74 / 76
番外編 辺境伯は妻を愛す。①
しおりを挟む
「やっと俺にも妻ができる」
隣国から嫁いでくることが決まった。
名はジャスティア。
王女でありながらその地位を追われ義母になんとか救われ、義母の侯爵家の手を借りて再教育をされたと言うなんとも問題だらけの妻。
「ウィリー様、大丈夫でしょうか?悪い噂しか聞かないそんな人を妻にして」
部下たちはみんな一様に心配しているが
「こんな辺鄙な所に嫁に来ようなんて女は多少問題があっても来てくれるだけで十分だ」
「………確かに…何度も見合いは断られていますもんね」
「まぁ、いくらウィリー様のお顔が良くても何もない所に嫁に来ようと思う貴族令嬢なんてまずいませんもんね」
「ま、確かにな、俺もそろそろ嫁をもらわなきゃいけないのに、み~んな断りやがる。空気は綺麗だし野生の動物の肉は食べ放題、領地だけなら国で一番広い。ま、店といったらジジイとババアが細々とやってる寂れた店ばかりだけど、みんないい奴ばかりだ。
子供達は学はないけど元気出し、女はよく働く、こんな住みやすい場所はないんだけどな」
「ま、何にもないですよね、冬になれば豪雪地帯で外にも出られない。やることは子作りくらいですもん」
「そうだな」
周りの男たちはそんな話をしながら豪快に笑った。
俺はジャスティアのことを思い出していた。
あれは……婚約の話がジャスティアの祖国から来た時、ちょうど隣国に用事があり俺は侯爵家の騎士に扮してジャスティアの行動を伺っていた。
我儘で傲慢、強気の発言ばかりしているのに、周りをいつもこそっと伺う、そして寂しそうな顔をしていた。
この娘は人の前で強気でいることでなんとか自分の存在をみんなに認めてもらおうとしているんだとすぐに分かった。
一人の時は物静かで勉強も必死でやっている。なのに誰か人の気配がすると突然元気になり我儘を言い出す。
お子ちゃまか?と言いたくなるような言動につい面白くて笑ってしまった。
そして路上での男の子が死にかけた事件をきっかけにジャスティアの考えは変わった。
俺はその事件の詳細は報告しか受けていなかったが、彼女は侯爵家での行動も発言も今までとは全く違うものになっていた。
「面白い、とにかく面白い」
目が離せない。父親に見捨てられたはずなのに突然父親のところへ怒鳴り込んでいく行動も。
彼女が屋敷で何か色々動いているのは知っていた。屋敷の者たちも何かしら協力していた。
俺はその行動がまた面白くて。
そして「よしっ!」と気合を入れて向かったのは王宮。その姿も可愛らしかった。
強い意志を持った瞳、なのにどこか不安そうにしている。それを隠すように気合を入れたのだ。
「謁見の約束もないのにお会いすることはできません」
周りがなんと言ってもジャスティアは屁でもなかった。
「うるさいわね、お退きなさい!私に命令できるのはお父様とお義母様だけよ!」
堂々と王の元へと行った。
俺は王妃からの許可を得て中を覗かせてもらった。
「孤児院にもっと予算をください」と言って、たくさんの陳情書と運営費の帳簿や現状における困ったことなどを纏めた書類を国王へと手渡した。
国王はかなり驚いていた。そして本気でジャスティアを怒って怒鳴りつけていた。
「そんなことは段取りを踏んでくるもんだ!」
ジャスティアも負けていなかった、言い返しているジャスティアを周りの騎士達は取り押さえるべきか悩んでいるようだった。
国王に喰ってかかるジャスティアは損得など考えもせずなんとか子供達を守ろうと必死なのが分かった。
だけど彼女は今はもう王女ではない。意見など聞いてもらえないだろうし不敬になり捕まるのでは?と思った。
しかし国王は黙り込んだ後「考えさせてくれ」とジャスティアに言いその日は帰らせた。
そしてジャスティアはもう一度謁見を申し込み再び話し合いをした。俺はその時もこっそりと見に行った。
最初はきちんと二人とも冷静に話していたのに最後はただの親子喧嘩になっていた。
『お前はなんでそんなに我儘ばかり言うんだ!』
『お父様がわたしを見てくれないから我儘言うしかなかったのよ!我儘言った時はわたしの顔を見てくれたじゃない!』
『それはあまりにも我儘過ぎるから呆れていたんだ!』
『わたしはお父様に見て欲しかったの!』
『だったら素直に言えばいいだろう?』
『言えたらこんなことになっていないわ!』
王妃は隣にいて呆れて何にも言えなかったようだ。
周りの者たちも生温かい目で見守っていた。
俺はジャスティアの変わる姿を見て、この娘が欲しいと強く思った。
この娘なら辺境地でも逞しく生き抜くだろう、そして俺を毎日笑わせてくれそうな予感がした。
ジャスティアの凄い行動力のおかげで、全ての孤児院に調査が入ることになったらしい。そして少しずつ改善されていくことになるだろう。
彼女の突拍子もない行動はきちんと身を結び子供達の命を将来を変えていくことだろう。
そんなジャスティアを俺は欲しいと思った。
彼女が来るのがとても楽しみだ。
隣国から嫁いでくることが決まった。
名はジャスティア。
王女でありながらその地位を追われ義母になんとか救われ、義母の侯爵家の手を借りて再教育をされたと言うなんとも問題だらけの妻。
「ウィリー様、大丈夫でしょうか?悪い噂しか聞かないそんな人を妻にして」
部下たちはみんな一様に心配しているが
「こんな辺鄙な所に嫁に来ようなんて女は多少問題があっても来てくれるだけで十分だ」
「………確かに…何度も見合いは断られていますもんね」
「まぁ、いくらウィリー様のお顔が良くても何もない所に嫁に来ようと思う貴族令嬢なんてまずいませんもんね」
「ま、確かにな、俺もそろそろ嫁をもらわなきゃいけないのに、み~んな断りやがる。空気は綺麗だし野生の動物の肉は食べ放題、領地だけなら国で一番広い。ま、店といったらジジイとババアが細々とやってる寂れた店ばかりだけど、みんないい奴ばかりだ。
子供達は学はないけど元気出し、女はよく働く、こんな住みやすい場所はないんだけどな」
「ま、何にもないですよね、冬になれば豪雪地帯で外にも出られない。やることは子作りくらいですもん」
「そうだな」
周りの男たちはそんな話をしながら豪快に笑った。
俺はジャスティアのことを思い出していた。
あれは……婚約の話がジャスティアの祖国から来た時、ちょうど隣国に用事があり俺は侯爵家の騎士に扮してジャスティアの行動を伺っていた。
我儘で傲慢、強気の発言ばかりしているのに、周りをいつもこそっと伺う、そして寂しそうな顔をしていた。
この娘は人の前で強気でいることでなんとか自分の存在をみんなに認めてもらおうとしているんだとすぐに分かった。
一人の時は物静かで勉強も必死でやっている。なのに誰か人の気配がすると突然元気になり我儘を言い出す。
お子ちゃまか?と言いたくなるような言動につい面白くて笑ってしまった。
そして路上での男の子が死にかけた事件をきっかけにジャスティアの考えは変わった。
俺はその事件の詳細は報告しか受けていなかったが、彼女は侯爵家での行動も発言も今までとは全く違うものになっていた。
「面白い、とにかく面白い」
目が離せない。父親に見捨てられたはずなのに突然父親のところへ怒鳴り込んでいく行動も。
彼女が屋敷で何か色々動いているのは知っていた。屋敷の者たちも何かしら協力していた。
俺はその行動がまた面白くて。
そして「よしっ!」と気合を入れて向かったのは王宮。その姿も可愛らしかった。
強い意志を持った瞳、なのにどこか不安そうにしている。それを隠すように気合を入れたのだ。
「謁見の約束もないのにお会いすることはできません」
周りがなんと言ってもジャスティアは屁でもなかった。
「うるさいわね、お退きなさい!私に命令できるのはお父様とお義母様だけよ!」
堂々と王の元へと行った。
俺は王妃からの許可を得て中を覗かせてもらった。
「孤児院にもっと予算をください」と言って、たくさんの陳情書と運営費の帳簿や現状における困ったことなどを纏めた書類を国王へと手渡した。
国王はかなり驚いていた。そして本気でジャスティアを怒って怒鳴りつけていた。
「そんなことは段取りを踏んでくるもんだ!」
ジャスティアも負けていなかった、言い返しているジャスティアを周りの騎士達は取り押さえるべきか悩んでいるようだった。
国王に喰ってかかるジャスティアは損得など考えもせずなんとか子供達を守ろうと必死なのが分かった。
だけど彼女は今はもう王女ではない。意見など聞いてもらえないだろうし不敬になり捕まるのでは?と思った。
しかし国王は黙り込んだ後「考えさせてくれ」とジャスティアに言いその日は帰らせた。
そしてジャスティアはもう一度謁見を申し込み再び話し合いをした。俺はその時もこっそりと見に行った。
最初はきちんと二人とも冷静に話していたのに最後はただの親子喧嘩になっていた。
『お前はなんでそんなに我儘ばかり言うんだ!』
『お父様がわたしを見てくれないから我儘言うしかなかったのよ!我儘言った時はわたしの顔を見てくれたじゃない!』
『それはあまりにも我儘過ぎるから呆れていたんだ!』
『わたしはお父様に見て欲しかったの!』
『だったら素直に言えばいいだろう?』
『言えたらこんなことになっていないわ!』
王妃は隣にいて呆れて何にも言えなかったようだ。
周りの者たちも生温かい目で見守っていた。
俺はジャスティアの変わる姿を見て、この娘が欲しいと強く思った。
この娘なら辺境地でも逞しく生き抜くだろう、そして俺を毎日笑わせてくれそうな予感がした。
ジャスティアの凄い行動力のおかげで、全ての孤児院に調査が入ることになったらしい。そして少しずつ改善されていくことになるだろう。
彼女の突拍子もない行動はきちんと身を結び子供達の命を将来を変えていくことだろう。
そんなジャスティアを俺は欲しいと思った。
彼女が来るのがとても楽しみだ。
69
お気に入りに追加
3,944
あなたにおすすめの小説
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる