわい言いながら食べていると領地でよくお祖母様達と過ごした時間を思い出された。
思わず涙ぐみそうになりながらも、わたしはずっと笑っていた。こんな楽しい時間がずっと続くならこの王都にいても苦にならないのに。
ーーーーー
今日から学校。
エマが気合を入れて髪を三つ編みにセットしてくれた。度の入っていない眼鏡をかけて、わたしは勉強が出来そうなおとなしめの女の子になった。ふふっ!
シルバーの髪色は珍しく人目を引いてしまう。ブルーグレーの瞳もこの国では珍しいので、眼鏡をかけて目立たないようにした。
幼い頃、何度か王家主催の子供のお茶会に参加した時に、男の子達に「お前の髪の毛、変だ!」とか「目の色が気持ち悪い!」と言われて、揶揄われたり意地悪をされて来た。
領地ではみんなおおらかでそんな酷いことを言う子がいなかったので、都会の子達はとっても意地悪なんだと知った。
だから今回の転校先では、おとなしくお淑やかに過ごす予定。
別に友人は要らないし、変に目立つとまたキャサリン様に絡まれるから。
「エマ、どうかしら?」
「どんなカレン様も可愛らしいでっす!」
だけど今回のわたしには自分の部屋で勉強をするという言い訳がある。
おかげで部屋から出なくともあの両親が何かを言ってくることはなかった。
前もって、転校する新しい学校の勉強に追いつくため、今は集中して勉強をしなければいけないと伝えてある。
ふふん。今のうちに勉強しっかりして飛び級で卒業するの。成人する18歳になれば両親に何を言われても好きにさせてもらうつもり。婚約なんて絶対しないわ。夢は文官になることだもの。
それも一年早く卒業して、就職してしまうつもり。そうすればあの両親から逃れられる。
文官になってしまえば自分でお金を稼げるし一人で生きていけるもの。地方への出向を願い出て王都を脱出するつもり!
公爵令嬢なんてクソ喰らえだわ!わたしは一人で生きていくんだもの。愛のない結婚なんて絶対したくない!
あの両親のように形だけの愛のない結婚生活なんて絶対イヤだわ。
「エマ、あの子帰ったかしら?」
「キャサリン様ですか?今日は旦那様と奥様と三人で劇を見にいくそうですよ」
「ほんと?嬉しいわ。この屋敷にわたし一人?」
「はい……カレン様だけを残してお出掛けになるなんて、酷いです!」
「全然!全く!大丈夫!嬉しいわ!
あの人達と同じ空気を吸わないでいいと思うと嬉しいの!今日はエマとキースと三人で夜のお茶会をして過ごしたいわ!」
「カレン様……本当にいいのですか?」
「何故?わたしはあの人達から『お前など娘ではない』と言われたのよ?捨てたのはあの人達よ?わたしは捨てられたの。だから彼らに情などないわ」
カタッ。
わたしとエマが話していたら扉の外で何か音がした。
思わず誰かわたしを呼びにきたのかと思ってビクッとした。
エマと二人でそっと扉の隙間から廊下の方を見たけど誰もいないようだった。
「気のせいみたいね。よかったわ、こんな話キャサリン様に聞かれたらまたあの二人に告げ口されてなんて言われるかわからないもの」
「……確かに、カレン様は何度もキャサリン様に嫌味や告げ口されて来ましたものね。それも何もしていないのに勝手に転んだだけで、カレン様に押されて転んだとか言い出すし。旦那様達からプレゼントされるたびに見せびらかして自慢するし、両親に愛されないカレン様は可哀想と言いながらクスッと笑っていたし!」
「さすがエマ!よく見てるわね?でもどうでもいいわ。キャサリン様がどんなにあの人たちから可愛がられても羨ましいと思ったことないもの。
わたしはお祖父様とお祖母様とおじ様達がいてくれたらいいの。愛情はたくさんもらっているもの。それに領地に帰ればみんなが待っていてくれるわ。
ただこの王都にわたしの居場所がないだけ。
少し我慢すれば出ていけるの、だから頑張るわ」
わたしはその時全く気が付かなかった。扉の影に隠れていた人に。わたし達の話を聞いていたなんて!
そしてその夜、エマとキースとそれに料理長のクレドや屋敷で仲良くなった使用人達も加わって、みんなでわたしの部屋でお茶会という名のおしゃべり会をして楽しんだ。
クッキーやケーキを料理長達がたくさん作ってくれた。みんなでわいわい言いながら食べていると領地でよくお祖母様達と過ごした時間を思い出された。
思わず涙ぐみそうになりながらも、わたしはずっと笑っていた。こんな楽しい時間がずっと続くならこの王都にいても苦にならないのに。
ーーーーー
今日から学校。
エマが気合を入れて髪を三つ編みにセットしてくれた。度の入っていない眼鏡をかけて、わたしは勉強が出来そうなおとなしめの女の子になった。ふふっ!
シルバーの髪色は珍しく人目を引いてしまう。ブルーグレーの瞳もこの国では珍しいので、眼鏡をかけて目立たないようにした。
幼い頃、何度か王家主催の子供のお茶会に参加した時に、男の子達に「お前の髪の毛、変だ!」とか「目の色が気持ち悪い!」と言われて、揶揄われたり意地悪をされて来た。
領地ではみんなおおらかでそんな酷いことを言う子がいなかったので、都会の子達はとっても意地悪なんだと知った。
だから今回の転校先では、おとなしくお淑やかに過ごす予定。
別に友人は要らないし、変に目立つとまたキャサリン様に絡まれるから。
「エマ、どうかしら?」
「どんなカレン様も可愛らしいでっす!」
83
お気に入りに追加
1,883
あなたにおすすめの小説

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる