【完結】わたしの好きな人。〜次は愛してくれますか?

たろ

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ご。

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 キャサリンはやはりやってきた。
 だけど今回のわたしには自分の部屋で勉強をするという言い訳がある。

 おかげで部屋から出なくともあの両親が何かを言ってくることはなかった。

 前もって、転校する新しい学校の勉強に追いつくため、今は集中して勉強をしなければいけないと伝えてある。

 ふふん。今のうちに勉強しっかりして飛び級で卒業するの。成人する18歳になれば両親に何を言われても好きにさせてもらうつもり。婚約なんて絶対しないわ。夢は文官になることだもの。

 それも一年早く卒業して、就職してしまうつもり。そうすればあの両親から逃れられる。

 文官になってしまえば自分でお金を稼げるし一人で生きていけるもの。地方への出向を願い出て王都を脱出するつもり!

 公爵令嬢なんてクソ喰らえだわ!わたしは一人で生きていくんだもの。愛のない結婚なんて絶対したくない!
 あの両親のように形だけの愛のない結婚生活なんて絶対イヤだわ。



「エマ、あの子帰ったかしら?」

「キャサリン様ですか?今日は旦那様と奥様と三人で劇を見にいくそうですよ」

「ほんと?嬉しいわ。この屋敷にわたし一人?」

「はい……カレン様だけを残してお出掛けになるなんて、酷いです!」

「全然!全く!大丈夫!嬉しいわ!
 あの人達と同じ空気を吸わないでいいと思うと嬉しいの!今日はエマとキースと三人で夜のお茶会をして過ごしたいわ!」

「カレン様……本当にいいのですか?」

「何故?わたしはあの人達から『お前など娘ではない』と言われたのよ?捨てたのはあの人達よ?わたしは捨てられたの。だから彼らに情などないわ」


 カタッ。

 わたしとエマが話していたら扉の外で何か音がした。

 思わず誰かわたしを呼びにきたのかと思ってビクッとした。
 エマと二人でそっと扉の隙間から廊下の方を見たけど誰もいないようだった。

「気のせいみたいね。よかったわ、こんな話キャサリン様に聞かれたらまたあの二人に告げ口されてなんて言われるかわからないもの」

「……確かに、カレン様は何度もキャサリン様に嫌味や告げ口されて来ましたものね。それも何もしていないのに勝手に転んだだけで、カレン様に押されて転んだとか言い出すし。旦那様達からプレゼントされるたびに見せびらかして自慢するし、両親に愛されないカレン様は可哀想と言いながらクスッと笑っていたし!」

「さすがエマ!よく見てるわね?でもどうでもいいわ。キャサリン様がどんなにあの人たちから可愛がられても羨ましいと思ったことないもの。
 わたしはお祖父様とお祖母様とおじ様達がいてくれたらいいの。愛情はたくさんもらっているもの。それに領地に帰ればみんなが待っていてくれるわ。
 ただこの王都にわたしの居場所がないだけ。
 少し我慢すれば出ていけるの、だから頑張るわ」

 わたしはその時全く気が付かなかった。扉の影に隠れていた人に。わたし達の話を聞いていたなんて!


 そしてその夜、エマとキースとそれに料理長のクレドや屋敷で仲良くなった使用人達も加わって、みんなでわたしの部屋でお茶会という名のおしゃべり会をして楽しんだ。

 クッキーやケーキを料理長達がたくさん作ってくれた。みんなでわいわい言いながら食べていると領地でよくお祖母様達と過ごした時間を思い出された。

 思わず涙ぐみそうになりながらも、わたしはずっと笑っていた。こんな楽しい時間がずっと続くならこの王都にいても苦にならないのに。




 ーーーーー


 今日から学校。


 エマが気合を入れて髪を三つ編みにセットしてくれた。度の入っていない眼鏡をかけて、わたしは勉強が出来そうなおとなしめの女の子になった。ふふっ!


 シルバーの髪色は珍しく人目を引いてしまう。ブルーグレーの瞳もこの国では珍しいので、眼鏡をかけて目立たないようにした。

 幼い頃、何度か王家主催の子供のお茶会に参加した時に、男の子達に「お前の髪の毛、変だ!」とか「目の色が気持ち悪い!」と言われて、揶揄われたり意地悪をされて来た。

 領地ではみんなおおらかでそんな酷いことを言う子がいなかったので、都会の子達はとっても意地悪なんだと知った。

 だから今回の転校先では、おとなしくお淑やかに過ごす予定。

 別に友人は要らないし、変に目立つとまたキャサリン様に絡まれるから。

「エマ、どうかしら?」

「どんなカレン様も可愛らしいでっす!」





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